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12-9 工房襲撃(2)

ご愛読、ありがとうございます。

パソコンが故障して、古い20年前のパソコンで書いてます。もう、ギリギリでした。

今回は敵との戦いと悪魔の登場です。

 〇ハーヴェル工場近くの街道上

 四組の対峙が始まった時点で、霊力のドームを作っていたアンナが降りて来た。

 こちらの人数が五人余っている状態なので、逃げることはないと言う考えである。

「アンナ、ご苦労さん」

「良いよ、私は一対一の接近戦は苦手だから、これくらいの役に立たないと。それよりレオン様はやらないの?」


「まあね、最近は国の存亡に関わらない戦いは、フェリやコトネが許してくれないんだよ」

「王様も大変なのね」

 レオンは警戒してゴロから降りずに話す、アンナの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「もう、子ども扱いしてえ」

 文句を言いつつ微笑む顔が可愛い。


 〇コトネ対キンファ

「ふん、子供のくせに随分殺して来たようだね」

「レオン様の造る希望の国に、悪さをする害虫に掛ける情けは無いよ」

 青龍偃月刀を構えるキンファはコトネに話し掛ける。


「可哀そうにご主人様に洗脳されて、荒事をやらされているんだね」

「私達はレオン様に自分の未来を掛けている。害虫!、駆除してやるよ」

 青龍偃月刀は薙刀に似た長柄で、少森寺でも人気の武器で、三国志の英雄関羽の武器でもある。


 コトネはいきなり走り出すとキンファは横に払う。

 コトネは飛び上がりキンファの顔に頭上から斬り付ける。

 青龍偃月刀の重量は重く、受け止められなかったキンファはのけぞって躱す。


「大したことないのね。さっさとシンタン国に帰って置けばよかったね」

 からかわれたキンファの額には縦に血の筋が入った。

「グ、このガキ、よくも」

 キンファは額に手を当て、自分のスキンアーマーが破られたことに驚く。もちろんアーマーが無ければ顔を割られていた。


 キンファは連続技でコトネを襲う。瞬間的にでもコトネの攻撃に身を曝したくない思いが、それをさせている。

 しかし、人は連続で激しい運動が出来るのは短い時間だ。

 キンファは一分も持たずに攻撃をやめて距離を取った。


「あら、もう疲れたの。それでよく私達の仲間を傷つけようとしたね」

 コトネはいつになく煽る。よその国まで来て騒動を起こすキンファ達に怒っているのだ。

「おのれえ!三式戦”飛燕”」

 不可視の気功の刃がコトネを襲う。


「魔剣”山月”」

 レオンの魔剣を参考にコニンが打ったコトネの魔剣”山月”に霊力が流れる。

 コトネが山月を振るうと飛燕はカキ消えてしまう。


「馬鹿な!そんな馬鹿なことがあるはずがない」

 少森寺で無敵を誇った技が簡単に破られてしまった。

 もう、攻撃する手段がない・・・。


 必殺を誇った技が何も通じない。

 内気功で何倍にも上げた身体能力も

 三式の外気功も

 まるで幼い頃、宿坊の先輩達に甚振られた時のように、まったく手も足も出ない。


「どうしたの?もう終わりなの?あんた達の雇い主の事を話してくれたら命は取らないけど」

 コトネが一歩一歩近付く、キンファは後退するが、後ろを向いて逃げることは出来ない。どう考えてもコトネの方が速いからだ。


 勝つことを諦めたキンファの頭には、過去の思い出が走馬灯の如く駆け巡る。

 自分には両親の記憶はない。幼児の頃に捨てられたからだ。

 宿坊では強くなれるように必死で練習した。でも強くなっても女には良い席は与えてもらえない。僧兵にしか成れなかった。

 仲間を集めて少森寺を脱走したけど、みんな死んじまった。


 私もこいつに殺される。


『ククク、心折れたみたいい。ならば私にその体を頂戴よ』

 キンファの頭の中で声が聞こえた。



