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14-8 コトネの憂鬱

ご愛読、ありがとうございます。

今回はコトネが落ち込みます。

 サスケは通商部の責任者となるためレオン達と面会し、合否を待つ間アルカディアを見学します。

 一方コトネとアンナはテーベ川の水運に反対する村に行き、人質を解放しました。


 〇テーベ川沿いの漁村 <コトネ>

「アンナ、この人たち見ていてくれる?」

 人質が居ないなら村へ一人で交渉に行ける。

「なんでよ!また私に護衛させる気?」

 予想外にアンナからクレームが上がっちゃった。どうしよう???。


「だけどあんたじゃ、交渉できないでしょう」

 とりあえず私の正当性を主張しなくっちゃ。

「私、さっきまでクロエ姉ちゃんの護衛してたんだけど」

 う、痛いところを。私が多忙で行けなかったんだよね。でも親衛隊の人に頼むと絶対問題起こすよね。

 十一歳の少女より信頼できない親衛隊って何なんだとは思うけど。仕方なかったんだよ。


「あんた達、私達が戻ってくるまでここでおとなしくできるよね!」

 アンナは草の上に座る使者と護衛に強く言う。

 彼らは監禁生活と空中を運ばれたことで私達にびびってる。

「あのー私達はどうなるんでしょうか?」

「大丈夫だよ。交渉できるようになったら連れて行ってあげる」


 そっかー、私が交渉する必要ないじゃない。私最近一人で突っ走ってるなあ。

「わ、私が交渉するのですか?」

「あんた達そのために来たんでしょう」

「それはそうなんですが・・」

「平気平気、怖そうなやつは黙らせとくから」


 あまり時間を掛けたくないし、さっそく戻ることにした。

「お姉ちゃん、レオン様がいないと全部一人でやろうとするから注意してね」

「う、ごめんなさい」

 自分でも何回も反省しているのだけど、気付くとやってしまってる。

「ちゃんと皆をたよるからね」


 村に着くと人質を奪われた犯人?が広場で騒いでいた。

「獣王国の要請を受けたアルカディア王国のコトネと申します。この村の代表者を出してください」

「ガキが何を偉そうに喋ってんだ!おい、こいつらを捕まえろ!」

 広場にいた縦横大きな女が私達に叫んだ。

 村人とは思いにくい奴らが四人私達に向かってきた。


 丸腰の子供と侮っているのだろう。油断しまくっている。

 私は村人?に向かって走る。

 すれ違った四人は声も出さずに膝から崩れ落ちる。

 顎を軽く打って脳震盪を起こさせたのだ。


「弱いね。降参しなさい」

 私がそう言うとでかい女の両側にいた女が叫ぶ。

「お前らこそ降参しろ!ここにいるのはガララトのジェリルさんだぞ!」

「キャハハハ」

 アンナが笑い出した。


「あれがジェリルさんだって笑っちゃう」

「な、なにがおかしい!」

 あたし達は呆れながら種明かしをした。

「私はジェリルさんと一緒に魔獣狩りをしていたのよ。騙されると思ってるの?」

 偽ジェリルとその仲間は明らかに動揺を始めた。


「おのれえ!!」

 偽ジェリルは背中に背負った大剣を引き抜こうとしたが、半分しか引き出せず、ぴょんぴょん飛び跳ねる。

「あのね、背中に背負った剣を抜くときには剣を降ろすか、左肩に背負うのよ」

 丁寧に教えてあげたのになぜか怒ってる。


 一m以上の剣は腰に下げると地面に着くので、背中に背負うのが一般的だが、右肩の剣をそのまま右手で上に引き抜こうとしても半分ほどしか抜けない。だから肩から降ろしてから抜いて鞘を捨てると「小次郎破れたり」とか言われるので左肩に背負って右手をクロスさせて半分引き抜き、左手で刀身を抓んで右手を放し、左で残りを引き抜くと柄の方が落ちてくるので、それを右手でキャッチしよう。


