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14-5 獣王の養女

ご愛読、ありがとうございます。

今回は獣王国の話とクロエの話です。

 レオンはハーヴェルで水運の可能性を確認した。


 〇アルカディア城 俺の執務室 <レオン>

 俺は執務室の机に突っ伏していた。

「アンはだめだったかあ」

 俺はハーヴェルから戻ったアンに通商部の責任者を推薦できないか聞いたのだが、彼女は自身のブロスト商会の利益に固執しており、有意な話し合いができなかった。


「レオン様、通商部って何をするのですか」

 明日は獣王国に行くことになっているので、迎えに来たコトネが質問する。

「ああ、主にハーヴェル工場群で作った商品や税で集めた穀物などを売り捌いたり、売れそうなものを作らせたりする部門だ」


「ヴァイヤールや帝国にはそういう人はいないの」

 コトネの横で足をぶらぶらさせているアンナがつまらなそうに言う。あまり興味はなさそうなのだが相槌みたいに話している。

「そうだな。ヴァイヤールも帝国も基本殿様商売なんだよ。だからそういう人が育たないんだよ」


 彼らは驚くほど商品価値が分からない。だから商人にぼられている。俺は旧イエーガー領でいやというほど見てきた。

「それならクロエお姉ちゃんに聞いてみればどうでしょう。すっごくよく知ってますよ」

 コトネが提案してくれた。クロエは忍者だから知っているかも。

 今、クロエはっと・・・獣王国にいるな。あちらで落ち合うことにしよう。


 普段はクロエにあまり指示を出さずに自由に動いてもらっている。彼女は放っておいても俺やコトネの利益になる情報を探ってくれる。そこらへんは彼女の直感と技術を信用し、信頼している。

 とりあえず今回の趣旨について従者通信で伝えておく。

 クロエには当てがあるような感じだ。期待しておこう。


 俺とコトネとアンナは空を飛べるので二時間ほどかけて獣王国の王都に向かうことにした。

「レオン様、お姉ちゃん速すぎぃ!ちょっと加減してよぉ」

 俺とコトネが四式で飛ぶのに対して、アンナは精霊風魔法で飛んでいる。その差なのかアンナの速度が遅い。


「レオン様抱っこして」

 アンナを待つのに空中で停止しているとアンナが甘えてきた。

「仕方ないな。アンナもゴロにばかり頼ってないで、飛ぶ練習もしないとな」

 ちなみにゴロはアキラさんが連勤工房に復帰したので薬草採取に忙しい。


<コトネ視点>

 結局アンナは今私の前をレオン様にお姫様抱っこされて飛んでいる。

 ふとレオン様の肩越しにアンナの顔が見えた。

 アンナは私を見てニヤアと笑った。

 あの子、騙したのね。あれだけ魔力があって遅いっておかしいと思ったのよ。

 後でお仕置きしてやらないと。



 〇獣王国王城 <レオン>

 俺が獣王国に来たのは同盟の批准とコトネの養女問題だ。

 同盟はまあ問題ないだろう。獣王国側のメリットが大きいからな。

 養女問題はコトネが平民出身にこだわっていたため、俺が冗談で言ったことをコトネがさっさと実現してしまった。

 これも獣王国側にメリットが大きいと思う。


 そうこうしているうちに獣王国の王城に到着した。

 アンナを降ろすとコトネにムフーと鼻息を荒くしている。どうしたんだ?。

 驚いたことにコトネとアンナは門を顔パスである。かえって俺が門番に呼び止められた。


「この方はアルカディア国王、レオンハルト=アルカディア様です」

 コトネがなんで知らないんだと言った調子のしっ責口調で門番に言う。

 流石にそれはかわいそうだろう。初対面なんだし。

「も、申し訳ありません」

 あーあ、門番が小さくなっているじゃないか。


「君は間違ってないよ。これからもその調子でこの門を守ってね」

 俺は門番にフォローを入れ、門をくぐる。

 正面の二階だろうか、大きな穴が開いている。

「もしかしてあれ、君たちがやったの?」

「だって仕方なかったんです」


 コトネの言い訳を聞いていると、執事らしい中年のおじさんが案内に来てくれた。

 城に入り、階段を上ると廊下の突き当りの部屋も穴が開いている。

 一応廊下は修理がされているみたいだ。

 廊下の中ほどの獣王の執務室があった。


「これはアルカディア王ですな。よく来てくださった」

 人懐っこい感じの獅子人が両手を広げて歓迎してくれた。それが獣王だった。

 一通りの社交辞令をした後、同盟の批准書を取り出した。

「前もってお渡しした覚書の通りの内容です。確認してサインしてください」

 俺は同じ内容の批准書にサインして、獣王がサインした批准書と交換してサインする。

 これでアルカディア王国と獣王国の同盟が成立した。


 すでにアルカディア王国は兵を一万人送って、治安を回復する作業を手伝っている。

「いやあ、これで枕を高くして眠れるというもの。カールサイス公国が国境付近に兵を集めておるとの情報があり、こちらは兵力が瓦解した状態でしたのでな」

 カールサイス公国はカール帝国の分割した国の一つだ。レッドベア辺境伯はこの国と睨み合ってたようだが、レッドベア辺境伯が滅んだので手を出そうとしていたようだ。


 まったくカールサイス公国とカールスーリエ王国は似た行動をするもんだ。彼はカール帝国の再建を狙らっているようだが考え方が古いので、我が国や帝国には勝てないだろう。

 その情報を集めたのはクロエだ。まったく彼女の情報収集は信じられないくらいの精度で在る。


「しかし、我が国のような弱小国と同格の同盟を組んでいただけるとはまことにありがたい限りです」

 これはコトネ達が連れてきた王太子か。長く平民の暮らしをしてきただけあって、期待できそうな人だ。

「いえいえ、テーベ川を使った水運をやるには貴国の協力はぜひとも必要になりますから」


 テーベ川は東の山脈を水源としてヴァイヤール王国からエドゥアルトとザルツブルグ(旧聖金字教国)の間を通って、王都アルカディアと獣王国の間、ハーヴェルとバルドゥオール王国の間、そしてガララト山を避けて帝国に流れ海に至る。