 〇ジェリル対ペイジ

「ハハハ、どうしたそんなものか?」

 ジェリルの大剣がペイジを襲う。ペイジは先ほどから自分のロングソードと二式”鍾馗”を組み合わせて何とか防いではいるが、威力までは殺し切れずに吹っ飛ばされる。

 こっちには強いやつはいないんじゃなかったのか?騙された。


 キンファについてこなければよかった。何が西大陸には強いやつはいないだよ。しっかりいるじゃないか。


 どこからか鼓動が聞こえる。自分の音じゃない。

『あとは私がやる。お前は引っ込んでなさい』

 ジェリルが近寄ってくる恐怖と頭の中に話しかけてくる恐怖で、ペイジは意識を失った。



 〇イブキ対バイスウ

 イブキの十字槍がバイスウの喉元を襲う。よけたつもりだったが、十字槍の横に飛び出た部分が首を傷つける。

「やっかいな」

 もう少し深ければ頸動脈を斬られるところだった。あまりに素早い上下左右の突きに、防御が追い付いていない。


 バイスウの持つ槍は防御には適さない。細くしなるからだ。基本的に攻撃は避けて突く、それに徹する。

 しかしイブキがバイスウの穂先を弾き、連続で突いてくると避けるだけで精いっぱいとなり、攻撃に移れないのだ。


 こうなればバイスウにはカウンターを狙うしかない。

 外側から相手の左腕に充ててやりしならせて相手の胸を突く。初見で防いだ奴はいない。


 来た、イブキがまっすぐバイスウの胸を狙って突っ込んでくる。

 右手で槍の端を握り、大きく外から槍の中ほどを相手の左肘に当てる。

 穂先ではないから相手は避けない。バイスウは体を開いて相手の攻撃を避ける。

 槍はしなって相手の内側に回り込む、そのまま右手を伸ばして押し込めばカウンターとなって・・・。


 二式”鍾馗”がバイスウの槍を弾く。

「馬鹿な!」

 必殺の攻撃を躱され動揺するバイスウ。

「その攻撃ならシャオリンに何回も見せてもらった」

 西大陸までの一年間の旅で何度もシャオリンと練習してきた。その結果少森寺の攻撃に慣れていたのである。


 体の開いたバイスウに必殺の一撃を繰り出すイブキ。


『助けてやるから体を寄越しなさい!!』


「助けて!!」

 頭に響いた声に助けを求めるバイスウだった。



 〇シャオリン対セッサ

 この戦いはシャオリンの七節棍対セッサの双剣の戦いだ。

 セッサはキリと同じくキンペイバイよりは腕が落ちるが、それでも一般兵よりは強い。

 シャオリンもキンペイバイと肩を並べる強者なので、終始シャオリンが押し気味に戦っていた。


「おのれ、七節棍のような劣弱な武器がなぜ?」

「七節棍は扱いが難しいだけで、劣弱ではない!」

 双剣は間合いが近いので、七節をつないだ棒として戦っている。


 上段から棒で打つシャオリン、双剣をクロスさせて受けるセッサ。


「ガッ!!」

 先端の一節が外れ、セッサの左肩を打つ。


 先端の一節には鉛を仕込み、鋼で巻かれている。

 五十口径のマテリアルライフル並みの衝撃がセッサを襲う。

 いくらスキンアーマーで防御していようとその威力は受け切れない。


 セッサは跪いた。その肩は陥没している。

「グッ!ま、待て、も、もう戦えない。降参だ」

「お前たちの依頼主は誰だ?」

 シャオリンはそのまま尋問する。彼女は脱走兵たちのことを少森寺に報告しなければならない。


「そ、それは・・・」

 セッサの顔が歪むのは痛みのせいだけではなさそうだ。

 彼女は右手で持った剣を心臓の上に当て、突っ伏した。

 切っ先が背中のブラのひもを斬り、突き出ていた。即死である。


「クッ、生きることを選べないほどなのか?」

 セッサという名前からして本名じゃないだろう。本名は本人を含めて誰も知らないんじゃないかな。

 俺だって幼児の時はアリンと呼ばれ、成長してシャオリンになったが、たぶん本名はリン何とかって言ったのだろうか、成人したら自分で名付けるつもりだったが、ゴチャゴチャしていて忘れていた。