「キーッ!おい寄越せ!」

 偽ジェリルが大剣を捨てると隣から渡された刃渡り六十cmほどの剣を二本両手に持った。

 双剣使いだったのね。

 ビュッビュッ彼女が素振りすると音速は超えないものの速い。こいつがレベル5か。

 ダッと地面を蹴って私の方にダッシュを掛けた。


 私に向かって剣を振り下ろして脇を抜ける。

 偽ジェリルはアンナの手前で止まると自分の剣を見て仰天する。

 おそらくそのままアンナを斬るつもりだったんだろうが、剣は二本とも中ほどで折れている。

「電撃」

 アンナの電撃魔法で偽ジェリルは崩れ落ちる。ついでに残った二人も電撃で気絶させる。


 そのままでは危ないので、両手に持った双剣の破片を掌の上に置くと一瞬で熔ける。

 私もたいがいの化け物になっちゃった。

「もういない?」

 アンナに犯人が残っていないか探知するように指示して、私はロープを収納庫から出して犯人たちを縛り上げる。


「敵意をあからさまにしている奴はいないから、終わったんじゃないかな」

 あいつらが外で騒いでいたから、村の人達は家の中に隠れているみたいだ。

「じゃあ、ここが村長の家だと思うから、どういう了見か聞いてみようか」

 さっき人質を監禁していたここで一番大きな家を訪ねてみよう。

「おーい、この村の責任者はいるかあ?」

 私は玄関の扉を開けて、中の人に問う。


 ここんとこ貴族の残党狩りとかやってるから、気持ちがささくれ立ってる。

 帝国が魔獣狩りをやめた影響で、傭兵が獣王国にも入り込んでる。アルカディア王国へ行ってくれれば兵隊とか他の職業に着けるのに、わざわざ政情不安な国に来て一攫千金を狙ってるんだろうか。

 この国で結構相手をした。たくさんの傭兵が処刑されたんだよ。もうやめてよ。


「なかなか出てこないね。中にいないの?」

「いるよ。四人」

 無意味に戦いを挑む奴らのせいで、かなりイライラしてる。なんで出てきてくれないのよ。

 私を見てアンナが家に入って行った。

「私が見てくるから外で見張っててね」


「おじいさん達が縛られてる」

 アンナが出てきて説明した。開放して連れてくればいいのに。

 おじいさんは村長だった。村長は傭兵達に村への人質になっていたらしい。

 結局、傭兵たちは村長と使者の身代金を取ろうと計画していたみたい。

 村は船の通行は妨げないということだったので、使者と護衛を連れてきて手続きをさせた。

 私達は犯人達をぶら下げて、旧ドーベルマン城に飛んだ。


 犯人の処置を任せてアルカディア城に帰ることになった。

「ねえ、なんで先に村長を開放しなかったの?」

「ああ、あれはお姉ちゃんがイライラしてたから、村長さんを怒鳴りかねないかなと思ったの」

 え、そんなに気を使わせてたんだ。確かにあの時イラついていたのは認めるけど、それほどだったかな。

「ごめんね。傭兵達が無責任に事件を起こすもんだから怒りが込上げて来て」



 〇アルカディア城 <アンナ>

 城に着いてすぐに夕食の時間になった。夕食は私達とレオン様、フェリ様、エリーゼ様が王族として一緒に食べるの。いつもはクロエ姉ちゃんも一緒なんだけど、今日はお客さんと一緒にハーヴェル工場群に泊まるらしい。

 食堂には執事やらメイドやらがたくさんいるから、あまり話して居れない雰囲気なのよね。そこでお風呂を上がってからレオン様の部屋に集合するようになったの。


 レオン様の私室には机や椅子もあるけど。毛足の長い大きめのラグを敷いて、その上に直接座ってお話しするのが、私達のお気に入りなの。レオン様は一人離れたクッションに座ってるわ。夏だからみんな薄手のパジャマでいるから恥ずかしいのかしら。

