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15-10 アンナの帰還

ご愛読、ありがとうございます。

アンナが城に帰ってきました。


 時間を巻き戻して、聖女誘拐の騒ぎも終わり、アンナのシュミレーションも終わりが近付いてきた頃。


 アルカディアには四つの州が出来た。ハーヴェル州、工業が盛んでアキラさん達が住んでいる。エドゥアルト州、農業と鉱業が盛んな州。ザルツブルク州、聖金字教会がある州で学業が盛ん。そして王都アルカディアのあるアルカディア州である。


 〇アルカディア学園 <アンナ>

 今日はシュミレーションの最終日だ。終業式が終わってみんなは寮に戻っていた。

「みんな、入園試験免除だよ」

 マリーが大喜びで三人に抱き着く。

 昨日受けた試験免除の試験で同室のみんなが合格した。

 これで来年の春、もう一度四人で学園に通えるかもしれない。


 でも私は大災厄があるから難しい。瘴気のピークが二月三月らしいから、うまくいけば私も通えるかもしれない。

 あれ、どうしたんだろ私。ここに来るまでは学園に通うなんて、嫌だったのに。

 そうか、私は楽しかったんだ。


「アンナ何してるの!」

 マリーが荷物の片付けを止めてボーッとしてた私に注意する。彼女は私達のお姉さん的存在だった。

「みんなと会えてよかったよ」

 あれ、涙が・・・。


「アンナ、泣いてるの?だめだよ。私まで・・・」

 キスカがつられて泣き出した。彼女は私の心に寄り添ってくれた。


「あんた達、なんで泣いてるの?いっけなあい、もうお母さんが迎えに来るわ」

 シャーリー、この子のおかげかもね。この子が事件を起こすから、この部屋の絆が深まったのかも。

 シャーリー、目が潤んでるよ。あなたが一番成長したのは間違いない。


 次々と保護者が迎えに来て、私一人が残った。

 レオン様とお姉ちゃんの迎えを断ったから仕方ないけど、ちょっと寂しい。

 荷物を入れたカバンを持って校門に行くと迎えの馬車が居た。

 馬車に片足をかけた時、ふと振り返ると学園の建物が冷たくそびえていた。


 ******


 〇アルカディア城 <アンナ>

 私は城に着くとレオン様の執務室に急ぐ。

「レオン様、ただいまあ」

 立って迎えてくれたレオン様の胸に飛びつく。

「おかえり。少し大きくなったか?」

「一か月会わなかっただけだよ」


 レオン様は満面の笑みで言った。

「そうだったか。ずいぶん会ってないような気がするがな」

 私はそれに付き合わずに聞いた。

「お姉ちゃんは?」

「コトネはドレスの本縫いだよ。自分の部屋に居るはずだよ。俺と一緒に行くか?カバンを持ってやるぞ」


「だめだよ。レオン様が見るのは式までお預け」

 レオン様はガクッと肩を落とした。

 男の人って女の子の着飾った姿をそんなに見たいのかな?。まあキレイだもんね。

 私は城の奥にあるレオン様達のプライベートエリアに走っていく。


「誰、廊下を走っちゃだめよ」

 行きずりの部屋の中から声が掛かった。

「ごめんなさあい」

 ヤバい、怒られた急ぎ足でっと。


 部屋に入ると残念ながらドレスを脱いでスッポンポンのお姉ちゃんが居た。

「あー、間に合わなかったか」

「おかえり、あんたもお化粧してもらう?何ならドレスも出すよ」

 私を見てお姉ちゃんはニコッと笑う。

「ううん、いい。お化粧は私の結婚式に残しておくの。それにドレスは胸がきついしね」

 お姉ちゃんがキッとにらむ。私は顔を逸らす。


 下着をつけたお姉ちゃんにメイドのケイティさんが着替えを渡す。私のカバンも持って行ってくれる。

「それで友達はできたの?」

