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16-5 エドゥアルト戦線

ご愛読、ありがとうございます。

今回はエドゥアルト州の戦いです。

 バルドゥオールの国境でバルドゥオール王国・リヒトガルド帝国の連合軍が悪魔と戦った日、エドゥアルトの国境でもヴァイヤール王国とアルカディア王国の連合軍も集結していた。


 〇前日のエドゥアルトの同盟軍指揮所 <ニコラウス>

 俺はニコラウス=ヴァイヤール、ヴァイヤール王家に婿入りしたので姓が変わったが、イエーガー家の次男である。

 俺達は悪魔軍と戦うためヴァイヤールの精鋭を集めてアルカディア国エドゥアルト州の国境付近で決戦するために集まった。


 このテントはここに集まった将兵が休むためのもので、その中でも一番立派な将軍たちの部屋である。

 この連合軍の指揮官はフリードリヒ=イエーガー、俺の父親である。二十数年前の貴族派のクーデターの際に逃亡中の王に雇われた傭兵が、身一つで二千の軍に突っ込み敵将の首を取ったことから、西大陸では首狩りと呼ばれ、忠義の英雄として鳴り響いている。


 副官としてアルカディア軍の代表はここエドゥアルト州の州知事フュルスト殿だ。彼は俺の父親に武勇伝をせがんで煙たがられている。まあ、軍事の専門家ではないから作戦には口出ししない。

 俺はと言えばヴァイヤール軍の副官なんだが、フュルスト殿が遠慮するから連合軍の副官もやってる。


 アルカディアは去年出来たばかりの新興国で、幹部を今育てている最中らしい。

 かといって俺はアルカディアを下に見ているわけではない。実はアルカディアは俺の弟が建てた国だ。俺は十二で家を出ているので五歳年下の弟のことはあまり知らない。近衛兵の俺は休みが少なく彼との接点も多くない。しかし、彼が中学受験のために王都に現れた時に、受験会場まで馬で送ったことがある。あの時の印象ではレベル7の俺を素直に尊敬してくれている印象だった。


 彼が王ならいい国になるのではないかと漠然とだが思っている。

 今おれがここに居るのも、悪魔との戦いにさほど不安を感じずに済むのも、彼のおかげだからだ。

 彼は国を作ると同時に周辺国家と同盟を結び悪魔と戦う準備を始めた。同盟を進めるに当たって帝国と我が国の王女を娶って縁戚を作るとともに立地を生かして道路を整備し、商人ギルドを廃止、自由な経済を約束した。さらに彼は同盟国に悪魔発生のメカニズムを説き、悪魔の発生を減らした。


 それに彼は俺の力が悪魔と戦うのに不足していると言う。そこで俺は父親に気功の修行を頼んだのだが、天才とはこういうものかと後悔したよ。なにせ「ここをガーッと」とか「そこはクルーンと言う感じで」とか感覚でしか教えてもらえないのだ。そこでレオンに教えを乞うと彼自身は忙しいので、コトネちゃんが教えてくれることになった。成人前だし、少し不安だったが、アルカディアで一週間教えてもらったのだが、解りやすいし、丁寧だし、最後の方は先生って呼んでたよ。それにはにかんで顔を真っ赤にしているところがかわいかったなあ。娘が欲しくなったよ。


 明日には悪魔が前線に揃うらしいのだが、まず教会が一般兵が戦えるくらいに下級悪魔へ弱体化魔法をかける。そして、悪魔の動きを捉えて報告してくれる空中戦艦が攻撃をして悪魔の数を半分にしてくれるらしい。そこへ魔法師団が魔法攻撃を掛ける。これには臨時招集された俺の母親と妹も参加する。

