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1-5 三男坊 レベル5と戦う

白百合荘についたレオン、すでに始まっていた賊との戦いの中に身を投じる。

賊の中に居たレベル5との戦いが今始まる。

 辺境伯に呼ばれてテレジアスに向かった俺だが、途中で怪しい幌馬車を発見。

 王太后の住む白百合荘へ襲撃を掛ける一団と戦うことになってしまった。


 白百合荘ではすでに全面的な戦いになっていた。

 白百合荘は出入口一か所以外は湖から引き入れた堀になっており、戦いはその一か所に集中していた。

 戦いの場所にはライトの魔法が漂い、かなり明るくなっている。

 人数は味方が敵の倍以上いるのだが敵に一人とんでも無く強い奴がいるので押されていた。


「コトネ、着替えたか?後の暗闇から1人ずつ倒していこう」

 俺達は敵の後ろに出たことから見つからないように敵を減らすことにした。

 コトネはスキンアーマーを発動した。

 下着姿ではかわいそうなので革でブラとショートパンツを作ってある。


 こんな状況ではコトネの独壇場だ。

 気配を消し、後から脇差で相手の胸を貫き、死体を後ろに隠す。

 俺もやるがコトネの方が倍は殺している。

 敵が半分くらいになると流石に俺達も見つかってしまうが、挟んでいる形になるので敵の動揺が大きい。


「こいつらは強い。俺が相手をするからお前らは前を抑えておけ」

 突出して強い奴が俺達の前に立ちはだかった。

「俺はレベル5だ。お前ら覚悟しろ!」


 横殴りに剣を振るう。途轍もない速度と強さだ。

 かろうじて剣で防いだコトネが吹っ飛ぶ。

 コトネは立ち木に体を横にして着地、その反動でトンボを斬って地面に降り立つ。

 しかし、衝撃は凄まじく両手が上らないみたいだ。


「少し後ろで休んでろ!」

 コトネに指示し、俺は一人でこいつと戦うことを決意、間合いを取りつつ正眼に構える。

 奴は上段から飛び込んでの唐竹割、速度が速すぎて反撃の隙は無い。

 後ろに跳んで躱すが、バーンと言う音と共に衝撃が体を叩く。

 硬気功で体を固くしていたので、ダメージは無いが、訳が分からず集中が乱れる。

 剣の切っ先が音速を超え、衝撃波が発生したのだが、俺に解る訳がない。


 しかし、奴の速度には目がついて行くようになった。

「気功一刀流、剣技『朧月おぼろづき』」

 これは受け身の技で剣身表面で弾く事によって相手の攻撃を逸らすことが出来る。

 これにより相手は剣を止めると言う動作をしないと隙が出来るため、普通の攻撃の倍以上の体力を消耗する。


 俺より30分は余分に戦っており、こんなのらりくらりとした戦法で体力を奪われていくのは腹が立つだろう。まあ、それも狙いでもあるが。

 奴は剣を振り回すが俺の体を逸れて明後日の方向に軌跡を曲げる。

 奴には俺しか見えていない。


 また剣を上段に振りかぶった。

 その時奴の胸から刀が生えた。

 後ろに回ったコトネが体ごと、刀を奴に突き刺したのだ。

「コトネよくやった」

「はい」


 俺に集中しすぎてコトネを忘れた。

 レベル5恐ろしい、これで努力して技術を覚えていれば、俺は勝てなかった。

 レベル5を失った敵は戦意を失い、すぐに鎮圧された。


「レオンハルト殿、助かったよ。君はすごいな」

 どこからか現れたマティアス中尉が俺を褒めてくれる。

「いや、コトネと二人がかりでやっとですよ」

「何言ってるんだ。俺達は全員がかりで、やっと止めるだけだったんだぞ」

「ありがとうございます。エリーゼ様が心配しておられると思いますので戻ります」

「宿場長と辺境伯様の所には伝令を出したから明日戻ればいい。

 今日はここで休憩する許可を貰ったから休んでくれ」


 馬はこちらで雇った農夫が世話をしていた。中尉があちこちに指示を出している姿が見えた。

 コトネはいつものメイド服に着替えた。俺は毛布だけ持って白百合荘に向かった。

 白百合荘に入るとすでに何人かの兵がホールで休憩していた。

 俺達は階段の近くに毛布を敷き、座った。


「コトネ、寒くはないか」

 人目が無ければ小屋を出して寛ぎたいところだが仕方が無い。

「大丈夫です。・・・お伺いしたいことがあります」

「うん、なんだ?」

「レオン様はレベル5と戦うことが、怖くなかったのですか?」


「そうだな。最初はお前が吹っ飛ばされてビビったんだけど。そのうち剣の修行をしてないことが解って、あまり怖くなくなったのかな」

「私は速さと力にビビってしまいました。レオン様が少し休んでろと言って下さって、復活出来ましたが。

 暗殺者の時もレオン様は冷静に対処されていましたが、私は目いっぱいで、手加減も出来ずに殺してしまいました。私にはレオン様が相手に会わせて強さを小出ししているように見えます」


 俺は俺なりに目いっぱいやってるつもりなんだけど、コトネにはそうは見えないみたいだ。

 暗殺者の時も今回のレベル5の時にも考えている余裕はあったのか?

 しかし、速度と力はコトネの方が上だと思う。技は俺の方が優れている気はするが?


