13-4 獣王国の王太子
ご愛読、ありがとうございます。
今回は獣王国の王太子を迎えに行くコトネ達です。
またパソコンが壊れました。
Windows10のパソコンは全滅です。11のパソコンを買ってきたのですが、まだ慣れないのでうまくいきません。特にキーボードの配列が微妙に変わったので時間がかかります。遅れないようにしたいとは思いますが温かい目で見ていただけると嬉しいです。
コトネは獣王に賠償内容を提示、しかし、獣王にはそれを実行する実権はないという。
〇獣王国 王城
ドーベルマン辺境伯が騒ぐ騒ぐ。そりゃ自分が殺されることが分かったんだから仕方ない。
「ちょっと、うるさい!!アンナそこの柱に拘束して猿轡でもかましといて」
謁見室の柱が辺境伯を包み込む。顔だけ出た状態になった辺境伯の口を、柱から伸びた石の棒が塞ぐ。
「ウグッ、ウア、ググゥ!」
まあ、何を言ってるのか分からない。
頭を抱える獣王にコトネは言い放つ。
「体制の変更についてアルカディア王国は指導できます。言うことを聞かない貴族がいれば指導しましょう」
「ふふふ、それはあんた達が四貴族をやっつけるということか」
獣王は手をたたいて笑う。よほど貴族達に抑圧されてきたのだろう。
「いいえあくまで指導です」
コトネは胸を張って答える。
「そうか、そこまでしてくれるというのか。だがわしはもう老いた。跡継ぎもこんな状況が嫌で、出て行ってしまった。せっかくそこまでしてもらっても続けることができない」
そうか跡継ぎもいないのか。獣王の顔の皴に苦悩が見える。
あれ、待てよ。獅子人って見たことがあるような・・・。
「アンナ、確かあんたと獅子人を見たよね。どこだっけ」
「ああ、見た見た。帝都のホテルの近くの公園」
二人で思い出して興奮している。
「獣王様、獅子の獣人って珍しいですよね?」
さっきからのコトネ達の様子を見て、もしやと思ったみたいだ。
「獅子人の居所を知っておるのか。獅子人はもうわしと息子だけのはずだ」
「そうとも限らないけどね」
あの時に見た女の子はネコ科の獣人だったと思う。確実じゃないけどね。
「それじゃあ、王太子様でいいよね、を連れてきたらこっちの話を飲んでくれますか」
獣王は希望を見出した顔になった。
「それともう一つお願いがあるのですが・・・」
〇獣王国エドゥアルト国境付近
戦場はほとんど肌色で占められていた。両軍ともスキンアーマーを使う女兵士がほとんどだからだ。
国境に押し寄せていた獣王軍の軍勢は算を乱し、敗走を始めていた。
「なんだ、あれは!」
「毛が全身に生えてた。神獣人じゃないの!!」
「スキンアーマーが簡単に破られる。早く逃げて!!」
「逃げるなあ!!こんなのオラン侯爵にどう報告すればいいんだ」
ビーストグロー兵の活躍はすさまじく、獣王軍を完膚なきまでに叩きのめして、追撃態勢に入っていた。
「ノア様に連絡、我々は追撃に入ります。こちらの損失は極めて軽微」
仮設司令部のテントの隅っこにいる所在なさげなブラウニーに、エドゥアルト城への連絡を頼む。
〇ドーベルマン城
「エドゥアルトの国境警備隊が敵を撃破、敗走する敵を追撃だって」
クロエが周りにいる仲間に報告する。
「おい、国境からオラン城までどれくらいかかる」
脇に立っているマイクロビキニの少女兵士にジェリルが問う。
「は、はい、馬で二日、徒歩で三日くらいであります」
少女は全身あざだらけになっており、すでにこの城がジェリル達に制圧されたことを物語っていた。
「それだと、そう慌てる必要はなさそうだな」
「それより川で兵隊を拘束してる魔法っていつまで持つんだ」
「いっぱい精霊に霊力あげといたから、二三日はこのままで大丈夫だよって言ってた」
「アンナの魔法は半端ねえな」
「知ってるか。コトネは一年前はアタイより弱かったし、アンナは戦えなかったんだ」
「そうなのか。すごい成長だな」
「それもこれも陛下が訓練したからだぞ」
彼女達は暇なのか雑談を始めていた。
「コトネから通信。帝都へ行く、今日は戻れないだって」
