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11-1 また貧乏に?

ご愛読、ありがとうございます。

今回のお話はいつの間にかレオンは貧乏になっていた?

 色々あったが、予定よりも早く王に即位できたレオン、王の生活を満喫できるかと思っていたら・・。


 〇アルカディア城 <レオン>

「レオン様あ、たまにはお肉を食べたいよお」

 テーブルの上の野菜スープと硬いパンを睨んでアンナが言う。

「アンナ、贅沢言うんじゃありません」

 ここは王室用の食堂。アンナの要望とそれを嗜めるコトネの声、最近の日課だ。


 問題はレオンが王に即位したことで表面化した。

 ちょっと前の会議でそれは解った。

「ええ、陛下。このままでは戴冠式や結婚式は出来ません」

 現在財務の大臣が居ない状況なので、アキラがレオンにそう伝えた。

 今年の十月にレオンの戴冠式と結婚式を各国からゲストを迎えて行う予定だ。


「どういうことだ?」

「金が不足します。もちろん農民から税を取ればその限りではないのですが・・」

「農民の税は今年は免除するとしている。それで計算していたのではないか?」

「その通りです。しかし我々の計算を上回る移民が押し寄せております」

「い・み・んか」


 アルカディア王国では農民の移民には土地と農具と食料を支給している。一般市民は仕事はいくらでもあるので一週間分の食料と支度金ぐらいで良いのだが、税が取れるようになるまではどうしても赤字を垂れ流すことになる。また、農民の未婚女性、庶民の手に職の無い物は兵になるものが多い。それらには飯は食わさなければならないし、装備や訓練も必要だ。

 そこはコニンさんを中心とした工場が稼いでくれるはずだった。しかし想定以上の移民には勝てなかったらしい。


「どこからそんなに移民が現れたのだ?」

「周辺国の辺境で生活していた獣人達が来たのと、次男三男以下の職が無い者が押し寄せてます」

「もう受け入れ期限が迫っていますが、用意した土地も不足気味ですし、兵も四万人を超えています」

 兵隊が四万人だと、募集してまだ二カ月で倍、募集を止めるか。

「まあ、土地はアンナ様に頼んで森を切り開けばいくらでもあるが、食料は買わなければならない」

 会議は進むが、結局金を産む話は無い。・・・・


「と言う事で節約をすることになったのだ」

 レオンはアンナに説明する。

「それは何回も聞いたよ。カイゼンヲヨウキュウします」

 いつ覚えたのか難しい言葉を言って来る。


「そうだ、もうすぐ帝都に試験に行くから、その時に何でも食べさせてやるから。な」

「ホントに?やったー」

「もう、レオン様はアンナに甘いんだからあ」

 レオンは高等部の進級試験を、コトネは初等部の卒業試験と中等部の入学試験を受ける。まあ、その後は休学する予定だがな。


 〇アキラの店

 数日後、帝国の冬はもう緩んで、別れと出会いの季節がそこまで来ていた。

 レオンとコトネは三学期は出席できなかったので、留年の危機だったわけだが、そこは勲章を貰ったりしたことで試験を受けて合格すれば、レオンは高等部二年に進級、コトネは初等部卒業となる。

