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15-9 解決

ご愛読、ありがとうございます。

今回で教会がらみは終了です。

 何とか聖女を奪還し、アンナは聖女をアルカディア城に、コトネとクロエは捕らえた聖騎士を荷馬車に積んでアルカディアに向かった。アルテミスはニルドと対決して学園に居る。あれ、レオンは?


 〇アルカディア学園 <アンナ>

 私が教室に入るとちょうど昼休憩になった。

「ごめんねえ。エイミー先生戻って来た?」

「ううん、結局ずっと自習」

 私の疑問にキスカが答えてくれた。


「おい、アンナ。おまえどこに行ってたんだよ?」

 皆で食堂に行こうとしたら、またオルトか。

「あんたには関係ないでしょ」

「関係ないことない。嫁にしてやるって言ってるだろうが」

「あんたとお。めっちゃ嫌なんだけど」


「なんでだよ。俺の親父は日に金貨100枚は稼ぐ商人なんだぞ」

 オルトは私達の後を付けながら話しかけてくる。まあ、食堂に行くんだから方向は一緒か。

「お金を稼いでるのあんたじゃないでしょ」

 私はレオン様が苦労して、私達を養うお金を稼いでる様子を見てきた。それなのに親が稼ぐ金を自慢するってどういうこと。


「俺のところに来ればいい思いをさせてやれるってことだよ」

 まだ言うかあ。

「私は自分でお金を稼いでいるから、あんたと違って」

「お、俺だって成人したらすぐに親父ぐらい稼げるぞ」

「はいはい、稼いでから言ってね」

 食堂に着いたので話は終わった。


 ご飯を食べ始めると今度は女の子の番だ。

「アンナさあ、オルトにもっと優しくしてやればあ」

 キスカが言うとマリーも続ける。

「そうだよ。玉の輿じゃないの」

「私、大人の中で働いてるじゃない。だから頼りなくって」


「うーん、そんなもんなのかなあ。シャーリーも来年から聖女を目指して修行するし、ちょっと焦る」

「あなた達って、もう結婚相手って決まってるの?」

 マリーの言葉にアンナは疑問をぶつける。

「私はまだだよ」

「私は成人したら、お父さんの友達の長男と結婚する予定」

 キスカにはすでに婚約者がいるようだ。まあ、珍しくはないが。近くに居る人では初めてだ。


「そんなことより、何をしに外に出てたの?」

 イライラしていたシャーリーが二人が気遣ってたことを遠慮なしに聞いてくる。この子に遠慮って言葉はないんだろうけど。

「・・内緒。こんなところで出来る話じゃないわ」

 私の言葉にシャーリーは顔を歪める。私に文句の一つも言いたいんだろうけど、我慢できるようになったんだね。偉いよ!。


 ******


 〇学園長室 <レオン>

 俺は聖女の奪還を聞いて、アルテミスの居る学園に来ていた。

 若い事務員が学園長室のドアをノックして俺の来訪を知らせる。

「国王陛下のご来訪です」

 室内の緊張度が三つくらい上がった気がする。まだ貧乏貴族の三男坊の時の感覚が抜けていなくて。相手が気を使ってくれることに慣れていない。


 室内に入ると全員が跪き、俺に最敬礼をする。

 室内にいたのはアルテミスとそのお付きが一人、学園長と若い女教師、そしてニルドだ。

 俺は自己紹介をした。

「アルカディア国王である」

 学園長が進める上座に当たる席に座る。当然のようにジェリルが俺の後ろに立つ。


 学園長が人物紹介をしてくれる。

「聖金字教会教皇猊下アルテミス様とお付きの方です。こちらはアンナ様の担任をしているエイミーです。そしてヴァイヤール大教会のニルド神父です」

「座ってくれ話がしにくい」

 俺が言うと全員が着席した。


「今回、教皇が来た件について説明してくれ」

 学園長は俺がここを訪ねた理由がわからずにいたようだ。そりゃそうだ、まだ聖女の誘拐は知らないだろうからな。

「はい、わが校のシュミレーションに参加した生徒の中に治癒魔法の覚醒者がおりまして、ヴァイヤール大教会の神父から聖女候補生にと要請があり、担任教師が是として斡旋しました。しかし教皇猊下から他国に魔法覚醒者を斡旋するのは違法ではと苦情が入りました」


