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13-2 使者は私

ご愛読、ありがとうございます。

今回はコトネたちが獣王国に対し、反撃に出ます。

 獣王国から使者が来て、無礼なことをしたから詰問の使者を出すって言った。


 〇アルカディア城 <コトネ>

 使者たちを来客用の部屋に監禁して、私達は話し合いをした。

「使者を送るってどうするのですか?」

 アキラさんとしては獣王国と関係を持っても得るところは少ないと見ているようだ。

「その前にドーベルマン辺境伯が攻めてくるんだって」

「なんですって?!」


「ガルフが白状したのよ。こっちで暴れて、火の手を上げて、それに合わせて辺境伯軍三千が攻めてくるわ」

 フフフ、収納庫を探したらティムの魔法陣がいっぱいあったのよね。

「迎え撃たないと!軍部に連絡を!」

 アキラさんが慌てている。大丈夫よ、手は打ってあるから。


「落ち着いて、エドゥアルトから援軍が来るから。今ノルンさんに行ってもらってるわ」

「コトネちゃん、あんた、この機に乗じて何をするつもり」

 フェリ様は私がこの戦争を通じてやろうとしていることが、おぼろげながら見えるみたい。さすがね。

「エドゥアルトからは何人援軍が来るのですか?ノルンさんにはそうは乗れないでしょう」

 アキラさんはまだ焦ってる。そうね彼は私達の戦いを見てないから、人数がいると思ってる。


「アルカディア城には二千人の兵がいるから、守りを固めるように伝えてあるし、私達もゴロが来たら行くわ。フェリ様あとはお願いします」

 フェリ様は頷いてくれた。私を信用してくれるんだ。ありがとう。

「でもね。この騒動が終わったら政治的な駆け引きになるんでしょう。もう一度話し合いましょう」

「はい、ありがとうございます」


 ゴロが来たので用意しておいた薪を広場で焼く。

「煙が派手に出るようにね」

 上空から支持をしておく。

「コトネ、何をするんだ?」

 ゴロが不思議そうに聞いてくる、彼には何も説明してない。


「戦争よ。侵略軍が攻めてくるのよ」

「レオンがいないのに大丈夫かあ?」

 ゴロは心配そうに聞いてくる。

「お姉ちゃんに任せておけば大丈夫だよ」

 ほらアンナも言ってくれてるじゃない。ゴロはまだぶちぶち言ってる。


「おお、来てる、来てる」

 一艘三十人くらい乗った船約百艘が、上流から港に向かっている。

 合図を上流で待ってたんだね。それで沢山上陸できる港を狙っていたのか。


「アンナ!!」

「アイよ!水の精よ、その動きを止めて船を固定せよ。ウォーターバインド」

 あんた、この間まで”ラジャーだよ”って言ってたじゃん。もうあきたんだね。


 水の表層が固まって船は動かなくなった。

「なんだ、急に止まったぞ」

「どうなってんだ」

 騒ぐ、騒ぐ、まあ、水の上に止められたら焦るよね。


 さてと司令官を探さなくっちゃ。あの煌びやかな高価そうな鎧を付けてるやつがそうね。

「あんたがこの軍の司令官?」

 船に近寄って質問してみる。男は三人しかいないけどこいつが偉そうだし、間違いないでしょ。

「う、打てえ!!弓兵早くしろお!!」

 私はゴロから降りて水の上に立つ。普通に立つと穴が開いて沈むんだけど、”鍾馗”の盾を空中に固定してその上に乗ってるのね。


 私のいた場所に矢が集中するけど、その時にはすでに司令官の目の前にいる。隼だ。

 アンナはすでに矢の届かないところまで下がってる。

 その時ちょうどノルンさんがエドゥアルトから到着した。