 それに加え、コトネの中等部受験、エリーゼとエイトの高等部受験がある。

 明日が進級と卒業試験、明後日が中等部入学試験、三日後が高等部の入学試験となる。


 それでアンナを加えて、試験を受ける面々がアキラの店に宿泊目的で来たわけである。

 いつものように帝都郊外でノルンを降りて、幌馬車でアキラの店まで来たわけである。

 店先で全員が降りると、ノルンが勝手に厩に馬車を持って行ってくれる。


「おかえりー」

 店に居たシャラがレオン達を出迎えてくれた。

「ここがレオンの帝国での拠点かあ。でかいなあ」

「なんだ、お店じゃない」

 エイトとエリーゼが初めて訪れたアキラの店の感想を言う。


「この人たちは?」

「こちらがヴァイヤールの第七王女エリーゼ様、こっちは俺の同級生でエイト」

「呼び捨てで良いわよ。あんたも王様になったんだから」

「私大丈夫かしら王女様に気軽に話しかけっちゃった」

「大丈夫だよ。ホテルに泊まるお金がもったいないってここに来たんだから」

「庶民的なのね」

 エリーゼが恥ずかしそうに下を向く。彼女も大手を振って帝国に来れる立場ではない。費用の多くをレオンに賄わせているのである。


「それよりシャラのその言葉遣いどうしたの?」

「あれ、気付かなかった。だいぶ前から普通に喋ってるよ。旦那が偉くなったから、恥をかかせないようにね」

「そうなのかあ」

「まあ、上がって、上がって」

 シャラも結婚して、旦那が偉いさんになったから心機一転頑張っている。


 ブラウニー達を呼んで、エリーゼとエイトをこれから合格発表まで、宿泊する部屋に案内してもらう。

 レオン達は食堂に入って休憩をする。

「エリーゼ様達にここを見せて良かったのですか?」

「まあ、もう秘密はハーヴェルに移ったから大丈夫だし、あいつらなら信用できるよ」

 店の機密を心配するコトネだが、工場機能は少し残っているが、ほとんどの機能はハーヴェルの工場に移した。


「シャラ、ごめんねえ。旦那さんは返せそうもないな」

 お茶を運んできてくれたシャラにレオンは謝る。

「良いよ、良いよ。こちらも店をゾフィーさんに預けて、そっちに拠点を移すつもりだから」

「そうなんだ。折角流行ってんのに申し訳ないなあ」

「気にしないで、ゴロが居ないと薬草は手に入らないし、旦那が居ないと難しい薬も作れないからね」

 シャラも簡単なポーションは錬成出来る様だ。

「じゃあ、どうするの」

「アルカディアから輸入してここで売ってもらうつもり。旦那が工場の方がはるかに安く作れるって言ってた」


 そうこうしてるうちに荷物を部屋に置いたエリーゼとエイトがやって来た。

「あんた、すごいお屋敷じゃない」

 エリーゼが褒めるけど、まあでかいし、ゲストルームはいっぱい余ってるからなあ。

「俺のじゃないよ。向こうで会っただろ。アキラさんの店だよ」

「へえ、アキラさんって若いのにすごいね」

 うん、若く見えるけど、御年八十越えですとは言えない。


 バタンと大きな音がして扉が開いた。

「やっと会えた!どこに行ってたのよ!」

 そう叫ぶのは魔人ミラだった。


 レオンは片手を揚げて挨拶した。それだけで怒っていた顔は満面の笑みとなる。

「やあ、久しぶり。今まであちこち行ってたけど、ようやく拠点が定まりそうだよ」

「そうなの?案内しなさいよ」

「ああ、もちろん」

 ミラはそう言うとレオンの正面に座った。


 ミラはレオンと近況を話しているといきなり叫んだ。

「そうだ!私、十六になったから子作りできるようになったよ!」

 ブッとお茶を吹き出すレオン。般若の顔になるエリーゼとコトネ。

「私が先だ」

 エリーゼが立ち上がってミラと睨み合う。


「あんたは十月に結婚するんでしょう。それからで良いじゃない」

「で、でも・・・」

「大きなお腹抱えて、結婚式をするつもり?」

「だって・・・」

「私はレオンが強くなるのに協力して来たし、アンタは助けて貰ってばっかりでしょ」

「ウウ・・・それは・・・」

 エリーゼが負けを認めたようだ。フェリにも勝てなかったし、同情しちゃうね。


 その後、昼食になったのだが、出て来たスープに肉が浮いているのを見て、アンナが叫んだ。

「やったー!!お肉だあ」

 レオンとコトネが真っ赤な顔になったのは、お約束と言うものだろう。



 〇ハイデルブルグ学園

 次の日、レオンとコトネは進級試験を受けて、その日のうちに採点され合格した。

 コトネは中等部の受験資格を得た。本来コトネの成績ならエスカレーター式で中等部に上がれるのだが、三学期すべて欠席したので受験が必要になった。むしろ試験を受けて進級を認めて貰えたのは勲章のお陰だった。