「うん、寮で同室になった女の子たちと友達になったよ」

 お姉ちゃんはもう一度ニコッて笑ってくれた。

「そう良かったね」


「お姉ちゃんの時は友達はできなかったの?」

 お姉ちゃんは帝国で初等部に通っていたんだ。

「寮は個室だったし、ジークがずっと引っ付いてたんだよ」

「皇子様が横にいたんじゃ誰も近寄れないか」

 そういや、ジーク様は放課後もくっついていたな。


「あんたなら男の子にもてたんじゃない?」

 お姉ちゃんがちょっとからかうように言ってきた。

「うん、後ろの席のオルトってやつが何回も振ったんだけど。側室にしてやるってうるさかった」

「へえー、あんたモテるのね」

 お姉ちゃんが意外そうな顔をする。


「私がモテないと思ってたの?」

「うん、あんたって造作は良いけど生意気だもん」

 着替えの終わったお姉ちゃんがからかってくる。

 このまま話して居たいけど、カリシュさんが困った顔をしている。


「もうお姉ちゃんひどおい!・あ、エリーゼ様に挨拶してこなきゃ」

「なあに、エリーゼ様に挨拶せずにこっちに来たの。だめだよ、学園のことでお世話になったんでしょ」

「分かってるよ。じゃあね。また来るから」

 私は部屋を飛び出してエリーゼ様の部屋に向かう。

 ゆっくりゆっくりっと。また怒られちゃうからね。


 あれ、フェリ様とエリーゼ様の護衛のナルさんとハビさんがフェリ様の部屋の前に居る。

 と言うことはフェリ様とエリーゼ様だけでこの中に居るってことだ。ほかに誰かいれば、一人は中で護衛するはずだ。

「エリーゼ様に用事なんだけど入っても大丈夫?」

「特に止められてはないから、ノックして聞いてみて」

 ナルさんに聞くと優しく答えてくれる。


 私はドアをノックして部屋の中に呼びかける。

「エリーゼ様いらっしゃいますか?」

「え、アンナちゃんなの!どうぞ入って!」

 私が部屋に入ると二人は仲良くソファーに並んで座っていた。


「シュミレーションご苦労さん。どうだった」

「はい楽しかったです」

「よかった。私も推薦した甲斐があるよ」

 一通り、学園のことを説明した後に

「お二人は仲がいいんですね。ちょっとお聞きしても良いですか」

 私はシャーリーの家庭のことを聞いているので不思議だった。


「私達は同志だからね」

「そうね。同じ境遇で何とか自由になりたいと思ってたからね」

「同じ境遇ですか?」

 私は二人は信頼される皇女様とただいるだけの王女様みたいな感じに見えたけど違うんだ。私の理解できないと言う顔が分かったのかフェリ様が説明してくれた。


「私はね、自由になりたかった。好きな男と一緒になりたかった。それで自分が選ぶ立場になりたかったの。皇帝を目指したのは他にもあるけど、それが一番大きな理由よ」

「でもレオン様とは政略結婚ですよね」

「そうね。でも本来なら旦那様とは身分差で結婚できなかったから、あきらめてたのね。だから私を結婚相手に選んでくれた時、もう皇帝の地位なんかいらないってなっちゃったのね。私は旦那様が好きだったのよ」


「私も政略結婚だったけど・・」

「エリーゼ様は知ってるからいいです」

「うう、アンナちゃんがひどいよお。聞いてくれたっていいでしょ」

 だってあれだけレオン様にアプローチをしてたんだからね。レオン様が鈍感だったから可哀そうではあったけど。


「でも学園で知り合った子のお母さんが、娘を何でも一番にしようとしてて、理由が二番目の奥さんで娘を産んでから旦那さんに邪険にされるようになって、若い奥さんが出来たらもう無視みたいになったので娘が優秀と知らしめて、旦那さんを振り向かせたいと思っていたみたいなんです。やっぱり将来は偏りが出るのでしょうか」

