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13-11 コトネ対ラビ

ご愛読、ありがとうございます。

今回はコトネとラビの戦いです。コトネが思わぬピンチを迎えます。

 ヴァンパイアの襲撃を受け、ノルンやジェリルらの活躍でこれを退け、残りはコトネとラビの対決を残すのみとなった。


 〇コトネ対ラビ

 コトネはビーストグローの姿でラビと対峙した。

「一つ聞いておきたい。あなたの夢は潰えたというのに私達と戦うのですか」

 ラビには三式が通じなかったので、脇差を用意している。

「フン、我々を拾い上げてくれた方への恩返しだ。このままお前達に良い目を見させるのも悔しいしな」

 いままでの上からの話し方とは違う、夢を諦めたからなのか。


「では参ります」

 コトネは脇差を正眼に構えた。

「少し待て。お前にしても妹分にしても、他の人間と格が違いすぎる。なぜ芥の如き人間のために戦える」

 ラビは深いところを突いてくる。


「それは私達がレオン様といるからです。あなたには信じられないでしょうけど、私は二年前にはレベル5に勝てなかったのですよ。レオン様と過ごすようになって、私達は二段飛び三段跳びで強くなっていきました。そう、レオン様と一緒に。民を愛する施政者であるレオン様。その影響を受けるのは当たり前ではないですか」

 コトネはレオンの大きさを強調する。


「呪われし一族から見ると甘ちゃんだけどな」

 ヴァンパイアには他の種族と共存できないことを言いたいらしい。

「私達は精霊・妖精・幻獣達と暮らしてるわ。ヴァンパイアもその気になれば一緒に暮らせるよ」

 コトネは孤立するヴァンパイアに同情し始めたようだ。


「俺達に必要な魔力や霊力は多い。それを奪われると知って一緒に生きるやつはいない」

 ラビはあくまでもヴァンパイアがほかの種族に嫌われると言う。

「だったらさ、神の僕になれば良いよ。人は神に祈るときたくさんの霊力を出すんだ」

 ラビはヴァンパイアに他の種族と共存する道があることを知ったが、今の自分はクロノスやウラノスに縛られている。その道を取ることはできないと知らされる。


「簡単に言ってくれる。そんな甘い考えではレオンハルトに裏切られて捨てられるぞ」

 ラビはコトネが怒ると思って言った。しかしコトネは笑った。

「心配してくれるのね。でも大丈夫。レオン様は私に心配させないように自分を縛ってるの。私達を捨てたら今の地位を失うぐらいにね。だから私達はそれに応えられるように働くのよ」

