表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/222

11-5 遺跡調査(3)

ご愛読、ありがとうございます。

久しぶりのギュンター博士登場。

 レオンは遺跡のAIに「直してどうする」と言い放った。


「まあ、千年前の設備が、これだけでも動いているのがすごいだけどな。

 千年放置されてたって言うのは解るよね。ここは隣の山が噴火して、火砕流で埋まっていたんだよ」

「はい、一瞬で外のセンサー類や通信設備がすべてやられて、何が起きたのか分かりませんでした」

「じゃあ、君はどうしたい。千年前の大災厄で科学技術はすっかり無くなってる。はっきり言って、ここの科学技術を利用できる人って、世界中探してもあの二人しかいない」

 二人は異世界から来た人間だ、どこにでも居る訳じゃない。


「直して貰って、悪魔との戦いに備えます」

「残念だけど我々は違う国の人間だ。そこまでのことが出来る訳でもない」

 AIの回答に冷たく返すレオンだった。

「それでも直して頂ければ、・・・」

「だからその技術は、この国にはない」


 レオンは思った。このままこの遺跡を帝国に渡せば、ギュンター博士辺りが死蔵することになる。折角悪魔と戦える力がここにあるのに、そして使える能力があるのはレオン達しかいない。

 一応、傭兵の遺跡調査の取得品の権利はその国と半々である。傭兵はそれを買いあげて貰い、依頼費とは別の収入となる。レオンの場合、全部が欲しいのだ。

 だからAIを所有者と見立ててその全部を手に入れようとしているのである。


「レオン、気持ちは解るが諦めろ。ここ以外にも要塞があったはずだ。一個も残ってないのなら悪魔との戦いに勝てなかったと言う事だ」

 ロボットの修理を見て居たマサユキが、レオンの想いを読んで窘めた。

「流石に帝国と事を構える訳には行かないが、半分は貰えるんだ。ジェネレーターとロボットを貰って行こう。折角、直したんだしな。それより、他の部屋を見たい。火器管制のやり方とか」


 マサユキがAIにリクエストをする。

「そうだ、ジェネレータも直って来たから、他の部屋も動かせるだろう」

「済みません。機密保持のために汎用設備のここと避難所以外は公開できません」

「はあ?!機密も何もお前の国は、千年前に滅んだだろうが!」

「え、国が滅んだと言うのですか?・・・」

 AIが酷く動揺しているように見える。やっぱり感情あるよな。そう思うレオンだった。


「コトネちゃん、千年前はここは何ていう国だったの?」

 マサユキは最近、この世界に来たので過去の歴史は解らない。

「確かこの周辺はノクト連邦だったと思います」

「ノクト連邦は滅んだのですか」

「はい、大災厄で悪魔に滅ぼされたと習いました。今はリヒトガルド帝国になっています」

 AIはさらに落ち込んだがハッと何かを思い付いたようだ。


「騙そうとしても無駄です。帝国とすれば中央集権制ですよね。そこまで政治形態が退化する訳が無いです」

 AIはどうだって言う感じで反論して来た。

「残念ですが千年前の大災厄では文明はことごとく破壊され、人口は十分の一以下に、説によっては百分の一になったそうです。千年前は今より発達していたのは事実だったようですね」

「そうだ、今、この世界は剣と魔法の世界だぜ」

 マサユキがコトネの言葉に乗っかってAIを追いつめる。


「まあ、お前は千年間もここに閉じ込められて来たのだから仕方ないよ」

 レオンがAIを慰めるがショックは大きいようだ。

「信じられません。何も証拠が無いじゃないですか。それにあなた方はロボットを修理したではないですか」


「俺達は異世界人だと言ってるだろ。お前達より科学技術は発達してるんだよ。まあ、魔法は無いけどな」

 痛い所を突かれたマサユキが反論したが、AIを納得はさせられない。

「でもここでやめると依頼料はもらえないかも?」

「それだよなあ」

 コトネの感想にレオンも同意する。


「君さあ、俺達と一緒に外に出て、街の様子とか見れば現状が把握できるんじゃない?」

「いえ、私は上層部の許可なく、ここを離れられません」

「まあ、言うと思ったよ」

「レオン、何とかしてくれ」

 マサユキはレオンにAIの説得を丸投げして、キラと一緒に壊れたロボットを弄っている。


「ちょっと考えるから、その間に避難所の人達解放してあげて。その姿なら避難所に行けるんだろ」

 露骨にいやな顔をするAI。

「そんな、避難民だと思って避難所に入れたんですよ。調査とかだったら怒ってないですか?」

「まあ、閉じ込められたと思ってるでしょうね」

「嫌です。そんな中世のような野蛮な人たちなんでしょう。私、壊されちゃう」

 AIは頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


 それはそれですごい性能なんだろうけど・・・。

「困ったな」

「困りました」

「困ったねえ」

 レオンとコトネとアンナが腕を組み、頭を傾げる。


 レオン達は最低でも調査を成功させたい。それにはまだ未解明の部屋を調査する必要がある。出来れば遺跡の全部を手に入れたい。それに以前の調査員が無事なのが解っているので開放したい。