 シャーリーのお母さんの話を例に聞いてみる。


「まあ、絶対とは言えないけど、旦那様は大丈夫だと思うよ。ひいきする人じゃないから」

「でもコトネちゃんやアンナちゃんのことになったら判らないよ」

「え、私達ですか?」

「そうそう、旦那様はあんた達が大事で仕方がないのよ。自覚無いの」

 まあ、多少はあるけど。このままでは私が責められる。話題を変えなくちゃ。


「ところでお二人は何の話をしていたのですか。それも執務室で、怪しいです」

「な、何でもないわよ」

「そのうち分るから、今は聞かないでね」

 むむ、このまま追及すると逆切れされそうな雰囲気、戦略的撤退を選ぶべきね。

「うん、じゃあお姉ちゃんのところへ行くね」

 むむむ、二人の秘密って時期から言って、あれしかなさそうよね。


 ******


 夜、いつものパジャマパーティーが始まった。

「レオン様、一ついいですか?。最近魔獣被害を聞かないけどどうしたのでしょうか?」

 お姉ちゃんが私達がアルカディアに来た時、週に一回ぐらいは魔獣発見の報告が上がってたけど、今は聞いたことがないと言った、

「あーそれな。アキラさんが魔素の発生場所を薬草畑にしちゃって、魔素が溜まらないんだよ。だから魔獣も発生しないし、ダンジョンもできないんだ」


 すごい、それなら魔獣に怯えなくていいんだ。あれ、おかしいな。

「でもそれだと薬草が育ち切ると魔素を吸収しないんじゃないの」

「それはゴロが国中を回って、育ち切る前に収穫するんだ。それで治癒薬を作って売ってる」

 シャーリーはどうなるの。薬で治療できるのなら、聖女はいらなんじゃあないの。

「それじゃあ、聖女はどうなるの。私の友達が聖女候補生になるって・・・」


「ああ、心配いらないよ。ヤヌウニさんが開発した気功術と薬を併用すれば、かなりの病気も直せるんだ。帝都の治癒院でやってただろ。聖女候補生にはこれを練習してもらう。これは秘密だから外で言っちゃあいけないよ」

 そうか、教会も新しくなってるんだ。シャーリー頑張ってね。ジュリアさんのような聖女になってね。

「うん、わかったよ」


「あの旦那様、折り入ってお話ししたいんですけど」

 フェリ様が真剣な目でレオン様を見る。エリーゼ様もフェリ様より少し下がって見る。

「あの私達は出ましょうか」

 お姉ちゃんがフェリ様に伺いを立てる。

「あなた達もいずれ分かるから聞いておいて」


「で、なんだ」

 レオン様も真剣な顔つきになる。

「私達は妊娠したようです」

 やっぱり、私の予想通りだ。

「え、二人ともか・・・でかした!!」

 レオン様の顔は一気に破顔した。


「「おめでとうございます」」

 私達はお祝いの言葉を二人に送った。

 その日は五人で夜が更けるまで喜び合った。

 フェリ様とエリーゼ様も部屋に戻ったがお姉ちゃんが戻らない。


「レオン様、これよりはお二人の寝所へは足を運ばぬようにお願いします」

「もちろんだ。もう、そういうことはしないよ」

「それで我慢できぬ時は私をお呼びください。アヤメ様より男性を慰める術を指南されております」

 お姉ちゃん大胆だよ。いくら私に教えたからって私の方を見ないで!。できないよ。さすがに恥ずかしすぎる。


「あの人は十にもならない子供にそんなことを教えたのか。困ったもんだ。コトネそう言うことは放念しなさい。お前を欲求不満のはけ口にするつもりはない」

 レオン様にビシッと言われてお姉ちゃんはシュンとしてた。


 二人して部屋に向かう廊下に月明かりはないが、夜目の効く私達にとってそれくらいは明かりをつける必要のないものだった。

「お姉ちゃん、あれ」

 私は窓から見えるものを指さした。

 それは尾の伸び始めた彗星だった。

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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はクロノスの話です。

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