表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/222

13-6 レッドベア辺境伯の村

ご愛読、ありがとうございます。

今回はレッドベア辺境伯の政治を見るのに城の近くの村に行って見ました。

 オラン侯爵の城に行ったが、コトネのミスで侯爵の居所が解らなくなっていた。


 〇オラン城付近

 オラン城の近くの森に身を隠しているコトネ達のところに、ゴロに乗ったクロエが帰ってきた。

「オラン城は静かなものさ。まだ敗戦の報が来てないからね。ある程度の財産の位置とかプライベート空間の目星は付けてきたけどどうする?」


「今、オラン城を襲って占拠すればいいんじゃないか?」

 王太子はオラン城の占領を言うが、誰も頷かない。

「それだと明日か明後日に城とオラン侯爵の戦いになって、余計に侯爵を取り逃がす可能性が高まりますし、ほかの貴族達に我々の行動が知れてしまって防御を固められます」


 クロエが焦る王太子に説明するが黙ってはいない。

「ではどうすればいいと言うんだ?」

「私達は死人が少なく、時間がかからない方法を取りたいのです。その方が戦後の復興が簡単ですから」

「それはそうなんだが・・」

 王太子は責める視線でコトネを見る。コトネは委縮して何も言えない。


「ここから私達の取れる方法は二つです。オラン侯爵を探すか、他の貴族を攻めるかです」

 クロエは冷静に提言する。

「アンナちゃんが探す自信が無いことをしているより、他の貴族を攻めよう。オラン侯爵が城に入れば探す必要もないだろう」

 イブキが貴族を攻めることに賛成する。


「そうだな、ちまちま探すのは苦手だ。攻めようぜ」

 ジェリルが賛成するとアテナもそれに乗る。

「それなら早く行こう」

「よしまずは北のレッドベア辺境伯だ」

 レッドベア辺境伯は北の国から攻められた時に矢面になった。その時は伯爵だったが陞爵されて、今に至る武勇の家である。



 〇レッドベア上に向かうノルンの上 <クロエ>

 おかしい、コトネが焦りすぎだ。今回のミスはレオン様の戦術から行けばお粗末だ。

 アンナに小声で聞いてみる。

「コトネ、何を焦ってるの?」

 アンナは難しい顔をしていたが覚悟したように話し出した。


「お姉ちゃんね、今回の作戦でいろんなものを手に入れようとしているの。獣人の開放・獣王国との同盟・・・」

 それは知ってるけどまだあるのかしら。アンナは続けた。

「お姉ちゃんは獣王様の養女になろうとしてるのよ」


「エエッ!!」

 みんながこちらを向く。やばい、つい声を出してしまった。

「シィーッ」

 アンナに窘められた。

 みんながそれぞれの方向に顔を戻した。


 訳が分からないので聞いてみた。

「どうして?」

「一つはアルカディアと獣王国の同盟をより強くするため。帝国もヴァイヤール王国も王女をお嫁さんに用意したわ」

 アンナはどうだという顔をする。確かによく考え付いたものだと思う。


「もう一つは?」

 一つはと言った以上、もう一つ理由があるのだろう。

「もう一つはレオン様に恥を掻かせない為。どこの生まれかも解らない平民の子をお嫁さんにするんだもの。あちこちからいろいろ言われるわ。それより同盟国の獣王様の養女の方が良いでしょ」