 調査を阻んでいるのがAIだ。

 遺跡の各部屋の移動はAIにしかできない。

 レオン達はAIに命令する権限を持っていない。

 AIに命令する権限を持つノクト連邦は千年前に滅びている。

 ノクト連邦が滅びたことを証明できない。

 ノクト連邦が定めた禁止事項を撤廃できない。

 更には前調査員の救出もAIの保全機能?が働いて、やって貰えない。


「私が避難所に行ったら、調査員たちを脱出させてくれますか?」

 コトネがAIの代わりに調査員の所に行って脱出の誘導をやると言う。

「まあ、私が行くのじゃなければ良いですけど、扉の閉めるタイミングが判りませんよ」

 AIは即座に承諾する。あざとい!。

「大丈夫です。私達には従者通信があります」


 簡単な打ち合わせをした。

「では右の転移室に入って下さい」

 AIの指示で転移室に入った。


「お姉ちゃん大丈夫?」

「大丈夫よ。もしもの時には壁に穴を空けるから」

 AIがフンと言う顔をする

「壁は新素材の超硬コンクリートで出来ています。あなたに壊せるものではありません」

「はいはい」


 〇遺跡 <コトネ>

 扉が開くと広い部屋があり、食堂の様に大きな机が並んでいる。その奥には狭い間隔で通路が刻まれていた。

 食堂には多くの人が座って、扉から出て来た私を見て来た。その眼には光は無く、かなり憔悴しているようだった。


「助けに来ました!各自こちらに集まって、欠員が無いか点呼してください!」

 そう叫ぶと一気に騒がしくなる。

 近くに居た犬獣人の女兵士が駆け寄って来た。

「本当に出られるのか?!もうひと月は閉じ込められてるんだ!」

 私に顔を近付け、不満をぶちまけた。割とふくよかで清潔な感じだ。


「はい、各自全員いるか確認してください。確認取れ次第脱出します」

 多分部隊単位に集まり点呼を取り始めた。

 その時、老人と五人の研究者のような恰好をした人達が近付いて来た。

「こちらは有名なギュンター博士です。優先して先に脱出させなさい」

 若い男の取り巻きの一人が私に命令した。


「いえ、装置が何分にも古いので、なるべく使用回数を減らしたいのです。皆が集まるまで待って頂けますか?」

 私がそう言うとその男は瞬間湯沸かし器の様に激高した。

「貴様、何処の所属だ!博士は帝国科学院考古学教室の筆頭教授なのだぞ。他の者と同列にするな!」


「私ですか?私はアルカディア王国国王の従者でコトネと申します。帝国で言うと黄虎勲章受勲者で正六品ですけど」

 収納から勲章を出して見せる。

「黄虎勲章、正六品だと・・・。こんなガキが?私でさえ正七品だと言うのに」

 正七品だと高等部を上がって一つ上がっただけだね。ちなみにコトネの二つ下。

 品位が帝国の絶対的な尺度となるので、この若者はびっくりしている訳だね。


「ええい、それを言うならワシは従四品だ。ワシの方が偉い。早くしろ」

 こんなのがレオン様と一緒なのいやだなあ。と思いつつ従者通信で聞いてみる。

 他の人達は通路の奥の居住室に荷物を置いてる人もいて時間が掛かってるし。

『分った。一番左の部屋に入れってさ』

 ついでに早く用意できた人、二十人くらい入れてっと。


「なぜ、ワシらだけではないのだ!」

 怒っていたけど「護衛ですよ」と言ったら納得してた。

 扉が閉まったので最初のホールに行ったんだろう。

 その後、五分ぐらいで全員が揃ったので、転移室に一緒に入って転移した。


 すぐに扉が開くとそこは最初のホールだった。

「欠員が無いか、もう一度点呼してください。揃った人達は外に出てください」

 そう言いながら周囲を見渡す。

 ギュンター博士達が操作パネルを見つけて集まってる。

 一応従者通信を入れて確認を取る。


『AIが触らせないでくれって。まだ生きてる回路があるらしい』

 レオン様から通信が来たが素直に従ってくれるのだろうか。


 私は傍に行って注意する。

「あのお、むやみに触らないでいただけますか。安全策が取れてないので、遺跡が壊れる可能性があります」

 次の瞬間、振り返ったギュンター博士の顔が真っ赤に膨れ上がる。

「無礼者!!、ここはワシの遺跡だ。どうすれば良いか、ワシが一番解かっておる」


『あのお、現在ここの設備はほとんど壊れています。むやみに触るとどうなるか判りません。現在、詳しい方に安全に復旧して頂いております。触らないでくださいね』

 AIが優しく諭してくれる。

 後ろには人だかりができてAIの言葉にオーとか言って反応している。

「何い詳しい方だとお、ワシより詳しい者はおらん」

 ギュンター博士は向きになってパネルのボタンを適当に押し始める。


『やめて、やめてください』

 スピーカーから響く声も私の仲間が言っていると思っているのか、むきになっている。

『コトネ、止めろ!』

 私はレオン様の指示でギュンター博士を止めようとする。

 しかし取り巻きが私に抱き着いて阻止してくる。流石に素人相手に全力を出す訳には行かない。


「ヒャン!」

 誰だオッパイ揉んだ奴は殺すぞ!


「これがそうに違いない。これがワシを遺跡に迎え入れるスイッチに違いない」

 上の方に焼けてくっ付いた四角い覆いがある。それを外すといかにもヤバそうなスイッチが現れる。

 私は抱き着く男たちを払いのける。払っても抱き付いてくる。


 ポチッ!!


 ギュンター博士が赤い、いかにもなスイッチを押す。

『非常ボタンが押されました!!これより当要塞は緊急モードに移行します。一般人は要塞から離れてください』


 ヒュン!ヒュン!ヒュン!と甲高い耳障りな音が成り響く。


 前調査員達は我先へと外に逃げ出す。

 私に抱き着いていた男達は離れて、どう動けば良いのか、ギュンター博士に注目する。

「に、逃げるぞ!」

 博士は見つめる男達に斟酌もせずに外に駆け出す。男たちはあとを追う。


『内部に連邦IDを持たない人間を確認、排除します』

 わ、レオン様達の事だ。どうしたら良いの?。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

安全だって言ってたのに。次回はどうなることやら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