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13-9 ジェリル覚醒

あけましておめでとうございます。

ご愛読、ありがとうございます。

いよいよヴァンパイアとの戦いになりました。コトネが考えた作戦はうまくいくのでしょうか?

 獣王城へのヴァンパイアの攻撃が始まった。コトネとアンナとジェリルは王城の前で待つが、二階の窓に獣王を見つけたヴァンパイアのほとんどは、飛んでその窓から突入した。


「私達も行くよ」

 コトネはアンナとジェリルに指示を出す。

 ああ、クロエ姉ちゃんが帰ってくる前に始まっちゃったか。ゴロがいないのは不安だけど仕方ない。


 コトネは唇をかみしめながら城に入る。

「私はここに残るから、ジェリルさんは中に、アンナは右に!」

「おう!」

「ラジャーだよ!」

 二人は左右に分かれる。


 コトネの残った部屋は玄関ホールだ。吹抜けで中央には扉と左右に分かれる階段がある。

 中央の扉の奥には広いダンスホールがあり、右の階段の下には扉があり、貴族会議用の部屋へ繋がっている。


『どうか私の作戦がうまくいきますように・・レオン様、見守っていてください』

 コトネは心で祈った。そうでもしないと不安で仕方がないからだ。

『今まではレオン様が後ろにいてくれた。レオン様の指示通り動けば勝てた。

 今回は私が作戦を立てている。みんなと相談して私が作戦を考えることになった。

 私のための仕事だから。アルカディア王国の第三夫人としての地位を築く仕事だから。』


『オラン侯爵の時、情報収集を侮ってみんなに迷惑をかけた。だからこの作戦を話すときにみんなに打ち明けた。獣王国が獣王様のもとに戻った時に、私を養女にしてとお願いして了解してもらったと。

 私がレオン様の第三夫人となる大きな拠り所を作る野望をみんなに聞いてもらった。

「なんだお前、そんなことで悩んでいたのか?。アタイ達は強くなるためにレオン・・いや陛下にくっついている。それが国や仲間のためになるなら、こんな命で良ければいくらでも賭けてやるぜ」

 ジェリルさんが胸を叩く。他の人も同じ意見だと微笑んでくれた』


 ヴァンパイアが二人コトネ達を追ってきた。

 ドォォォォォーン!!!


 大きな音と共に城が揺れる。

 コトネは天井を見上げ、呟いた。

「始まった」


 〇王城二階

 時間は少し遡る。

 窓から部屋に入ったヴァンパイア達は開け放たれた扉を見た。我先にと扉の先に向かうヴァンパイア達。

 その先は左右に階段につながる通路。そしておそらくこの建物の一番奥まで通る長い廊下。

 その中ほどを女二人に護衛される獣王が真っ直ぐ奥に逃げている。


 ヴァンパイアが飛んで獣王達の倍以上の速度で追うが、護衛に弾かれ、後続とぶつかり、廊下に詰まってしまう。

 獣王は左右に逃げ場のない廊下の突き当りで向こう向きに立ち尽くす。ヴァンパイア達は逃げられないと安心して飛ぶことをやめ歩いて接近する。

 女の護衛が獣王の左右に分かれる。


 獣王がゆっくり振り向く。

「なんだ!!」

 それを見たヴァンパイアは大声をあげて立ち止まった。


 濃緑灰色のごつごつした皮膚、前に突き出した上下の顎、口から突き出た牙、どんぐり眼。

 それはまさしくドラゴンの顔であった。

 獣王いやドラゴンは大きく口を開けた。ヴァンパイア達に為す術は無かった。


 ゴァァァァァァァ!!!!!


 ドォォォォォーン!!!