 そんなことを考えていたら目の前に男が立った。

「レオンハルト=イエーガー殿でいらっしゃいますか?」

 執事のような服装だ。俺達は立った。

「はい、そうですが」

「主人がお礼を言いたいと申しております。着いて来ていただきますか?」


 俺は慌てて手を前にして振った。王太后様の執事?

「申し訳ありませんがこの格好です。高貴な方の前に出れるような姿ではありません」

 なるべく返り血を浴びないように戦ったが、それでも汚れてはいる。

 着替えは馬車に積んだカバンの中だ。


「大丈夫です。着替えは用意しましょう。そちらの娘さんもご活躍になったと伺いました」

「はい、コトネと言います。多くの敵を倒しましたし、レベル5の止めを刺したのも彼女です」

 俺はコトネをより多くの人に認めてもらいたい。獣人差別を少しでも減らしたい。

「分かりました。コトネさんにも来ていただきましょう」

「レオン様、私は良いです。遠慮します」

 コトネは遠慮して俺の後ろに隠れようとしている。

「お前をこんなむさい男だらけの所に置いておけるか」

「そうですよ。あなたはレオンハルト様の従者なのでしょう。主人の言うことは聞きましょうね」

「は・はい」


 俺達は湯で体中を拭かれ、着替えを貰った。俺のは儀礼服よりはるかに立派だし、コトネは舞踏会のドレスみたいだ。

「レオン様、本当によろしいのですか?」

「向こうの依頼だ。変に委縮しない方が良い」

 コトネが俺に囁いてくるので俺もささやき返す。まあ、田舎貴族だ、開き直るしかない。


「ありがとう。まああ、若い頃のフリードリヒを思い出すわ。私はあなたのお父さんにも助けられたのよ」

 王太后が俺達を迎える。フリードリヒは俺の父親の名前だ。

 俺の父親は昔傭兵団を作っていた。20年前王が反乱軍に攻められ、着の身着のままで王都から逃げた時に王に雇われ、十数人の傭兵団が数千の敵と戦いつつ、シュバルツバッハ辺境伯に届けたのだ。その間2日か3日、ほぼ傭兵団だけが王を守って戦った。辺境伯軍が見えた時、王が感激のあまり「俺が王座に戻れたら汝を伯爵に取り立てる」と約束したのは有名な話。王太后はその時、一緒に居たらしい。


 御年八十になろうかと言うおばあさんだが元気だ。静養する必要あるのって感じだ。

「ごめんなさいね。私達はまだあなたのお父さんに恩を返せてないわ」

 俺の今の状況を聞いて王太后は涙を流した。ここまで貧乏とは思ってなかったみたいだ。

 俺は別に俺の手柄でもないし、関係ない。


 エリーゼの話になると嬉しそうに言う。

「あの子だけよ。私の所に来てくれるのは。本当に優しい子。そういえばあの子を救ってくれたのもあなただったのね」

 約30分話をして解放された。

 コトネはすごく緊張してて、可愛いを連発されていたが聞こえていたのかどうか。


 コトネは控えの間に戻るとプハーっと大きなため息を吐いた。

「滅茶苦茶緊張しました」

「慣れとけよ。俺は何かでこの国一番になりたい。偉い人のバックアップも必要になるだろう」

「またあるんですか?」

「お前が武の道を進む限り、こういうことはあるだろう。それとも家事だけのメイドになるか?」

「いえ、レオン様は私が守ります。このままでお願いします」


「話は違うがその姿、アンナに見せてあげないか?きっと喜ぶぞ」

 ニコッと笑ってドレス姿のコトネを観察する。確かに可愛いわ。将来有望だな。

 コトネはドレスを慌てて脱ぎ捨てるといつものメイド服に着替えた。

「これはアンナが今の私くらいになったらあの子にあげます。収納庫に入れて置いて下さい」

「着たくなったら、いつでも出すからな遠慮すんなよ」

 俺も収納庫から平服を出し、着替える。


 ホールに行くとすでに兵隊は引き上げていた。繋いどいた馬も回収されている。

「困ったな、どうしよう?」

「戻るのですか?」

「戻っても日付が変わってしまう。十字路でエリーゼ達を待ちたい。ここで借りても戻せないしなあ」

「乗り捨てられた幌馬車ですが、何頭か馬が生きていたようです」

「仕方ない、そこまで歩くか」


 二頭立て幌馬車四台のうち、使えそうな馬が二頭いた。水と餌を与えて休ませた。

 馬の死体と馬車は貰っとこう。何かに使えるかもしれん。

 いつもの小屋を建て、朝まで休むことにする。


 次の日の朝、馬も元気になったようなので十字路に向かって馬車を進める。

 向こうも朝一番出発したのなら、こっちの方が少し早く十字路に着くはずだ。

 俺達が十字路に着くとすぐにエリーゼ達の馬車が来た。

「レオン様あ、」

 アンナが飛びついて来た。寂しかったのだろう。コトネが宥めるが離れない。


「ごめんなさい。私、おばあさまの所に行くわ」

 エリーゼが言って来たので、俺達は幌馬車でテレジアスに向かうことにした。

 護衛もエリーゼについて行ったのでマティアス中尉だけが残った。

「済まなかった。残った馬をすべて引き上げてしまった」

 中尉に謝られたが、あの場合仕方ないでしょうと言っといた。


 コトネが手綱を握り、改めてテレジアスに出発だ。

追いつめられた貴族派は王都への襲撃を開始した。それを迎え撃つのはニコラウス兄とレナ姉だった。

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