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15-2 アンナの友達

ご愛読、ありがとうございます。

レオンファミリーの行くところに事件ありです。

 コトネのところに専属メイドが来たため暇になったアンナ。エリーゼやコトネに学校のシュミレーションに参加するようにほぼ強制される。アンナ本人は表面では嫌がりながら、内心ではワクワクドキドキするのであった。


 〇アルカディア学園 寮食堂 <アンナ>

 荷物の整理がほぼ終わった私達は食堂に来ていた。食堂には男子寮からも来ていてにぎやかに話し込んでいた。

 食堂はトレーを持って一列に歩いて、料理を入れた皿を次々ともらうようになっていた。

 一列に並んでトレーに次々と料理が並んでいく様を眺めているだけで楽しい。

 おかずは毎日変わるらしい。今日のおかずはジャガイモとニンジン少々のお肉を煮込んで塩と何かで味付けしたものだ。サイドメニューはブロッコリーの茹でたものとポタージュスープかな、それとパンと牛乳。


「お肉が入ってる。嬉しい」

「何のお肉かしら」

 キスカとマリーがはしゃいでいる。

 市井に出回っている肉は鶏か豚だ。まだ一般的に行き渡っているとは言い難い。

「これは鶏ね」

「アンナちゃんよく知ってるね」


「陛下がね。一般の人も肉が食べられるように、養鶏場をたくさん作ってるから来年ぐらいには卵と鶏肉が町中でも手に入る様になるわ」

 一般的にはテーベ川の魚や少量ではあるが近くの農家が飼っている豚の肉が町中に住む人のたんぱく源となる。

「すごおい、アンナちゃん物知りね。さすがコトネ様のお世話をしてただけあるわ」

 あ、ヤバい。あまり情報が洩れると私の正体がバレちゃうかも。


「マリーちゃん、そのことはあんまり言わないで」

 私は新しいメイドさんが来て首になったことになってるから、ちょっと悲しそうな顔をする。

「あ、ごめんなさい。もう言わないから」

 その時後ろから声が掛かる。

「おい、お前コトネ様を知っているのか?」

 犬獣人の男の子だ。


 獣人にはお姉ちゃんの熱狂的ファンが多いって聞くわ。無視よ無視。

「おい、返事をしろよ。なあ、おい」

 肩を持って自分の方に私を向ける。男の子ってガサツ。

「あのね、私の名前は”おい”でも”お前”でもないのよ。なんで返事をしてもらえると思えるの」

 一瞬、男の子の顔が驚きに満ちる。がすぐに元に戻った。


「俺はオルトって言うんだ。君は?」

 ふうん、男の子の割には素直じゃない。

「私はアンナ。コトネ様の話はしたくないの。じゃ」

 肩に置かれた手を払って前を向く。

 呆然としているようだ。だいたい男の子って甘やかされてるから打たれ弱いのよね。

 その点、あの海賊に襲われた村の男の子は勇敢で実行力があったな。名前は忘れたけど。


 食事後、私達は教室に移動した。

 教室には二人掛けの机が人数分用意してあって。私達は左の窓側の真ん中くらいにベッドと同じように座った。前の机がシャーリーが窓側、その横がマリー、その後ろの机が窓側がキスカ、その横が私だ。

 すぐに男の子たちが来て私達の後ろに座った。私の真後ろはさっきのオルトだ。

 やがて席はもめることもなく全部埋まって、なかなか行儀の良い子達だなと感心しちゃった。


 入り口の扉が開いて、先生と思われる二十代の女性が入ってきた。

 その女性は教壇に立つと挨拶をした。

「こんにちわ!」

「こんにちわ!」×たくさん。

「元気があってよろしい。

 私はエイミー、このクラスを一か月間ですが担当します。皆さんよろしくね」


「この学園はもう皆さん知ってると思うけど、来年開校します。それで皆さんには感想、つまりここは良かったとか、ここはこうしてほしいとかを見つけてほしいのです。このシュミレーションが終わるときに感想を集めたいと思うので、このノートに書いておいてね」

 先生は薄いノートを見せた。


 初等部や中等部はハーヴェルやエドゥアルト地区にもたくさんあったはず。ザルツブルグには高等部まであったし。それなのにこんなシュミレーションをやるのは何か新しいことを考えているのかしらね。

 まあ、いいや。私は友達を同世代の友達をいっぱい作るんだもんね。


 その後も学園の規則や授業の進め方などや寮の規則を説明してもらった。

「授業のノートを取りたい方は購買部でノートを売ってますので買ってください」

 流石にノートまではくれないか。お金は持ってきたから買っていくか。

 最後に教科書と規則などを書いた紙をもらい、今日の予定は終了となった。


「ねえ、夕食までに時間があるし、荷物を部屋に置いて購買部へ行ってみない」

 そう私が言うとマリーとキスカが賛成してくれた。シャーリーの返事はない。どうも母親が帰ってから元気がない。

「シャーリー、あなたはどうする?」

 仲間外れにするわけにもいかないので声を掛ける。

「行く・・・」

 小さく話すシャーリーだった。


 購買部にはたくさんの人がいた。私達のように夕食までの時間を潰す目的の人もたくさんいると思う。

「すごい混雑してるね。大丈夫かしらね」

 マリーが不安そうに呟く。

「じゃあ、一人で不安になったら、キスカを探してそばにいればいいよ」

 私がそう言うとキスカがばっと私を見る。


「どうして私なの?」

 キスカは怒ってる風ではなく何か焦っているみたい。

「ごめん、気に障った?キスカは背が高くて赤毛で目立つし、何より頼りになりそうだと思ったの」

 私はやっちまったと思って謝った。

「ううん、いいの。私今まで人の役に立ったことがなくて、こんな私でも役に立てば嬉しい」

 ああ、なんて良い子なんだろ。うちに持って帰りたいわ。


「そうね。アンナの言う通りよ。キスカ、お願いね」

 マリーも同調してくれる。シャーリーはキスカを見上げて一歩近寄った。

 購買部に入るといろいろなものが売っていた。食べ物も売っていたがビスケットみたいな日持ちのするものばかりだった。筆記用具やノートもあった。教科書も頼めば取り寄せてもらえるらしい。

