14-2 レオンの帰還(2)
ご愛読、ありがとうございます。
前回からの続きでレオンは期間後の様々な問題を処理します。
レオンは修行の帰り、商人のアンをアルカディアに連れていくことにした。ノルンに乗り込んだレオンたちだが先に乗っていたハーヴェルの武官にレオンの正体を明かされるのであった。
〇ハーヴェルに向かうノルンの上 <レオン>
「ではあなたが上様の弟子なのか?」
うん、思っていたのと違う方向から来たな。ヤクモか。
「よく知ってるな」
「シグレがあなたのところに行くと聞いていた」
そうかホウライ国では将軍様の弟子として知られているのか。
「ちょっと待ってください。あなたは私をどうしようというのですか?」
ちょっと呆けていたアンが、自分がどうなるのか心配になって来たらしい。
「もちろん、アルカディアを見てもらう。案内も宿泊もさせるから好きなところを見てくれればいい」
「私に何を期待しているのでしょうか?」
どうもこちらを信用しきれないようだ。
「帝都のアキラの店は知っているか?」
「はい、より良い品を幅広く扱っている店ですね。それに値段も手ごろです」
「あの店の品物はハーヴェルで生産している。そろそろ生産体制も確立したので販路を広げたい」
「あの店と同じ商品をわがブロスト商会で扱えるのですか」
おお、食いついてきたな。
「ああ、折り合いがつけばな。後、穀物や野菜などの食料も余裕がある。これはテーベ川を使った水運を考えている」
俺は城のスタッフ達と語り合った国の産業や貿易のことを商人相手に語って批評して欲しかった。だからアンを連れて来たのだ。
「それを私達の商会に任せていただけるのですか?」
アンは思い切り前向きになった。
「いや、それは君の才能次第かな」
いやいや、いきなりそうはならんでしょ。あなたの商会のことも知らないしね。
ハーヴェルで武官を降ろした後はアンに質問攻めに遭ったが、こっちは一か月のブランクがあるんだから勘弁してよ。
アルカディア城に着くと数十人が出迎えてくれた。
「おい、この女達はなんだ」
フェリが前に出てそう言ったので、他の面々は何も言えなくなった。
おお。フェリもヤキモチを焼くようになったのか。
そのまま執務室に移りフェリが睨むので連れてきた少女たちの処置から行った。
「えーと、コトネ、この子たちは獣王国へ帰りたいというので連れてきた。ちょっと話を聞いてやってくれるか」
「ああ、イブキ、この子はコノハの一族だそうだ。こちらで就職したいそうだ。面倒見れる?じゃあ、お願い」
「この人はブロスト商会の人で、テーベ川の水運に興味を持ってたから評価してもらうのに連れてきた。フェリお願いできるかなあ」
「あのねえ、一か月も留守にしてたのに最初に言うのがそれ?私達に謝罪と労いの言葉はないの?」
フェリが聞くから答えたのに何で怒られてるんだ?。
「長い間留守にして申し訳なかった。よく留守を守ってくれてありがとう。特にコトネ。獣王国と同盟を結ぶなんて本当によくやってくれた。そして、ただいま」
ようやく帰ってきたことを実感した。ここで修行の成果を発表できればよかったんだが、内面的にはずいぶん進んだのだが、表面的にはあまり変化がないので披露するのはやめておこう。
「レオ、いや、陛下、僕もあの商人の話を聞きたいんですがよろしいですか?」
誰かと思えばエイトだ。そうか、即位してからは初めてだったか。
「なんだ、エイト。他人行儀だな。お前はタメ
「ということだ。フェリ、良いかな?」
「ああ、私は立場上城外を案内できん。城外の案内を頼めるならよいぞ」
フェリは簡単に引き受けてくれた。
「私も何か仕事をさせて」
エリーゼだ。彼女も久しぶりだ。
「どんな仕事がしたいんだ?」
