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16-3 開戦

ご愛読、ありがとうございます。

いよいよ悪魔との戦いが始まります。

 ちょっと西大陸中央部の地理を復習してみよう。

 まず東には西大陸と中央大陸を分ける大山脈がある。山脈の南にヴァイヤール王国があり、細長い湾で中央大陸と向かい合っている。ヴァイヤール王国の北側には北西に張り出した山脈とエドゥアルト州があり、ヴァイヤールとエドゥアルトの間に山脈から流れ出たテーベ川が流れる。


 エドゥアルトの南、ヴァイヤールの北部の西に聖金字教のザルツブルグ州がある。

 ザルツブルグの南、ヴァイヤールの南部の西にはドワーフのエルハイホ共和国、その西にはエルフのユグドラシル神皇国、さらにその西にリヒトガルド帝国があり、その西は海だ。

 リヒトガルド帝国の南には西大陸南部の国々があり、アテナがそこを旅してる。


 リヒトガルド帝国の北にはバルドゥオール王国その北にはカールサイス公国があり、その東にカールスーリエ王国がある。バルドゥオール王国の東には獣王国がある。

 獣王国の南にはテーベ川をはさんでアルカディア州があり、その西にハーヴェル州がある。その西にはリヒトガルド帝国がある。


 テーベ川は大山脈を水源にヴァイヤールの王都近くを流れ、エドゥアルトとザルツブルグの州境を流れ、アルカディア州と獣王国の間を流れ、ハーヴェル州とバルドゥオール王国の間を流れ、リヒトガルド帝国の帝都の近くを流れ海へと至る。その長さはおよそ3000kmを誇る。


 ******


 〇カールサイス公国 公王城

 悪魔発生から一週間が経ったころ。

 ここカールサイス公国の公都にはすでに人間の影はなく悪魔が溢れていた。

「ウラノス、悪魔は集まったようだがどう攻めるのだ」

 クロノスは中級以下の悪魔の進軍についてウラノスに全権を与えていた。

「はい、敵の軍には中級悪魔と戦えるものは数えるほどしかいません。それをさらに分散させるために三方向に同時進行します」


「まずはエドゥアルト州に中級十人と下級が二万人で攻めます。敵は首狩りやその子のレベル7が居ますがおそらく中級と同等の戦力、それと爆轟魔法が二人と獣化兵は数百人ぐらいでしょう。ほかは通常の兵力、下級悪魔には手が出ないでしょう」


「それからバルドゥオールはこちらの兵力はエドゥアルト州と同じで、帝国が伝説の五剣と呼ばれる兵士を出してくると思われますので、彼らは中級と同等ぐらいではないかと思われます。まあ、獣化兵もいないので抵抗できる戦力はその五剣ぐらいではないかと」


「最後が獣王国を攻める中級50人、下級十万人の大軍団。さすがにレオンファミリーといえどこの数には押し潰されるしかないでしょう。もちろん他からの攻撃に備えるため1万の兵を公都に残してあります」

 ウラノスは両手を広げ自身を称えるようにふるまった。


「それでいつ出陣だ?」

「本日出陣し、三日後に戦います」

 クロノスは思った。俺の出番が無くなる?まさかな。


 ******


 〇アルカディア城 <レオン>

 悪魔発生から一週間、まだ本格的な戦闘は始まっていなかった。

 アルカディア城の会議室の机には大きな地図が置かれ、俺を中心にアルカディアのロンメル軍務大臣、リヒトガルド帝国のルードヴィヒ軍事担当、ヴァイヤールのルーカス兄上がその地図を睨んでいた。

