2-5 三男坊 技を訓練する
レオン、コトネ、アンナが新しい技の訓練をします。
魔人が俺の部屋に来て、話したことが王都が魔獣の大群に襲われると言う事。それで戦う人間が俺しかいないと言われた。
魔人国とヴァイヤール王国とのワームホールを俺の部屋に設置したミラは言った。
「これですぐに君に会えるようになった」
ミラはご機嫌な顔をして俺に微笑む。
「お、俺は戦うとは言ってないぞ」
俺は抵抗してみる。
「フーン、じゃあ、王都が魔獣に蹂躙されても良いんだ」
「良くない。くそー、なんで俺なんだよ」
それを言われたら断れないじゃないか。
「だから言ってるでしょ。私が君を見初めたから」
「俺みたいなミソッカスを何で選ぶんだよ」
俺の実力はこの王国に何十人もいるだろうレベル5と戦えるまでにようやく届いたところだ。
「君はミソッカスだからこそ、強くなるために何でもどん欲に取り込もうとしている。そして取り込める資質があるのだ」
「買い被りじゃないか?」
あまり褒められると嬉しいには嬉しいが現実感が薄れる。
「もういいだろ。契約だ。私ミラはレオンに王都を助ける力と知識を与える代わりに君の子種を貰う。いいな!」
ミラが真面目な顔で俺の承認を待つ。
「うう、断れないよなあ。わかったよ」
情けないヒーローだ。
「まあ、子供は十人位で良いぞ」
ミラがニシャッと笑う。何年掛かるんだよ。可愛いな、くそ。
「あのー、お昼御飯を冷めないうちに食べましょう」
コトネが恐る恐る声を掛ける。ごめんよ、待たしちゃったね。
「ミラも食ってくか?」
「うん、ありがとう。魔人国のご飯はおいしくないんだよ」
なにか久々の日常って感じがするよ。
そしてコトネとアンナ、ロキに王都の防衛を手伝って欲しいとお願いした。もちろん了承してくれた。
その日の午後から俺達は強化した体での訓練と、治癒魔法陣のコピーを開始した。場所はミラが人のいない広い場所に連れて行ってくれる。平日は勉強会後に訓練をする。
そして一週間後の休日。買い出しをサッと済ませてまた訓練場所に来た。
「どうだ強化した体にも慣れた頃だろう。次の段階に行くぞ」
ミラが課題を出す。
「レオン、君は先生とやらに教えて貰った外気功と奥義の習得を目指して貰う」
「コトネ、君は神獣人への進化だ」
「アンナ、君はロキと共に精霊魔法を使えるようになれ」
俺達はまだ体が出来ていない。だから力を貰っても保持する器が無い。連続で力を上げられるのは20分位その為、効率のいい戦いをする必要がある。つまり破壊力のある技が必要なのだ。
その週からは課題の習得に時間を掛けた。しかし、前例もない課題をそう簡単に解ける訳が無い。
「さ来週の休みには敵の拠点に奇襲をかける。このままでは敵に対してアドバンテージが無い」
「出たとこ勝負になるな。あまり、おすすめは出来ん」
ミラに言われるがそうそう必殺技が出来るもんじゃないだろ。
次の日、いつものように中等部3年の勉強が終わって、少し休憩を取っているとエリーゼが話し掛ける。
「あんた、最近疲れた顔してるけど、私に内緒で何かやってるんじゃないでしょうね」
エリーゼは鋭い、ミラの課題が出来ずに停滞感が顔に出てたようだ。
「いや、魔法陣の研究が行き詰ってるんですよ」
「だから、そんなもんがホイホイ出来たら、この世の中は魔法使いだらけになるって言ってるでしょ」
うまくごまかせたようだ。
「僕も行って良いかな。同じ方向から繰り返さないで、たまには違う方向からやってみてはどうかな。実際の魔法を見せてもらうとか」
エイトが俺をフォローしてくれる。
「馬鹿ねえ。魔法使いが簡単に魔法陣を見せてくれるわけないじゃないのよ」
「でもさ、机上で駄目なら実地とかいろいろ違うアプローチも大事だよ」
そうか、明日の休みはダンジョンでも巡って実地でやってみるか。
エイトはこういう柔軟な考え方がいいんだよな。
だけどエイトはエリーゼに散々馬鹿にされるのであった。
次の休みの日、ミラが来た時にダンジョンで訓練したらどうかと聞いてみた。
「でも三人共課題の取っ掛かりもないんだよな」
「それはそうだが、このままやってても兆しも見えないんじゃないかと思ってさ」
「それについては、私も言い出しっぺながら何の手伝いも出来ずに申し訳ないと思って、助っ人を呼んだ」
「助っ人って誰だ?」
「行ってからのお楽しみ」
ミラはニコッと笑って、親指を立てる。
いつもの広場に行くと、杖を持った背の低い老人が一人立っていた。
「お爺ちゃん!きたよぉ!」
老人はミラに向かって右手を上げた。
「この人は私のお爺ちゃんだ」
「君のお爺さんって事は先代の魔王様?」
アンナが俺の後ろに隠れる。
「違う、違う、先代の弟だ。先代には子供が無かったんだよ」
「君らがヘラと戦ってくれるのか。すまんな、わしらが戦えないばかりに苦労を掛ける」
ヘラというのがミラの姉さんの名前らしい。
「事情が事情ですので、仕方ないですよ」
挨拶も済んでお爺さんは俺達一人一人にアドバイスをくれると言う。
「これでもわしは魔界で一番の戦士じゃった。いろいろな戦士とも交流があったから、君達にアドバイスができると思う。まずは強化なしでやって見よ」
