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11-7 調査報告

ご愛読、ありがとうございます。

十一章はこれで終わりです。

 遺跡調査をギュンター博士が起こした事故で中断したレオン達は、帝都のアキラの店に戻った。



 〇帝都 アキラの店 <コトネ>

 アキラの店に戻ったレオン様は、帝城に皇帝陛下とフェリ様への面会希望を届けさせた。

 明日は学校も休みだから、フェリ様には面会できるだろう。


 ここに住んでいた人達もアルカディア王国に引っ越した人が多いので、部屋はたくさん空いている。

 エリーゼ様とエイトさんは合格発表まではここにいるつもりらしいが、その後は寮に入るのか、ここから通うのかは聞いていない。でもエリーゼ様は十月に結婚するから学校はどうするのかな?


 シャラさんはハーヴェルの生産拠点が出来たのでそちらへ移るつもりらしい。アキラさんが暫く建国に忙しいので寡婦生活だが、アキラさんは代わりが出来れば生産職に戻るつもりみたい。

 サクラさんもアルカディアに教会が出来れば、ジュリアさんに戻って聖女になるらしい。

 ツーレクさんはここで鍛冶職を続けるらしいが、カリシュさんとレーニャさんはハーヴェルに移った。


 ブラウニー達もアルカディア王国に拠点を移したのでここに住む者は少ない。

 裏の工場はハーヴェルからの製品の倉庫になっている。

 ずいぶん静かになった館に、今日はアンナと二人部屋だ。


 明日はフェリ様への面会で早く休むことになった。

 私は遺跡はどうでもいい、レオン様に付いて行くだけだ。


 しかし、今日の出来事には自分自身に驚いた。


 遺跡のホールで自爆予告を聞いた時、転移室のスイッチを一心不乱に押し続ける自分が居た。


 レオン様の所へ!


 それしか考えられなかった。


「AI、私をレオン様の所へ、運びなさいよおオオオオオオオ!!!!!」


 叫んで転移室の扉を叩いても誰も返事をしない。


 従者通信も通じない。

 多分その時は、レオン様もアンナも脱出に集中していて、私の通信に気付いてなかったんだと思う。


 気が狂いそうだった。あの予告から三分間。レオン様が見えないことが恐怖だった。

 レオン様を失うかもしれない。それが私の心を縛ったのだ。


 私は未熟だ。アヤメさんが居たらビンタの一発や二発喰らっていただろう。

 冷静さを失うことは主人にも、自分にも、危機を呼ぶからだ。

 レオン様は慰めてくれたけど、反省しなければ。


 このままでは私はレオン様の横に立てない。精神を鍛えなければ。

 武でレオン様に仕えている以上・・・。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

 気が付くとベットに座っていた私の顔をアンナが覗き込んでいた。

「ち、ちょっと、考え事をしてたの」

 心を見透かされたような気がして恥ずかしかった。


「ああ、今日のレオン様と抱き合ってたの、思い出してたんでしょう」

 アンナがニシャっと笑う。最近、ご両親の事を完全に乗り越えたのか、明るすぎるぐらい明るくなった。

「何言ってんの?心配してたのに!」

「ふーん、私の事は忘れたみたいだったけど」

 また、顔を覗き込んで笑ってくる。

「そ、そんなことは」


 キャハハハ!!