「おいおい、ノルンさんがいないと移動できないぜ。どうすんだ」
「どうも獣王が条件を出したみたい。明日まで待つしかないわね」
「おい、もっと骨のあるやつはいねえのか?」
少女兵士はびくっと肩を震わせた。
「ドーベルマン辺境伯旗下ではガルフ男爵が最強です」
「ああ、コトネにやられた奴か。おもしろくないな」
〇帝都 <コトネ>
その日の午後、帝都の手前でノルンからゴロに乗り換えて、帝都内に侵入したコトネ達。
前にアニーとけんかしてた獅子人のおじさんを止めた、思い出の公園に見つからないように舞い降りた。
公園を抜けてライオン食堂が見えた。よかった、まだここでやってた。
「午後五時まで準備中」
そんなこと書いた板がぶら下がっている。話す時間はありそうだ
委細構わずアンナがドアを引くと、鍵は掛かっていなかった。
「こんにちわぁ」
こういう時はアンナの行動力がうらやましい。私だったら躊躇しちゃうから。
「すみません。今準備中です」
奥のキッチンから女性の声がした。
「すみません。獅子獣人のおじさんはいませんか?」
私は名前を聞いてなかったな、失敗。まあ、偽名を使ってるかもしれないし。
奥から出てきた豹獣人の女性は、私たちの姿を見て安心したのか優しい顔になった。
「ごめんなさい。夫は今いないのよ」
「お忙しいところをごめんなさい。私はアルカディア王国国王従者のコトネと申します。旦那様に重要なお話がありまして」
私はティアラはしていないがスーツ姿のままだ。
「あの人を連れていくつもり?」
眉毛を釣り上げた女性を見て、連れては行きたいけど困ったな。この人に話して通じるのかな。
「戻ってはいただきたいのですが、その前に現状は複雑になっています。まずはお話をしたいのですが」
「あなたがそのアルカディア王国ゆかりの人って証拠はあるのかしら」
うーむそう来たか。仕方ない、出したくはなかったが。
「これは帝国の勲章と品位バッジです。それからこれは夫になる約束をした人から貰ったティアラです」
これで証明になるかは分からないけど、まあ、そこそこの地位にあるとは分るでしょう。
王太子だった旦那さんと一緒になったのなら価値は分かるよね。
「分かった。でも私も一緒に話を聞くからね」
奥さんは奥に引っ込んだ。やがておじさんは赤ちゃんを抱いて現れた。
私たちを見ておじさんは不思議そうな顔をした。
「君達、俺と会うの初めてじゃないよね。見覚えがある」
「はい、一年前に公園でけんかをしていたあなたを、仲裁してご飯もいただきました」
思い出したようだ。
「あの時はありがとう。犯罪者にならずに済んだ」
ニコッと笑う屈託のなさは王太子の鷹揚さなのだろうか。
私はアルカディア王国の建国から語り始めた。それから今日のドーベルマン辺境伯・オラン侯爵の侵攻、王との話し合いなどを順番に話した。
「つまり君は、貴族のいなくなった獣王国を俺が治めろと言いたいわけだ」
「私というより現獣王様の意志です。私は獣王様に治めてほしいとお願いしましたが、自分の人生は残り少ないからとおっしゃいました」
王太子は考え始めました。が
「話がおかしいわ。今日王都からここに来れるわけがないわ」
私はノルンさんを呼んだ。おじさん姿のノルンさんが店に入ってきた。
「説明するより見たほうが早いわ。ノルンさん、鳥になってここでできるだけ大きくなって」
ノルンさんは黒鷲の姿になって店の中で大きくなった。
「まて、まて、もういい」
王太子は両手を伸ばして大きくなるのを押し留めようとする。
「ノルンさん、もういいわ。元に戻って。ノルンさんは私達を乗せて時速千㎞で飛べます」
「君たちがすごいのは分かった。それなら君たちが征服すればいいじゃないか」
「それはできますが、私達が征服した場合、私達はアルカディア王国も立ち上げだけで精一杯なので、とても獣王国の国民まで手当てはできません。今でさえ貴族に搾り取られているのに、忍びないというのが私達の考えです」
王太子はまた考え始めた。