 ノルンのおかげで帝国やヴァイヤールの人間と直接話せるのは大きな利点だ。

 敵の配置は地図上に赤い駒を置いて表していた。味方の青い駒に比べて、赤い駒は二倍近く置かれていた。


「空中戦艦ナガトの探索結果です。

 敵の総数は約十五万人、部隊は約二千ずつに分けているようです。エドゥアルト州の向かう二万、バルドゥオール王国に向かう二万、そして獣王国の十万の軍勢が向かってます。

 対するはエドゥアルト州にヴァイヤール一万五千・アルカディア一万の連合軍。バルドゥオールには帝国二万・バルドゥオール五千の連合軍、そして獣王国には獣王国五千・アルカディア三万の連合軍です」

 ロンメルが地図上の駒について説明する。


「エドゥアルト州の兵力が少なすぎるのではないか?やはり獣化兵を増やすべきだ」

 ルーカス兄上が獣王国の兵数に不満を漏らす。

「バルドゥオールには獣化兵自体が居ないのだぞ。国王陛下、こちらにも獣化兵を寄越してください」

 最近ビーストグロー兵を獣化兵と呼び始めたようだ。何にせよ獣化兵はアルカディアの専売特許だ。

 残念ながらビーストグロー兵は悪魔が出現したの時のために各国に残しておかなければならない。半数ぐらいしか戦場に居ないのだ。


「ジェリル、お前は神狼族の獣化兵を率いてバルドゥオールで戦ってくれ」

 俺の後ろにいつものように立っているジェリルは慌てた。

「アタイはお前と一緒に戦いたい。それに獣王国は敵兵の数が多い」

「すまんな。帝国はこの期に及んでも五剣は出したくないそうだ」

 ルードヴィヒは帝国の非を指摘されて滝のような汗が顔に流れた。


「五剣は皇帝陛下の剣、皇帝陛下の剣です。我々では動かせないのです」

 この場には各々の副官や書記官がなどが居るが、皆してルードヴィヒの顔を覗き込んだ。

 五剣は伝説とでも言えばいいのだろうか、レベル7がいるとか、剣聖がいるいろいろ噂されているが実態を知るものはいない。長年帝国の政治や軍事に携わってきたうちの宰相や相談役でも知らないのだ。


「五剣を出せないなら帝国の守りにつけて、代わりに獣化兵をバルドゥオールに派遣すれば良いではないか。ヴァイヤールは今まで国を出たことのないイエーガー将軍をエドゥアルト州に送り込んでいるのだぞ」

 ルカ兄はお怒りだ。そう言えば父上を国外に出すなんて、よくあの国王陛下が許したな。

 ルードヴィヒは下を向いて何も言えない。いままで国際会議で帝国が他国に責められることはなかった。このことは帝国がオリンポスの戦い以来、軍事的に弱いと見られているからだろう。


「ジェリル殿は獣王国で、神狼族だけこちらに参加していただくのはどうですか」

 さすがに帝国の武官だ。ただやられてばかりはいない。

「そうか、それならいいぞ」

 と言ったのはジェリルだ。


 俺は上級悪魔の動向を心配していたので、ジェリルはノルンやゴロのいる俺の近くに置いておきたかった。

「では、そうしましょう」

「おい、本当に()()は大丈夫だろうな」

 ルカ兄の言葉に俺は唇に人差し指を当てることで答えた。あれを敵に知られれば対策が取られるからだ。


 その時、マジホの呼び出し音が鳴った。

 俺の侍従が通話する。

「ナガトより通報!敵が進軍を開始しました!!」

 部屋の中が静まり返った。

「各人!勝利を!!」

「オー!!」×いっぱい


 ******


 〇獣王国 北部国境 

 三日後、悪魔が現れ始めた。レオン達を押し包むように布陣するつもりらしい。レオン達の三倍の兵力を使ったいやらしい作戦だ。

 この付近の森は切り払われ、見通しが良くしてある。悪魔が隙間なく並び、攻撃開始の合図を待っているのが丸見えだ。


「布陣が完成したら一斉に攻撃してくるでしょう」

 ロンメルがレオンに進言する。

「ソロソロだな。コトネ、アンナ行くぞ。ヤヌウニさんの攻撃だ」

「はい」

 レオン達が指揮所を出て、ヤヌウニさんが居る望楼に登る。

 望楼から眺める敵は前方180度を埋め尽くしている。


「ヤヌウニさん、お願いします」

「解りました」

 清浄な服を着た巫女に囲まれたヤヌウニさんが

 敵に向かって両手を広げ、叫ぶ。

「神聖魔法!ホーリーベル!!」


 敵の頭上にいくつもの礼拝の鐘が現れた。

 カラーン!カラーン!

