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14-14 コトネの行方

ご愛読、ありがとうございます。

 戴冠式も終わり、大災厄の会議が終わったレオンに皇帝と王太子が面談を求めてきた。レオンはフェリとエリーゼとの初夜を終え、新しい段階に入るのだった。


 〇<コトネ>

 ここはどこ、何も見えないし、何も感じない。

 私が目を覚ますと何もない空間にいた。


 私は、・・・そうだ!結婚式に行かなくちゃって・・・どこにいるのかも分からないのに・・・。


 そうだ、この感じ、覚えがある。・・・あれはミラさんのお姉さんと戦った時。

 ゲート魔法って言ったかしら、そうよゲートとゲートを繋ぐ魔法。

 ゲートとゲートの間の通路、ワームホール。・・・


 結婚式の準備に教会に呼ばれてて、アンナが荷物持って「先に行くよ」って・・・。

 誰か来たんだっけ・・・頭が痛い・・・なんでこんなに頭が痛いの・・・。


 私、ワームホールにいるの???・あの時ミラさんがなんか言ってた。・・。大事なこと。

 後を付いて来てって・・・見失うと・なんだっけ・・・出れなくなる。


 ああ、頭がおかしくなりそう。私は元の世界に戻れないの???

 こんな場所じゃあ、アンナだって探せない。


 あの時アテナさんが来て、なんか言われて・・・あの感じ前にも・・・神獣人の力が暴走して・・・

 そうか神獣人になったけどその力をコントロールできてなかったのか。


 私・・・何を考えていたんだろう。ここはどこなの。助けて!レオン様。


 〇グリューズバルト侯爵邸 <ウラノス>

 クロノス様は地下に監禁した猫獣人の様子を見ているらしい。

 何やらゲートとかワームホールと言ってるが私には分からない、結界のようなものだと聞いた。

「どうですか?」

「起きたようだ。しばらくはまともに思考できまい。脳をかなり揺さぶったからな」


「どのようにして捕獲されたのですか?」

「アテナの姿を借りたのは話したな。なに、煽って嫉妬とコンプレックスを暴走させたら、隙だらけになったから脳を揺さぶり気絶させてゲートに放り込んだだけだ」

 良く分からんのだがゲートを繋ぐとここからアルカディア城にすぐに行けるらしい。今はゲートは閉じられて使えないらしい。


「そんな便利なものがあったら兵を好きなところに送り込めますね」

「まあな。千年前のノクト連邦にはかなり使ってやったな。あれは魔導科学だけで戦う面白みがなかったからな」

「今回の戦いでは使わないのですよね」

 この人は戦いの勝ち負けではなく、面白さに価値を見出すのだからどうしようもない。何とか私の利益になる様に誘導したい。


「それで猫獣人はどのようにするのですか」

「これを使う」

 クロノス様が手を挙げると仮面があった。さっきまで何も持っていなかったのに。

「それは」

 顔をすべて覆い、目のところだけ穴が空いてその周りが赤く縁取りがされている白い仮面だった。


「これは悪魔の仮面だ、その名の通りこれをつけると思考が悪魔になり、俺の言うことには絶対服従だ」

 おお、面白そうな魔道具だ。

「それを猫獣人に着けるのですか?」

「そうだ、そして猫獣人とレオンを戦わせる。レオンは修行後実力を見せておらん。この俺と戦えるようになったか見ておきたい。猫獣人も神獣人に進化したようだからレオンの実力を引き出せるだろう」


