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2-4 三男坊 王国の危機に困る

突然現れた魔人ミラ、レオンの王との危機を告げます。

 教会に行き、治癒魔法の魔法陣を手に入れた俺に魔人が俺を尋ねて来たとロキから連絡が有った。


 教会から寮への帰路、馬車の中でロキからの通信が入った。

『魔人ミラが御主人に会いに来たのじゃ』

『俺に?何しに来たのか解るか?』


『解らんのじゃ』

『おまえなあ』


「ちょっとあんた、何かしてるでしょう」

 エリーゼが俺に突っかかる。感のいい奴め。


「いえ、少し考え事をしていたのですよ」

 こんなこと言ったら、絶対私も話を聞くわッて言って来るよな。


 ちょっと待てよ。急ぎで王宮に話さなければならないことなら、待って貰った方が良いのか。でも魔人が俺の部屋に居るって言ったら大ごとだよなあ。アンナの恩人だから扱いも気を付けないとだし。


「何を考えているのよ。怪しいわ」

 だめだ。エリーゼに秘密にしておいて待たせるのは無理だ。


「いや魔法式の書き方を考えているんですけどね」

「そんなの事が出来るならみんな魔法使いになれるわよ」

「そうですね・・」

 すんなり否定される可哀そうな俺。


「そう言えばお昼はどうするの?」

 エリーゼが俺の顔を覗き込む。

「コトネが用意しているはずですが」

 エリーゼの顔がサッと怒りにあふれた。


「あんたんちも伯爵になったんだから、女の子にお昼ぐらい御馳走しなさいよ」

 俺はびっくりしてエリーゼの顔を覗き込んだ。


「私はまだ学費も生活費も自前ですので、堪忍してください」

「もう、甲斐性なし」

 エリーゼは腕を組んでプイと横を向いた。


 こりゃエリーゼと結婚すると尻に敷かれそうだ。

 エリーゼの俺が教える学習費は王宮から多少貰っているが、余裕を持てるほどではない。中等部が終わればこのメンバーでの学習会も終わりだ。それまで彼女の我ままにも我慢しよう。