 無慈悲に放たれるドラゴンブレス。廊下の先の扉を吹き飛ばし、外壁にもきれいな穴が開いていた。

 逃げる場所もない廊下で霊力を奪われて蒸発するヴァンパイア達。

 ドラゴンブレスは対象物の霊力や魔力も熱に変換する。

 ここにいた幾分強化されただけのヴァンパイア達では対応のしようがなかった。


「流石、ノルン殿、圧巻でござる」

 獣王はノルンの変身した姿だった。

「イブキ、ござるってなんだよ」

 アテナに首を傾げられるイブキだ。

「蓬莱国のサムライ言葉でござ・・ですよ。それより生き残りを始末しましょう」

 廊下の端っこにいて、かろうじて生き残っているヴァンパイアが数人いた。


「おう!」

 アテナは右腕を直角に曲げ、握った拳を顔の高さまで上げる。

 親指で抑えた指を開放しながら、腕を前へ伸ばす。指先から気の小さな塊が発射される。

「指弾!」

 右側にいた体の三分の一から半分をブレスに奪われて、床で蠢いていたヴァンパイアの魔石を砕いていく。


 左側では三人の生き残りにイブキが話しかける。

「情報を話すか、死ぬか?」

 霊力と魔力を奪われているヴァンパイアは再生もおぼつかない。

「し・・死を・・」

 一人が言うと二人がかすかに頷いた。

 イブキの槍は三人の魔石を正確に貫いた。



 〇王城一階

 王城の二階の壁を破って光が走る。

「これは!?ドラゴンのブレス!?」

 その光を見たラビは思った。

 二階に入った仲間の反応がほぼ消えた。残った者も虫の息だ。

 やられたな。これで獣王国をわが手に入れる夢は霧散した。

 残ったのはクロノス様に力をもらった三人だけとなった。

 天を仰いだラビはウラノスの指示を実行すべく城に入るのだった。


 一方先にコトネ達を追って城に入ったヴァンパイア達。

「我はヴァンパイア族のシュビ、大剣の戦士との勝負を所望する」

 シュビはウラノスに言われた通りの相手を選んだ。

「奥の中央の扉へ、中であなたを待っています」

 コトネは最初のヴァンパイアをジェリルの元へ誘導した。

 敵は私達を研究しているのかしら。今までにないことだ。


「我はガビ、精霊魔法使いとの対戦をお願いする」

 ガビにも適した相手をウラノスは紹介していた。

「右の扉から入ってください」

 コトネは警戒するも相手の言うように誘導した。

 彼女は相性より三対三の空中戦になることを恐れたからだ。

 ジェリルさん、アンナ、負けないで。彼女は祈った。


 最後にラビがやってきた。

「私の相手はお前ですか。お前のようなチビを戦わせるとはレオンハルトも鬼畜ですねえ」

「御託はいい。ヴァンパイアが獣人を虐げるなら戦うだけです」

 ラビは大きくため息をついた。

「強化していただいた借りは、お前達を倒すことで返すとしましょう」


「私達だって私達の夢をかなえるために戦うのです。負けません」

 コトネは強化した黒幕は気になったが、今は敵が場所を変えないように早く戦うことを考えた。

「私達の千年の夢を潰してくれたのです。楽に死ねると思わないことですね」

 ラビはコトネの思惑通りここで戦うことにしたようだ。これで私達が空中から一方的に攻められることは無くなった。


 コトネの思惑通りだが、それでも相手の力が不気味に感じられた。

「ビーストグロー!!」

 コトネは変身ポーズを取った。


 〇ジェリル対シュビ

 名乗ってすぐの敵に体当たりを食らい、壁まで吹っ飛ばされたジェリルが起き上がる。

 どうした?なぜ攻撃が当たらない。それにビーストグローのスキンアーマーの体にダメージが入るのはなぜ?


 シュビが正面から走ってくる。タイミングを合わせて大剣を横に振る。

 シュビは間合いの外で一時停止、大剣が通り過ぎるとすっと近寄り、ジャンプして顔面に右フック。ジェリルは剣から左手を離してガード、シュビはジェリルの顎を蹴り上げる。

 避けきれず顎を蹴られ、のけぞるジェリルのボデイに連続パンチ。


 ジェリルが右手一本で大剣を振り回すと、シュビは後ろに飛んで距離を取る。

「デブはどんくさいから楽だな」

 シュビはジェリルを煽って、余裕を見せる。

「くっそー」


 シュビに攻撃されたところはビーストグローで生えた毛が無くなっている。そこだけビーストグローの魔法が解けたということか。つまり魔力や霊力を接触で奪ってダメージを与えているのだ。