「なんだあ、こいつらを全員殺せばいいのかあ!!」

 こんなことを言うのは一人しかいない、ジェリルさんだ。


「この男三人をアルカディア城に運んで!」

 剣を抜いて司令官の横に居た男が切りかかってくる。剣を取り上げてノルンさんの上に投げ上げる。

 ノルンさんの上にいるアテナさんが受け止めた。同じ要領で後二人を投げ上げるとアルカディア城に戻る。


 ガルフ達のいる部屋に三人を縛り上げて放り込む。

 こいつらはまだ屈服してないのでティムは使えない。

「おお、ガルフ男爵!この女どもをやっつけろ!」

 司令官と思われる男がガルフを焚きつけるが、彼はシュンとしたまま動かない。

 それはそうだ、彼らはティムされていて私には逆らえない。


「お前達のたくらみはすべてガルフから聞いた。お前がドーベルマン辺境伯の次男だな!」

 ガルフの話では獣王国は実権を四家の貴族が持っており、それぞれが好き勝手していて王の実権は無いに等しい。

 今回のことはアルカディアに一番近いドーベルマン辺境伯がレオン様の不在を知り、それに乗じてアルカディア城付近を手に入れようとした。うまくいけばハーヴェル工場群も欲しかったらしい。


「お前たちは我が国とリヒトガルド帝国とヴァイヤール王国が同盟を結んでいることは知らぬのか?」

 フェリ様が次男に質問する。

「そんなもの戦争に消極的な国ができることなど、文句を言うことぐらいだ」

 次男が口から唾を飛ばしながら力説する。

「ふむ、そのように思われていたとは恥ずかしい限りだな」

 戦争の抑止力にならなかった同盟に、帝国の皇族として責任を感じているみたいです。


 帝国はすでに本来の軍事力に戻りつつある。おそらくアルカディアの危機には万の軍を派遣するだろう。しかし周辺にはまだバルドゥオール王国の件のままと思われてるのでしょう。


「それでこの後どうするつもり?」

 フェリ様はこちらに話題を振って来た。

「ああ、まずは辺境伯を捕えて、王に詰問の使者を出します」

 余りに当たり前のように言う私をいぶかって次男が声を荒げます。


「お前は父を愚弄するのか?!父は難攻不落の城に居て、二千の兵に守られているのだぞ!」

「あなたは三千の兵に守られていたけど、ここにいますよねえ」

「そ、それは・・城と川は違う!!」

 逡巡してから顔を上げる次男。でもねえ。


「同じですよ。私たちにとってはね。ねえ」

「そういうことだな」

 ほら、ジェリルさんもそう言ってるし。


「王への要求はどうするの?」

「そうですねえ。王が使い物にならなければ、辺境伯領の割譲を求めます」

「使えたら?」

「バックについて中央集権制への移行を目指したいですね」

 すでに辺境伯など存在しないような私の発言に、次男がぎゃあぎゃあ、うるさい、うるさい。

「まあ、いいでしょう。慌てず疑問があったら持ち帰ってください」

おお、フェリ様にも認めてもらえた。同盟を無視されて怒っているのかな。


「言っておきますが、私達は善良な人には優しいですけど、悪逆な人には容赦しませんよ。

 私達に手を出そうとした愚かさを地獄で噛み締めると良いわ」

 アキラさんはバウさんを残して四人の身柄を地下牢へ移した。

 地下牢には今まで入るものがいなかったので、アキラさんが作っておいてよかったと言っていた。

 ちなみに盗賊達はその場で殺したし、罪の軽いものは警邏に留置場がある。


 さあ、辺境伯の城に行くわよ。メンバーは私、アンナ、ゴロ、それからエドゥアルトから来てくれたジェリルさん、イブキさん、アテナさん、それからクロエ姉ちゃん、あと道案内のバウさんの八人だ。



