13-8 ヴァンパイアの攻撃
ご愛読、ありがとうございます。
風邪をひいてやや短いです。
来年の一日・四日はお休みをいただきますので更新はしません。
獣王国を貴族の圧政から解放するためにコトネ達は四貴族を討伐しようとしていた。しかし、ヴァンパイア族が現れ、コトネ達に挑んできたのであった。
〇レッドベア城の近く <コトネ>
「アタイは空中戦は無理だな」
「私も遠距離攻撃の手段はない。せいぜい三式の二、三十mだ」
「私も三式ぐらいですね」
ジェリルとアテナとイブキが弱音を吐く。
「まず行動しましょう」
クロエ姉ちゃんが言いだした。
「何をやったらいいのか?」
私も弱音しか出てこない。
「敵は獣王様を狙ってる。でもドーベルマン辺境伯やオラン侯爵の軍は分散してるはずだから、ヴァンパイアも相当に時間がかかるはず。先に獣王様を確保しましょう」
なるほど、初めての空中戦でそんなことにも気が回らないなんて、コトネのバカ。でもさすがクロエ姉ちゃんだわ。
「そうだ父上を助けてくれ!」
やっと王太子様も活力を取り戻したようだ。ヴァンパイアに詰られて落ち込んでいたもんね。
「ヴァンパイアは戦い慣れていない。獣王様のことは話しちゃうし、私達が隠す可能性も考えてない。ただこれはあくまで仮定だから、油断せずに王城に向かってちょうだい」
クロエ姉ちゃんは私達にノルンさんに乗る様に促す。
「クロエ姉ちゃんは乗らないの」
クロエ姉ちゃんはゴロに跨ってる。
「私は四貴族の様子を探る。一日かかると思うから先に王城に籠ってもいいと思う」
「そうか!王城に籠って戦えば私達の刃も届くのね!」
私はヴァンパイアの出現でパニックになって何も考えられなくなっていた。クロエ姉ちゃん、ありがとう。
「室内なら私達が飛ぶ必要はない。ありがたい」
「王城に行こう」
「アタイにお任せだぜ」
急に元気になるイブキさん、アテナさん、ジェリルさんの三人を見て私も展望が開けた気がした。
<クロエ>
「うわー、みんな死んじゃってる。霊力と魔力を根こそぎ取られたんだ」
レッドベア城に入るとあちこちに死体が転がっている。ゴロに跨って飛んでいるからいいものの、廊下はちょっと歩きたくない。
「とにかく、辺境伯を探すよ」
ドーベルマン辺境伯のところと違って、配下の貴族がほとんどいない。向こうは戦争中だったから集まってたんだ。
二階の奥まった部屋で辺境伯とその家族の死体が見つかった。
この城で生きているものはいなかった。もしシドの母親がここにいたら・・・いや逃げていてくれ。
母親を確認したい思いを抑えて、次の場所に向かおう。
「次はどこに行くんだ?」
「オラン侯爵のところよ。ジュギア侯爵のところは多分ここと一緒。オラン侯爵はまだ国境から戻れていないはず。森の中での捜索は困難を極めるわ」
ラビの言葉から言って彼らは各個撃破を恐れている。全員で捜索にかかるはず、うまくいけば相手の全容が分かる。
〇獣王国 王城 <コトネ>
王城にはクロエ姉ちゃんの予測通りヴァンパイアは来ていなかった。
私達があまり不利になるなら、撤退も考えなければと思っていたけど、地上戦なら負けない。
まずは獣王様達をアルカディアへ避難させなくては。
「殿下、獣王陛下とご家族をアルカディアへ避難させます。手早く用意させてください。あなた達は全員、どこか安全なところに隠れて。敵はいつ攻めてくるか分からないよ」
私は王太子様と獣王様の侍従に指示を出した。
「まさか、戦争の混乱に乗じてヴァンパイアが襲ってくるとは・・。おのれ四貴族め、お前らのせいで我が国は・・・」
「はいはい分かりましたからこの大鷲に乗ってくださいね。早くしないと攻めてきますよ。レッドベア辺境伯の城は一人残らず殺されたそうですよ」
憤る獣王様をなだめながらノルンさんに乗せるが王妃達がやってこない。
「ジェリルさん、王妃様を見に行きます。ついてきてください」
嫌な予感がしたのでジェリルさんを連れて奥に行く。
悪い予感は当たった。王妃様や王族の女性達が大きなトランクをいくつもいっぱいにして積み上げている。用意をしているメイドさんたちも逃がさなければいけないのに。
「アルカディアへは身一つで結構です。荷物は置いて行ってください。あなた方も早く逃げて」