 なるほど、獣王国もアルカディアのバックアップを受けやすくなるか。ウィンウィンになるわけだ。


「よく思いついたな。だがなんで秘密にしてるの?」

 私は感心するぐらい良い思い付きだと思うのに。

「お姉ちゃんは自分一人良い思いをするのは、違うんじゃないかと思ってるみたい。だから打ち明けられないのよ」


「難儀な性格だな」

「ホントよ」

 私はアンナと静かに笑いあった。まあ、いずれ本人から話すだろう。


 小さい頃、私の後を付いてきたあの子が、相手にとっても価値のある結婚をするために頑張っている。

 虐げられている多くの獣人を開放するために頑張っている。

 そんな彼女に姉と慕われていることを誇りに思う。

 私は彼女の幸せを願ってフォローするだけだ。



 〇レッドベア城 <コトネ>

 ノルンさんはレッドベア城の間近まで来ていた。

 レッドベア辺境伯領は北からの侵略があったので、国境付近に砦が作られている。

 国境の砦は手を抜けないので、かなりの兵を割いているはずだ。

 ならば居城にいる兵は多くないはず。


 コトネが攻略法を考えているとアンナが声を掛けてきた。

「お姉ちゃん、ここの人達の暮らしが見たい」

 アンナは私を見上げてきた。この子は私達がやっていることが、正しいことなのか不安なのだろう。

 レッドベア辺境伯の領民への扱いを見てくことも必要かな。食料支給とかもあるよね。


 私は王太子様に近付き、お伺いを立てることにする。

「王太子殿下、一度領民を見ておきたいのですが、よろしいか?」

 王太子様はけげんな表情をする。

「今は、貴族共の制圧を急ぐべきではないか?」


 私は自分も考えていたことを話す。

「レッドベア辺境伯はアルカディアを侵攻したわけではありません。私達は貴国とまだ同盟を結んだわけでもないので、戦う理由が欲しいのです」

「むう、確かに君達にも戦う理由が必要かも知れんが・・・。国政を壟断したというのではいかんのか?」

 領民達が幸せに暮らしていれば、辺境伯は改易だけで命まで取る必要はない。


 私は王太子様を説得して近くの村を訪ねることにした。

 王都から伸びる街道沿いにある村の近くにノルンさんは着陸した。

 王太子様は獅子獣人で目立つので残ってもらい、人間のイブキさんとアテナさんを護衛に残した。

 王太子のお付きも六人いるのだが、これも残ってもらった。


 私とジェリルさん・クロエ姉ちゃん・アンナの四人が村に向かう。

 ここいらの村は森を切り開いて耕作地や住居を作る。

 上空から見た村は貧しかった。藁で作った貧相な家が十数軒並んでいた。

 アンナの故郷でさえ、ここまで貧しくなかった。


 もう、日が高くなるというのに外に出てる人がいない。

 初夏なので家の藁を外して窓が作られているが、そこから視線を感じる。私が顔を向けた瞬間にその視線は無くなる。

「誰か、いませんかぁ!?」

 私は中央の広場で叫ぶが返事はない。


「中にいるのは判ってんだ。引きずり出してやる」

 ジェリルさんはポンチョをまくり上げて腕を出す。

「やめなさい。何のために武器を外してきたのか分からないよ」

 クロエ姉ちゃんがジェリルさんを窘める。

 私たちは貴族の施政を見に来たのだ。それには自発的な発言が好ましい。


「お姉ちゃん、あれ!」

 アンナが私の服を引っ張って指差す。指差す先には屋根の付いた井戸がある。

 井戸の傍らに何か・・・ぼろ布?・・子供!子供だわ。

 井戸のそばにうずくまる様に倒れているのは幼児に見える。

 すでにアンナが駆け出してる。私も後を追う。


「息はある」

 アンナが倒れた五歳くらいの犬獣人の女の子を抱き起して容体を確認する。

「呼吸も安定してるし、熱もない。ただめちゃくちゃ痩せてる」

 女の子の手足は骨が浮き出てるし、頬もこけてる。


「ウウ」

 女の子が目を覚ましたようだ。しかしまだ意識が朦朧としているようだ。

『ひどく衰弱しておるようじゃ。霊力を注ぐのじゃ』

 ロキさんが私とアンナに従者通信を送ってきた。


 ロキさんはアンナに憑依する精霊で、普段はアンナのために静かにしているけど、大事なところで助けてくれる。

「どういうこと。どうしたらいいか分からない!」

