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14-11 戴冠式

ご愛読、ありがとうございます。

戴冠式が始まります。

 コトネの思い付きの故郷訪問を説得してやめさせたレオン達、戴冠式に向けて準備に熱が入る。


 〇アルカディア城 レオンの執務室 <レオン>

 俺の執務室にサスケが報告に来たので宰相と相談役、フェリで話を聞くことにした。

「ハーヴェル、アルカディア、ザルツブルグで春蒔き小麦の収穫が始まりました。多くの農民から買い取り分の半分くらいを王国に寄付する動きがあります」

「どういうことだ。余剰分は全部買い取ると言ってあるが」

 なぜ寄付をするのか訳が分からなかった。一応余剰分の買い取る金は用意してある。


「はい、農民たちが言うには、王の食料供給のおかげで飢えずに収穫までこれたので、その分を返したいということらしいです。どうされます?」

「宰相どうすべきだ?」

「国民も王を祝いたいのでしょう。ありがたく貰っておきなさい」

 俺は少し考えた。

「役人から王が喜んでいたと伝えて、引き取ってくれ」


 エドゥアルトの収穫は今からだが、今回は二割ほどを売りに出し、後は備蓄する予定だ。

「戴冠式の宿泊所のことですがすべて完成いたしました。今は調度品の搬入を始めています」

 相談役に宿泊所のことを任せたが、さすが元元帥、人の使い方がうまい。

「財務の方は順調よ。サスケさんのハーヴェル工場群の製品の拡販がうまくいって余裕ができてきたわ」

 フェリの報告もうまくいってる。


 軍務大臣のロンメルから軍事パレードの予行演習をやりたいと言ってきてたな。それも相談しないと。


 朝からの執務が終了して俺はアンナとクロエを呼ぶ。

「コトネの様子はどうだ?」

「相変わらず明るくなったり、落ち込んだり、攻撃的になったり安定しないわ」

 アンナが心配そうに報告する。

「マリッジブルーなら結婚式が済めば解決すると思うが」


 コトネがひと月ほど前から精神が不安定だ。原因が分からないので手の施しようがない。今はアンナに加え、クロエを呼んで対応している。心配してるのがバレると余計に不安定になりそうで怖い。



 〇ヴァイヤール王国 グリューズバルト侯爵の館 <クロノス>

 クロノスことハインリッヒ=グリューズバルトは謁見室の奥の椅子に腰かけていた。

 ウラノスはそのあまりに不興を隠さぬ様子に不安を抱いていた。自分の長男に悪魔王が宿っていると知った時、彼は長男を使ってヴァイヤール王国を手に入れようとした。しかし長男の力は彼が御せるものではなく、今は忠実な部下となってしまった。


「クロノス様、いかがなさいました?」

 不興の原因を聞かないといよいよ荒れると思って聞いてみることにした。

「つまらぬのだ。レオンハルトが戴冠式をするというのに、俺には妨害する手立てもない」

 要するに退屈なのかと判断したウラノスは聞いてみた。

「戦力を小出しにしてもこちらがじり貧になるだけです。ここは我慢なさるべきではないでしょうか?」


「俺はこの星からはるかに離れた彗星の巣と呼ばれる真っ暗な空間で生まれた。それから数千年か数万年か知らんが孤独に過ごした。長い年月の間に力の使い方を覚えて、俺の星を動かして太陽に向かって進んだ。俺は地球を知った。人間の住む星を見つけたのだ。俺は依り代を見つけて地球に降りた。


 しばらくは楽しめたが、すぐに退屈になった。そこで俺は俺の星がやって来た時に瘴気を振らせて、悪魔を作り人間を襲わせた。すると人間は科学と魔法を合わせた武器を作り反抗してきた。俺は個人と個人の戦いが好きなので、完膚なきまでに滅ぼしてやった。確かノクト連邦と言ったかな。

 だから今度は俺と戦えるぐらいの戦士を生み出したかったのだ」


 ウラノスは長い話を聞いて、ややうんざりとした顔をした。

「だから戦力の逐次投入をして、敵の能力向上を図ったと言うことですか?」

 クロノスに皮肉は通じない。

「そういうことだ」

 ウラノスはため息を吐いた。


「そういうことなら、アルカディア城に潜入している者から、神獣人に進化した娘が精神的に不安定になっていると連絡がありました」

 アキラの店に比べ、アルカディア城は機密保持の面ではかなり劣る。毎日数千人が出入りするのだから仕方のない面もある。

「よし、それを利用して何か仕掛けてみるか。さらに具体的な内容を探れ」

 クロノスはまた悪だくみを始めた。



 〇アルカディア城 <レオン>

 いよいよ戴冠式の日になった。アルカディアではアルカディア城の南側の道がメインストリートとなっている。そこを近衛騎兵が儀礼服に身を包み、行進する。軍楽隊はアルカディア城の前で勇ましい行進曲を演奏する。アルカディア地域の兵が近衛騎兵の後を一糸乱れず行進する。

 道の両側には見物に来た町民が歓声を上げる。


 これが俺を祝うためにやってくれてると思うとかなりの違和感がある。俺はこの地域の民を守るために王になった。祭り上げられたと言ってもいい。だからなるべく早く民主主義に移行したいと周りの者に告げている。

 俺は辺境貴族のミソッカス三男坊から何か変わったのだろうか。確かに強くはなったがそれだけの気もする。ヨシムネ先生に褒めてほしくてホウライ国まで行ったが褒めてもらえてない。


