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12-8 工房襲撃(1)

ご愛読、ありがとうございます。

今回はいよいよ少森寺との戦いが始まります。

<コトネ>

 アリスさんの話は私達に衝撃を与えました。

 彼女はマサユキさんに悪魔の話を止められていたため、ずっと話せなかったようです。

 でも、人類の為にどうしてもレオンハルト様に話したかったようです。

 話し終わった時に一つの仕事を終えたように達成感に満ちた顔をしていました。


 要約すると

 彗星のもたらす瘴気が負の感情に寄生して、人間が悪魔に変貌すること。

 文明を進めると貧富の差が広がり、負の感情が増大し、悪魔に変わりやすくなること。

 二千年前の人類は文明を極限まで進めており遺伝子操作で新しい人種を生み出せたこと。

 ドワーフやエルフは文明を進めないために作られた人種であること。

 私達獣人は人間の不満のはけ口として、最底辺な人種として作られたこと。

 獣人には悪魔になりにくい要素が組み込まれていること。

 神獣人は対悪魔用の兵器として作られたこと。


 対策は

 レオン様の政策は、住民の不安を取り除くから推進する。

 出来ればその政策を北方へ広げる。

 獣人部隊の編成と強化。

 マサユキさん達が作る兵器の運用。

 神獣人の捜索と参戦要請。


「今回の騒動が収まったら、対策をやって行こう」

 レオン様が私に向かって言いました。私は獣人が人間の不満を逸らすために作られたと聞いて落ち込んでいましたが、今はレオン様のそばに居れて幸せなのです。この幸せを守る為に働かなくてはと、決意を新たにしました。


 大体、私がこのように重大な決意に酔っていると奴が現れるのですが・・・。


「おい、コトネ、訓練しようぜ」

 ジェリルさんが私が休憩している場所まで来て訓練に誘います。


 やっぱり来ましたね。あなたは東大陸の人達を巻き込んで、一週間訓練したではないですか。

「明日、戦いがあります。今日は体を休めるべきです」


「そう言わずに軽く二、三時間だけでも、なっ」

 彼女はまだヘラクレスとの戦いで見えた進化のきっかけを掴めずにいる。

 あれからもう半年くらいになるか。気の毒だとは思うが、こればかりは前人未到の境地だけに手助けのしようもない。


「駄目です。イブキさん達に頼むのも無しですからね」

「えーっ、コトネ厳しくないか?」

 全く我儘なんだから。

「明日の戦いで、疲れて失敗なんかしたら、目も当てられないじゃないですか!」


 私達はシャオリンとの訓練で、キンペイバイの強さが大体想像できていた。強くてアーレスぐらいと値踏みした。多分イブキさんならいい勝負。シグレさんシャオリンさんは厳しいだろう。カスミさんは武芸の方は苦手らしい。クロエ姉ちゃんと一緒かな。


 当然、レオン様や私、アンナ、ジェリルさんより弱いし、ナルさんとロッケさんはビーストグローを使えば勝てるんじゃないだろうか。


 アンナは敵の様子を偵察に行ってくれた。従者通信で変わらずにキャラバンと一緒に移動していると連絡が有った。まずキャラバンと同じタイミングでここを襲えば、キャラバンに疑いが掛かるから、時間をずらすと考えているけどどうしてくるかな。


 まあ、近くまで来ればアンナが解るから、不意打ちは出来ないんだよね。

 敵はこちらが監視していることも知らなければ、ここで待ち構えていることも知らない。


 次の日、お昼過ぎにキャラバンが工場横からハーヴェル城に向かって通り過ぎて行った。

 工場に居るのは私とカスミさんだけ、後の人は休みを取らせた。

 アンナ達は敵の探知外から見張りを続けている。


 私とカスミさんは工場に二人だけで居て、隠形の術を解いた。敵の探知外になったからだ。

「ふう、緊張したで、わての勝てる相手やおまへんさかいに」

 カスミさんは自分の実力が解っていて決して無理はしない。もし攻め込まれたとしても逃げる自信があったんだろう。


 アンナからは敵は一km位離れた林に隠れているらしいと連絡が入った。

 やはり敵の狙いはここだと分かった。キャラバンが十分離れたら攻める計画だろう。

『お姉ちゃん!大変、一人工場に偵察に向かったみたい。探知は使ってないから直接確認するみたい』

 アンナから従者通信が来た。


 そりゃ大きな工場だから相手の位置を確認してから襲うよね。

 レオン様はどうするのかな。


『コトネ、相手が工場に入って、こちらに攻撃の意志があるか、確認してくれ』

 そうか、まだ相手は私達に敵対行動を取ってなかったんだわ。

 面倒くさい事だが敵対行動を取らないと排除できない。法治国家とはそう言うものらしい。


「私が侵入者の前に出て、どう出るか見るからカスミさんは隠れてて」

 カスミさんは私の声に黙って頷いた。

 私はアンナの誘導で敵の進入路に向かう。


 敵は街道沿いにある三mの塀を乗り越えようとしているようだ。

 そうなるとアンナの目で見て居る私にはタイミングが遅れる。

 取敢えず、塀を支える三角形の支えの影に隠れる。

 敵はどうやったのか、すんなり壁を飛び越えたようだ。


 私は剣を握って、相手の前五m位に飛び出た。相手は普通の旅装束の女だ。

「止まれ!武器を捨てて投降せよ!」

 いきなり目の前に現れた猫獣人、驚かないはずはない。これで武器を振り回してくれると捕縛できる。

 しかし、相手は自然体でその場で立っている。剣は背中に背負ったままだ。


「ここは立ち入り禁止区域だ!大人しく投降せよ!」

 もう一度降伏を勧告する。相手はニヤッと笑った。


 陽炎の様に相手の姿が歪んで消えた。一式戦”隼”だ。やはり気功技を使ってくる。

 目には捉えられなくても私の霊力探知が相手を捉えている。

 上段からの振り下ろしを横にずれて避ける。

 後ろから剣を振るとキィンと跳ね返される。二式戦”鐘馗”!

