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12-11 ホウライ国到着

ご愛読、ありがとうございます。

ホウライ国に着きます。

 俺とイブキ達は悪魔襲来の次の日、ヴァイヤールのイエーガー伯爵邸を訪問した。伯爵は非番で在宅のはずだった。シャオリンは関係ないので留守番です。


 〇イエーガー伯爵邸 <レオン>

 応接室に通されるとすぐに父は現れた。

「これはこれはアルカディア王陛下ではありませんか。今日はどのような御用でしょうか?」

 父はふざけているのか俺を陛下と呼んだ。

「今日はお忍びなので、以前のように接してくれませんか」


「ふむ、良いだろう。それで何の用だ?」

 父はすぐに昔のように語りかけてくれた。

「はい、用件は二つ。一つは彼女達、ホウライ国の使者をお連れしました。もう一つはハーヴェルに上級悪魔三体が現れました。その報告と対処についてご相談したい」


 俺は父が神獣人の情報や強くなる方法について教えて欲しかった。

「ホウライ国、セイイ大将軍ヨシムネ=トクガワの使者イブキ=ホウジョウインと申します。こちらに控えるのは副使のシグレ=コノハと従者のカスミでございます。

 上様からの書状は読んでいただけましたか。今日は出来ましたらお返事をいただきたくお願い申し上げます」

 イブキは深く頭を下げるとシグレとカスミも同様にお辞儀をした。


 彼女達は一年以上を掛けて大陸を横断してここに着いた。そして最後の仕事をしている。感慨深いものがあるだろうな。

「分かった。すでに返信は書いてある。それを渡す前にホウライ国でのヨシムネ殿やアヤメ殿のご様子を伺いたい」

「はい分かりました」


 イブキはホウライ国に帰った先生の活躍や中興の祖と呼ばれるぐらい尊敬を集めていることを話した。

 アヤメさんについては忍者なので表に出ず、何をしているのかはよく分からないと言った。

 小一時間語り明かしたそのあとに悪魔の話となった。


「そうか、コトネが敵わなかったのか。彼女を誘拐事件の時に見たが、あの若さでよくもここまでと思ったものだが・・・・」

 父は顔を伏せて何やら考えているようだ。

「それで神獣人の情報ともっと強くなる方法を教えてほしい」

 俺は父が有用な情報を持っているとは思えなかったが聞いてみた。


「すまん、最初に謝っておこう。俺は知っての通り我流で強くなった。そして俺より強い者も知らない。つまり今以上に強くなる方法は知らないのだ。神獣人の知識についても民間伝承程度だ。具体的にどこにいるのかも知らない。お前に国の防衛を任せ、お前を導く立場の俺が何もできない。本当に申し訳ない」


 父は頭を下げた。生まれてこの方初めてのことだ。俺は父に認められたと実感した。

 十二の時、学校に行かせて貰えなかったが、ヨシムネ先生と出会ったことで俺の道は開けた。

 先生に鍛えられた学問と剣術のおかげで多くの知己を得てここまで大きくなれた。

 後は悪魔に勝って維持するだけだ。その方法を先生が知っていると助かるんだがな。


 俺達は父の手紙を貰ってアルカディア城に戻った。



 〇アルカディア城 <イブキ>

 陛下レオンと部下の方達との話合で、ホウライ国へ行くのが明日に決まってしまった。

 ホウライ国での陛下達の宿泊は、私の家ですることとなった。私もこれだけお世話になったのだからそれに否は無い。

 ただ荷物がすっかり広がっていたので、片付けるのが大変だ。


 コトネ殿とアンナ殿はお昼過ぎに帰ってきたので、用意が大変だなと思ってみていたが、荷物を用意する様子がない。


「ホウライ国に行く用意ですか?。私達はいつでも出かけられるように用意出来ているので、慌てて用意することはありません」

 コトネ殿はそう言って陛下のお世話ができなかった分を取り返すように働いていた。

 彼女達はいきなり出かけることが多々あり、それに備えているようだ。


 それに引き換え、うちの人達はお土産を買いすぎて、荷物が持ちきれなくなっている。

 これにはハーヴェルの工場直営店で安くて品物がいいと量を考えずに買ったらしい。帰りが船旅だったら間違いなく路銀が不足しただろう。


 私は私で帰国後どうするかで悩んでいる。シャオリンはもう一度ここに戻って、こちらで骨を埋める覚悟で暮らすらしい。この国の自由に憧れ、職も用意してくれるらしい。

 一つにこちらにいれば自分が強くなれることもある。ジェリル殿達と訓練したら一週間で強くなれたことを実感した。


 私は帰ればどこかに嫁にやられることは決まっている。まあ、シグレも同じだろうがこの国に戻ることも考えている。

 見ず知らずの男と結婚して、一生家から出ずに暮らすという人生に我慢ができるのか?しかしこちらに戻ったら結婚も危ないかも知れない。


 そして悪魔に勝てるかという問題がある。東大陸には四人の神獣人がいるので多分負けないだろうということ。西大陸には神獣人は一人しか見つかっていないこと。しかも人間のために戦うかどうかも分からないこと。


 考える時間が一気に無くなってしまった。

 あーどうしよう。



 〇<コトネ>

 仕事をしていないとどうしてもあの瞬間を思い出してしまう。時間が経てば経つほど自分の胸を締め上げる。

 私は負けた、完膚なきまでに。

 ジェリルさんには勇ましいことを言ったが、どうすれば良いのかなんて分からない。

 ホウライ国に行ってヨシムネ様に聞いて解答なんか貰えるのだろうか。


 考えても仕方のないことがグルグルと頭の中で回ってる。


 いっそのこと神獣人になってしまおうか・・・。


 嫌だ。


 ソーンのような人生は送りたくない。


 レオン様と添い遂げたい。


 でも悪魔と戦って、私達は無事でいられるの?