 焦る私を顔中口にして笑うアンナ。


 アンナにからかわれていたんだ。

「もう知らない!」

 布団に潜り込んだ。


 あくまでストイックなコトネちゃんでした。


 次の日、朝一番にアポの状況を聞きに行って貰った結果、フェリ様はすぐに会えるが、皇帝は明日になると言う事だった。


 〇帝城 <コトネ>

 レオン様は朝食後、すぐに帝城を訪問しました。キラさんは行きたくないと残りました。

 定常に着くとすぐにフェリの執務室に通されました。


 レオン様は昨日の調査結果を説明しました。

「そ、そうか、こちらの博士が迷惑を掛けたな。しかも前調査員を全員救出するとはご苦労だった」

 フェリ様はご自分が安全だと言った手前、バツが悪そうでした。フフフ。

「そうですね。残念ながら動力室だけしか調査できませんでした」


「レオン殿、私に対しては敬語は不要だ」

 ムッ、まだ結婚してないのですから、あまり馴れ馴れしくしていただきたくないです。

「今は傭兵と依頼主の関係ですから」

 それ見なさい。レオン様に釘を刺されましたね


 マサユキさんがレオン様の脇をツンツンしてる。発掘品の交渉をしてくれって事ですね。

「それで、遺跡の発掘品の事ですが、半分は貰えるのですね」

「え、現物を持って帰る気か?」

「はい、こちらに置いておいてもギュンター博士の秘蔵品にされるだろうから、本当は全部引き取りたいんですが」

 彼の事は元々好きではないが、例の件で大嫌いになりました。


「奴は独断専行が多くて困っておる。考古学なぞ、まだ体系化していないのに、やたら発掘品を手元に置きたがるしな」

 帝国でも鼻つまみ者なんだ。ふふんだ。

「ガードロボットはすぐに渡せますよ」

「ここに置いておける大きさか?」


「はい」

 俺は収納庫からガードロボット二体分を出しました。胴体が横に切られているのと斜めに切られている奴です。私は外に居たから活躍できませんでした。残念。

「真っ二つじゃのう。お主の剣は鉄も斬れるのか」

 フェリ様は少しビビりながら、ガードロボットの斬り口を覗き込んでいらっしゃいました。


「鉄ではありませんモリブテン鋼です」

 AIが得意気に胸を反らせて自慢しました。なにかすごい材料だと威張っているようですが、斬られているのだから意味ないと思います。


「お主がAIか。人間と区別がつかぬな」

 フェリ様がそう言うとAIはさらに胸を反らせる。む、大きな胸を自慢してますね、あなたの胸は偽物でしょう。私ももうすぐそれぐらいには成るんです。

「まあ、本体から切り離されてるんで、ポンコツですけどね」

 レオン様に言われてAIがシュンと項垂れる。少し気分がスッとしました。


「遺跡の事は気の毒だった。ところでジェネレーター二台とリペアロボット一台を置いて行かぬか」

「使うのですか?」

「うちの技術者も魔力管の接続ぐらいはできるじゃろ。まあ、陛下と話してからになるだろうがな」

「使って頂けるなら我儘は申しません」

 レオン様は、せっかくの収穫を死蔵するなら渡したくないし、使ってくれるなら渡したいと思っておられるようです。

 マサユキさんも半分までなら渡しても良いと仰ってました。


「それとじゃが、ワシが財務を見る件じゃが、どうなった?」

「はい、大丈夫です。スケジュールが決まったら教えてください」

 フェリ様の顔がパアっと輝く。ぬぬっ。


「そうか、陛下と相談して、なるべく早く行くぞ」

 レオン様は自分が学んできたことが実務で役に立つのか、早くそれを知りたいのだろう、とか思っていそうだ。違うのです。あれはデレてる恋する女の顔です。


 あれ、私、フェリ様にイラっとしたり、モヤモヤしたりしています。


 これってヤキモチと言う奴でしょうか?


 私、昨日、精神を鍛えなければと反省したばかりなのに。

 レオン様に身分の高い女性が嫁いでくるのは、従者として喜ばなければいけないのに。


 レオン様に相応しいのはフェリ様のような女性で私ではない?

 わたしはレオンさまのそばにいてはいけないの?


