表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/222

13-3 獣王

ご愛読、ありがとうございます。

今回はコトネが使者として獣王国に乗り込みます。

 レオンの留守を狙って獣王国が攻めて来た。それを退けたコトネたちは侵略を企んだドーベルマン辺境伯を捕まえて、獣王に文句を言いに獣王国の王都へ向かった。


 〇獣王国 王城 <コトネ>

 私はノルンさんを正門前に降ろした。雲の子のように逃げる獣王国国民。

 あちゃあ、レオン様に怒られるかな。でも私達の強さを見せつけておかないと私の計画が・・・。

 ノルンさんを降りた私を門番達が槍を向けて取り囲んだ。

 私達は周りを無視してゴロの背中に辺境伯を拘束する。


「な、何者だ。何の用で王城の前に怪物を連れて来た!!」

「アルカディア王国、国王従者 コトネ!。我が国に侵略のために軍を越境したことにつき詰問に来た!王に取り次げ!!」

「そんなこと信用できるか!帰れ帰れ!!」

 うーん信用してくれないらしい。


「証拠として、ドーベルマン辺境伯を連れて来た。すでにドーベルマン城はアルカディア軍によって占拠されている」

 門番と衛兵だろうな相談を始めた。しばらくゴチャゴチャやっていて、ようやく決まったようだ。

「王に着き殿の口上を伝えるので、辺境伯を置いて帰ってもらえまいか?」

 などと馬鹿なことを言ってくる。


「私は詰問に来たと言っておろうが、私が遅れれば四万のアルカディア兵が国境を越え、貴国を蹂躙するぞ」

 西大陸の国際法では侵略を受けた場合に逆襲をする権利がある。

「し、しばし待たれよ」

 取り囲んだ兵の中で一番偉そうな兵が城の中へ駈け込んでいった。


 私はノルンさんにドラゴンに変身してもらった。

「返事が遅いと城ごとブレスで灰にする。ところで、いつまで私に槍を向けているつもりだ」

「申し訳ありません。取り敢えず、中へ・・ドラゴンはご遠慮願いたい

 私達は城の中へ、ノルンさんはいつもの叔父さんに変身して、着いてくる。



 〇アルカディア城

 その頃アキラは、フェリに相談していた。

「コトネちゃんは暴走していませんか?陛下に連絡して何とかしてもらわないと」

 アキラは青い顔をしているが、動いていいものかどうかが判断できないらしい。

 彼は内政は得意だが外務に弱いところがあった。


「大丈夫だよ。今回は向こうが一方的に悪いし、多少暴れたところで断交すればいいだけだから。

 それに彼女は狙っているわよ」

 フェリはアキラをなだめ、そしてもったいぶるように言った。

「何を狙っているんでしょうか?」


「それは言えないよ。彼女が一番気になっているところなんだ」

 フェリはコトネの計画は予想できている様だ。

「はあ?・・・」

 アキラは何とも言えずにいた。


「それよりコトネちゃん、川で拘束している三千の兵隊、忘れてないでしょうね」

 フェリがそうこぼした時に天井板が音もなく開いた。

「ノアより連絡。獣王軍三千がエドゥアルト国境を越境。国境警備兵が迎え撃ちます」

 ブラウニーが抑揚のない声で報告した。


「北だけでなく東側も?どうなっているの?」

 ブラウニーは返答もせず、天井板を閉めた。フェリは地図を広げて確認した。

「ブラウニーは連絡したことだけしか伝えませんよ。あそこには五十人のビーストグロー使いがいます。問題ないでしょう」

 アキラは冷静に答えた。


「獣王国のオラン侯爵の仕業でしょうね」

 アキラも地図を見ながらつぶやいた。

「ビーストグローを使うとレベル5か6くらいの力が出るんでしょ。普通の軍隊じゃあ一万でも勝てないよ」


