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15-13 コトネの結婚式(2)

ご愛読、ありがとうございます。

結婚式の続きで、披露宴になります。

 結婚式も終わり、披露宴に突入した。


 〇アルカディア大教会 披露宴会場 <レオン>

 恥ずかしい。何が恥ずかしいって、こないだ二人の嫁と結婚式をやったばかりなのにまたやってる。この客たちは俺をどう見てるのだろうか。まったく恥さらしだ。

 今は招待客の座るテーブルを回って挨拶をする披露宴のテーブルサービスというのをやっている。多くはこないだの結婚式で見た顔だ。


 しかしだ俺の隣で腕を組んで幸せそうに笑っているコトネを見れば、そんなことも言ってられない。だいたい、この顔を見るために結婚式をやったのに、覚悟が足りないこと夥しい。

 エイトめ、さっきから俺をからかっているが、おまえ、覚えてろ!絶対に俺の近くに就職させて、こき使ってやる。


 側室の時は、結婚式はやっても披露宴はやんないぞ。もう決めた!しかしだ、アンナが「レオン様お願い」とか言ってきたら、おまえ本当に断れるのか、いやどう考えても断れる気がしない。そうすると他の側室も不公平だと言ってきそうだな。今言われてるのがアンナに帝国にヴァイヤールにエルハイホーにバルドゥオール、それにジュリアもか。全部で六人も。ああ、気が遠くなってきた。


