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2-8 三男坊 錬金術師に会う

前に交換所で会った少女に助けを求められます。

 俺はミラやエリーゼ、エイトを何とか振り切って、中間試験の試験休みの自由を確保した。

 え、前回の状態でどうやってって、それはとても一話で書き表せないような凄まじい闘争があったのだよ。


 ノルンの背中に乗って遠出するのに、俺は中古の小さな馬なし馬車を買った。

 なぜなら王都の中でノルンを元のドラゴンに戻すととんでもない騒動になるからである。

 王都の外の人気のない場所まで4kmか5kmはあるので、アンナを歩かすのもかわいそうだ。

 馬車を借りても馬を何日も王都の外に繋いではおけないので、ノルンに馬になって貰って、王都の外まで馬車を曳いて貰えば良いんじゃないと思ったわけだ。


 近衛で馬車だけを借りることは出来るが、それだと秘密がいろいろばれてしまいそうだ。それで馬車だけを買ったのである。

 金はあるのかって、それが最近報奨金やら、学費、寮費の返還、薬草、・魔石の代金等で懐は温かいのだ。


 朝食を摂ってから三人で寮を出て、人気のない路地で馬車を収納から出した。ノルンが収納の魔素を使って鳩から馬に変身する。後は馬具を繋いで馬車が完成である。


 ドラゴンで空を飛べる。この快挙で俺は大興奮である。コトネもアンナも嬉しそうだ。

「レオン様、どこへ行かれるのですか?」

「ミュラー伯爵領でまた魔獣狩りをしようと思っている。まあ、すぐに着きそうだ」

 コトネが嬉しそうに質問するので俺も嬉しい。


「またあそこに行くの?」

「今度は村には寄らないし、前みたいなことはないだろう」

 アンナは魔法使いに殺されそうになったことを思い出したみたいだ。


「出発するぞ」

 コトネとアンナを荷台に乗せて出発した。

 コトネが御者をすると言ってくれたが、幌も無いので子供ばかりなのは丸わかりだ。絡まれないように俺が御者をして、コトネとアンナには耳が隠れるように帽子をかぶせた。

 近衛で下働きをしている犬人の娘チゼッテと市場で会ったことがあるが、やはり父親と一緒だった。一人で外は歩けないそうだ。初めて王都に来た時には、差別の事を知らなくて、結構コトネ達に危ない事をさせていたんだなと思い返した。


 暫く進むと十字路の右側から悲鳴が聞こえた。

「助けて下さーい!!」

 女の子がこちらに走って来る。

 俺は交差点で馬を止める。周りには人が居らず、彼女が俺に向かって助けを求めているのだ。


 うん、どこかで見たような、あの上下に揺れる立派な胸は、もしかして交換所に居たあいつか?

「お前か!どうしたんだ?」

「助けてください。師匠がお化けに捕まったんす」

 息も絶え絶えに俺にお願いする彼女。お化けってなんだよ?王都に魔獣が出る訳無いし???