まずは俺だ。俺はヨシムネ先生に教えて貰った奥義の説明をする。
「成程、気功技か。その一式と言うのは、わしらで言う瞬歩や縮地と言う技に似ているな」
お爺さんは俺から十m位離れる。
「よく見ておけ」
そう言った瞬間お爺さんの姿は消え、俺の目の前に現れた。そして握った杖は俺の顎の下ギリギリに止まっていた。俺はびっくりして後ろにひっくり返る。
俺の手を引いて立たせながらお爺さんは言う。
「これが瞬歩じゃ」
「見えなかった」
「この技の基本は体重を消す事じゃ。正確には慣性を消す。一歩目から最大速度、止まるときは最大速度のまま止まる」
このように俺は具体的な練習方法を聞き訓練に入った。
アンナとロキにはもちろん別メニューだ。
「精霊魔法に必要なのは霊素と霊力だ。魔素と魔力と似ているがエネルギーは遥かにでかい。
まず、その違いを感じて霊力を集めるのだ」
コトネにも別メニューが出される。
「お前は体内に限界以上に魔力を溜めるのだ。それで真の形態が見えてくるはずだ」
その後、お爺さんは3人を回って指導してくれた。
そして昼休憩になった。
昼食後、お爺さんは訓練の進行具合を聞いた。
「俺は外気功を少し感じられるようになってきたところです」
『アンナは霊力がまだ解っちゃいない。わしは少し理解できて来た』
「アンナも少し解ってきたもん」
「魔力は大分溜まってきましたが、真の形態はまだ見えません」
全員少しは進んでいる。昼からも頑張ればそれなりの成果は出そうだ。
それから二時間ほど経っただろうか、お爺さんがミラに言った。
「レオンとアンナにブーストを掛けてやれ」
ミラが俺達を集め、ブーストの魔法をかけた。
「コトネは駄目じゃ暴走するぞ!!」
お爺さんが叫ぶ。コトネもこちらに集まって来ていた。
「掛けちゃったよ・・・ごめん」
コトネを見ると力が抜けたように立っている。
「コトネは大丈夫なんでしょうか?」
「解らんが、最悪暴走するかもしれん。魔力を集めた量による。量が多ければ器を大きくしようとする」
俺達が心配しているとコトネの体が膨れて来た。
「コトネさんごめんなさい。ねえ、聞こえてる」
ミラが話しかけるが応答はない。
練習用に作った布製のブラとショートパンツがはじけ飛ぶ。
大きくなった体、伸びた爪、髪の毛が白くなる。体中に生えた白と黒の体毛が虎の模様を描く。
「ガアアアア!!!」
吠えて大きく開けた口には、上下二対の牙が生えている。
「レオン!!!」
鬼の顔をしたコトネはそう叫んで俺に突進した。
避けちゃ駄目だ、受け止めなちゃ。俺は身じろぎ一つせずにコトネを受け止める。
コトネは両手両足を俺の体に巻き付ける。
巨大化した乳房は俺の顔を完全に隠した。
「レオン!!欲しいィ!!」
コトネは両手で両腕を掴み上半身を俺の体から離す。
コトネは後ろにのけぞらした顔を俺の左肩に埋める。
肩に噛み付いたのだ。
明らかに俺の硬気功を貫いて、血が出ている。
俺は右手をコトネの後頭部に回し、左手を背中に回して静かに囁いた。
「コトネ落ち着け、大丈夫だ」
コトネは顔を少し上げ、口を離した。
「ウウ、レ・・オ・・ンさ・・ま」
「コトネ、コトネ、コトネ」
コトネは少しずつ小さく、元に戻って行く。
俺の腰に絡めていた足も外れてダランと下がった。
俺は姫抱っこに変えてコトネを保持する。
コトネは目を閉じて気を失っているようだ。
裸の小さな胸がゆっくり上下に動き、体調に問題は無さそうだ。
俺は周りを整地して野営用の小屋を建てた。
そうだ。傷を治しておかないとな。治癒魔法の魔法陣を収納から取出し、自分に掛ける。
肩の傷は瞬時に直ってしまう。これは使えるなと思った。
アンナとミラが寄って来た。
「レオン君って治療魔法を使えるの?」
ミラが不思議そうに聞いてくるのでからくりを教えてやった。
「収納庫に魔力と魔法陣を入れるって、こっちでも誰もやってない発想だよ」
小屋に入り、俺のベッドにコトネを寝かせ、シーツを掛ける。
「コトネちゃんは私が見てるからあんた達は練習しなさい」
ミラはそう言ってベッドの横に椅子を持ってきてすわった。
多分強化魔法をかけてしまった償いだろう。
コトネが目を覚ましたみたいだ。
「ちょっと安静にしていなさい。おかしなことがあったらすぐに言うのだぞ」
「は・・い」
コトネは静かに目を閉じた。そう思った瞬間シーツをはいで、ベッドの上で裸土下座をする。
「済みません。とんでもないことをしてしまいました!」
暴走した時のことを思い出してしまったみたいだ。
「気にするな。それよりどこか痛いとか、調子の悪い所は無いか」
コトネは自分の裸を見て、ハッとしてシーツを纏った。
「大丈夫です。もう何ともありません」
コトネはそう言うが俺は安心できない。
もう一度、コトネを寝かせてシーツを掛けてやる。
「最低、一時間は静かにしていろ。ミラ、頼んだよ」
「うん、任せて」
「アンナ行くぞ」
「うん」
俺はアンナを連れて訓練に戻った。
次回、敵のダンジョンに攻め込みます。