「そんなのやったことがないから解らないわ」
うーん丸投げかあ。まだまだお姫様だなあ。
「今、教会と組んで各村々で初等教育をする計画を立てている。隣の教会でやっているから参加してみてくれ。将来的には国の学校事業に参加してほしい」
現在は教会から村々に教会をたてる許可を申請されている状態だが、教会が金持ち相手から庶民にシフトしたことは大歓迎だ。現在は神父達が初等教育ができる人材なので、初等教育を担ってくれるように要請している。ヤヌウニさんが超乗り気なので教皇アルテミスもやる気満々だ。教会だけではまずいので王族を関与させようと思ったのだ。将来的には初等部中等部高等部の学校を地域ごとに作りたいと思っている。
「護衛はそうだな、ジェリルのところから・・・あれジェリルはいないのか?」
俺が親衛隊隊長のジェリルを探す。なぜか皆生暖かい目で見てくる。
「アタイはここにいるぞ。判らんのか」
細マッチョなお姉さんが手を挙げる。その顔は・・・ジェリルだあ!。
「お、お前ジェリルかどうしたんだ?」
「フフフ、神獣人の加護で絞った。どうだ妾にでもしたくなったのではないかアハッハッハ」
これがコトネが言っていた会えばわかるってやつか。もともと顔は整っていたから美人の部類だが性格がバトルジャンキーだから妾は堪忍してください。
「お前のところからエリーゼの護衛を二人つけてくれ」
神狼族娘達も盗賊が減ったのとビーストグロー兵が配置されたのでアルカディア城に戻っていた。
「アタイのラブコールは無視かよ。判ったよ。ノア、ロッケ、今からエリーゼ様も護衛に着け」
「「ハイッ」」
それから宰相やその他スタッフから一か月間の報告を聞いた。
マサユキさんに続いてアキラさんもハーヴェルで錬金術師に復帰したのでクッションがない。何でもかんでも直接言ってきやがる。ヴォルガンフ宰相あんたサボってないか。もっとフィルターになってよ。
早く民主化できないもんかなあ。
ようやく解放され、私室に入るとアンナがいた。
「おかえりなさいませ。汚れ物を出してください。服も全部脱いでください」
「専属メイドはどうした?」
「レオン様が帰るまで有給休暇を取らせました。明日から出てくると思います」
これはかなわん。コトネがいなくて助かった。
服を脱ぐと給湯室から湯桶を持ったコトネが出てきた。
「体をお拭きします」
アンナがニヤニヤしている。謀ったな。アンナ。
コトネは俺を見て言う。
「御髪が汚れています。御髪を洗いましょう」
「お湯が足りないね。沸かしてくるよ」
アンナが給湯室に駆けこむ。
タオルを濡らして髪を拭く。修行中は近くの水場で洗っていたが、最後の方は疲れてあまり洗えてない。
「あの子達はどうした?」
「宿泊場所を含めて軍にお願いしました。明日には獣王国に行くそうです」
コトネは髪を洗いながら話してくれた。
「ありがとう」
「修行は途中でやめたのですか?」
頭から背中に洗う場所が変わった。
「そうだな。五式を習得するには人間をやめなければならないことが分かったからな」
「私は人間のままです。月のものもありましたから、レオン様の子供も産めます」
コトネは自分が神獣人になったことを言われてると思ったのか、強く言った。
「分かってるよ。狼の神獣人が神狼族を残したことからも分かってたよ」
神狼族は神獣人の子孫だ。今回のジェリルのことでも明確だろう。
「はい。もうすぐ私は獣王の養女となります。これで後ろ指を指されることもないと思います」
コトネは背中を拭きながら泣いているようだ。まいったな。女に泣かれるのはつらい。
「お前は俺が言ったことを覚えていて実行してくれた。ありがとう」
コトネは感極まったのか湯桶を持って給湯室に駆けこんでいった。
「もう、お姉ちゃんの涙腺が弱くて困るわ」