「レオン様どうされたのですか?」

 コトネが難しい顔をする俺を心配して見上げている。

「ああ、皆がからかってくるから少し恥ずかしい」


「もう、我慢して笑ってください。すぐに終わりますから」

「大丈夫だ。お前はどうだ」

「嬉しいです。孤児で獣人の私をこんなに祝ってくれるなんて、なんて言ったらいいか」

「幸せですと言ってくれたら嬉しい」

 ニコッと笑った笑顔がまぶしい。


 教会の前にはすでに数千人の国民が、お前を祝うために集まっていると教えてやりたい。しかし、サプライズも大事なので黙っている。


 俺たちは次のテーブルに向かっていた。アキラさんとシャラ、マサユキさんとアリスとクロエ・・・なぜクロエがここに居る?。

「おめでとう」「ありがとうございます」

 と挨拶が終わるすぐにコトネが聞いた。

「お姉ちゃん、どうしてここに?アンナと同じ席にしたでしょ」


「すまん。俺が変えてもらった」

 マサユキさんが少し恥ずかしそうに言った。

「俺たち、付き合ってるんだ」

 クロエも恥ずかしいのか下を向く。

「ええー???」


 俺もだがコトネはもっと驚いていた。いつの間にって感じだ。

 アキラさん達は知っていたのかニコニコしてる。

「大災厄が終わったら結婚するつもりだ」

「レオン様、結婚したら従者をやめてもいいですか?」

 クロエが顔を上げて言ってきた。必死さも感じる。


「すみません拾ってもらった身で我儘を言います」

 クロエはまた顔を伏せた。

 コトネが必死な顔で俺を見る。心配するな。

「そんなことなら構わないさ。おめでとう」

 もしかしたらジュリアを護衛してもらう時に、違和感を感じたのはこれだったか。


「ありがとうございます。あの、大災厄の時は働きますので何なりと仰ってください」

 マサユキさんが怖い顔をする。まあ、危ない目には合わせたくないよね。

 でも使わないと本人が納得しそうもないよな。

「分かった。君の特性に合わせた仕事を用意するよ」

 長々と話して居るわけにはいかないから、アキラさん達にも挨拶をして次のテーブルへ移動する。


「あのレオン様。お姉ちゃんの事・・・」

 怒らないでほしいと言うことだろう。

「そうだな、結婚式で何かサプライズでお祝いするか。お前もアンナと考えておくがいい」

「あ、ありがとうございます」

 パアッと顔が綻ぶ。そうだお前は笑っていた方が良い。


「しかし、クロエがマサユキさんとなあ。全然そぶりがなかったけど」

「そうですね。マサユキさんって。アリスさんが好きなのかと思ってました」

「そうだな。でもアリスはロボットだし、覚醒モードだと感情もないから、恋愛感情じゃなかったんだろうな」

 案内嬢モードだとちょっと抜けてて、アザトイ可愛さもあるんだがな。おっとコトネが反応している。俺の心が読めるのか?。


 次のテーブルはサスケ達だ。

「陛下あ、あのギルドってやつを何とかしてくれませんかあ」

「すいません。酔っぱらっちゃって」

 サスケは赤い顔で俺に縋りついてくる。そばのいつもサポートしてる女性。なんて言ったっけ、え、ジェリ、元盗賊団でクロエの同僚。ああ、サスケはクロエと一緒の盗賊団に居たんだった。

「また素面の時に聞くよ」


 サスケの言うギルドは商人ギルドのことで各国、各業種に存在する。もともとは商人や職人を守るための組合的な性質であったが次第に権力や宗教をバックに、暴力で新規参入の排除や高額な参加費の徴収などをやる様になり自由経済の妨げとなった。日本の座に相当する。

 アキラの店の場合、ジェリルが暴力組織を徹底的に排除。帝都はギルドの支配が緩くなった。もちろんジェリルはギルドの存在など全く知らなかった。


 次のテーブルは親衛隊だ。人数が多いのでテーブルが大きい。さすがにこのテーブルは終わってからの業務があるので酒は飲んでいない。未成年もいるしな。

「おめでとうございます」

「陛下、そろそろ人数が厳しいんで、里で鍛えてるのが居るから呼んでいいか?」

「いいけど。ヤクモはどうした?」


 親衛隊長のジェリルは神狼族の出身で、彼女の里からは神狼族娘四人が親衛隊に出ており、里の出身者が親衛隊の半数を占める。ビーストグローの関係で獣人で武に特化した神狼族の出身者が有利になるのは否めない。

 ヤクモはガララト山の修行終わりにあったホウライ国出身の剣客だ。親衛隊を目指して修行中だ。

「真面目に修行してるし、ソロソロ良いかな。来年から親衛隊に入れるよ」


「ジェリルさんは大災厄が終わったら、何か考えているんですか?」

「そうだな、爺(族長)が帰って来いと言ってる。アタイに婿を取らして、後を継がせたがってるんだ」

 コトネの問いにジェリルは平静に答えた。ジェリルが平和な暮らしに満足できるのかな?。

「神狼族の里に帰るんですか?」

「さあな、こちらも暇になりそうだし、もう魔獣狩りじゃ満足できないしな」

 やはり、バトルジャンキーは治るものではなさそうだ。


 アテナが立ち上がってこちらに寄ってくる。

「レオン殿、お願いがあるのだが聞いてくれるか」

 こいつもいつの間にか、ずいぶんまともに話せるようになったな。

「なんだ」

 多分あのことだろうな。


「悪魔の件についてはウラノスが関わっていると思う。ウラノスは私を操ることが可能だ。私を殺してくれるとありがたい」

「分かった。お前はずいぶん成長したようだ。この大陸の南部を調査してこい。大災厄が済んだら帰ってくればいい」

 俺は考えていたことを伝える。

「いいのか?」


「逃げることも覚えた方が良い。贅沢はできないが費用は出すよ」

「すまない。・・・なんだこれは、・・・感情がコントロールできない」

 アテナの目からは大粒の涙がこぼれ始めた。

 それを親衛隊の仲間が温かい目で眺める。


「へ、陛下」

 感動的な雰囲気を壊して、切羽詰まった声を上げるのはイブキだった。

「なんだ?」

「アテナ殿が抜けると拙者の稽古相手がおりません。ヤクモではまだ未熟故・・・」


 そうか親衛隊は個々の警護対象が居るから日々忙しい、警護対象のいないイブキはアテナと日々稽古をしているのだが、稽古相手が居なくなるわけか。ヤクモはまだ内気功の段階だし、どうするか?。

「私と稽古しましょう」

 そう言ったのはコトネだ。

「私の日々の仕事は少ない。時間は取れると思います。私でどうですか」


 確かに獣王国の改変が激動期が過ぎると、仕事はアイドル的なものに限られるようになってきた。ここのところはほとんど俺の執務室に居たのだが、本人は体を動かしたい性分だからな。