 〇ドーベルマン城 <コトネ>

 ドーベルマン辺境伯の居城にやってきました。戦争しているとは思えないほど静かです。

 まあ、完全に奇襲ですから、私達には気が付いていないでしょう。

「じゃあ、私が先に行って辺境伯の居場所を探してくるわ」

 クロエ姉ちゃんがゴロに乗って先に潜入しました。


 私達は少し離れた場所でクロエ姉ちゃんの連絡を待ちます。

 しばらく待つと連絡が入ってきました。

『あの次男の言ってたの大噓ね。ここには五百人も残っていないわ。誘導するから来て頂戴』

「クロエ姉ちゃんが辺境伯の所へ誘導してくれるって、それからここに兵隊は五百人もいないって」


 私がクロエ姉ちゃんの報告をするとイブキさんが驚いた。

「なんで??!!さっき潜入したばっかりじゃない。なんでわかるの?本職のカスミだってそんなことできなかった!」

 うんうん、わかるよ、私も本職に指導してもらったけど、そんなことできないからね。

「ま、クロエはすごいってことでいいんじゃねえか」

 雑にジェリルさんがまとめたところで行きますか。


 クロエ姉ちゃんの誘導でノルンさんから城に飛び降りて、さすが私達は見つからずに接近なんてできないから、出会った兵は剣の腹で吹っ飛ばして気絶させ、辺境伯の部屋にたどり着いた。

「誰だお前たちは!!」

 四人の鎧で武装した男が部屋にいたが、あっという間に捕縛した。


「おい、どれが辺境伯だ?」

 今までジェリルさんに抱えられていたバウさんが指差す。

「こんなことをして!お前たち!どうなるか分かっているのだろうな!」

 辺境伯が吠えた。


「私達はアルカディアから来た。これでお前がどうなるかわかるな!」

 私がそういうと辺境伯は信じられないという顔をして黙った。

「私達って、うまくやれば西大陸ぐらい占領出来ちゃうんじゃない」

 アテナさんが得意げな顔をして私に言ってきた。


「そうですね。オリンポスにもノルンさんがいたら出来ましたね」

 アテナさんはハッとして私の顔を凝視した。

「そうか、それで私達はレオン殿に負けたのか」

「それと情報の収集でオリンポスに先回りできました」


 皮肉を言ったつもりだったが、すごく感心された。

「そうか、それで私達は各個撃破されたわけだ」

 ふんふんと頷くアテナさんに聞いてみた。

「悔しくはないのですか?」


 アテナさんはにこっと笑った。

「別にぃ、オリンポスに思い入れはないからな。それより私は今の方が楽しい」

 ああ、この人はオリンポスに生まれただけで、信念とかはなかったんだな。


「おい、コトネ、これからどうするんだ」

 ジェリルさんが聞いてきた。そういえばこの人は自分で考えるということは、しないのだった。

「はい、ジェリルさん、アテナさん、イブキさん、クロエ姉ちゃんはこの城を敵に再使用されると厄介なので占領しといてくれます。何なら長男もここにはいるでしょうから人質にしてもいいかも」

 さも「留守番しといてくれます」と言うように軽く言ってみた。


 ジェリルさんもそうなのかというような感じで私に聞く。

「お前はどうすんだ?」

「私はこいつを連れて王に詰問に行きますよ。もちろん使者は私です」

 辺境伯の襟首をつかんで持ち上げる。


 外がにぎやかになって来た。兵たちが騒いでいるのだろう。

「お前らもう逃げられんぞ。降伏したら命だけは助けてやる」

 辺境伯が強気になって上から説得を図る。

「長男はどいつだ。まだバウさんが指を差す。

 そいつを持ち上げドアを開く。前にイブキさんとアテナさんが出る。


「人質とは卑怯だぞ!!」

 長男は泡を吹いて気を失っているのに、父親は元気なことだ。

「兵をあまり殺したくないからだよ。私達の兵になるかもだからな」

 私はそういうと扉の反対側に行く。


 窓を開けるとそこにはゴロがいる。

「アンナこのおじさんを頼むね」

 ひょいとゴロの上に辺境伯を乗せる。

「うわあああ!!」

 たかだか、十m位の高さなのにうるさい。

 あ、静かになった。気を失ったのかな。

 アンナが辺境伯を魔法で拘束して自身もゴロに乗る。


「お姉ちゃんはどうする」

 ゴロが去り、向こうからノルンさんが近づいてくる。

「もう、ノルンさんが来るから大丈夫だよ」

 私はバウさんを小脇に抱えて窓からジャンプした。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はコトネが王城に乗り込みます。

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