「・・・ネ、おい、コトネどうした?帰るぞ」

「はい、すみません」

 いけない、変な思いがグルグル回って・・・。

「お姉ちゃんはどうせ、私の方がレオン様にふさわしいのよとか考えてたんでしょう」

「アンナ!何言ってるの」



 私どうしちゃったんだろう。

 今まで、フェリ様やエリーゼ様の事を冷静に見れていたのに・・・。

 苦しい、でも面に出しちゃ駄目。

 私は平然としたものに戻した顔をあげて、レオン様を見た。


 レオン様がフェリ様、エリーゼ様を娶るのは国民のためだ。帝国やヴァイヤール王国と同盟を結び、大災厄後の貿易での経済的発展も視野に入れてる。そんなことを考えて実行する、やっぱりすごい人だと尊敬する。

 私はどうだろう。レオン様が私と結婚すると言うのは、今アルカディア王国に流れ込んでいる獣人の移民を安心させるためだ。獣人を大切にしていると見せるためだ。


 私は彼女達と並び立てない。ジェリルさんの方が神狼族を背負っている分、私よりレオン様にふさわしいのじゃないかと思う。ああ、私はどうすれば彼女達に追付けるのだろうか。



 〇アキラの店 <コトネ>

 帝城から戻った私達はアルカディア城に帰っても中途半端になるのでアキラの店に留まることにした。

 食堂にマサユキさんが居たので、気になっていたことを聞いてみる。

「AIさんをどうするつもりですか」

 発掘品はマサユキさんとキラ君の担当なので、人の心を持つ人工知能をどう扱うつもりなのか聞いてみた。


「うーん、今の能力ならこっちに置いておいても、メリットは無いかなとも思ってるんだけどな」

「それは役に立たないと言う事ですか?」

 彼女と話していると機械だとは思えないから、それはそれですごい技術なのかなあとか思っていたけど。

「微妙なんだよね。能力的には日本でもあれほど高度なAIはまだ開発されてないし、それはそれですごい事だとは思うんだよ」

 どうも歯切れが悪い。技術的には高度だけど、利用方法が解らないと言う事なんだろうか。


「今の状態だと施設の案内くらいしか使い道が無いんだよね」

 キラ君が横から口を出してきた。

「ほら、今は大災厄に全注してるだろ。その時にあれはどうなんだろって話で」

 マサユキさんも彼女の能力が微妙だと思っているみたいだ。


「捨てないでください!」

 いきなりAIが入って来てマサユキさんに縋った。

 マサユキさんの顔が崩れる。まあ、美人でボンキュッボンだもんね。


「まあ、せっかくレオンが助けたんだ。捨てるようなことはしないよ。ただ使い道がなあ」

「私役に立ちますよ」

 懸命に自身を売り込むAI。まあ、実際に命が掛かってるわけだけど。


「まあ、ハーヴェルに帰ってからにしよう。ジェネレーターとかも設置しないといけないからさ」

「お願いします」

 取敢えずは問題先送りと言う事らしい。


「ところで君はの燃料は何だい」

「魔力です。今は省力モードなので大したことは出来ませんが、高機能モードならすごいんですよ」

「じゃあ、高機能モードをやってみてよ」

「モードを切り替えたとたんに魔力切れになります」

「じゃあ、ジェネレーターを動かしてからのお楽しみだな」

 どうも高機能モードは燃費が悪いらしい。期待薄かな。



 〇帝城 <レオン>

 次の日、俺達は皇帝陛下に会いに帝城に行った。

 陛下は俺の身分を慮って執務室で会ってくれた。


 俺達への褒美だが。

 調査依頼費 金貨千枚

 発掘品

 ジェネレーター二台 金貨二千枚

 リペアロボット 金貨千枚

 ガードロボット(壊) 金貨二百枚

 前調査員救出費 金貨二十枚 × 四十人 = 金貨八百枚

 合計 金貨五千枚


 発掘品半分というのは手で持てる、剣とか宝石の事らしい。

 今回は遺跡が崩壊してるから発掘品の価値が高いと言う事だった。


 金貨五千枚もあれば戴冠式も大丈夫だ。陛下の太っ腹に感謝だ。


 ちなみにギュンター博士からは俺達が遺跡を壊したと報告が上がったらしいが、コトネやAIの制止を振り切って非常ボタンを押したことは、他の調査員からも上がっており、罪を逃れられそうもないと言う事だった。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

第十二章はワルキューレ編の予定です。

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