 次が俺達が突撃する。中級悪魔には俺と父上、アルカディアのイブキとヤクモという少女が対応する。

 人事は尽くした、あとは天命を待つのみ。



 次の日の朝、起きてすぐに国境からカールスーリエ王国側を見ると、すでに多くの悪魔が姿を現し、整列を始めた。

 俺が敵を見ていたやぐらに教会の関係者が上ってきた。若い女性が三人、真ん中の女性は美しく身なりも立派なので、この人が教皇のアルテミスさんだろう。

 俺は挨拶をしてやぐらを下りた。


 やがてやぐらの上から「ホーリーベル!」と叫ぶと敵の頭上に大きな教会の鐘が現れ、カラーン、カラーンと大きく清らかな音を奏でた。

 鐘が消えると俺達の後ろから光線が発射され、敵を焼いていく。

 ナガトの砲撃艇ハツシモとユウダチだ。


 俺達の陣の前で父上が叫ぶ。

「魔法兵!攻撃開始!」


 敵陣で激しい連続爆発が起きる。吹っ飛ばされる悪魔も見える

「あれって爆轟の魔女か?」

「そうだろうな。味方だから良いけど、恐ろしいな」

 部隊員が興味深げに話して居る。ここからは見えないが母と妹のレナが得意顔をしているだろうな。


「全軍戦闘準備!!」

 俺はその号令で剣を抜く。俺は本来騎兵だが、今日は接近戦だし、相手が馬を狙うだろうから徒歩だ。


 今回、俺は精鋭部隊のさらに選び抜いた200人を連れて、先頭を戦う部隊を率いる。先頭にはアルカディアの獣化兵の2部隊も一緒だ。

 主要部隊とそれを率いる父上は俺達の後に続くことになる。


「前進開始!!」

 混乱する悪魔たちを目掛けてジョギング程度の速度で前進する。全力疾走だと戦う前に疲れるからね。

 敵も迎え撃つために前進を始めた。半数をやられたのに戦意は旺盛みたいだ。


 敵と接触しようかという、その時、後ろから猛然と俺達を追い抜いて敵陣に突っ込んだ男がいた。

 親父だ!、何やってんの!あんたはこちらの総指揮官だよ。

 昔は単騎で突進してたとはペーターには聞いてたけど、今でもそれをやるのかよ。


 親父が拳を一振りすると数体の悪魔がバラバラになって吹っ飛んでいく。あれが”四式戦疾風”。

 いやいや、感心してる場合じゃない。


「総員!突撃!!」

 俺は声の限りに叫ぶ。

 あんたが死んだら、俺達は負けなんだよ。


 敵陣に親父の開けた穴はすぐにふさがる。俺は自身の技を出せなくなった。

 俺の技は霊力を剣に溜め、剣を振って解き放つものだ。前の戦争では一振りで100人程倒せたのに。

 前に味方がいる状態では出せない。何やってんだよ!くそ親父!。


 とにかく親父を追うしか手はない。生きてろよ、くそ親父!。

 目の前の敵を斬る。両隣の獣化兵部隊も敵陣に突っ込んだようだ。

 敵は思ったより弱い、ヴァイヤール国内で発生した悪魔と戦ったことがあるが、かなり弱体化している。これが”ホーリーベル”の力か。


 もう、敵の真っただ中だが親父の姿は見えない。

 突如、味方の悲鳴が上がる。

 振り返ると味方の一部が崩されている。くそ、中級か!。

 中級が相手では俺の部隊でも勝てないか。俺がやるしかない。

 俺は中級悪魔が居る場所に向かった。


 居た!。先手必勝!!。

 一回り大きい奴の左側から近付き、心臓めがけ剣を突き刺す。

 気付かれて左腕に剣が刺さった。チっ、防がれたか。

 体を回して金棒を振り回してくる。

 俺は剣を抜いて、下がって避ける。


 相手はかまわず突っ込んでくる。上段からの攻撃を盾で流しつつ心臓を突く。

 敵はわずかに体を開いて心臓を避ける。剣は胸に深々と刺さるが致命傷にはならない。

 敵は左フックを打ってきた。剣を敵から抜いてダッキングでパンチを躱す。

 左腕の傷はもう治ってる。くそー、何て奴だ。


 もう一度心臓を狙うが金棒が戻ってくる。盾で止めるが体が浮いてしまう。

 こいつレベル7の俺より力が強い?。

 少し距離が取れたので、首に水平に剣を振る。

 奴は左腕で止めようとする。

 馬鹿にするなあ!!