代わりにアンナが新しい湯桶を持って現れた。
「レオン様、前を拭いてあげようか?」
なんてことを言うんだ。恥ずかしい。
「だめだ。湯桶を置いていきなさい」
「そんなこと言って、メイドさん達にやらせてるんじゃないの?」
ニヤニヤと笑うアンナ。こいつはコトネがいないと遠慮がないな。
幼少から親のいなかったコトネと九歳までは両親と暮らしていたアンナの差だろうか。
「ねえねえ、お風呂作ろうよ」
帝都のアキラさんのところで入ってたな。でもあれは水道があったからできたんだ。ここでは川か井戸から汲み上げないと水が手に入らない。風呂桶一杯にするのにどれだけの労力が必要か。
「よくできて一人分のバスタブくらいかな。水を運ぶのが大変だよ」
「そんなの私が魔法でやったげるよ」
最近盛り上がってきた胸を張って豪語するアンナを見て、こいつならできるのかと思った。
「じゃあさ、部屋を一つ開けるから作りなよ」
「何を話してるの」
涙が収まったのかコトネが給湯室から出てきた。俺は服を着ながら言った。
「ああ、アンナが風呂に入りたいっていうから自分で作ればいいって言ってたとこだよ」
「本当に作るの?でもアキラさんちの燃料代が馬鹿にならないって言ってなかった」
コトネの顔がぱあっと明るくなった。
「私が魔法でやるから大丈夫だよ。レオン様一緒に入るでしょ」
げ、何言ってんだ。フェリもエリーゼもいるのに一緒に入れるか。
「俺はもう奇麗になったからいいんだ」
アンナがブーイングをするが仕方ないだろ。
夕食時、フェリとエリーゼにアンナが風呂に誘うと。
「私、大きなお風呂って入ったことがないのよ」
とフェリ。
「アキラさんちも人数が減ってお風呂はやめてたから、ぜひ」
とエリーゼ。
仕方ないので俺の部屋の横に在った側室用の部屋を提供することになった。
ちなみに打診はあっても側室は一人もいないが部屋は十個ある。
俺の監修で大きめの脱衣室と五人用くらいの風呂をアンナが作った。
脱衣所を大きくしたのはフェリにはメイドが付くし、エリーゼやコトネも結婚すればメイドが付く。
そうなれば混雑するからだ。たぶんきゃつらは団体で入るだろうからな。
その後、風呂からは一時間以上きゃつらのはしゃぐ声が聞こえていた。
そういやアキラさんも戻ったんだから、シャンプーやリンスを作ってくれないか頼んでみよう。
次の日の朝、俺はアンの話を聞きたいと思っていたのだが、教会から相談があるというので予定を変更した。
アルテミスかジュリアが来たのかと思ったら聖騎士団長のエストゥスとかいうのが来た。
謁見室で会うと結構大男で白銀の鎧をつけていた。
「それで余に願いとはなんだ」
俺は王の一人称を余と決めた。
エストゥスは不遜な笑顔で話し始めた。
「陛下はアルカディア大教会で戴冠式を行うということは、女神ヴァルキュリアに帰依するということでよろしいでしょうか」
ああ、ヤヌウニさんにお願いしてたので主神がいることを忘れていた。
「まあ、そういうことだが、余は教祖で在られるヤヌウニ様を強く信仰しておる」
エストゥスは面白くないという顔をする。こいつは反教祖派かな。
ヤヌウニさんはアルテミスとジュリアとしか接触を持ってないから、あまり教会内で信仰されてないのかな?
「それでは私達と同じということですな」
こいつは何を言いたいのだ。
「早く、本題を言ったらどうだ」
ふふんという感じエストゥスは話し始めた。
「王の守りを聖騎士にお任せいただきたい。具体的には親衛隊と近衛隊を聖騎士に命じていただきたい」
こいつは何を言い出した?
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
しばらくは期間後のごたごたを書きます。