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1-4 三男坊 辺境伯に会いに行く

辺境伯に会いに行く途中で怪しい馬車に遭遇。レオン達は跡を追う。

 貴族派に襲われ、王室派に持ち上げられる俺に辺境伯が会いたいと言って来た。


 エイトの兄のマティアス中尉が、エリーゼに俺が辺境伯に会いに行く許可を取るのは変じゃないか?

 俺はそう思っているのだが、そんなことはお構いなしに話は決まっていく。

「分かりました。私も一緒に行きます。出発はいつですか?」

 え、なんでエリーゼが行くの?俺、行くって言ってないよね。

「明日の朝、8時頃ここへ迎えに来ます」

「じゃあ、急いで用意しないと。私先に帰るわね」

 エリーゼはそそくさと去って行った。


「では、明日の朝、よろしくお願いします。小間使いの方も一緒に来られるんですよね」

「あ、はい」

 断れる雰囲気じゃないよね。

「おう、頑張れよ」

 エイトがニコニコと無責任に煽ってくる。


「あの、心細いのでエイトも着いてきてくれると心強いんですが?」

「えー、僕、辺境伯様が苦手なんだよ」

 エイトが焦って俺に頼み込む。

「もちろん、大丈夫ですよ。エイトも高等部に進学するって決めたんだろ。報告しなきゃな」

 中尉もエイトだけ楽をすることは許さない。


 兄弟と別れた後は、俺も用意をしないと。いつもは収納庫に放り込んだら準備完了だが、収納庫は秘密なのでカバンに詰めなければならない。足りないものは買わねばならず大変だ。

「レオン様、儀礼服に穴が!」

 コトネが叫ぶ。俺の儀礼用の服は、兄たちのお下がりなので結構痛んでる。

 普通貴族でも次々新しい服を買えるのは、高位貴族と言われる一握りの人達だけだ。

 それ以外の人達は古着を修復して着続ける。端切れを専門に扱う店があるくらいだ。


「前に修復した時の端切れがある。これで何とかならないか」

 服の生地に似た端切れを収納から出してコトネに渡す。

「やってみます」

 荷物を詰め終わったアンナが、コトネの修復を見つめる。

 こうして技術を覚えて行くのだ。


 バタバタして用意した翌日の朝、寮の前に出るとマティアス中尉とエイトが居た。

「アンナちゃん、荷物を持ってあげる」

 エイトはアンナのカバンを持つ。

「馬車は校内に入れませんので校門までお願いします」

 さっとコトネの荷物を持つ中尉、俺のは誰も持ってくれないの?いいけどさ。

「エリーゼ様は?」

「すでに馬車に乗ってるよ」

 エイトが苦笑いをするように言う。


 校門に行くと馬車が一台しかない。

 エリーゼがあれに乗ると、メイドと護衛が乗るから俺達乗れねえんじゃねえ?