 馬車は寮の門に着いた。俺とエイトは馬車から降りて、エリーゼを見送った。

 寮の入り口でエイトとも別れ、俺の部屋へと急ぐ。


 部屋の扉をノックする。自分の部屋だが来客には相応の敬意を払うべきだろう。

「レオン様ですか」

 コトネが扉を開けてくれる。


 部屋の中央に置かれているテーブルに魔人が座っていた。あの時は仮面を被っていたので顔は解らなかったが今は顔の下半分をマフラーで隠している。


「やあ、レオン殿。久しぶりだな」

「ミラさんでしたね。お久しぶりです」

 ミラの涼し気なまなざしは俺をしっかりと捉えている。


「ああ、そうだ。これは失礼したな」

 ミラはマフラーを取った。

「こちらの世界は埃が多いので、すぐに喉をやられるのだ。勘弁してくれ」


 俺を見て微笑んだ顔は、俺と同じぐらいの歳の美少女だった。ただ耳の先が尖っているぐらいしか俺達と違いはない。


「いいえ、気にしないでください。失礼します」

 俺はミラの向かいに座った。コトネがお茶を俺の前に置く。


「アンナが元気になっていて、感謝する」

「アンナを助けることに意味があったのですね」

 俺は疑問の一つをぶつけた。


「そりゃそうだ。命がけで魔獣から救ったのは、あの子の才能に気付いたからだ」

「探索の才能ですか」


「その通りだ。君の役に立ってるだろう。まあ、今日はこんな話をしに来たのではない」

「どういうお話でしょうか?」

 ミラの目が輝いたような気がした。


「単刀直入に言うとこの国が狙われている。狙っているのはオリンポスと言う組織だ」

「どういうことだ」

 もう敬語で喋ってる場合じゃない。ミラが話す内容が欠片も解らん。


「オリンポスは人間が首領で魔人も部下に居る。それが魔獣を操って王都を襲撃する」

「そんなことが出来るのか?」

「魔人の中には魔獣を操れるものが居る」


「でも王都にはレベル7も爆轟の魔女もいるのだぞ」

 彼らなら俺が手古摺ったオーガでさえ一撃で葬れるだろう。


 しかし、ミラはハッと笑った。

「そいつらが十匹のドラゴンに勝てるのか?百匹のワイバーンに勝てるのか?」

「空から来られては、か・・・勝てない」

 彼らの射程は長くても百m、飛び越して王都に入られたら終わりだ。


「俺達はどうすれば良い。どうすれば王都の人達を助けられる?」

「敵が行動を起こす前に敵の魔獣使いを倒せばいいのだ」


「どこに居るか知ってるのか?良し、親父に場所を教えれば・・」


 俺がそう言った途端、ミラは胸の前で手をクロスした。

「ブブ―!!、残念でした。連れて行けるのは、お前とその眷属のみ」


「どういうことだよ。なんで俺だけなんだよ」

 王都が危ないと言うのにこいつは何を言っている。


「それは私とその魔獣使いの戦いだからだ」

 ハー、余計わかんないよ。こいつは何を言っている。


「魔人族は数が少ない。血が濃くなりすぎて子供ができにくいのだ。

 そこで私達は地上人に目を付けた。地上人と我々は、何と、混血が可能なのだ」


「何の話だ!!関係があるのか」

 俺はだいぶ焦っている。そりゃそうだろう。こんな時に魔人と地上人の混血の話なんて。


「まあ、聞け。私達の長老達は条件を付けた。魔人の女を地上に送って、優秀な男との子供を作ろう。その際、男の願いは聞いてやり、子供は魔人のものにする約束をさせる。

 そして一番目の魔人の女が選んだ地上人が望んだのが、この国を武力で攻め取ること。どのくらいの魔獣がいるのか解らないので、まずは辺鄙な村を一つ滅ぼし実験をした」


 俺は一つの村を思い付いた。

「ウエルフェルト村の事か!!」


「そうだ。私が気付いた時にはもう実行されていて、アンナ一人を救うのが精一杯だった」

 ミラは悲しそうに言う。


「魔人は地上人がいくら死んでも構わないのか!?」

 俺は怒りで目が眩みそうだ。


「勘違いしてはいけない。地上人を攻めようとしているのも地上人だ。魔獣使いはその男に従っているだけだ。次にそいつは王都の守りを見るために貴族派と呼ばれる者たちを扇動して攻めさせた。君も活躍したんだって。これには魔獣使いは関わっていない。今は最終作戦用の魔獣を集めている所だ」


「だからなぜ、俺が戦わないといけないんだ」

 一番の疑問を聞く。


「解らないかな。それは私が君を選んだからだよ。君は王都を守ることを選ぶだろ。心配するな。その力は私が与えてあげる」


「そんな馬鹿なことがあるか。もっと強い奴を選べよ!魔獣使いもなんで、そんな危ない奴を選ぶんだ!」

 俺は自暴自棄になりつつある。


「知るか!女が男を愛するのに理屈が居るもんか。私も姉さんも他人の事を考えて、人を好きになったりしない」


「姉さん?!お前達は姉妹なのか?姉妹で戦うのかよ」

「そうだ!だってお前は王都を守ることを選ぶんだろう。仕方ないじゃないか。お前が王都から逃げてくれれば、私も悩まなくて良いんだよ」


「そうか、魔人の長老達も厄介な姉妹を送り出したもんだな」

 姉妹が争う。俺は考えただけで気が重い。それを自分の信念でやろうとするこいつらの事を考える。


「君とその・・子供を作ると言うのは置いといて、オリンポスと戦うと言うのは理解できた」

 戦う理由は解ったが、だからと言って戦う方法はあるのか?