 アンナがわめく。私もどうして良いか分からないから助言もできない。


『お前達はヤヌウニやサクラがやっていた治療を見ていなかったのか』

 え、あれって私達でもできるの?などと思っていたらアンナが吠えた。

「早く教えて!!」

『あ、ああ、二人とも、いやクロエも聞いておけ』

 いつの間にかクロエ姉ちゃんも私たちの後ろで覗き込んでいた。ジェリルさんはそばで周囲を警戒してくれている。


「うん」

「はい」

「はい」

 クロエ姉ちゃんにも通信がつながったようだ。


『良いか?人は魔力を変換して霊力を作る。解るな』

 三人が頷く。

『霊力と言うものは精霊魔法や気功などのエネルギーにもなるが、体内では体調を整えたりけがを治したりする体の機能のエネルギーともなる』


 うう、話が難しくなってきた。そんなの学校では教えてくれなかったよ。

『じゃから霊力を与えれば、飢餓もある程度治すことができる。ただし自分の霊力をそのまま与えればいいというものではない』

 じゃ、どうするのよ。いけない、ちょっと焦ってきたようだ。落ち着いて・・・。


『人間が作った霊力と言一定の周期で脈動しておる。これは一人一人全部違う脈動の仕方じゃ。人は同じ脈動でないとエネルギーにすることができない』

「どうすればいいの!」

 アンナが焦れてきたようだ。まだこどもね。私のように冷静にしないと。


『あわてるな、病人のそばで一心不乱に祈っておったら、病気が快方に向かったとか聞いたことがないか。あれは祈るうちに患者の霊力と同調して、知らぬうちに霊力を送っておるからじゃ。ただ、お前達がこれをやると相手が危ない』


「もう、早くしてよ!」

「アンナ、落ち着いて。きちんと聞かないと助けられないよ」

 お姉ちゃんとして妹のしつけをちゃんとしておかないとね。ああ、後ろでクロエ姉ちゃんが笑ってる。ちょっと恥ずかしい。


『霊力を同調させて与えるのだが、お前達のような強大な霊力を持つ者が、何も考えずに与えると相手の経路や器が溢れて壊れてしまう。最悪死ぬ。』

 アンナの肩がビクッと震える。死というものを突き付けられたからだろう。私だってつらい。


『まずは相手の手足を持って霊力を感じ取り、同調するのじゃ。解るか?』

 私は右手、アンナは左手、クロエ姉ちゃんは右足をもって女の子の霊力を感じようとする。

 目を閉じて集中すると明らかに心臓の鼓動と違う脈動を感じる。音にするとトトトトという連続音、自分の霊力の音は少し低い感じだ。この音の高さを合わせればいいのだろうか。


 自分の霊力の経路を絞って音の変化を見る。少し高くなりすぎた。難しい、音の高さが安定しない。

『アンナ、そうだ、ゆっくりとじゃ、あわてるな』

 アンナはもう霊力の供給を始めたみたいだ。私はまだ同調もできてないのに。

 女の子の血色はみるみる良くなり、肉付きもよくなってきた。


 うん、大きくなってきた?女の子の霊力が膨れ上がっていくのが分かる。

 それにつれて骨と皮だった手足に肉がついてくる

 身長も手足も長くなってる。

『本来の年齢の体の大きさになろうとしておるのじゃ』


 ということはなに?もうアンナと変わらないくらいまで成長してる。

 五歳くらいに見えたのは、栄養が不足していて大きくなれなかったってこと?

 服が古いのか大きくなる体に負けて、破れ始める。

 ビリビリビリッ


 私は慌てて小さい時の私の服を収納から出す。

 初めてヴァイヤール王国の王都でレオン様に買ってもらった服だ。

 ほとんどの服はアンナにおさがりで渡しているのだけれどこれは残しておいたワンピースのミニスカートだ。


 成長も止まったので着せ替えようと思ったが、あまりに体が汚れている。

 スッポンポンにして体を水で拭いてやろう。三人がかりで拭いてやった。

 下着をつけて服を着せる。

「胸がちょっときついね」


 アンナめ、見ないふりをしていたのに、その子の胸は今の私より大きかった。ちょっと悔しい。

「腹減った・・・」

 完全に目覚めたようだ。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は女の子がどういう活躍を見せてくれるのか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