 大河であるため、国境になっているので多くの国と接しているのである。


「はい、我が国も鉄鉱石と石炭が埋蔵されていることが分かっています。輸出先があるなら安心して開発できます」

 これから鉄はその用途を爆発的に広げていくだろう。魔力ポンプが発明された今、時代は産業革命に向かって行くとアキラさんも言っていた。


「川の漁労民はどうしたら良いですか?」

 王太子が俺に聞く。この人も自分で商売してたんだけど、人を使ったことがないので漁労民の保障だけ考えているようだ。


「まず国で船を買って漁労民を水夫として雇えばどうでしょうか。そうして商売を覚えればいずれ独立して商人になる者も出てきましょう」

 誰でも現金を持つようにならないと経済は回らない。四貴族のように国民から搾り取るだけではいずれ破綻する。せっかく中央集権制になったのだから、経済を回すことを心掛ければ国は強大になっていく。


「レオンハルト殿、私はあなたを見習って我が国を豊かにします。これからもよろしくお願いします」

 王太子は俺の歳の倍以上の年齢だ。あまり慕われるとこそばゆい。獣王様も笑ってないでもっと自主性を持ってくれ。

 うん、コトネは俺が王太子に慕われているのがうれしいのか、俺を称賛するような顔をしているし、アンナはあくびを噛み殺している。そろそろ話題を変えた方が良さそうだ。


「コトネを獣王陛下の養女にしていただく件ですが、本当によろしいのですか?」

「おうおう、そうじゃった。もちろんじゃ。わしの娘としよう。ついでにアンナ君も養女になってくれ」

 獣王は王太子を探し出し、ヴァンパイアから獣王国を守ったコトネをずいぶん高く評価したようだ。

 これからのことを考えればアルカディア王国との絆は深い方が良いというのもあるんだろうな。


 コトネとアンナは獣王に証明書を作ってもらってお互いに見せ合いっこをしている。まったく本当の姉妹のようだ。

「ねえねえ、レオン様、私の名前、アンナ=レオパルドになるんだって」

 アンナが証明書を俺に見せに来た。ちゃんと王印の押された正式なものだ。

 コトネは獣王に深く頭を下げて感謝を表している。


「それで、獣王陛下には十月に行う戴冠式とそれに続く結婚式に、新婦の養父として参加いただきたい」

「それはありがたい。でどの国が参加するのかな」

「リヒドガルド帝国・ヴァイヤール王国・獣王国・バルドゥオール王国・ユグドラシル聖皇国・エルハイホ共和国ですね。カールスーリエ王国とカールサイス公国には断られました」


「ほほう、招待客は何人ぐらいじゃ」

「六か国で五十人くらいです。我が国の人間を入れると三百人くらいになりますね」

 うん、獣王の目が潤んでる。そんなに嬉しいのかな。

「今まで我が国が祝い事でよその国に呼ばれたことがないのじゃ。コトネ殿に感謝しなくてはな」

 そうか獣人の国だからか。これからは、同盟国の一つとして、テーベ川経済圏の一つとして、周りの国と平等に付き合っていきますから、頑張ってください。


「それとじゃ、コトネ殿達に勲章を授けたいのじゃが、今までの勲章は四貴族も貰っておったで縁起が悪い。新しいのを作っておるからもう少し待ってくれ」

「はい、ジェリルさん達は何の褒賞も貰ってないのでよろしくお願いします」

 そういや褒めただけで何もやっていない。まずいな。俺も何か考えなくては・・・。


 その後クロエも合流して昼食をごちそうになって帰ることにした。

 クロエの話も獣王の前では差しさわりがある可能性があるので帰り道で話すことにした。

 ノルンを呼び、帰ることとなった。



 〇帰り道 <レオン>

「紹介したい人物がいます。私が所属した忍者集団の人達です」

 クロエは幼い頃、故郷の村に忍者集団に売られた。そこはホウライ国から来た忍者が忍術を奴隷に教えながら盗賊をやっていた。その集団はオリンポスに滅ぼされ、クロエの主人はオリンポスになった。

 オリンポスに襲撃されたとき、たまたま情報収集に出ていたグループが生き残っているという。


「レオン様は念入りに情報収集をなさる方です。商売をするにせよ、戦うにせよ、これからは隠密の様な組織が必要です」

 今までの敵は一方的な情報戦で勝つことができた。しかし商売となれば相手も一筋縄で行く相手ではあるまい。その点ではクロエの提案は魅力的だ。しかし、盗賊をしていた奴らだぞ。


「心配はごもっともかと思いますが、一度お会いください。人物は保証いたします」

 俺の考えをクロエに見抜かれたようだ。まあ、会って損はあるまい。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

クロエの紹介する人物とは、レオンはどうする?。

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