 中等部や高等部で使うような学用品も置いてある。


 私ってあまりお金を使うことってないのよね。だっておねだりすれば値の張らないものならレオン様が買ってくれるし、お姉ちゃんのおさがりもあるし、外食だってレオン様かお姉ちゃんが払ってくれるしね。

 でも目の前に私の小遣いで買えるものが、これでもかって並んでるのよ。少しぐらい、かまわないわよね。

 私が五袋目のビスケットを取った時、私の手首を握る人がいた。

「そんなに買ってどうするの?」


 優しくそう言うのはマリーだった。

「みんなで食べたら楽しいかなって思って・・・」

 私がそう言うとマリーは優しい顔を保ったままで、私の買物かごの中をチェックし始めた。

「お菓子はありがたいけど一袋で十分よ。ノートは一ヶ月間しか使わないから一冊あればいいのよ。トランプは誰か持ってるかもしれないから聞いてからね。・・・足りなかったらまた買いにくればいいのよ」

 私の買物かごはノート一冊とお菓子一袋になった。


 私の山盛りだった買物かごが、底の方に少しだけになってしまった。悲しい。

「いい、無駄にお金を使っちゃダメ。本当に要るときに無くなってるわよ」

 うう、お姉ちゃんに言われてるみたい。

 解るよ、解るんだけど心が要るって言っているのぉ。

「アンナ、これからも購買へは一人で行っちゃだめ!解った?皆にも言っとくからね」

「はい」


 うう、私、本当は購買部のもの全部買っても余るぐらいお金があるんだよって言いたい!言いたいけどマリーの言ってることは正しいってことは解るんだ。

『解るのなら素直に従え!』

 いきなりロキにも怒られた。

『あんたまで怒ることないでしょ!』

『たまに顔を出さんと忘れられるからな』

『はいはい』


 ******


 購買から戻って寮の食堂で夕食を食べた。四人でお風呂に行く。

 基本的にはアルカディア城と同じで、ポンプで屋上にあるタンクに水を上げ、魔法で温めたお湯を供給してた。

「すっごーい!あれ全部お湯なの?!」

 キスカが大きな湯舟を見て騒ぐ。普通の人は湯舟には入らないと言うかお風呂自体がない。普通は桶のお湯で洗うくらいだ。


「まだ入っちゃだめだよ。お湯が汚れるから先に体を洗うんだよ。脱衣所に書いてあったでしょ」

 私はアルカディア城で毎日入ってるので慣れてる。

 人に裸を見られたことない彼女達は、恥ずかしそうに体を洗っている。私は女子会のメンバーと一緒に入ってたからあまり恥ずかしくない。

 キスカが細身で背が高くフェリ様に似てる。マリーはふくよかでエリーゼ様タイプね、シャーリーは一人離れてるよ。どうしたんだろ。


 ******


 部屋に戻った。みんなパジャマの上にカーディガンを羽織ってる。

 勉強用の椅子を持ち寄って雑談を始める。城でやってたパジャマパーティーの再現だ。

「マリーやキスカは大人びてるね。いくつなの?」

 年齢を聞いてないのに気付いた。

「私は13歳、キスカも同い年よ。アンナは?」


「私は11歳だよ」

「えー、二つも下なの、信じらんない」

 マリーは大げさに驚くが購買で、ずいぶん上から言われたのだが。

「アンナのカーディガンもパジャマもずいぶん良い品だね」

 キスカが細かいことをチェックしてくる。レオン様にねだって買わせたから、それは良いものなんだよ。


「コトネ様のお古がもらえるから。シャーリーはいくつなの」

 適当にごまかしておこう。

「・十二・・」

 俯いたまま答えた。大丈夫か?最初会った時との落差がすごいんだが。

「大丈夫?」

「気分が悪いから・・寝る」


 シャーリーは自分のベッドに上がって布団をかぶった。

 こうなると私達も騒いでるわけにもいかないから、自分のベッドに潜り込んでライトを消した。


 ******


「ちょっと、起きて」

 私は夜中に起こされた。

「どうしたの?」

 私は寝起きが良いのですぐに起きた。マリーが私のベッドの横にいた。

「シャーリーが居ないの。ベッドも冷えてるから、ずいぶん前に居なくなったと思う」


 私は探索魔法を起動する。一日一緒に居たから魔力のパターンは覚えてる。

 シャーリーは学園の外にいた。ここから1kmは離れてる。

 ヤバい、悪意を持ってる人が近付いている。

 最近私は人間の強い感情も探索できるようになった。

「マリーはここで待ってて。私が探しに行くよ」


 私はカーディガンを羽織って部屋を出る。後ろでマリーの呼ぶ声が聞こえるが相手をしていられない。

 廊下を走ってマリーが見えないところまで来たら、窓を開けて外に飛び出した。

 空には満月に近い月が煌々と輝いて地上を照らしていた。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

さあ、シャーリーは無事保護できるのか?

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