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15-8 聖女奪還

ご愛読、ありがとうございます。

今回はレオンファミリーが聖女奪還に動く話です。

 聖女ジュリアを金字教の聖騎士に拉致されてしまった。アンナとクロエが聖騎士を追跡し、レオンとコトネが現場に急いでいる。


 アルカディア王都からザルツブルク教会本部に続く街道 <アンナ>

 私とクロエお姉ちゃんは聖女様を乗せた馬車を追って二人で飛んでいた。

「クロエお姉ちゃん、レオン様とコトネお姉ちゃんはあと30分は追い付かない、どうしたらいい」

 道端の木がすごい速度で後ろに飛んでいく様子を見て、クロエお姉ちゃんはビビっていた。

「クロエお姉ちゃん、どうしたらいい!!」

 もう一度大きな声でクロエお姉ちゃんに聞いてみる。


「あ、ご、ごめん。私身一つで空を飛ぶのに慣れてなくて。相手がどうしてるか知りたい」

 クロエお姉ちゃんはそう言ったがすぐに付け足した。

「こっちが見つからないようにできる?」

「ラジャーだよ!」

 私はグーンと上昇すると馬車の上空に出た。私は馬車の5倍以上の速度で飛べるので、追い付くのは容易い。


「編成は馬車の前に四騎、後ろに八騎、左右に三騎ずつ、馬車の中に二人と聖女様だよ。速度は結構早いよ」

「アンナさあ、馬車の屋根剥いで、私にやったみたいに聖女様を一緒に飛ばすようなことはできる?」

 クロエお姉ちゃん、過激。

「ちょっと今の速度だと聖女様にケガさせそうだよ」

「大丈夫、いつまでもこの速度では走れない。そろそろ速度を落とすよ」


 聖騎士は追跡者に追い付かれないように自動車のような速度で走っている。しかし馬はこの速度では走り続ることはできない。訓練された馬で騎乗なら自転車のような速度で、一日に100km以上進むことができるが馬車で無理のない速度なら50~60kmくらいだ。聖騎士は教会本部かヴァイヤールの教会の教会を目指すだろう。本部は100km強、ヴァイヤールの教会は300km以上離れている。だからクロエは聖騎士が速度を落として馬を休憩させると睨んでいた。


 数分すると聖騎士たちは速度を落としたが脇道に入って行く。まずい、脇道は狭いので道の上に木々が張り出し、上空からの救出が難しい。

「クロエお姉ちゃん、どうする」

 あまり長く尾行してると何かの拍子に見つかる可能性もある。

「木は葉を落としてるから見逃さないわ。それにこの道はこの先二つの集落を経て、エルハイホーに続く道に繋がっているだけだから、このままこの道を行くとは考えられない。必ず何かある」


 クロエお姉ちゃんの頭の中にはヴァイヤールから帝国至る地図がある。最近はノルンさんで上空から見た情報も入っているので非常に正確だ。クロエお姉ちゃんはそれを私の魔法と言っている。

「どうすると思う」

 私は聖騎士たちが何を考えているのかが解らなかった。いずれにせよ聖女様が捕まっている以上、うかつな真似はできない。聖女様の無事救出が最優先だ。


「そうね、あれじゃない?」

 クロエお姉ちゃんが前を指さした。

 その先には道に沿って少し広い草地があり、そこには荷馬車がいくつか置かれていた。

「荷馬車?」

 私はクロエお姉ちゃんが何を言いたいのか分からなかった。


「偽装よ。商人に化けるのね。ということは教会本部じゃなくてヴァイヤールに行く気だ」

 私には商人に化ける意味もヴァイヤールに行くことも分からない。

「クロエお姉ちゃん、意味が解らないよ。説明して」

「教会本部に行く気なら、内部に仲間が居ると言うことで、このまま急いで行った方が良い。商人に化けると言うことは国境の関門をごまかして潜ろうとしてる。本部には仲間はいないんでしょうね」

 商人に化けて関門の国境警備員をごまかすと言うのは解るけど、仲間のことは分らない。


「隙を見せたら行くよ」

 クロエお姉ちゃんが私に顔を向けた。ちょっと分らないこともあるけど、いっか。

「ラジャーだよ。馬車の天井剥ぐやつね」


「何よ、そのラジャーだよって?」

 クロエお姉ちゃんが首をひねる。

「了解しましたって意味だよ」

「じゃあ、そう言ってよね」

「り、了解しました」

 あの固いコトネ姉ちゃんでもわかってくれるのに・・・。


 聖騎士達は広場に入って行った。

 馬車も停止した。おそらく馬を荷馬車に付け替えるのだろう。

 私達は馬車が見える森に中に隠れた。

 聖騎士達は馬を外し始めた。

「よし相手は動けない!アンナ、やっちゃって!」


 私は「三式戦 飛燕」を放って馬車の屋根を切断する。続いて風魔法で負圧を掛けて屋根を持ち上げる。

 グアアアアー!!