「お化けってなんだよ」

 彼女が言うには彼女の師匠は錬金術師で、今までのアトリエが手狭なので新しく大きな館を買った。

 それがいわくつきの事故物件で、今まで十人くらいが住んでみたが、皆一か月も持たずに引っ越してしまうと言う物件だった。

 彼女の師匠は、幽霊なんかこの世に居る訳ないと、その物件を買い叩いて購入した。


 そして引っ越して三日目、今まで使ってなかった地下室を片付けようと二人で降りたが、少女が用事で地下室を出ると師匠を残したまま、地下室の扉が開かなくなったという。

『ロキ、お化けなんかいるのか』

 俺は少女に解らないように話し掛ける。

『さあ、わしはあまり外に出たことが無いから解らなんが、もしかしたら同族か悪霊かもしれんし?』

「仕方ない。案内しろ」


 弟子少女を荷台に乗せて、進むこと数分。

「ここっす」

 そこは貴族の居館だったらしい大きなお屋敷、ただ庭の手入れはされず、草や木が生茂っていた。

「なんか不気味ですね」

 馬車で館の玄関まで進むとコトネが言う。

 そう言われると壁がくすんだ灰色で、より不気味感を煽っている。


 精霊がいるのならと思って来てみたが、なぜか入りたくない。

「アンナ、何か感じるか?」

「強い魔力の人が下にいる。後、霊力があちこちにある」

 アンナは目を瞑って集中して言った。

『霊力の正体は解るか?』

『うむ、同族ではなさそうじゃ』


「何してるんすか。早く!こっちっす」

 弟子少女は玄関の扉を開けて、俺達に手招きする。

 警戒してるんだけどなあ。これ以上解らないし、仕方ない。

 俺達は館の中に入って行く。

 左奥に厨房があり、そこに地下に行く階段があるらしい。


「この扉が開かないっすよ」

 厨房の奥にある両開きの扉の前で弟子少女が言うのだが、俺の後ろで胸を押しつけている。

「お前何してんの」

「師匠が胸を背中に押し付けると男が喜ぶって言ってたっす」

「そう言うのは好きな男と二人きりの時にやってくれ」

 弟子少女を引き剥がしながら、俺は恥ずかしくて火を噴きそうだ。


「アンナ、中の様子はどうだ」

「変わりありません。魔力は動いていませんが、中の人は生きてると思います」

「霊力は?」

「なんだか私達を避けているような感じです」

 うーん状況が良く分からんが、中に入っても大丈夫そうだな。


「開けてみるぞ」

 俺はドアノブを回して押してみる。扉はゆっくり開く。

「開いたぞ」

 中は上に行く階段と下に行く階段の踊り場になっていた。

「私がやった時は開かなかったっす」


「まあいい、下に行くぞ」

 俺、弟子少女、アンナ、コトネの順で階段を下りる。

 すぐに踊り場があって180度回って降りると地下室の扉が見える。

 扉を見たとたん、背筋に氷が這ったような感じがした。

「コトネ、中ヤバくないか?」

 後ろにいるコトネに聞いてみる。俺に似た感じを受けるんじゃないかと思ったのだ。


「いえ、何も感じませんが。私が先に行きましょうか?」

 流石に女の子に先に行けとは言えない。

「大丈夫だ、俺が行く」

 ああ、言っちゃったよ。今更引き返す訳にもいかない。

 仕方ない。俺は扉を開ける。


 かび臭い匂いが扉の奥から漂ってくる。

「師匠、大丈夫っすか?!」

 俺の後ろから弟子少女が中に向けて叫ぶ。

 馬鹿野郎!!何か出てきたらどうするんだよ!!