「私は四貴族の横暴を軍事力がないばかりに我慢するのが嫌で国を飛び出した。しかしそれは国民を見捨てる行為だったのだな。周りの国に助けを求めることもしないで・・・」
王太子の目からは大粒の涙が流れた。
「旦那様、あの時は仕方なかったのではないですか。四貴族が暗殺者を・・・」
奥さんも泣きながら王太子に抱き着く。赤ちゃんがびっくりしたのか、大きな声で泣き始めた。
涙を流しながら赤ちゃんをあやす両親、見ていた私も涙が出てきた。
「ママー、パパー」
おそらく二階が住居になっていて昼寝をしていたのか娘さんがこちらに歩いてきた。
泣いている三人を見て娘さんも泣き始めた。
しばらく経って王太子が私達に向かって言った。
「獣王国に戻ります。この店を閉めるに当たってお客さんに挨拶をしておきたい。戻るのは明日の朝まで待ってください」
「分かりました。明日朝、お迎えに上がります」
私達はお店を後にした。
「早く終わっちゃったね。どうする」
「早いけど、ゾフィーさんとこに行きましょう」
ノルンさんは馬に変身し、ゴロは久しぶりに犬に変身した。
馬に乗る少女の後ろに犬を抱えた少女が乗っていると言う姿だ。
〇帝都 アキラの店 <コトネ>
「おや、お早いお着きだね」
「ただいま、ゾフィーさん」
久しぶりに会ったゾフィーさんには店長の風格が出ていた。
連絡は先にブラウニーの精霊通信で入れておいたので、驚かれることはなかった。
お店の女性は知らない人ばかりだった。
「オーナーのお世話になってる人のお嬢さんだよ。顔を覚えておいてね」
ゾフィーさんは雑に紹介した。
「もうすぐエリーゼさんやエイト君が帰ってくるよ」
ここも私達や神狼族娘、妖精女王達がいなくなって寂しい限りだ。
私達がいた部屋に入るときれいに掃除されていた。
「帝国を離れてもう半年か。慌ただしかったね」
「そうだよ。結構忙しかった」
懐かし話をしているとエリーゼ様達が学園から帰ってきたようだ。
彼女たちはすぐに私たちがだべっている食堂に現れた。
「コトネさん、アンナさんお久しぶり元気だった?」
彼女の話し方は今までのように上位者のものではなかった。
なぜなら学費以外の滞在費用はレオン様が支払っている。
レオン様を追いかけて帝国に来たけど、もう彼はここにはいない。
悲しいだろうな。苦しいだろうな。でも結婚することが決まってよかったよね。
「コトネさんはどうしてここにいるの?」
エリーゼ様に聞かれたので朝からのことを説明した。
「そう、フェリシダス様は国政を担ってらっしゃるのね」
エリーゼ様は寂しそうに呟いた。彼女は獣王国よりフェリ様のほうが気になるようだ。
「私、一学期が終わったらアルカディア城に行くわ。どうせ結婚式が終わったら休学になるし、私でもできることあるかしら」
エリーゼ様はフェリ様に勝てない自分を持て余しているらしい。以前に比べると覇気がない。
「エリーゼ様はその優しさで国民に接すれば良いと思います」
彼女の長所は優しさだと思う。王太母への優しさが発揮できれば人気の夫人になれるだろう。
が彼女の顔色は冴えない。
「なんで自信なさげなの。女としてはエリーゼ様の圧勝だよ。胸を開けて腰を絞った服を着たらフェリ様悔しがると思うよ」
アンナ、確かにスリムなフェリ様に比べるべくも無く、彼女はボンキュッボンなのだが、今言うことじゃないでしょ。
「そうかな?私、イケてるかな?」
一気に彼女がハイテンションとなる。
え、それで復活するの?。でもそれをあちらでやられると、今度はフェリ様を慰めないと・・・。
そんなこんなでエイトさんの参加できない女子トークで、夜は更けていくのである。
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この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。
相変わらず存在感のないエイトでした。次回は本格的な獣王国の世直しが始まります。