「全員それで間違いないか?」

 全員が首肯する。

「君がその斡旋した教師か?」

「は、はい。も、申し訳ありませんでした」

 かなり憔悴しているようだ。これは追求するとトラウマ案件だな。


「ニルド神父、君は国際問題になるとは考えなかったのかね」

「はい、前任者よりこの地域は魔法覚醒者の管理をされていないと聞いていたので、問題ないかと考えました」

 それを言われると弱いなあ。

「そうか、今はアルカディア王国が建国され、そこらも含めて整備中だ。今後は控えてくれたまえ」

「はい、解りました」


 ようやく頭を上げたニルドは俺の顔を見てハッとした。

「ところで教会本部所属であるはずの聖騎士が、ヴァイヤール大教会に頻繁に出入りしているのはどういうことかな」

 流石に若くして大役を任せられるニルド君だ、今度はポーカーフェイスを貫いている。

「さあ、私は存じませんが」

 アルテミスはかなり驚いているのが見て取れる。


 俺はヴァイヤール大教会にブラウニーを派遣して探っているが、核心に迫るような情報は得られなかった。ただ聖騎士が行き来しているのと聖女を求めていることは分っている。

 捕まえた聖騎士達が口を割ったとしてもヴァイヤール大教会の関係を完全に証明するのは難しいだろう。

 ならばだ。ニルドにその役をやって貰うか。


 その後アルテミスのシャーリーへの処置を聞いた。

「ニルド君もそれでいいかな?」

「はいお手数をお掛けしました」

 ここは戦うべきではないことを弁えてる。大した奴だ。

「私の仕事は無くなりましたので帰らせてもらいます」

 ニルドは席を立った。


 ドアを開けて廊下に出ると姦しい声が聞こえる。

「お前だ!間違いない」「こいつだ!」「こいつです。私達に依頼した奴!」

「お前達なんか知らない!!道を開けろ!!」

 俺はシャーリー誘拐を図った三人組の傭兵を呼んでおいたのだ。

 ニルドは単独で動いていたからな。自分で依頼をしたと思ってたんだよ。


 俺はニルドの手を取った。

「ちょっと説明をしてもらおうか」

「クッ、ミソッカスの癖しやがって」

 ニルドは小さく呟き、俺の手を振りほどこうとしたが、修行不足だ。逃げられはしない。


 ******


 さてアルカディア城に居る聖女を慰めないとな。

 俺が城に戻ると聖女はエリーの執務室にいた。

「ジュリア、大丈夫か」

「だいぶん落ち着いてきたわ」

 エリーがジュリアの隣に座って介抱していたようだ。


 エリーとジュリアはアリストス学園で数回会っていた。そのが別れたが教育関連をやり始めたエリーと仕事をすることがあった。

 ジュリアはヴァイヤールの教会で聖女候補生をしていたが、同時にアリストス学園にも通っていた。学園ではニルドとキャミールと言う修行僧が彼女の護衛についていた。今考えると護衛が付くほど彼女は教会で重要視されていたのだろう。


 そこでジュリアは俺に恋心を抱いた、少なくとも護衛のキャミールはそう思った。彼は彼女と教会から逃げようとした。獣人擁護を言う彼女に教会が罰として老貴族との縁談を考えていると吹き込んだ。彼女はキャミールからも逃げて俺のところに来た。俺はちょうど帝国に行くところだったから、彼女を連れて帝国に向かった。


 一緒に旅をした聖金字教の教祖ヤヌウニさんに帰依して、治療師として帝国で働くことになった。彼女は姿を変えてサクラと名乗った。俺がオリンポスを滅ぼしてアルカディアを建国したのでヤヌウニさんも聖金字教に戻った。サクラもジュリアに戻り聖女として活動を始めた。