 パンパンと二回の拍手を二回するとまた天井板が開いた。

「ノアに国境警備兵に暗くなる前に追撃をやめろって伝えて」

 フェリがブラウニーに言った。ブラウニーは頷くとまた天井板を閉めた。


「なんで近くにいてくれないのかしらね」

 フェリはやや、腹立たし気につぶやいた。

「彼らは人前にいるのが嫌いですからね。それより追撃を止めてよかったのですか?」

 アキラが疑問を問いただすとフェリはニコッと笑って答えた。

「どうせ、ジェリルさん達が敵の拠点を放っておかないでしょうし、相手の方が数が多いから油断は大敵よ」



 〇ドーベルマン城

「今連絡が入ったわ。エドゥアルトに獣王軍が攻め入ったらしい」

 クロエがジェリル、アテナ、イブキに伝える。

「どこからの連絡だ。レオンの従者は全部こっちに来てるだろ」

 従者通信が来たと思ったジェリルは確認を取る。


「ヤヌウニさんからよ。今は従者通信が出来る者がみんなこっちに来ちゃってるから、精霊通信でヤヌウニさんに伝えて、私達に連絡が来るのよ」

「伝言ゲームみたいだな。面倒くさい」

 ジェリルが本当に面倒臭いそうに宣う。


「でもブラウニーたちが居てくれるから、ノアも城に居ながら国境警備隊に連絡できたし、私達も知ることができるのよ」

「しかし、国境警備隊にビーストグロー兵を置いといてよかった」

「まあ、攻めてきそうな所って、獣王国かカールスーリエ王国ぐらいだからね」


 クロエとジェリルが話しているのを聞いてアテナがうなっている。

「私達が勝てなかったわけが分かるぜ。何百kmも離れた場所で起きたことが、すぐ分かるんだもんな」

「本当よね。相手がかわいそうに思えるわ」

 イブキも賛同する。


「それでどうするんだ」

「そうね、多分だけど、ここの占拠を明日まで続けて、明日はオラン侯爵の城を攻撃かしら」

 ジェリルの問いにクロエが答える。

「また殺さずにやるのか、面倒臭いんだがな」

「今度は首謀者は殺してもいいと思う」

 クロエは冷たく言い放つ。


「どういうこと?」

「コトネはね、獣王国を対悪魔の先兵にしたいのだと思う。そのためにはこの国を牛耳る貴族は邪魔だ」

 世の中の底辺で生きて来たクロエにとって、貴族への恨みはあっても掛ける情は微塵もない。

「それを今、コトネは王様に掛け合ってるのか」


「あの娘は陛下の嫁になるのが怖いのよ。孤児で何も後ろ盾のない状態で結婚して、陛下がそれでそしられないか心配してるのよ」

「なんでだ。あいつはオリンポスとの戦いで手柄を上げ続けた。帝国もヴァイヤールもそれを認めてるんだろう」

「そうね、その通りよ。でもコトネにとってはまだ足りないのよ。だから今回のことでどこまでできるのか。応援してあげたい」


 クロエはコトネの心情に同情したのか涙を浮かべている。

「アタイもやるぞ。あいつの頑張りはずっと見て来た。あいつが納得して嫁に行けるようにしてやろうじゃねえか」

 ジェリルが言うとイブキとアテナも同調した。



 〇獣王国 王城 

 コトネを怒らせるべきではないと判断した王は、謁見室に招いた。

 当然コトネは礼を取らない。

「私はアルカディア王国国王従者コトネ。今日は貴国の侵略行為について詰問に来た。どういうつもりであるか?」

 王は獅子獣人だ。その勇ましい鬣に似合わず、焦っているようだ。


「使者よ。わしはまだ侵略の事実を確認しておらん。すまんが待ってもらいたい」

「現在、テーレ川でドーベルマン辺境伯軍三千人を捕虜にし、ドーベルマン城を占拠した。この男が証拠だ。それからエドゥアルト国境を越境して、攻撃してきたオラン侯爵軍とわが国境警備兵が戦闘状態にある。知らないでは済まないぞ」