 それなりに大きな音を出して屋根が上空に舞い上がる。同時に飛び出していた私は馬車の中に居る聖女様を引き寄せる。


「シルフ!お願い」

 私の願いを聞いた精霊は、縛り上げられた聖女を私の近くに引き寄せる。

 聖騎士達はまさかの襲撃に訳も分からず右往左往している。


 ようやく飛び去る私を見つけた聖騎士が騒ぎ始めた。

「聖女を奪われたぞ!!早く何とかしろ!!」

「待てえー!!」

 何人かは弓を馬に付けていたみたいで弓を放つが、もう届く距離にはいない。


 彼らから十分離れて聖女の戒めを解く。

「もう大丈夫だよ」

「え、アンナちゃ・・・キャアアー!!」

 目隠しも取ったので、空を飛んでいることに気付いた聖女様は悲鳴を上げまくった。


『クロエお姉ちゃん、どうする?』

 私は騒ぐ聖女様を無視して、クロエお姉ちゃんに聖女様をどうするか聞いた。

『そうね、城の親衛隊に聖女様を預けて、学園に戻りなさい』

 そうか、聖騎士に確実に勝てるのは、私達を除くと親衛隊ぐらいだな。


『お姉ちゃんはどうするの?』

『私はコトネかレオン様が来るまで聖騎士を見張ってる』

『お姉ちゃんは弱いんだから気を付けてね』

『放っておいてちょうだい』

 あ、怒らしちゃった。でもさすがだよ。私が探索してもどこに隠れているのか分からない。


 私はレオン様とコトネ姉ちゃんに現在の様子を伝える。

「さあ、聖女様。帰りますよ」

 騒ぎ疲れておとなしくなった聖女様に伝えて、アルカディア城に向かって加速する。


<コトネ>

『お姉ちゃん、聖女様は無事助けたよ。今、クロエお姉ちゃんに言われてアルカディア城に連れて行くところ。クロエお姉ちゃんにその後学園に戻れって言われたけど良いかな』

『うん、ご苦労様。後はやっておくね』

 私はクロエお姉ちゃんに向かって飛んでいる。従者同士は相手の位置は分るから。

 そうすると私の仕事は聖騎士を捕らえてレオン様を待つことかな。


 クロエお姉ちゃんに合流した。

 聖騎士達は変装を諦めたみたいで全員が騎乗した。

「聖女を失った以上、本部にも帰れない。ヴァイヤールに行っても歓迎はされまい。どうする?」

 20人の聖騎士は行き先も失ったようで話し合ってる。

「商人への変装もばれた以上、ヴァイヤールに入ることもできないのではないか」

 私達が居ることに気付いて内容で大声で話して居る。


「俺はヴァイヤールに行くべきだと思う。アルカディアに居る限り俺達は罪人だ」

「よしなら、早く行こう。追手が居ないうちに」

「関はどうするのだ」

「山越えでもすればよかろう」

 決まったようだ。これ以上は話してくれないので仕方がない。


「お姉ちゃん、私は行くよ」

「気を付けて」

 20対1だがお姉ちゃんは止めない。私の強さを信じてくれる。

 私は聖騎士達の前に立ち塞がった。

「聖女誘拐の罪で捕縛します。馬を下りて降伏しなさい」


 いきなり進行方向の道の中央に現れた猫獣人の子供に、彼らは速度も落とさずに突っ込んだ。

 私は左右に避けながら次々と脇差のみねうちで、聖騎士達を叩き落とす。

 流石に後ろ半分は警戒して突っ込んでこない。

「どうしたのです。かかってこないのなら、馬を下りて武装解除しなさい」

 落馬してコトネの攻撃の痛みに蹲って唸っている仲間を見て、残りの聖騎士達は迷っていた。逃げるにしても安心できる場所はこの国にないのだ。


「あれが英雄王の猫従者か?」

「そうとしか考えられん」

「我ら相手に何という強さ!」

 いつの間にかレオン様は英雄王と二つ名が付けられていたようね。でも猫従者って、もう少し恰好良さを考えてくれても良いんじゃない。


 私も気が長い方ではないので行くとしましょう。

「降伏しないのなら、容赦しません!」

「うわ!!」

「がっ!!」

「ぐっ!!」

「ひえええ!!」

 あっという間に残りも先の奴らと同じように地面に転がしてやった。


 後はクロエお姉ちゃんと武装解除して、縛り上げた。

 レオン様に確認したらアルカディアに届けろと言うことで、荷馬車に乗せて、アルカディア王都に戻ることにした。


 ******


 〇アルカディア学園

 アンナが聖女を救出していた頃、学園ではヴァイヤール教会のニルドと教皇アルテミスとの一騎打ちが始まっていた。

「ヴァイヤールの教会は他国まで来て、聖女候補生を集めるとはどういうことですか?理由によっては国家間の問題となりますよ」

 教皇は前に跪くニルドに言った。本来なら教皇と地方教会の神父と言う隔絶した身分差であるが、この事件の問題の本質を物語っていた。


「元はと言えば前教皇が、わが教会の聖女候補生を全員死なせてしまったからではありませんか?」

 ニルドも負けてはいない。

「だからと言って、他の国に来て人身売買のようにふるまうのを肯定できるわけがあるまい」


「人身売買とは面妖な、それはいくばくかの支度金は用意いたしますが、古来から続く聖金字教のしきたりでございますれば・・・」

「私はそのしきたりを捨てよと申したはずです。すでにこの国では治療薬の発達により、聖女の癒しより安価に治療できるようになっています。ヴァイヤールにも治療薬は輸出されます。聖女による治療は時代遅れとなっているのです。従って無意味に多くの治癒魔法保持者を集めることは禁じました」


「しかし教祖ヤヌウニ様の時代から受け継がれてきた伝統を破るのは冒涜と言うものです」

「ヤヌウニ様が守れと仰られたのは伝統ではなく教義です。私達は伝統と言う名の搾取をやめさせ、新しく教育で教義を広める手法で民衆を導くことにしました。ヴァイヤール大教会が我々に従わないのは仕方がないのかもしれませんが、どうか民衆のことを最優先に考えてください」


 だいたい原理主義に近いアルテミスに対して、実利主義のニルドが勝てる訳もなく言いくるめられないように伝統を盾にして頑張るしかない。議論は空回りを始める。

 それに付き合わされているのは学園長とシャーリーの担任であるエイミーだ。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次は大災厄の対策の話に行きたいのですが、教会関連が思ったより伸びてます。

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