『今までアタイが戦ってきた強敵は、私と同じ力押しのやつばかりだった。だからと言ってコトネと訓練してきたアタイを速度でここまで追い込むなんて・・・仕方ないあれをやるか』


 シュビがまた突進する。ジェリルはタイミングを合わせて横に大剣を振る。シュビが瞬間停止して大剣をやり過ごして再突進しようとしたが、剣がすぐに戻ってくる。

「グッ」

 これはジェリルが一撃必殺の剣から、振り切らずに相手の行動不能を狙う剣に切り替えたからである。

 思うように接近できずに動きの鈍ったシュビに、休息を与えず次々と攻撃を仕掛けるジェリル。


 シュビの右腕が肘の付け根から飛ぶ!

「グアアアア!!」

『やった!!』

 一瞬、ジェリルの動きが止まる。


 シュビが瞬時にジェリルの懐に入って、左手をジェリルの腹に突き入れる。

 シュビの左手が肘までジェリルの体内に入る。シュビの左手はジェリルの体内から霊力を吸収する。

 シュビの右腕が瞬時に再生する。

「ククク、さすがにここの獣人達と違って、吸収に時間がかかるぜ」


「騙しやがったな」

 ジェリルはシュビの左手を掴み、腹から引きずり出した。

「おやおや、ヴァンパイアが再生が得意なことは知っていたのでは?」

 笑いながらジェリルを嘲るシュビ。


 いつの間にかビーストグローの魔法は解けていた。

 当然傷も治らない。内臓がやられたのか血反吐が出る。

 霊力はもう三分の一も残っていない。

 嫌だ、死にたくない。上級悪魔にリベンジを果たさずに死にたくはなかった。


『また同じようにやられてるんだな』

「だ、誰だ!?」

 ヘラクレスの時と違い、今度ははっきりと言葉が聞こえる。

『見どころがあると思って見ていたけど、なんも進歩してねえじゃねえか』

「誰だって聞いてんだろ?」


『俺か、俺はお前達のご先祖様だよ。いわゆる神獣人の魂と言うやつさ。それより俺前に言ったよね。そのブクブクの重い筋肉を何とかしろって』

「ごめん、前の時何言ってるのか分からなかった」

『もう一回言ってやる。余分な筋肉を霊力に変換して、残した筋肉に編み込むんだ』

「ごめん、どうしていいか分かんないよ。それに残った霊力も多くない」


『俺が手伝ってやる。霊力を開放しろ』

「よし、これで私も神獣人だな」

『馬鹿か、それぐらいで神獣人になれるかよ。いいから早くしろ!』

「はーい」

 グダグダ話しているようだが、すべて精神世界での会話なので、現実世界では時間は0.1秒もかかっていない。


 シュビがジェリルの顔面を殴ろうとパンチを繰り出すが、解放された霊力に弾き飛ばされる。

「まだそんな霊力が残っているなんて」

 数mを飛んで着地したシュビが呟く。

 これにはカラクリがある。神獣人の魂を通じて、神狼族全員から少しずつ霊力を集めたのである。


 ジェリルの肥大した筋肉は霊力になって萎み、新たに強靭な筋肉として編み込まれていく。

 ガララトのジェリルと言わしめた岩山のごとき筋肉は、嘘のように女性らしい優美な曲線に変化していく。

 あまりの変化にシュビはその場で固まってしまった。


 ジェリルは困っていた。筋肉が痩せた分マイクロビキニの紐がユルユルになってしまったのである。

 恥ずかしい部分の布は動いてもずれないように魔法で張り付いているのだが、紐はそこからぶら下がっている状態である。

 流石にこのまま動けば絡まってしまう。余った部分を縛ったりして調節して、やっと何とかなった。

 霊力のおかげでケガもすべて治った。


「待たせたな。さあやろうか」

 ジェリルが声を掛けるとシュビがハッと気付いたようである。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はジェリルの戦いに決着が、アンナは戦えるのか?です。

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