「もう聖女は嫌です」

 彼女は泣きながらそう言った。あんなひどい目に遭ったのだ、そう思うのは無理ない。

 しかしヤヌウニさんは言っていた。彼女は上級悪魔と同等の力を持つと。

「君は上級悪魔と戦えるの?」

 やめるにしろ、続けるにしろこれは聞いておかないといけない。


「ヤヌウニ様に授けられた瘴気を浄化する神聖魔法を習いましたが、本当に悪魔に通用するかは分りません」

 なるほど、瘴気がなければ悪魔は行動できなくなるはずだ。

「それができるのは君だけなの?」

「いいえ、ヤヌウニ様も教皇猊下も使えます」

 そうか、大災厄に大きな武器ができたな。秘密にしていたわけだ。こんなの他国も欲しがるし、悪魔に狙われる。


「それで君としてはどうしたい」

「あの・・・」

「うん」

「レオンハルト様のお子が産みたいです」

「ええー!!」


 俺は考えたよ。ヤヌウニさんも言ってたし、考えなかったとすれば嘘になる。

「そうだね。大災厄で活躍すれば国民も納得すると思うよ」

 負けてしまった。女の子に弱い子の性格何とかなんねえかな。

「分かりました。じゃあ、箔をつけるのにそれまで聖女続けますね」


 ******


 今回の事件の様相がはっきりした。

 ヴァイヤールの教会は聖女の治療での献金を続けようとした。が、聖女が居ない。ニルドを派遣し、エストゥスに話を持ち掛け、聖女を奪おうとした。

 ニルドはまず、聖女を直接狙ったが失敗した。聖女が学園に行くと言う情報を得て、傭兵に寮への侵入経路・警備体制を調査させようとした。その後聖女が教会に戻ったことを知り、傭兵の元には現れなかった。


 その後、聖女の隙を狙ったが彼女は隙を見せなかった。そこで聖騎士による襲撃を計画したのである。ニルド自身はアリバイ工作もあって学園を訪れたようだ。シャーリーを引き取ろうとしたのはついでのようだ。


 後のことは部下がやったので大まかなこと記す。

 裏切った聖騎士はエストゥスの息がかかっていた。彼らはレベルアップを解除されて処刑された。

 エストゥスはこちらでは締め付けがきついので、ヴァイヤールで聖騎士の武力を使って教会を自由にしようとしていたみたいだ。


 アルテミスは聖騎士全員のレベルアップを外した。今回の事件で6人の兵が大けがを負ったからだ。

 聖騎士は攻撃的な面を持っていたが防御に徹することとなった。聖騎士は教会の軍隊から警備員となった。各教会の警備は聖騎士がやることになった。

 アルカディアには十分な戦力があるし、これは問題ない。


 全貌が明らかになってから俺は魔導通信機(マジホ)でヴァイヤールの王太子に連絡した。

 大まかなところを説明したところ

「分かった、あとでこちらの方針を伝えるから待っていてくれ」

 仕方がない、向こうでも調査が必要だろうし、待っていましょう。


 連絡が来たのはコトネとの結婚式の前日だった。

 マジホの相手はルーカス兄上だった。

「あー、教会の件だが」

 せめてもしもしぐらい言ってよ。兄のマジホは挨拶もなしに唐突に始まった。


「こちらの要望を言うぞ。教会はそちらの本部の管轄にしてくれ。今のままだと貴族派の資金源になりかねん。

 出来ればそちらと同様な教育機関を置いてほしい」


「教育機関の予算はどうする。各村々に教会を建てるのは結構金がかかるぞ」


「教会が持ってくれないのか」


「作ったって赤字になるのは解ってるからなあ。せめて建設費の半分と毎年の赤字の補填金ぐらいは用意してほしいぞ」

 兄は黙ってしまった。そこまでは考えていなかったようだ。王太子の知恵袋じゃなかったのかよ。


「分かった。検討する。しかし、予算がないので大災厄が終わってからだな。本部の管轄にするのはそちらがやってくれよ」


「聖騎士を派遣するが大丈夫か?」

 エストゥスの取り巻き以外は忠節度が高かったので大丈夫だろう。


「分かった。予定が決まったら教えてくれ」

 こちらを信用してくれてるみたいでありがたい。


 アルテミスも今回の事件で組織の掌握が出来ていないことを痛感していた。

 そこでアルカディア城に出向させてうちの老妖怪の二人、宰相と相談役に組織づくりを勉強させよう。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回よりアンナの卒業、コトネの結婚に入って行きます。

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