15-12 コトネの結婚式(1)
ご愛読、ありがとうございます。
ようやくコトネの結婚式です。
いよいよ、コトネとの結婚式の日が来た。
〇アルカディア城 コトネの私室からアルカディア教会 新婦控室 <アンナ>
「今度はいなくならないでよね」
アンナは朝からコトネにへばりついている。
「そんなにくっついていなくても大丈夫だよ」
その時ドアがノックされ扉の近くに居たケイティさんが要件を聞いた。
「コトネ様、教会の方へ移動してください」
「は、はい、行きます」
お姉ちゃんはさすがに緊張してるみたい。声が上ずってる。
私はウエディングドレスの箱を抱えて後に続こうとした。
「私が持っていきますので、アンナ様はコトネ様の隣に居てあげてください」
ケイティさんはお姉ちゃんを気遣ってくれてるみたいだ。
「ありがとう」
廊下に出ると隣の部屋の扉が開いた。
「私達も一緒に行くわ。だってあなたのドレス見てないから」
フェリ様とエリーゼ様が出て来て一緒に歩く。
「フェリ様、お金は大丈夫なの?」
フェリ様は財務担当なので、こないだ聞いた金貨が不足しているという話を聞いた。
「ああ、あの話ね。実は国民が少しお金持ちになって、金貨をため込んでいるみたいなの。吐き出せとも言えないから、倉庫にあった金の延べ棒をいくらか帝国に送って金貨にしてもらうわ」
なんだ。みんなが持ってたのか。
「よかったよ」
「旦那様のおかげで経済が著しく拡大していくから、いずれは金貨は廃止して紙幣に替えるべきでしょうね」
フェリ様がまた訳の分からないことを言う。シヘイってなんだ。
親衛隊の人達を含めて大勢で歩いていく。
アルカディア城を出るときに近衛兵が加わってさらに行列は大きくなる。
城の西門を出ると道を挟んですぐに教会がある。
近衛兵は教会の外の警備となるので、教会内は私達と親衛隊の人だけに戻る。
親衛隊のノアさんが控室の中を確認した。
控室の中には着付けや化粧をしてくれるドワーフのカリシュさんと弟子の人、それからヤヌウニさんが居た。
「ヤヌウニさん、久しぶり!」
ヤヌウニさんは中年のおばさんになってた。彼女は受肉精霊だから自分の年齢を自由にできる。
私が抱き着くと頭を撫でてくれた。
「本当にごぶさたしててごめんねぇ。あれ、・・あんた妖魔の力を自分のものにしたのかい」
流石ヤヌウニさんだ。私の中に居る九尾の狐に気付いたみたい。
「おや、コトネちゃんも何かおかしい。神獣人?でも猫の神獣人って聞いたことがないし」
「私は私のままで神獣人に成れたんです」
お姉ちゃんは胸に手を当てて答えた。
「そうかい、あんた達はレオン殿とともに戦うんだね」
ヤヌウニさんは涙を流した。
「ごめんね。おめでたい日だと言うのに・・・」
「どうされたのですか?」
お姉ちゃんが駆け寄る。
「聞いてくれるかい?これはレオン殿にも話して居ない」
私達が黙って首肯すると彼女は語り始めた。
「私はね。千年前の大災厄の少し前に生まれたの。精霊憑きとしてね。物心ついた時にはいろんな魔法が使えたよ。アンナちゃんみたいには行かなかったけれどね。
親や周りの人は私を気味悪がった。石をぶつけられることも多かったよ。そんな私が治癒魔法に覚醒したんだ。そうしたら親は私を小さな宗教家に売りやがった。
そいつは私に治癒魔法を使わせてどんどんその宗教を大きくしていった。ついにはザルツブルグに金字教教会を建てて信者も最後の方は十万人以上いたよ。私は教祖として信者には崇められていたけど、実質はそいつの奴隷さ、やがてその男の子を身籠り、男の子を生んだ。男の子だ当然魔法は使えない。その子は宗教家の後を継いで教皇となった。私は相変わらずその子の奴隷さ。
教皇は私ほどではないが治癒魔法を使える女の子を集め始めた。聖女としてね。その子達も奴隷扱いを受けるようになってね。私はやめるようにお願いしたんだけど、それが原因で自分の子供に殺されちゃった。奴隷が逆らったのが気に入らなかったんだろうね。
私は精霊になって肉体を抜け出した。そして適当な死体を使って受肉精霊になって庵に籠った。九百年ほど経って、あんた達が来た。
私にはすぐにわかった。神獣人の魂を持った子供、妖魔と精霊に憑かれた子供、そしてその子達を慈しみ、従わせる男の子。私は子供たちの行く末を見たかった。この男の子のそばに居れば幸せになれるのだろうか?。それを見たくてレオン殿の従者となって、ここまで付いてきたのだ。
そんなコトネが今日嫁ぐのだ。私が幸せになれなかった分まで、幸せになってほしい」
「はい、幸せになります」
お姉ちゃんは目を閉じて約束した。
「アンナちゃんもレオン殿に嫁ぐつもりでしょ?」
「うん!」
「何しろ、レオン殿はあなた達より強くあらねばならないなんて、すごいことだからね」
レオン様と一緒に居る時の安心感は他では味わえないもんね。
「ごめんなさい。時間を取らせたわ」
ヤヌウニさんはカリシュさん達に謝った。
「大丈夫よ。今日は結婚式のあと予定ないもの」
お姉ちゃんの髪を上げ、整える。赤い宝石の付いたティアラを付ける
化粧が始まった。体の上の方も白粉を塗るからブラも外している。
「流石にローティーンの肌ね、乗りが違うよ」
「うらやましいね」
フェリ様とエリーゼ様が、お姉ちゃんの化粧の様子を眺めていろいろ言い始めた。