「残念ながらオリンポスの全容は見えていないし、首領が誰かも分かっていない。だから君には姉を倒して貰う。子作りは私の体もまだ万全とは言えんから2,3年後ぐらいからかな」


 子供の問題もあるが、それ以前に俺の戦闘力の問題もある。

「俺はドラゴンには勝てんぞ。オーガでやっとだからな」

 ニコラウス兄か父上なら一撃で葬れそうだがな。


「大丈夫だ。私が魔法で戦闘力の底上げをするから」

 ミラが自信満々に胸を叩く。


「それでも上がった戦闘力で訓練もしないといけないし、学園もあるから時間は取れないし」

 俺には中等部を一年で卒業すると言う目標があるし、そのためには学園を休むことは出来ない。


「姉さんも準備にあと一月は掛かるだろうから、今度の休みにでも行くか?」

 ミラは気楽に言って来る。

「行くって一日で終わるようなことじゃないだろう」


「大丈夫、大丈夫、私が君に賭けたんだから、間違いないって」

 相変わらず軽いノリで決めつける。


「君は一体何者なんだ?」

 俺は最大の疑問をぶつける。


「ああ、ごめん。自己紹介してなかったな。私は魔人国の王の娘、ミラ、14歳、多分、私の産んだ子が次の魔王になるわ」

 ええ、俺って魔王の父親になるの?なんか嫌なんですけど。


 そう言えばミラの言ってることが真実とは限らないよね。おかしなこともある。

「どうして俺だけで解決しなきゃいけないんだ?おかしいだろ」

 ついつい、相手の言うことをそのまま信用するところだった。俺もまだまだだな。


「簡単なことよ。君以外がこの話を聞いたらどう思う。『魔人国が我が国に侵攻してきたあ!』とか思っちゃうじゃない。魔人国も地上の国ともめ事を起こしたくないの。人口問題も協力が欲しいしね」


「じゃあさ、何で魔人国が解決しないんだ。おかしいだろ」

 更に突っ込む。


「魔人国は人間のオリンポスと言う組織と君の人間同士の戦いと解釈してるのよ。まあ、ちょっと無理はあるけど。だから私が君に要請してるのは、オリンポスと言う人間の反社会的組織に加担している魔人の討伐になる訳。それに魔人国が出て行く訳にはいかないよね」


「つまり、俺が討伐する分には個人の資格だから魔人国やヴァイヤール王国には関係ないって事か」

 俺は呆れた、見事なまでの大人の事情だ。


「その通り、だから私も個人として君に味方する訳よ。それに君は幾つかの事件を解決しているからこの問題に係わっても『またかあ』位の感じで収まるわ」


 俺って魔人国には便利屋みたいに思われているんだろうか?

「そういや魔人国ってどこにあるんだ?やっぱりダンジョンの奥にあるのか?」

「説明しにくいんだけど平行世界パラレルワールドってわかる?」

 ミラは難しそうな顔をする。


「いや、解らん」

「こっちは自然科学が遅れてるから専門用語が通じないのよね。簡単に言うと魔人国はこの世界とは違う時空間にあるの」

「もっと、解らん」


「この世界と魔人国は、重なっているけど見えないし、触れない世界なの。そしてワームホールと言う穴を作れば行き来できる。ダンジョンにはワームホールを作りやすいから、ダンジョンに魔人が居ることがあるの」

「余計に解らん」


「もういい、この部屋にワームホールを作る。王都の外に作ったらここまで来るのに2時間以上かかったから」

 ミラはそう言うと部屋を見回り、コトネ達のベットの奥の壁で何かを始めた。


「おい、そんな所に作って問題ないのか?」

「ゲートって言う蓋をしておくから私しか出入りできないよ」

 壁に穴が空き、穴が魔法陣で塞がれた。暫くすると魔法陣が消え、元の壁に戻った。

次回、王都を守る為に特訓を始めます。

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