 奴の左腕ごと首を斬った。

 奴はうつぶせに倒れた。

 中級でこれかよ。

 気功を訓練してなかったら危なかったな。



<ヤクモ>

 ひえーっ、なんですか、この中級悪魔ってやつは!、レベル6から7って言ってませんでしたかあ。

 そりゃあ、私はコノハ一刀流の麒麟児って自己紹介しましたけど、イブキさんみたいな化け物じゃないんですよ。


「三式戦、飛燕、乱れ打ちぃ!!」

 次々と飛燕の不可視の刃が中級悪魔を捕らえるんですが、強靭な皮膚で弾かれてしまうんです。

 とてもじゃないけど懐に入り込めないので、三式戦を撃ちまくってるんですけど、かすり傷しか付けられないよぉ。


 ああー、こっちへこないでぇ。私の後ろには部隊の人がいるから、そうそう下がれないんだよぉ。

「隊長ー!、大丈夫ですかあ!」

「近づいちゃあ駄目よお!、あんた達なんか一回で死んじゃうんだからあ!」

 偉そうに言ってるけど私は獣化兵じゃないから、防御力じゃあんた達より弱いんだけどね。

 とにかく金棒持ってない左に回って、隙が見えるまで我慢するんだ。


 レオン様もなんで私に部隊持たせたのかな?。親衛隊では一番の新参者なのに、やっぱりアテナさんが居なくなったからかなあ。そういやクロエさんも見かけなくなったし、もしかしてアルカディアって危ないのかなあ。


「隊長はすごいよねえ。あんなでっかいやつの攻撃、軽く避けてるよ」

「やっぱり、小さいから攻撃力は低いんじゃない」

「隊長はさ、ホウライ国じゃあ屈指の剣士だって言うよ」

「そうか、余裕そうな顔してるもんね」


 後ろで好きなこと言ってるよ。そういや下級悪魔の姿がかなり減ってきてる。それでかな?。

「隊長!、後ろ!!」

 隊員が騒ぐので見ると中級悪魔が、なぜか他を無視して、私に向けて一直線で走ってくる。

 げげー、一匹でも大変なのに二匹は絶対に無理ぃ。

 その時、後ろから走ってきた悪魔の頭が破裂した。


 それは総指揮官の攻撃だったらしい。

 あんなおっさんが?。そりゃあ強いとは聞いてたけど、もうかなり前の事でしょ。

 とか思っていたら、私の前の奴までやっつけた。

 もう右手を振ったかと思ったら、悪魔の首がぽーんって。


 周りを見るとイブキさんが最後の中級の心臓を貫いて戦争が終わった。

 結局私は一体の中級も倒せなかった。イブキさんは3体、ニコラウスさんが2体、おじさんが5体も倒してる。


 黄昏てるとニコラウスさんが頭を撫でてくれた。

「ヤクモちゃんはよくやったよ。だって部隊の人が全員無事だからね」

 他の部隊では何人か亡くなったそうなので自信を持っても良いそうだ。


 ニコラウスさんってイケメンだし、優しいし、もしかして側室にしてくれないかなあ。

 なあんて考えてたらイブキさんに拳骨落とされた。

「早く部隊まとめて!。もしかするとカールスーリエ王国への侵攻もあるよ」


 カールスーリエ王国もカールサイス公国も悪魔にやられてグチャグチャの状態だ。放っておけば治安が悪化して地獄のようになってしまう。レオン様はどう考えているのだろうか?。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は獣王国に戻ります。

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