「お姉ちゃん!また考え込んでるんだ。洗濯物を運ばないと明日はお出かけでしょ」

 ふいにアンナに現実に引き戻された。

「どうしようもなくなったら神獣人でも何にでもなったら良いでしょ。その時は私も付き合うから。今はレオン様に縋って行きましょ」

 え、アンナも付き合うって?


「もしかしてあなたも神獣人なの?!」

「そんなわけないでしょ。私にももう一つ上があるってこと」

 アンナは不機嫌そうな顔をして言った。

「どんなの?」

「言えないよ。でもそれをやると、もう元には戻れないことも解るの」


 ああ、この子も私と同じ悩みを抱えていたんだわ。お姉ちゃんなのに狼狽えて恥かしい。

「ごめんね。情けないお姉ちゃんで」

「良いよ。それが私のお姉ちゃんだから」

 恥かしいのか顔を赤くして洗濯場に駆けて言った。


 アンナのその上か。そういえばジェリルさんもそんな感覚があったって言ってたな。

 まあ、考えても仕方がないわ。出来れば皆が今のままで居れれば嬉しい。



 〇次の日

 ノルンの前にホウライ国行のメンバーが集まった。

 レオン、コトネ、アンナ、イブキ、シグレ、カスミ、シャオリンの七人である。

「旅程を確認するぞ。二十分後、ここを出発、四時間後北の大地で休憩、八時間後少森寺でシャオリンを降ろす、十時間後イドに到着予定だ。イドの滞在予定は未定だ。

 水分をあまり取るな。おむつを忘れるな。トイレは済ませておけ」

 レオンが指示をするが、あまり聞いていない。全員が不安と期待でハッチャケているのだ。


 レオン自体、長距離の空の旅を知らずにアリスに色々聞いたから準備ができたが大慌てであったことは間違いない。

 レオンが知っていたのはおおよその方向と距離だけだったのだ。

 アリスはアルカディアからホウライ国への地形図を書いてレオンに渡した。

 ジェット気流のあるところは空気がほとんど無く、温度も極端に低いので人は生きられない。だから高度は余り上げないようにと注意を受けた。


 アルカディア城を飛び立つノルンは、いつもの黒鷲よりスマートなアホウドリ型だ。この方が空気抵抗が少ないので、疲れにくいそうだ。

 西大陸と中央大陸の境の山脈を越えると巨大な湖や砂漠が見えてくる。ここいらに住んでいる人は少ない。

 気温はかなり下がっているはずだが、透明な決壊に包まれ、アンナが暖房もしているので寒くはない。


 高速で飛んでいるのにも関わらず、ずっと見えてるのは砂漠と木の生えていない山々だ。

 やがて北の方から針葉樹の森が見えてくる。

「もうすぐ休憩予定地だ。防寒対策をしてくれ」

 皆にポンチョを渡す。まあ、初夏なのでそんなには寒くないが、彼女たちは半そでなので、さすがに羽織るものは必要だろう。


 直径一kmほどの小さい湖の流れ込む川の河原に着陸する。

 蚊が多いので忌避結界を張って、トイレの設営を開始する。

 トイレと言っても穴を掘って、板を置いて覆いをかぶせるだけの簡単なものだ。

 さすがにうら若き乙女にそこらで、用をたさせるわけにはいかない。

 出来上がると同時に覆いの中へ入って行った。まあ、四時間だからな、よく我慢してくれた。


 軽い昼食を取り、少森寺に向かう。

 二時間少々で少森寺の近くに着陸、シャオリンを降す。帰るときに連絡する場所を決めて、イドに出発。


 三時間ほどでイドに到着、もう夕闇が近づいていたが、中心部は人が多いので、少し離れた原っぱから歩いてイブキの屋敷を歩いて目指す。


 一時間強、歩いたのですでに町は暗くなっていた。

 シグレとカスミは自宅に帰ったので、イブキの家にお邪魔したのはレオン達三人だった。


「遅い時間に突然お邪魔して申し訳ない。私はアルカディア王国国王レオンハルト=アルカディアと申します。こちらは従者のコトネとアンナと申します」

「インエイ=ホウジョウインと申します。孫がお世話になったようで、ありがとうございました」

 畳の敷かれた部屋でイブキの祖父と面会した。若い時から激しい修行をしてきたのだろう。深い年輪のようなしわが印象的な老人だった。


「私は実は将軍様が西大陸にいらっしゃった折に弟子にしていただきました。イブキさんが訪ねて見えたので連れてきてもらいました。できましたらば将軍様に面会できるまで宿泊させていただきたくお願いいたします。つきましてはつまらぬものですがお納めいただきたい」

 コニンさんが作った銀細工の置物と焼き菓子を渡した。


 今日は遅いので明日イブキに面会の申請をしてもらって、その返事で滞在の予定を立てることにした。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

ヨシムネとの面会は果たせるのか?

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