 こいつは根っからの楽観主義者なのだ。こいつに惑わされてはだめだ。ラビは心を固くする。


「長々と話しすぎたようだ。俺にはこの道しかないのだ。お前には夢の道連れとして死んでもらう」

 ラビはクロノスに霊力吸収と速度を強化されていた。この力があれば勝つことができる。そうすればまたチャンスもあるだろう。

 ラビは手を前に出すと魔方陣が現れた。


「三式」

 コトネが剣を振ると不可視の刃が魔方陣を斬る。三式はラビに吸収されるが魔法は打てない。

「そういうことか。遠距離戦ができないように室内に誘き入れたのか。まったく卑怯な奴だ」

 ラビはようやく室内に誘い込まれたことに気付いたようだ。


「作戦と言ってくださいね」

 コトネは床を強く蹴る。一気に間合いが詰まる。

「クッ!速い!!」

 コトネの見せた速度は速度を強化されたラビから見ても速かった。


 かろうじて避けたラビ。

「なぜだ!お前がそんな速度で動けるとは聞いていない」

「誰から聞いたのかしら。教えてくれませんか?」

 城から逃げようとするラビ、周りこんで黒幕を聞くコトネ。


 コトネの剣がラビの左腕を捉える。

「グアアー!!」

 腕が飛ぶ。しかし次の瞬間、腕は再生する。

「くっ、しぶとい」


 誰かと通信するラビ。

「そうか、城の外で待て」

「まだ仲間がいたのですか?」

 コトネは警戒して動きを止める。


「城の外に出てもらおう。良いものを見せてやる」

 ラビは勝ち誇ったようにコトネに言う。

「なぜ、出なければいけないのです?」

 ラビの言葉の意味が分からず、戸惑うコトネ。


「お前はレッドベア辺境伯の城の近くの村で、娘の命を助けたそうだな」

「なぜ、それを!」

 焦るコトネをあざ笑うようにラビは続ける。

「なに、お前達を見張る様に一人派遣したのだ。その娘を城の外へ連れてきている」


「シドは関係ないだろう!解放しろ!」

 さらに余裕をなくすコトネを眺め、悦に入るラビ。

「放していいのか?高度は五十mくらいはあると思うぞ。まずは俺が外に出る。出口を開けろ」

「卑怯者!!人質を取るなんて」

 ラビを逃がさない為出口近くに陣取っていたコトネがホールの奥に移動する。


「卑怯?作戦と言ってほしいね」

 ラビは笑いながら城の外に出る。

 コトネは後を追って自分も城の外に出る。

 少し離れた空に少女を抱えたヴァンパイアがいる。


 シドはレッドベア辺境伯の城の近くの村で、飢えで死にかけてた女の子でコトネ達が救った。

 身に着けているワンピースはコトネがあげたものだ。シドに間違いない。

 あの後もおそらく外で父親と長が話してたんじゃないのか?シドのこともすぐに喋ったんだろう。

 コトネは高速で考える。自分の命と彼女の命を、そしてすぐに決断を下す。


「そこで止まって、剣を捨てろ!」

 ラビとコトネの距離は約二十m、彼はコトネに命令する。

 コトネは止まるが剣は捨てない。

「どうした!剣を捨てないとこの娘の命はないぞ!」


 シドは項垂れたままだ。おそらくは死んではいないのだろうが、意識はなさそうだ。

「その子を殺すなら、あんたも生かしておかない。それだけだ」

 コトネはこれから獣人が幸せに暮らせるように働かなくてはならない。決してヴァンパイアに弱みを掴まれるわけにはいかないのだ。


『お姉ちゃん、ジェリルさんも私も勝ったよ。アテナさん達もこっちに来たけどどうする?』

 そういうことね。ラビも配下の敗北を知っているから、自分が生き残るための戦果が欲しいのね。コトネは直感した。

 アンナはコトネがどうしたいのか分からないから、皆とホールで待っていてくれる。


『ちょっと待ってて、人質取られてて、いま身動き取れないのよ』

『分かった。でもお姉ちゃんが身代わりになるなんて考えないでね。レオン様に怒られるよ』

『分かってるよ』

 シドには悪いけど、人質で言うことを聞く前例は作れないよね。そんなことしたら関わった人、皆守らないといけなくなる。そんなこと不可能だからね。コトネは強い意志をその目に宿した。


「お前、なぜ短期間に強くなった?上級悪魔に何もできずに敗れたはずだ!」

 ラビはコトネが聞いていた強さと違うことに疑問を持ったようだ。

「今ね。レオン様が上級悪魔と戦えるようにって特訓してるのよ。それで多分強さの段階が上がったのよ。それで従者契約している私達に贈り物・・ギフトというかとにかく私達の力も段階が上がったんだと思う」


「主人が強くなるとお前達も強くなるというのか?」

 ラビは意味が分からないようだった。

「うーん、そこらは私達もよく分からないんだけど、今まで同じように訓練しているジェリルさんより私達従者の方が強くなるのが速かったから、そうじゃないかなと思っているけど」

 コトネも自信なさげに思っていたことを正直に話す。


 そうだよね。会った頃はジェリルさんの方が私より強かった。

 私は神獣人の魂が、アンナは妖魔の魂が体の中にいるから強くなったと思ってた。でもよく考えるとジェリルさんも神獣人の加護があるからそんなに変わらないはずだよね。やっぱりレオン様の修行の成果から贈り物として力をもらったと思うとすっきりとする。コトネはそんなことを考えていた。


「お前達に常識が通じんということは分かった。こんなことなら貴族など放っておいて、獣王を先に捕まえればよかった。おい、降りてこい」

 ラビは人質を抱えるヴァンパイアに命令した。

 獣王を人質にしても王太子がいる以上結果は変わらないのにとコトネは考える。ラビの間違いはコトネ達に簡単に勝てると勘違いしたことが、大きいのだがそれは認めたくないみたいだ。


 地上に降りたヴァンパイアにラビが言った。

「娘をそこに置いてこっちにこい」

 シドを地べたに寝かせ、ヴァンパイアがラビのそばに立つ。

「なんでしょうか?」


 コトネ側からは何をしているのか分からなかった。振り返ったラビは魔石を持っていた。

 ヴァンパイアが倒れる。そして分解されていく。

 ラビはヴァンパイアの魔石を抜き取った、そしてそれを自分の胸に入れていく。

「まあ、三時間ぐらいは持つだろう」


「あんた何してるのよ?!」

 コトネは驚いてラビを詰る。

「どうせ俺が帰れるのはお前達に勝てた時だけだ。ならば勝てるように工夫しないとな」

『お姉ちゃんそのラビってやつの力がグッと上がった、注意して!』

 アンナが注意してくるが、そんなの目の前にいるから解ってる。


『シドが解放されてるから隙を見て回収して』

 アンナにシドのことを頼むとラビと対峙した。

 ラビは空に飛び上がった。やはり間合いの外から攻撃するつもりか。

 しかし遠距離からの魔法攻撃は、気功の盾やスキンアーマーを抜けない。というか当てられない。

 怖いのは素手の魔力分解を使った攻撃だけ。


 高く飛ぶラビにこちらの攻撃は届かない。

 ラビの前に魔方陣が輝く。

 ヤバい!一式戦”ハヤブサ”!!

 コトネは魔法の届く先に瞬時に移動した。

 ラビはシドに狙いを定めたのだ。


 高熱の炎がコトネを襲う。しまった!つい、人質を守ってしまった。相手が放棄したと思って油断した。こうなればシドを守るしかない。

 二式戦“鐘馗”をできるだけ広げ、シドを炎から守っている。

 炎の陰からラビが現れるがコトネはシドを守っているので動けない。

 スキンアーマーを分解してラビの右手が、がら空きの腹に突き入れられる。

 背中にラビの手が飛び出す。


「ガッ!!」

 血を吐くコトネ。

「お姉ちゃん!!、バカ!なんで身代わりになってんのよ!」

 城の外に出ていたアンナがラビを魔法で攻撃する。

「ディメンション・エッジ!!」


 コトネから手を抜いて飛び上がるラビ。アンナの魔法は空を切る。

 倒れるコトネを抱きとめるアンナ。

「ジェリルさん!お願い!」

「まかせろ!」

 アンナに頼まれ”鐘馗”を空間に固定して、それを踏みながら飛び上がり、ラビを追うジェリル。

 アテナとイブキはアンナとコトネの護衛に入る。ノルンは格闘能力を持たないので城に隠れている。


 ラビを追ったジェリルではあるが、翼をもって自由に飛べるラビを追うのは至難の業だった。

 後ろに回られても体の向きを変えるのに四苦八苦しなければならない。

「アタイは猫じゃなくて狼なんだよ!」

 文句を言うがラビが気に留めるはずもなく、逆に追われる立場になってしまった。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は13章のエピローグに入ります。

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