「なんとレオンの実力は神獣人以上とおっしゃるのですか?」

「そうでなければ俺とは戦えぬよ」

 ということはクロノス様の実力も神獣人以上ということか。

「しかし、瘴気が足りないから、今度ゲートを開けるのはいつになることやら」



 〇アルカディア城 <レオン>

 朝起きた時に俺の両側に美少女が寝ていた。

 俺も結婚したんだなあ。そう実感した。

 二人を起こさないように静かにベッドから抜け出すと、二人のパジャマはまだベッドの横に置いてあった。

 時間的には皇帝と王太子との会談まで間があった。


 嫁たちといちゃいちゃすることも考えたが、コトネのこともあり起きることにした。

 着替えてメイドに湯を用意させる。顔を洗って身だしなみを整えて執務室に行き、アンナを呼ぶ。

 アンナは来たが不満そうに尖った唇が俺を責めていた。

 連れてきたクロエは苦笑いをしていた。昨日はかなり文句を言ったのだろう。


「アンナ、お前は今日はミラの部屋にいて、ミラが来たら教えろ」

 ミラの部屋はミラが魔人国と繋がったゲートが設置してある部屋だ。

「ミラさんが来るの?」

「調子が良ければそろそろ来る頃だ」

「ミラさんが来たらどうなるの?」


「俺はコトネが消えた時にアンナに見つからずに移動する方法を考えた。

 一つはコトネが隠形を使って移動する。これは誘拐ということで消えた。

 もう一つはゲートを使うものだ」

「あ、じゃあ、ミラさんが!」

「違う!ミラはそんなことはしない。それはお前も分かるだろう。ただ手掛かりを見つけられるかも知れん」


「分かったよ。ミラさんを待ってみる。クロエ姉ちゃんもお願い」

「もちろんだよ」

 二人は奥の間の方に歩いて行った。奥の間とは俺や奥さん達の私室がある場所だ。

 入れ違いに奥さん達がやってくる。おや、なぜかご機嫌が悪そうだ。

「あんたねえ、初っ端からかわいい奥さん置いて、仕事に行くってどういうことよ」

 エリーゼは結婚して安心したのか言葉遣いが昔に戻っている。


 どうも朝もイチャイチャするつもりだったらしい。

「ごめんよ。コトネの情報を集めなくちゃいけなくて」

「こ、コトネちゃんの件なら仕方ないけど。私達を起こしてくれてもいいじゃない」

 コトネの名前を出せばエリーゼも黙るしかない。


「それでどうなの」

「全然手掛かりなし、サスケのところにも有力情報はない」

 サスケは通商部の責任者で西大陸のあちこちへ支店を出す準備をしながら情報も収集している。

「そうなんだ、心配ねえ」

 フェリの顔も曇る。


 コトネの行方不明は単なる花嫁の失踪だけでは済まない。彼女はアルカディアの四人の最強兵器の一人だ。科学的破壊兵器の無いこの世界では個人の戦闘能力がそれを超える。したがって彼女が他の国のものになることは脅威である。彼女を第二次世界大戦の日本の兵器に例えるなら、戦艦大和の攻撃力と防御力、零戦の機動力を持った兵器と言ったところか。この後の皇帝と王太子との会議もそこらではないかと思う。


 時間が来て皇帝と王太子がやってきた。そのまま執務室で余人を交えぬ話し合いになった。

「いきなりだがコトネ殿がいない状態で同盟の戦力は大丈夫なのか?」

 皇帝が痛い所を突いてきた。まあ、こんな話は昨日のみんながいる場ではできないわな。

「今解っているのは悪魔王と上級悪魔が三人ということだけです。それだけであれば対応できます」


「北の国々では多くの下級悪魔が誕生するのだろう。それの手当てはどうする」

 王太子も昨日の話で焦っているようだ。

「ノクト連邦の戦闘記録は残っていませんが、その前の戦闘記録を紐解くと下級悪魔がレベル3~4、中級悪魔がレベル5~6で、下級悪魔50人~100人を中級悪魔が率いていたようです。それらには各国で対応していただきます」


 とりあえず二人にはアリスから聴取した二千年前の大災厄の記録を渡した。千年前はアリス自体が埋まっていたので記録がないし、三千年前はまともな文字自体がなかったみたいだ。

 他の国に記録を渡さなかったのだが、帝国の衛星国は戦力を帝国に頼っているし、獣人国は我が国が指導して戦う予定なので、余計な考えをしないようにだ。


 会議はこちらからの情報提供が主になって続いていた。

 そこにアンナからの従者通信が来た。会議を中断して従者通信に集中する。


『レオン様、ミラさんが、ミラさんが来たよぉ!』

 本当に来るとは思ってなかったのでびっくりした。

『コトネの部屋に連れて行って、ゲートの痕跡を確認してもらってくれ』

 ゲートの魔法使いで在るミラなら何かわかるかもしれい。甘い考えではあるけども。



 〇コトネの私室 <アンナ>

「アンナちゃんそんなに引っ張らないで。私妊婦なんだよ」

 お姉ちゃんの部屋の扉を開いてミラさんにお願いする。

「早くゲートを調べて、お姉ちゃんがどこに行ったか教えて!」

 クロエ姉ちゃんが「ごめんなさい、ごめんなさい」ってミラさんに言ってるけどどうして?。


「あわてないで、今からしら・・え、これって」

 部屋に入ろうとしたミラさんが立ち止まる。何かあったの。

 入り口の扉の外側をじっと睨むミラさん。

「本当にあったよ。ここにゲートの痕跡がある」

 ああ、信じてなかったんだあ。


「どこに連れていかれたか、調べてよ」

「無理よ。そんなの判るわけないよ」

 間髪入れずに言いやがった。

「あんた何のために来たのよ!」

「そんなの遊びに来たのに決まってるでしょ」


 そっかあ、お姉ちゃんが誘拐されたの知らずに来たんだから仕方がないのか。

「それなら結婚式の日に来なさいよね」

「そんなの、あの子達が着飾ってるの見るって悔しいじゃない」

 ミラさんは子供作るだけの愛人契約だから派手な結婚式はできないんだ。

 お姉ちゃんどこにいるの。アンナはどうしたらいいの。



 〇グリューズバルト侯爵邸 <ウラノス>

 数週間後のグリューズバルト侯爵邸。


 私はクロノス様に呼び出されて、猫獣人を監禁している部屋に顔を出した。

 この部屋には結界が施されており、精霊通信や探索魔法を阻害する。

「ウラノスよ。ようやく魔力が溜まったぞ」

 おそらくゲートとやらの魔法を使うつもりだろう。

 私は仮面を着けて椅子におとなしく座っている猫獣人を眺めた。


 この娘は結婚式に臨むはずではなかったのか。なぜメイドの服装でいるのか。

「この格好ではすぐに本人とばれてしまう。注文した服が届いてるだろう。持ってきてくれ」

 クロノス様はメイドに指示を出すと私の方に向き直った。

「この娘にアルカディア城に攻め込ませる」

「ひ、一人でですか?」


「そうだ、彼女にはレオンの実力を引き出してもらう。そのために潜入者に映像を送る魔道具を送ったのだ」

 この方は戦力とかを考えない。オリンポスの時もそうだったが、平気で戦力をすり減らす。戦いを面白いかそうでないかで見ているので勝負に固執しない。


 メイドが衣装が入っているだろう箱を抱えてやってきた。

「部屋を出よう。レディの着替えを覗くのは紳士の行いじゃないからね」

 クロノス様はそういって私と部屋を出た。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はレオンとコトネの対戦の予定です。

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