トランクに荷物を詰めてる獣人メイドさんたちに逃げるように指示すると人三倍は太い王妃が怒り出した。
「この子たちがいないと私は生活できないじゃない。一緒に連れて行くのよ」
熊の耳をピクピクさせながら命令する。この人もしかしたら・・・。
「だめです。早くしないと敵が来ますよ」
私がにらむとキーッと声を上げた。
「私はレッドベア辺境伯の長女よ。あなたなんかすぐにクビにできるんだから!!」
「ああ、そうだったんですね。お気の毒に・・・」
私は出てもいない涙をぬぐった。
「な、何よ。なに泣いてんのよ」
私の様子に何かを感じたのだろう、少し矛先が収まったようだ。
「レッドベア辺境伯とそのご家族は敵に殺されました」
淡々と事実を告げた。
「ゲエエエエ、嘘よ嘘だわ」
驚く王妃の後ろに王太子様が現れた。
「おい、まだ用意はできないのか?・・あ、お前は!!」
「げげげ、王太子、まだ生きていたのぉ!!」
さっき以上に驚く王妃。
「おい、こいつを捕まえて処刑しろ!」
護衛についてきた衛兵に命令する王太子様。
「お、お前達私に触れたら死刑だからね!」
衛兵が手を出しかねているので私が止めを刺す。
「レッドベア辺境伯とご家族は敵に殺されました。もう彼女のバックには誰もいませんよ」
衛兵は彼女を城の裏手に連れて行った。
「あいつは母上を暗殺した後、父に無理やり押し付けられたのだ。その後次男と三男を暗殺したのがあいつだ。それで俺は城から逃げたのだ」
王太子様は両手を握りしめ、悔しそうに顔を伏せた。
ここまで四貴族の専横を許していたなんて、アルカディアでもそんなことが起きるのだろうか?。
全軍より私達とジェリルさん達親衛隊を合わせれば私達の方が強いよね。大丈夫だね。
いや、子供の時代はどうなんだろう・・・って子供もいないうちから考えても無駄か。
「・・ちゃん、お姉ちゃん、妄想してんじゃないわよ」
「え、なに?」
アンナが怒ってる。またボーってしてたみたい。
「なにじゃないわよ!さっきから用意できたって言ってるのに」
「ごめん・・・」
敵はまだ来そうにないので、私がアルカディアに送って行くんだった。
向こうにはヤヌウニさんプラス精霊通信で連絡は入れたけど、丸投げはまずいよね。
私は王族たちを乗せたノルンさんに飛び乗った。
〇オラン城付近 <クロエ>
城に残っていた人たちは皆殺しになっていた。
彼らの目的が建国した際の反抗勢力の撲滅で四貴族の殲滅を第一目標としている。
ドーベルマン辺境伯はすでに私達に処刑されている、西のジュギア侯爵と北のレッドベア辺境伯を始末は終わったのだろう。
今は全員でオラン侯爵を捜索しているらしい。
私はアンナのような索敵能力はないので、相手の人数や実力など大雑把なものしか分からない。
城から国境まで続くうっそうとした森が、オラン侯爵を隠しているし、私が敵の全貌を把握するのも阻んでいる。
コトネ達にはとりあえず、すぐに王城に向かうことはないだろうとは伝えた。
ヴァンパイアは森から出ては、また入って行くを繰り返している。
それが直径三十kmくらいの範囲で行われている。
人間を見つけては殺し、また人間を探すを繰り返しているようだ。
それに彼らは精霊通信で話しているらしく、話を盗み聞くこともできない
これで敵の総数を数えろとか強さを測れとか言われても無理だよ。ごめんね、コトネ。
〇獣王国 王城 <コトネ>
今クロエ姉ちゃんから敵の総数の連絡がきた。約三十名で強そうなのは三人ということだ。
いずれにせよ、敵を城の中に誘導しないといけない。
それから数十分後ヴァンパイアが私達の前に舞い降りた。
「ほう、我々より先に王城に来るとはやはりお前達は卑怯だ」
何をどうやったら卑怯になるのか分からないがな。
その時二階の窓が開いて獣王が叫んだ。
「コトネ、早くそいつらをやっつけるのだ」
次々とその窓を目指してヴァンパイアが飛び込んでいく。
「私達も行くぞ」
私達も城の中へ駈け込んでいく。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
来年一日・四日は休暇をいただきます。
更新は8日からとなります。