 ウエルフェルト村の時はアンナの事があったから、恐怖を覚える余裕はなかった。


 明り取りも無いのか中は真っ暗で何も見えない。

「ライト!」

 俺は魔法で明かりを作った。

 居た!10m四方くらいの部屋があり、その中央に黒っぽい服を着た老人が居た。


「師匠!!」

 弟子少女が叫ぶがライトがフッと消えた。

「霊力が集まってきます」

 アンナが報告してきた。

『ここに住み着いていた悪霊が集まって来たのじゃ』

 ロキも報告してくれる。


「どういうことだ?」

 確かに今まで感じてた恐怖は感じられなくなった。

『どうも霊力は、この屋敷に居る悪霊のようだな。憑依されないように気をしっかり持つのじゃ』

 良く分からんが悪霊がこの部屋に集まっていると言うことか。

「ライト!!」

 ライトの魔法を唱えるがすぐに消えてしまう。


「私が行きます」

 コトネはメイド衣装を脱いだので、収納から刀を出して渡す。

「無理はするな。危なかったら一旦戻れ」

『コトネ、霊力を刀に付与した。これで悪霊を斬れるはずじゃ』

 ロキが言う。

 刀を抜いて鞘と服をアンナに渡すと、コトネは真っ暗な部屋に一人突っ込んで行く。

 こう暗くてはコトネの暗視能力に頼るしかない。


<コトネ視点>

 部屋の中央に居る老人にまとわりついているのが、悪霊なのだろう。

 老人を飛び越すようにして、その靄のような物を斬る。

「GYAAAA!!」

 ひどくしわがれた悲鳴が響く。霊力を付与した刀は、悪霊にダメージを与えたようだ。


 着地するとすぐに向こう側の壁、それを駆け上りながら右手方向に居る悪霊を斬り捨てる。

「GYAAAA!!」

 また悲鳴が響く。今度は倒したみたいだ。


 そのまま壁を走って部屋を東から北へと回る。そして中央に向かってジャンプする。再度老人にまとわりつく悪霊を斬り付ける。悪霊は霧散した。


 あと部屋の南側に二つの靄の塊が見える。そのうちの一個が私に向かってくる。斬り付けるが浅い。

 私の体を覆うスキンアーマーを剝がしていく。こいつらは魔力を食うのか?


 瞬時にアーマーを再生してもう一つの塊に突っ込む。塊は右に逃げる、結構素早い。

 私は南の壁を蹴り、方向を鋭角的に変える。


 逃げた塊に追付き斬り伏せる。

「GYAAAA!!」

 三度、悲鳴が響き、三体目の悪霊が霧散する。


 最後の悪霊がこちらに向かって来たので、正面から唐竹割に斬る。

 塊を一部斬り離すが、まだ元気なようだ。


 再度右肩のアーマーを剥がして行った。

 私の振り向く速度と奴の旋回速度がほぼ等しい。


 私は奴を東南の角に追いつめて行く。こういう場合は部屋の中央に近い方が圧倒的に有利だ。

 私は向きを変えるだけで奴を追える。


 行き場を失った奴は私目掛けて突進する。今度は逃がさん。刀を右から左に振る。

 奴は上下に分れた。

「GYAAAA!!」

 最後の悪霊は滅びた。


「レオン様!ライトを!」


<レオン視点>

 俺がライトを唱えて部屋が明るくなると、弟子少女が老人に走り寄り、抱き着く。

「師匠!!」

 老人は弟子少女の頭を撫でると俺達の方を向いた。

「君達は何だね?」

 老人が俺達の方へ歩み寄って、尋ねて来た。

 老人は東洋人風の顔をしている。


 俺は、メイド衣装を着直しているコトネを労い、刀を収納していた。

「私はレオンハルト=イエーガーと申します。この二人は私の従者です。彼女に頼まれてあなたを救出しに来ました」

「そうそう、地下室に入れなくなったんで、この人に「助けてえ」って頼んだっす」

 弟子少女がフォローした。

 俺は悪霊のことを老人に話した。


 老人は一瞬考えた後、礼と自己紹介をした。

「それはありがとう。俺はアキラ=タカハシ、錬金術師だ」

 ホウライ国出身みたいな名前だな。

「一体、どうしたんですか?」

「地下のこの部屋に入ってすぐにライトの魔法が消え、周りから声が聞こえ始めた。どうも俺に恨み言を言っているらしかった。体も動かないし、どうするか考えていたら、君達が来て、声もしなくなるし、体も動くようになった」


「この子が悪霊をすべて倒しました」

 コトネの頭を撫でた。実際はロキの力もだがな。

「悪霊が憑依しようとしていたみたいですが大丈夫ですか?」

「抵抗していたから大丈夫だ。ここでは何だ。居間に行こう」

 アキラは先に立って歩いて行く。


 玄関ホールの右側の部屋が応接室兼居間のような構造になっていた。

 俺達は居間のソファーに座り、アキラからの言葉を待った。

「君達が来なければ俺は悪霊に取り込まれていたのかもしれん。改めて礼を言う、ありがとう。これは少ないが礼金だ。受け取ってくれたまえ」

 硬貨の入った袋を貰った俺は結構な重さに満足した。

次回、助けた錬金術師が依頼をします。

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