 その次の日、コトネは中等部の入学試験を受けた。

「どうだった?」

「初等部の問題ですから恐らく満点です」

 高等部の寮の談話室で休憩していた三人に声を掛ける者が居た。


「久しぶり」

「今日はコトネちゃんの試験?」

 ルシーダとフェリだ。二人は授業に来ていたらしく制服のままだった。


 二人はレオン達の向かいに座ると早速話し掛けて来た。


 ・・・

「ふーん、兵隊が倍ねえ。周辺国が死蔵していた人達が出て来た訳ね」

 フェリものじゃ言葉を使う必要が無くなったので普通の言葉遣いだ。

「おかげでお肉が食べられないんだよ」

「え?」

 アンナの言葉にフェリが驚く。


「だって、兵達の食事の質を落とすのに、俺達だけそのままと言う訳には行かないだろう」

「あんた、王様してるわねえ。感心感心」

「お褒めいただきましてありがとうございます」


「フェリ、あれ」

「あ、あれは駄目よ。レオンは王様になったんだよ。危ない事はさせられないよ」

「何の話?」

「駄目よ。話せないよ」

「いやあ、このままだと戴冠式と結婚式が、まともに出来ない可能性があるんだよね」


 フェリの顔色が変わる。

「駄目じゃ!ワシの一世一代の晴れ舞台なのじゃぞ。許さん!ルシーダ、話せ」

 言葉遣いが戻った。結婚式のランクが落ちるのは許せないらしい。

「オホン、最近長い言葉を話してない。ちょっと、準備要る」

 前置きして、少し喉の調子を整えた後、話し始めた。


「えーと、前にフェリ達と行った遺跡覚えてる?あの遺跡は街ごと火砕流に飲まれて、千年前の状態を維持してたの。それで発掘は最近も続けられてて、新しい遺跡が見つかったの。これが去年の年末の話。

 それで何度も調査が入ったんだけど、その都度、誰も戻って来ないんだ。軍隊が五十人で入っても戻らなかったそうよ。それで帝国が懸賞金を賭けたの。一番奥まで行って戻ってきたら金貨一千枚。有用な遺物や技術などを持ち替えれば、その内容によってお金を払うって感じかな。

 あのギュンター博士も最初に行方不明になったみたいよ」

 ルシーダは得意になって話し切った。


「ちょっと待ってください。金貨千枚くらいならレオン様持ってますよね」

 コトネはレオンが危険な所に行くのが嫌なので、彼の所持金を話してしまった。

「レオンは金持ちなんじゃのう」

 フェリが仕切りに感心する。金貨千枚なんて高位貴族ぐらいしか持ってないだろう。


「残念だが、俺とアキラさんの全財産は既にアルカディア王国に貸してあるんだ。今、アルカディア王国はインフラの整備、箱モノの建設、人材の確保、農地の確保なんかでいくら金があっても足りない状況なんだ」

 レオンは寂しそうに言う。王国が正常に動き出せば分割で返して貰う予定ではあるそうだ。


「私達のお給金はいくらあるの?」

 アンナの言葉にレオンは少し考えるようなそぶりを見せる。彼女達従者の給金はレオンが収納に預かっている。

「金貨百枚前後だ」

 コトネは驚いた。旧イエーガー領では給金は無かったはずなので、僅か二年で金貨百枚を稼いだと言う事になる。(現代日本に換算すると金貨千枚は一億円、金貨百枚は千万円相当である。)


「じゃあ、私の分を王国に貸してあげる」

 アンナはこともなげにレオンに言った。レオンの顔が歪む。

「駄目だ、返せるかどうかも分からないんだ。お前達の金には何があっても手をつけない」

 レオン様ならそう言う。コトネは解っていた。


 コトネはアンナの頭を撫で、「レオン様の言う通りにしましょう」と小声で耳元に囁いた。

 二人は給金が欲しいわけではない。むしろ小遣い程度で構わない。しかしレオンが配慮してくれるのが嬉しいのだ。


「でどうする」

 ルシーダがレオン達に聞いた。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は再び遺跡にいくのか?

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