 戦場全体に澄んだ鐘の音が響く。

 敵に大きな変化はない。

 すぐさまマジホの呼び出し音が鳴り、エドゥアルト州の教皇アルテミスが、バルドゥオールの聖女ジュリアがホーリーベルを使用したことを知る


 俺はマジホでナガトに連絡する。

「ナガト!、攻撃開始」

 ナガト0番艦と1から4番の砲撃艦が整列したアルカディア兵の後ろから現れた。

 その雄姿にオオッと兵から歓声が上がる。


 ナガトの艦橋でアキラが叫ぶ。

「砲撃用意!各艦割り振られた目標に向かい収束ファイアーブレスを撃つ。

「目標を確認、照準良し!1から4番艦照準そろった、航海長!掃射の準備!」

 砲雷長キラが叫ぶ。

「1番艦ユキカゼ同調完了、2番艦シマカゼ同調完了、3番艦サザナミ同調完了。4番艦マキナミ同調完了」

 航海長アリスが叫ぶ。


「収束ファイアーブレス! 掃射!」

「収束ファイアーブレス! 掃射!」

「収束ファイアーブレス! 掃射!」

 艦長アキラの号令をキラが復唱し、アリスが再度復唱した。

 それぞれの艦の長く伸びた大砲が直径1mの太さの火を吹き出す。最前列の下級悪魔に命中すると敵は一瞬で蒸発する。炎の束は時計回りで下級悪魔を次々と蒸発させていく。

 各艦が自艦の掃射角度を焼くと砲撃を停止した。


「バルドゥオールの五番艦シノノメ、六番艦ムラクモ掃射開始しました。続いてエドゥアルトの七番艦ハツシモ、八番艦ユウダチ掃射開始しました」

 シャラが他所の状況を報告する。

 バルドゥオールやエドゥアルトでも同じ作戦が実行されていたのだ。


「全艦のファイアーブレス砲が破損しました」

もともとこんな使い方を想定した砲ではない。壊れて当然だった。

「了解した。各艦、探索開始、敵の状況を報告せよ!」

「敵の三分の二を撃滅、残りは約32000です。バルドゥオールが8000、エドゥアルトが役9000です」

「司令部に戦果を連絡!各艦はこのまま探索を続ける。偵察位置につけ」



 ここは敵陣。

「どういうことだ。ファイアーブレスごときで三分の二を失うなど信じられん」

 中級悪魔は普通に喋れるようだ。

「おい、ケガをしたやつの再生が始まらんぞ。奴らに何かされたのか。もしかして最初の鐘の音か?」

「とにかく味方を再編成するぞ。このままだとこちらが各個撃破される」

 敵陣は混乱に陥っていた。


 ホーリーベルは瘴気の反魔力への変換を阻害する魔法である。これを食らった悪魔は力の源である反魔力を失うのでかなり弱体化する。なお中級にはあまり効かないし、上級には効果がない。


「良し!いまだ!全軍突撃!!」

 ロンメルが叫ぶ。獣化兵を前面に全軍で突撃する。

 こちらを包囲しようとして横に長い陣を引き、前面をなくしたため、薄く広がった陣に成り下がった。正面からの突撃に対してすぐに突き破られ、背後に回られてしまい、前後から攻められてしまうのだ。


「お前達は中級悪魔だけを狙え」

ジェリル、コトネが服を脱ぎ捨ててスキンアーマーのスタイルになる。

アンナはそのまま、呼び寄せていたゴロに跨り、三人は飛んでいく。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は個人の戦いが始まります。

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