 厄介ね、相手も気功技を使って来るのは。


 相手はそのまま距離を取った。

「その剣術はホウライ国のものか?よくそこまで練ったものだ」

 褒めて貰ったみたいだ。

「お前は少森寺だな。なぜ西大陸に居る」

 まずは話し安そうなところから攻めるか


「私の名はキリと言う。お前を葬る者の名だ」

 チェッ、乗ってくれない。彼女はおいそれと喋っては呉れ無いようだ。

 仕方が無いちょっと本気を出すか。

 キリは上下左右に連続攻撃を仕掛けてくる。剣に二式戦”屠龍”を重ねてくるので、おいそれと剣で受けられない。


 私はキリが顔面を突いて来るのを、躱して懐に入った。左腕で柄の部分をはねのけて、剣を相手の左肩を貫く。

 そのまま剣を抜きながら左肘で相手の顎をぶち抜く。

 彼女は糸を失った操り人形のように崩れ落ちた。


「私を侮ったね。スキンアーマーを発動してたら、もっと手古摺ったよ」

 倒れたキリに勝利の言葉を投げかけた。


「コトネはん、流石でんな。一回も剣を合わさんと戦いはった」

「ああ、相手は剣に気功技を纏わせてたから、剣を合わせると剣が傷ついてしまうからね」

「ほーっ、大したもんや」

 隠形で隠れてたカスミさんが出て来てしきりに感心する。


 マサユキさんの工房まで運んで、治療魔法でキリの肩の傷を治して、ロープで縛り上げる。

 そこへレオン様達が現れる。

「起こしてくれ。話すとは思えんが、一応聞いてみよう」

 レオン様が私に命じる。


 私がキリに気を入れるとすぐに目を覚ました。

 私達の顔を見回すキリの顔には、恐怖の表情が張り付いていた。もしかすると喋るかもと思った。

「お前の目的は何だ!」

 レオン様がキリの前髪を掴んで顔を上げさせる。レオン様は気で威圧を掛ける。

 キリの顔には脂汗が浮き出る。


「こ、工房を襲う・・」

 喋った。誘拐犯は何も話さなかったって言ってたのに。

「誰の命令だ!」


 キリの顔が歪む。

「言い、言いません・・お許しくだ・・・」

 キリの体から力が抜ける。


 レオン様がキリの動脈を触る。首を横に振る。

「死んだ。・・・」

 肝心なことを話そうとすると死ぬ呪でも掛けられていたの?


「敵が逃げ始めました」

 アンナが叫ぶ。キリの死が敵に伝わったようだ。

 あんな危ない奴らを野に放つわけには行かない。


「アンナはゴロで、他の者はノルンで追うぞ」

 レオン様も同じ意見だ。

 近くに待機していたゴロにアンナはすぐに跨って追跡を開始した。

 私達はノルンさんの背中に乗った。


 彼らは街道を教会本部の方に向け、走っている。

 アンナが彼らの上空に着くと霊力のドームを作る。

 ギガンテスでも出られなかったドームだ。彼らは完全に閉じ込められた

 私達は上に開けて貰った穴から中に入った。


 ノルンが低空飛行して背中の全員が飛び降りる。

 少森寺の四人が服を脱いでスキンアーマーを発動させる。

 こちらもレオン様以外、服を脱いで応戦する用意をする。

 こちらはレオン様、ジェリルさん、ナルさん、ロッケさん、イブキさん、シグレさん、シャオリンさん、私だ。カスミさんは棄権した。


「キンペイバイ、少森寺脱走の罪で逮捕だあ!」

 シャオリンさんが罪状を大声で叫んだ。

「な、シャオリン!なぜおまえがここにいる」


「俺はお前達の追討の任務を命じられたんだよ!」

 少森寺から貰った命令書を見せる。


「わざわざ、殺されに来るとはご苦労なことだ」

「七節棍のような殺傷力の低い武器じゃあ、私達には勝てん」

「諦めてシンタン国へ帰れ」

 三人が前に出る。こいつらがキンペイバイだろうか?


「レオン様どうしましょう」

「うーん、コトネがこいつ、ジェリルがこいつ、イブキがこいつ、シャオリンがこいつで良いか?」

 並び順で決めて行くレオン様、いい加減じゃないですか?


「あのお、私の相手がいないのですが?」

 シグレさんが文句を言う。

 ナルさんとロッケさんはビーストグローを止められているのでホッとしているようだ。

 東大陸の三人は私と同じデザインの色違いブラとショーパンだ。

「人数が一人減っちゃったから仕方が無いでしょ。危ないとこのフォローをして」

 レオン様が指示をする。


「私はキンファ!」

 少森寺が名乗って来たので、私も名乗り返す。

「私はコトネ!」


「私はペイジ!」

「アタイはジェリルだぜ!」


「私はバイスウ!」

「ホウジョウイン流槍術 イブキ」


「私はセッサ!」

「俺はシャオリン、よろしくな」

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はレオン側が押し気味に進める戦いがひっくり返ります。

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