 俺はエリーゼが自分の馬車を持ってくると思ってた。

 中尉の顔を見ると中尉も苦笑いをする。なぜか護衛が騎兵四人もいる。


 エリーゼが俺達を見つけたのか、馬車の窓から顔を出して叫ぶ。

「あんた達!早く乗りなさいよ!」

 馬車を見るとエリーゼ以外誰も乗っていない。

「エリーゼ様、御着きと護衛は居ないのですか」

「コトネちゃんとあんたが居れば問題無いじゃない。そんなにすぐに予算を組めるわけないでしょ」

 多分、今回の旅行が公用と認められなかったのであろう。自費で来たと言う事か。


「兄上に言ったのよ。レオンを辺境伯に取られちゃうわよって。そしたら兄二人を王室が使ってるし、姉も魔法省に入るだろうから無理は言えんだってさ」

「上に比べられたら仕方ないよ。俺も勝てる気しないしさ」

「そうかしら私はレオンはすごいと思うんだけど」

「戦争とか起きればわかると思うよ。あの人達は別格だって」


「やめてくれよ。そんなこと言って学徒動員なんてことになったらどうすんだよ」

「解らないわよ。貴族派が怪しいって聞いたわよ」

「それは無いでしょう。資金源潰したんだから戦争なんか起こしっこ無いですよ」

「エイトの言う通りなら良いんだけどね。あいつらしぶといから」


 やがて馬車は辺境伯の領都テレジアスとイエーガー領へ行く道との分かれ道に近付いて来た。

 エリーゼは右に曲がってイエーガー領に行く道を差して言った。

「私達が魔獣に襲われたのはあちらの道ね」

「そうですね。え?!」

 俺はエリーゼに誘われて窓から前を見る。

 数台の幌馬車がイエーガー領にに行く道に曲がって行く。


「どうしたの?」

「あちらに曲がった幌馬車に嫌な感じがを受けたので・・・。アンナ幌馬車の中が解るか?」

 アンナは魔力を感じることが出来る。馬車の中身が魔力に関する物なら、何か分かるかも知れない。

 アンナは幌馬車の方を向き集中して探索する。

「馬車の中に・・・たくさんの魔力、多分、人が乗ってます。全部の馬車に人がたくさん」


「人が?荷物じゃなくて?どういうことな・・・」

 俺はアンナに質問するエリーゼを遮り、更に詳細を調べさせる。

「馬車は六台、人数は目いっぱい乗ってます、後は解りません」

「よくやったアンナ」

 俺はアンナの頭を撫でてやる。


「レオンどういうことなの?解るように話して!」

「前に言いましたが、俺は気功を訓練しています。それである程度の強い感情を感知できます。あの馬車からは殺気のような物を感じました」

「殺気ってイエーガー領に攻め込むつもりなの?」

「恐らく違うでしょう。イエーガー領に攻め込むには人数が少ない。それよりエリーゼ様が訪問した所、あちらには高貴な方がいらっしゃる」

「うそ!おばあ様には護衛が十人位しかいない。レオン、助けて!!」


 俺は馬車を止めてマティアス中尉と相談する。

「前に居た馬車に危なそうな奴らが?」

「多分、王太后が狙われているのでないかと推測します」

「でどうする?」

「こちらの人数では不利なので、宿場長に頼んで臨検して貰いましょう」

「そうだな、それなら推測が間違っていても大丈夫だな」


 俺達は距離を開けて幌馬車を着けて行くことにした。先に二人、宿場長の所に向かわせて、臨検の準備をして貰うように要請する。

「見つからないようにお願いします」

 護衛は王都の辺境伯の屋敷から、急遽エリーゼの為に用意して貰ったようだ。

 幌馬車が襲撃者ならエリーゼよくやったと言いたい。


「レオン、僕たちが後を着ける必要はないんじゃないのか。兄さんたちに任せておけば大丈夫だよ」

 エイトが後ろから声を掛けて来た。

「エイト、ごめんなさい。おばあ様が無事と分かるまで付き合って」

 エリーゼが俺が何か言う前にエイトに頭を下げた。

「エリーゼ様に言われちゃ仕方ないね。到着が一日遅れるだけだし」

 エイトは実力はそこそこあるのだが、いかんせん実戦経験が無いので自信が持てない。

 しかし、ここは女の子にカッコ悪い所は、見せたくないと言う感情が勝ったようだ。


 幌馬車は、宿場町に近付いているはずだ

 俺達は30分遅れで着けているから宿場町に着くころには、騒動は収束しているだろう。


 宿場町が見えてきた。

「コトネ何か見えるか?」

「まだなにも・・。街道に人がいます。・・何人か倒れてるみたいです」

「戦ってはいないのか?」

「戦ってはいないようです。幌馬車が二台倒れています」

「他に幌馬車は居ないか?」

「はい、見えません」


 逃がしたのか?どうなっている。宿場町には100人以上の兵が駐屯している。

 待ち構えていれば50人に負ける訳が無い。


 マティアス中尉が先に馬で駆けて行く。

「私も行きますか?」

「行っちゃ駄目だ。俺と居よう」

 コトネが興奮しているみたいだ。めずらしいな。

「どうしたの?」

「まだ解らないが、敵の馬車の数が少ない」

 エリーゼがひどく動揺している。俺には愚痴を言っていたが、祖母が余程大事だと見える。

「どういうこと?」

「逃げられたのかもしれない」


 俺達にも街道の様子が見えてきた。

 駐屯軍は荷馬車を置いて幌馬車を止めようとしたようだが、反撃に遭い、四台に押し通られたみたいだ。

 後続の二台は何とか潰したようだ。


 マティアス中尉が戻って来た。

 馬車を覗いてエリーゼに言う。

「白百合荘に行きます。敵はまだ半数以上が残っているようです。宿場長の館で待っていてください」

 白百合荘は王太后のいる別荘の名前だ。

「私も行きます」

 エリーゼは馬車から飛び出そうとする。

「コトネ!アンナ!捕まえろ!エリーゼ様を離すな」

 二人はエリーゼにしがみ付く。

 マティアス中尉と残りの護衛が街道を疾駆していく。


 宿場長の館に着くとエリーゼは落ち着きを取り戻したようだ。

「もう大丈夫です。コトネちゃん、アンナちゃん放して」

「エイト、エリーゼ様とアンナを頼む。コトネ行くぞ」

「え、どこへ行くんだ?」

「味方の数が少ないようだ。加勢に行く」

 エイトは言葉が出ない様だ。エリーゼは両手を合わせた。

「おばあ様を頼みます」


 厩舎に行くと何頭か鞍の付いた馬が居たのですぐに乗った。

「コトネ!」

 手を伸ばすとコトネはその手を掴み、軽やかに飛び上がり、俺の後ろに跨る。

「第七王女の護衛の者です。馬を借ります」

 近くに居た者に言って駆けだした。

「しっかり摑まってろ!落ちるなよ」

「はい!」

 コトネは俺の腹に両手を回す。


 俺達は前にエリーゼ達が魔獣に襲われていた十字路に来ていた。もう日は落ちて辺りは暗くなってきた。

 右に行けばイエーガー領、左に行けばテレジアス、真っ直ぐに行けば白百合荘だ。

「休憩だ。馬の世話を頼む」

 収納庫から水を出し、桶に入れてやる。コトネが馬の世話を始めると俺は飯の用意をする。うずら豆とひき肉をトマトソースで煮込んだものを収納庫に入れてある。

 マキを集めて火を点け、鍋を掛ける。

 初夏とは言え、日が落ちると冷える。毛布をコトネと一緒に被り、食事をする。


 小一時間休んでから馬に乗る。今度はコトネが前だ。

 コトネの目は俺が全く見えない闇の中でもはっきりと見えている。

 馬もコトネを信用するのか迷わずに歩く。この分なら後二時間ぐらいで着けるだろう。


 林を抜けると月明りで湖が見える。

 幌馬車が乗り捨ててある。馬に無理をさせ過ぎたのと暗くなって、歩く方が速いと判断したのだろう。

 更に歩いていると死体がある。軍が追付いて、戦いになったのか。

 遂に白百合荘が見えてきた。剣戟の音が聞こえる。まだ戦っている。

白百合荘での戦いに突入するレオンとコトネ。王太后様を守れるのか?

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