 フェリ様とエリーゼ様が今日の仕事の報告をした。さあ、お姉ちゃんの番だ。


「今日は獣王都で食料の配給や元貴族の兵隊だった人の再就職のあっせんなんかをやってたんです。そしたらドーベルマン城の方で船の通行に反対して人質を取った事件が起こったと連絡が来たんです。規模が十人以下と小さいので私とアンナが鎮圧に向かうことになったんです」

「よく反乱の規模とかが分かったな」

「はい。護衛の一人が解放されてドーベルマン城に連絡したんです」

 レオン様の質問にお姉ちゃんが答える。


「それで反乱者七名を捕まえて、ドーベルマン城に運びました」

「二人でか。重かっただろ」

「はい私が四人、アンナに三人頼みました。反乱者は傭兵崩れでした。それと村長は船の通行を認めてくれるそうです」

「よくやってくれた。獣王陛下も喜んで下さるだろう」

 レオン様はにこにこと上機嫌だが、私もチク・・いや報告しとかないと。


「レオン様あ、お姉ちゃんたら使者を放っておいて、自分で村長と交渉しようとしてたんです。最近お姉ちゃんは全部自分でしょい込む傾向があるので、注意しておいてください」

「ちょ・・アンナ、そんなこと今言わなくてもいいじゃないの」

 お姉ちゃんがアタフタしてる。

「まあ、こないだの獣王国での同盟の批准書の件では、俺も怒られたからお互い注意しよう。なっ!」

 レオン様は優しく諭してくれた。これでお姉ちゃんの暴走が止まると良いけど。


 その後二時間ぐらい騒いで、各々の部屋に戻った。フェリ様もエリーゼ様も優しい方で私達を獣人として蔑むことはない。お姉ちゃんの結婚生活も明るいものになるんだろうなと思った。

 そんなことをベッドに腰かけて考えていたら頭をコツンとやられた。

「いて!何すんのよ」

「私のこと、レオン様にチクった罰だよ」

 ことのほかお姉ちゃんが怒ってる。いつもなら笑って流してくれるのに。


「だって怒って貰わないと私がいるときは良いけど、いないときに暴走すると危ないじゃない」

 私も怒った。今のお姉ちゃんならケガとかはあり得ないけど、周りとしこりができるかもしれない。

「大丈夫だよ。ちゃんとできるから」

 おかしいっ!、前のお姉ちゃんなら、こんなに意地を張ることは無かった。悪いと思ってたんだから念を押しただけなのに。


 お姉ちゃんは向こうを向いてシーツを被った。お姉ちゃんと私は同じベッドで寝ている。

 今まで、私に怒ったまま眠ったことはない。これがマリッジブルーという奴だろうか。それなら言うだけ怒らせるだけだ。

 仕方ない、誰か大人の女の人に聞いてみよう。ヴォルガンフ宰相の奥さんはよくできた人だって言ってたな。もう、明日明日、眠ってしまおう。


 夜明け前、すすり泣く声で起こされた。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 隣で寝るお姉ちゃんが泣いてる。ガバッと上半身を起こしたお姉ちゃんが言う。

「アンナ、私はレオン様に愛されないわ」

 この人はいきなり何を言い出すのだろう。そんなことありえないのに。


「心配しないで、レオン様が一番好きなのはお姉ちゃんよ」

「フェリ様はカッコいいし、エリーゼ様はセクシーよ。私なんてチビガリなのに」

 そんなこと言ったらミラさんが一番カッコいいし、セクシーだ。いや、今はそんなことじゃない。

「あの二人は向こうから望んだんだ。お姉ちゃんはレオン様に望まれたんだよ」

 そうだ、それが真実だ。


「本当に、それを信じていいの」

 ふう、やっと泣き止んだ。

「当たり前でしょ。本当にレオン様が好きなのはお姉ちゃんだけだよ」

「そう、良かった」

 お姉ちゃんが抱き着いてきた。本当に世話のかかるお姉ちゃんだ。

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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。


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