「コトネ様が!ありがとうございます」

「その代わり、ヤクモさんの練習も見てあげてくださいね」

「はい、もちろんです」

 イブキは腰を直角に曲げ、礼をした。


 このテーブルでもお祝いの言葉を受けて、次のテーブルに向かう。

 うん、コトネが俺を見上げている。

「どうしたんだ?」

「レオン様、背が高くなったんですね」

「そうか?いつと比べてるのかは知らんが、故郷を出てから20cm以上伸びてるかな」

 足から頭までを何回も見て首を捻っている。


「靴はヒールが2cmくらいですよね。それで私より10cm以上高い。私今20cmのハイヒールの靴を履いてるんですよ」

「うん、そうだな」

 何が言いたいのだろうか?。

「そうしたら私の方が30cm以上低いと言うことになりませんか?」

「計算上そうなるな」


「うう、私も最近背が伸びたから、ちょっとは追い付いたと思っていたのに、実は離されていたなんて」

 そんなことで悩んでいたのか。顔には出していないがバカバカしいと思った。

「背の高さなんてどうでもいいじゃないか」

「そうはいきません。私は普段ハイヒールなんて履きません」

 コトネは怖い顔で言ってくる。ちょっとビビる。


「それがどうしたんだ」

「結婚したんですから、毎日キスをしてほしいです」

「どういうことだ?」

 意味が余計に分からなくなった。

「キスをするときにあまり背が違うと格好悪いです」


「そんなことか、じゃあ、君のおでこにキスをするよ」

 コトネが顔を真っ赤にする。怒ったのか?。

「だめです。唇にしてほしいです」

「うーん、考えとくよ」

 なんだ、恥ずかしがってるのか。


 いよいよ最後のテーブルだ。そう嫁達のいるテーブルだ。

「おめでとうございます」×4

「ありがとう」

「ありがとうございます」

「お姉ちゃん綺麗だったよ」

 アンナがコトネを褒める。


「ルシーダは久しぶりだな。ワルキューレの活動はうまく行ってるか?」

「それがねえ。時間を掛けたんだけどうまくいかなかったわ」

「誰に声を掛けたんだ?」

「竜の神獣人よ」

「ソーンか?」

 ソーンはエルハイホに居た竜の神獣人で、俺たちがヴァイヤールから帝都に行く途中で会った。


「話はできたのか?」

「ううん、上級悪魔が出てからほとんど活動がないそうよ。私も一か月連続で声を掛けたけど反応はなかったわ」

「そうか、上級悪魔を恐れているのかもな」


 俺は千年前の戦いで神獣人が三人中二人が死んだこと。上級悪魔は現在も生きていたこと。ノクト連邦の文明が完膚なきまでに破壊されたことを合わせると、神獣人は上級悪魔に勝てなかったのではないかと考えていた。

「ごめんなさいね。もう当てがないわ」

「いいよ、良くやってくれた。ありがとう」


 その後少し歓談してから俺とコトネは教会のベランダに出た。

 王都中の人が集まったのではないかと、言うくらいの人が祝ってくれた。


「コトネ手を振ってあげなさい」

「は、はい」

 ベランダの一番前に俺と並んだコトネが手を振ると

 ウォーーーー!!

 と地響きが起きるような歓声が上がった。


「お姉ちゃん、良かったね」

 コトネは国民に認められたのだ。獣人であっても、孤児であってもだ。

 アンナの言葉に感極まった彼女は大粒の涙を流すのだった。


「コトネ、お前にはこれから獣王国に行って俺たちの結婚の報告をしてもらう。いいな」

「レオン様は?」

「済まんが俺は簡単に動ける体ではなくなった。アンナと一緒にノルンで行ってくれ」

「はい、行ってきます」

「すみませんがお願いします」

 俺は涙でパンダのような顔になったコトネの顔を見てカリシュさんに化粧直しをお願いするのだった。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

ぎりぎりになっちゃったので次のプロットが全然できてません。一応この章は終わる予定です。

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