 俺達は生き方を知らない。セッサも生き方が分からないからキンペイバイにしがみついていたのだろう。

 生まれ変わったら男に生まれろよ。男だったら捨てられることもないからな。



 〇リリス登場

「グアア!!」

 キンファが突然空に向かって吠え始めた。

 彼女がつけていたブラとショートパンツが黒い煙に変わっていく。

 この装束にはクロノスが悪魔を仕込んでいたのだ。


 黒い煙に見えたのは反転魔素、いわゆる瘴気だった。

 瘴気が収まるとそこにいたのはキンファとは似ても似つかぬ女性だった。

 碧眼金髪の美しい容姿、そして背中にはコウモリの羽が生えていた。


「こんにちわあ。私はリリスよお。よろしくねえ」

 コトネに挨拶する女。しかしコトネはその存在に圧倒されていた。

「あなたは何者なの?」

 コトネは言葉を絞り出した。


「私はあ 貴方達の言葉で言えばあ 上級悪魔になるのかなあ」

 いちいち語尾を伸ばして話してくる。

 そこで右手に持った青龍偃月刀に気が付いた。


「あらあ、やーね。こんな野蛮なもの。ポイしちゃいましょ」

 両手でくちゃくちゃと握りつぶすと、瞬く間にボールのようになってしまった。

 それを後ろにポイっと放り投げる。


「ビーストグロー!!」

 コトネが叫ぶと魔法陣が現れ、彼女はそれに突っ込み、変身した。

猛虎三連撃タイガークロー!!」

 三本の不可視の刃がリリスを襲う。


「もう、あんたも野蛮ね。私は顔見世に来ただけよ」

 右手を軽く振ると不可視の刃は消え失せた。

 次の瞬間消えた?コトネの目の前に現れるとコトネの額に手を伸ばす。

「いけない子にはお仕置きよお」


 コトネは縦に回りながら吹き飛ばされる。

「あらあ、ちょっと強かったかしら、デコピン」

 慌ててコトネを抱きとめたレオンを見ながら笑うリリス。



 〇エキドナ登場

「ビーストグロー」

 ポーチから出した魔法陣に瓶に入れた魔力を注ぐ、ジェリルは変身した。

「私の名はエキドナ、上級悪魔よ。よろしくね」

 ジェリルは自己紹介するペイジから変身した茶髪金目のエキドナに向かって大剣を振り下ろす。


「もう、無礼な子は嫌いよ」

 エキドナが大剣を叩くと根元からぽっきりと折れて飛んで行った。

 返す手でジェリルの頬を叩くとジェリルはコマのように回転して倒れ伏した。



 〇ゴモリー登場

 バイスウから変身した黒髪赤目の女に圧倒され、縮こまるイブキ。

「イブキさん、私が代わる」

 アンナがイブキの前に飛び出す。


「こんにちわ、お嬢ちゃん。私はゴモリー、上級悪魔よ。覚えておいてね」

 コトネやジェリルを見てるから攻撃しないアンナ。

「何をしに来たの?」

「ご挨拶をしておいでって、悪魔王様に言われてきたのよ」


「私たちをどうするつもり?」

 アンナは必死に情報を得ようとしている。

「どうもしないわ。あなたたちでは実力不足だからって、教えてあげてるのよ」

 全くの無表情なゴモリーが返す。


「なんで教えてくれるの?」

「本番は来年だからね。今のうちに強くなっておきなさいってことよ」


 ゴモリーはリリスとエキドナの方を向いて言った。

「もうこれでいいんじゃない。帰りましょうか」

 二人はそうねとか言いながら東に向かって飛んで行った。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は新しい力を求めてレオンたちが旅に出る予定です。

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