 貴族以上の身分になったし、皇女と王女を嫁にして長く仕えてくれたコトネにもそれなりの身分に着けられた。一緒に戦ってくれたジェリル達にも親衛隊という職務を与えられた。後はアンナとクロエを何とかしたいが大災厄後になりそうだ。

 流石にミソッカスとは言われなくなったが、俺自体はコトネとアンナを連れて、ボロ馬車で辺境を出た時と何か進歩しているように思えない。


 とにかく今は英雄王を周辺国や国民に見せなければならない。

 城のベランダに出て、手を振って見せる。国民から一段と大きい歓声が上がる。

 そうだ俺はお前達を救う英雄王なのだ。

 考えるだけで空しさを感じるが、俺はその使命が終わるまで英雄王で居続けないといけない。

「陛下、そろそろ教会に移動してください」


 侍従に促されて俺は城を出る。俺の周りにはジェリル達親衛隊が俺を守る。神妙な顔のジェリルを見たらおかしくって我慢できず笑ってしまった。

「レオン、何を笑っている」

 ジェリルはまだ慣れてないのか俺を呼び捨てにする。まあ、俺が許しているのがいけないのだがな。

「珍しくお前がまじめな顔をしてるからだよ」

「何!」


 ジェリルもさすがにここで怒り狂うことはない。



 〇コトネの私室 <コトネ>

 アンナが忙しそうに駆け回っていた。

「お姉ちゃん、衣装を教会に先に運ぶんだって。私、行ってくるね。お姉ちゃんはフェリ様たちと一緒に来てね。もうすぐだと思うから」

 ふー、緊張するなあ。結婚するとどうなっちゃうのかな。レオン様は私はまだ子供だから子作りは成人してからって言ってたなあ。なら今までと変わらないんじゃない・・結婚する意味あるのかな。


 ノックの音が聞こえた。アンナはノックなんかしないしお迎えかな。

「どうぞ」

 ドアを空開けて入ってきたのは予想しなかった人物だ。

「忙しいところ、すまないな」

 そこにいたのはアテナさんだった。


「どうされたのですか?」

「急なことで済まないな。お別れのあいさつに来た。みんな忙しそうにしているので、お前に言っておくことにした」

 アテナさんは表情のない顔でいう。それはこのタイミングで空いている人は少ないだろうな。

「お別れって?」

「ウラノスから連絡が来た。帰って来いと」


 ウラノス、そういえば彼女は人造人間(ホムンクルス)、創造主の命令は無条件で聞かなければならないと言ってたな。レオン様もそんな人を近くに置くってなんて器が大きいと言うかなんというか。

「そうなの。こちらの不利になることは話さないでね」

「それはウラノス次第だ。私に主導権はない。短い間だったが世話になった。お前も三番目とはいえレオンの嫁になるんだ。しっかりと役目を果たせ」


「三番目?レオン様は私を一番愛してくれてるんだよ」

 なんで、私はレオン様と一緒に居れたら良いんじゃなかったの。何だろう、この胸の中にグシャグシャになるような気持ちは・・・。

「だってお前は第三夫人なんだろう。じゃあ、三番目じゃないか」

 違う!違う!私はレオン様の一番なんだ。アンナも言ってたんだ。私が一番愛されてるって・・・。


「そうか、ミラもいるから四番目になるのか」

「あああ!!言うなああ!!」

「お前は奴隷上りの平民なんだから、相手をしてもらえるだけで上等じゃないか」

 この時の私はもう何も考えられなかった。頭の中は怒りと嫉妬でドロドロになっていた。

 その後の記憶はない。



 〇教会 <レオン>

 教会に入ると左側に俺の両親と教会関係者が、右側に招待客が並んでいた。

 会わせて千人はいる中を俺は歩いていき、一番奥の椅子の前まで来た。

 椅子の左側には教皇アルテミスが居てその後ろに聖女ジュリアが冠を持っていた。


 振り返ると招待客の一番前は帝国皇帝と皇后だ。ジークが立太子したので国を出てこれた。

 二番目はヴァイヤール王国の王太子夫妻だ。やはり王は顔を見せない。

 三番目は獣王だ。夫人は粛清したのでいない。

 バルドゥオールとユグドラシルとエルハイホの外相が並んでいる。その後ろに我が国の宰相達がいる。


 その時だ。従者通信が入った。

『お姉ちゃんが居なくなった。どうしよう』

 アルテミスが神への言葉を連ねているがまったく頭に入ってこない。

『アンナ、お前の探索でも見つからないのか』

『うん、ぷっつりと消えちゃったの』


「・・・いて、陛下」

 隣でアルテミスがつんつんつついてくる。跪けと言うことらしい。

 俺は慌てて跪く、ここで儀式を中断するわけにはいかない。国民を落胆させるし、招待客にも悪印象を持たれる。

 アルテミスがジュリアから受け取った王冠を俺の頭にかぶせる。


 ここから俺の演説だが覚えた内容をただ話すだけで、頭はコトネのことでいっぱいだった。

 俺は拍手の中着席してアンナ達に指示を出す。

『ノルンやゴロを使っていい、探せ!クロエも捜索に参加しろ』

 戴冠式が終わって休憩の後結婚式となる予定だが、急遽皇帝・王太子・獣王・父を部屋を作り、呼んだ。


 席に着いた四人を前に俺は言った。

「コトネが失踪した」

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回、コトネの結婚式はどうなるのか?

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