お姉ちゃんキレイだよ。結婚してもお姉ちゃんは成人していないから、生活は変わらないんだけど、なぜか少し遠くに行ってしまうような気がして涙が出ちゃう。だって女の子だもん。
化粧が終わってドレスを着る準備。
まず、線が出ない下着に替える。私達には尻尾があるので少し面倒くさい。
ストッキングをはいてガーターを付ける。スカートで見えないからいらないと思うけど。
ハイヒールの靴を履く、20cmは背が高くなったよ。猫獣人は特性上つま先立ちは得意だから大丈夫かな。
ハーフカップのブラを付け、カップの下の方に結構大きな詰め物を入れる。
今の流行はバストの上半分を露出させるので、詰め物を入れるのが前提になっている。
いわゆるバニーガールのように寄せて上げるので、お姉ちゃんでも立派なバストに見えるよ。
おおー、すごい谷間が出来てる。
ドレスを着る。流行は細く見せるので腹、腰のあたりは思い切り絞る。
ちょっと肉が付いたのか苦しそうだ。コルセットした方が良いんじゃない。
「あんた!今、肉が付いたと思ったでしょう!」
お姉ちゃんが私の方を見て言った。私に言われても事実だから仕方がない。
「いえいえ、お姉ちゃんキレイだよ」
ここはよいしょしておかないと。
姿見の前でくるくる回る。スカートの花飾りがきれいだ。
スカートの裾の方は赤くてところどころに大きな花が付けてある。尻尾はスカートの中に入ってるから見えない。胸の方は真っ白じゃなくてクリーム色肌の色とよく似てる。
「私達は式場に行くから、頑張ってね」
もう少し見ていたかったが、エリーゼ様に引っ張られて式場の席に行く。
〇式場
式場のテーブルに着く。私はなぜかフェリ様とエリーゼ様と一緒だ。家族枠なのだろうか。
「前の時は近くの国から大勢来てたから、これの十倍くらいの規模だったよ」
私はお姉ちゃん捜索に行っていたからほとんど見ていない。
今回は身内が多いらしい。元帝都のアキラの店にいた人達が多かった。
アキラさん、マサユキさん、クロエお姉ちゃん、シャラさん、コニンさん一家、キラ君、ゾフィーさん、妖精女王、ノルンさん、ゴロ、シルビアさん、セドリック君、アリスさん、神狼娘達、アテナさん、イブキさんも護衛の仕事を終え、着替えて席に着いたみたい。あと知らない人もちらほら、獣王国や獣人関係の人もいるみたい。
前の結婚式に参加できなかった人も参加できたみたいでよかった。
結婚行進曲が鳴り始めた。新郎新婦の入場みたい。慌てて駈け込んで来た人がいた。ルシーダさんだ。
「ごめん、遅れた」
私達のテーブルに着くとちょうど扉が開いてレオン様とお姉ちゃんが腕を組んで歩き出した。
「あ、ずるい。私の時は父上だったのに」
「新婦が二人いたから仕方ないわよ」
「説明がないのね」
「みんな知ってるからね。でもちょっと寂しいかも」
女神像の前でジュリアさんが待っている。
お姉ちゃん達が女神像の前に立つとジュリアさんが言った。
「神にあなた達の思いを届けましょう。祈りなさい」
お姉ちゃん達が跪いて神に祈った。祝詞は神様に祈りを届けるものだったみたい。
「立ちなさい」
ジュリアさんが二人を立たせた。
「契約の証として口づけを」
レオン様とお姉ちゃんがキスをした。
お姉ちゃんの頬が赤くなって、照れてるのかなあ。
フェリ様が言う。
「あれねえ、魔法回路に婚姻契約を書くんだよ」
「婚姻契約って何?」
「良く解んないけど、”この人が生涯の伴侶です”みたいな感じになるのよ」
そうか、教会で結婚してない人はこれがないのかもしれない。シャーリーの両親もこの契約があれば・・。
「なんか効果があるのかも解んないけどね」
エリーゼ様がかき回す。
「でもあなたた達の魔術回路にはしっかり書き込まれているんだよね」
ルシーダさん、何が言いたいのかな。
「アンナちゃん、あなたとレオン君には従者契約があるのよね?」
うわー、私に振ってきた。
「はい、お姉ちゃんやノルンさんにもありますよ」
「ルシーダ、何が言いたいの」
「その契約はレオン君の能力かもってこと」
レオン様が魔術回路に契約を書きこむ能力を持ってるってこと?。
あまりに突飛な考えにみんな黙ってしまった。
結婚式が終わり、コースの料理が配られ始めた。レオン様はお姉ちゃんと一緒に各テーブルを回り始めた。
「私ね、フェリがアルカディアに行ってからワルキューレでも仕事をしてたの。何人かをここへ送り込んだりしていたんだけど、レオン君の特異性も考えてたのよね」
「どういうこと?」
「レオン君とその従者の強くなっていく速度が異常だってことよ」
私はお姉ちゃんが回るテーブルを見ていた。ここに来たらなんて言おう?。
「アンナちゃんはレオン君の正体に興味はないの?」
私がルシーダさんの話に興味を示さないのが、気に入らないのか睨んできた。
「うん、全然」
ルシーダさんは額に手を当てて呆れているみたいだ。
「どうしてだい?君のご主人様だし、将来は結婚もするんだろ」
「だってレオン様はレオン様だし、必要なことならちゃんと言ってくれるよ。だから他の人が何と言おうが関係ないんだよ」
「そうだねレオンはレオンだね」
「そうよ、他の人が言ったから好きになったわけじゃないしね」
フェリ様もエリーゼ様も私に賛成してくれる。だってレオン様だもんね。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
もう少し結婚式が続きます。