 コトネはゴロに乗っている辺境伯を蹴飛ばして起こした。


「う、うぬ、ここはどこだ。わしはいったい・・・?」

 頭を振りながら起き上がる辺境伯。王はすかさず声をかける。

「辺境伯よ、いったいどういうことじゃ。なぜアルカディア王国に攻め入ったのじゃ」

「へ、陛下?なぜ陛下が・・・ここは王城なのか」

 王はいらいらし始めている。いきなり少女がドラゴンを連れてお前の国が攻めて来た、どうしてくれると言ってきたのに当事者が呆けている。


「どうしてアルカディア王国に攻め込んだのじゃと聞いておる」

 獣王は激高している。そりゃそうだ。亡国の危機だ。

「そんな私は何もしておりません」

 辺境伯はこの期に及んで嘘を吐く。


「こちらには三千の兵と彼の次男を捕虜にしておりますが、返答次第では残酷な結果となってしまいます」

 コトネが強気を崩さずに獣王国を責める。ここでの問題は辺境伯の暴挙の証明が薄いことだ。

「ちょっと待ってくれ。何かの間違いなのだ。兵を失ってしまっては私は・・・」

 他の貴族や領民達に脅しが掛けられなくなるとは言えない。


「派兵したのは間違いないのだな」

「バウ殿経緯を話していただけますか?」

 コトネは後ろに隠れるようにしていたバウを前に出した。


「私は辺境伯の事務官をしておりますバウと申します。私は今日ガルフ男爵とともにアルカディア城にを訪問いたしました。目的は表向きは逃散した農民の返還です。その実・・」

「やめろやめんかあ!!」

「辺境伯黙って聞け!」

 まずいと声を荒げた辺境伯を王が制した。


「続けよ」

「はい、その目的は謁見室に来た身分の高いものを人質に騒ぎを起こして、合図ののろしを上げると川に待機していた兵がなだれ込むことになっていました」

「ガルフ男爵と言えばレベル6のツワモノ、それを封じたのか」

「はい、ここにおられるコトネ様が赤子の手をひねるがごとくに」

 王も辺境伯もここにいる小さな少女がそんなに強いとは思えずに、ただただ青い顔で凝視するしかなかった。


「そうですよね。私達の強さを見せないと信じられませんよね。私達は来るべき悪魔との戦いを想定して訓練しています。そこの衛兵さん、その槍鉄槍ですよね。ちょっと貸してください」

 コトネは鉄でできた柄を持つ槍を借りた。

 それを両手で持つとグニーっと曲げる。一周回して衛兵に返す。衛兵の顔は泣きそうだった。


「アンナ、精霊を召喚して」

 うんとアンナは頷き呪文を唱えた。

「風の聖霊よ、その姿を顕現せよ」

 謁見室に身長三m位の白いローブ姿の女性が現れる。わざと精霊の姿を見えるように召喚したのだ。

 もう謁見室の中にいる人間は恐怖で固まっていた。


 しばらくして正気に戻ったのは王だった。

「なんという者を相手にしてくれたのだ・・・」

 辺境伯は自分が攻めた相手が、およそこの世の物とは思えなかった。

「こんな、こんなことが。私はなんてことを」


「ふー、それでアルカディア王国は何を望むのかね」

 獣王はため息を吐いた。王としてこれが最後の仕事になるかもしれんなと思っていた。

 コトネはその脇に持っていた巻紙を広げる。


「アルカディア王国は獣王国に対し戦争の賠償を以下の通り要求するものとする。

 1.戦争責任者であるドーベルマン辺境伯、オラン侯爵及びその近縁者の処刑。

 2.貴族制の廃止。

 3.奴隷制の廃止。

 4.対悪魔同盟諸国との国交樹立および同盟への参加。

 5.体制変更へのアルカディア王国の指導を受け入れること。

 6.捕虜の引き渡しなどは別途取り決める。

 7.以上のことを実施する上での問題などは都度協議するものとする。

 アルカディア王国 国王代理フェリシダス=リヒトガルド」


 巻紙を側近を通じて獣王に渡す。

 獣王はそれを眺めて静かに言った。

「使者殿、要求は分かったがわしには何一つ実行できんのだよ」

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

獣王に実権がない。コトネはどうするのか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