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1-3 三男坊 巻き込まれる

暗殺者に襲われた理由はとんでもない物だった。


 中等部を一年で卒業するために頑張る俺達は平和な日々を過ごしていた。

 俺が兄に言ったことで北部方面軍の大規模な横領が摘発され、俺には暗殺者が送り込まれた。

 暗殺者を倒した俺達だが、その場に居たのはグリューズバルト侯爵の次男だった。


「どういうことか。説明して貰いましょうか」

 俺は腰を抜かして動けなくなったグリューズバルト侯爵の次男に暗殺者の説明を求めた。

「知らん、知らんぞ、何も知らん」

 首を激しく横に振るだけの男にこれ以上聞いても無駄だな。

「コトネ!こいつを見張っていてくれ。俺は警らを連れてくる。アンナ!お出で!」

 ナイフを集めていたコトネが振り向いた。

「分かりました」

 アンナが居なければコトネは俺より強い。ひとりで置いといても大丈夫だろう。


 俺は近くにある警ら隊の詰め所から隊員を呼んできた。

「こいつらにナイフで襲われたんですね。一人でやっつけたんですか。へええ」

 縛り上げた暗殺者と死体を見て、隊員二人がやたら感心してくれる。

 本当は死体はコトネが倒したんだけど信用されないよね。


「この方は?」

 大層立派な服を着ている次男坊を見て、そう聞いて来た。

「ああ、こいつらと一緒に居た。関係があるかも知れん」

「知らんぞ、俺は何も知らん」

 こいつそれしか喋れないのか。


 グリューズバルト侯爵の次男の仕業だろうが確実な証拠が無いし、暗殺者が依頼人の情報を喋るとも思えないので、釈放だろうな思った。

 俺は氏名、現住所などを警ら隊員に知らせて帰途に就いた。


「買い物で大変な目に会ったな。アンナ、怖かったか?」

「うん、ちょっと怖かった。本当はコトネお姉さんにしがみ付きたかったけど我慢した」

「そうか偉かったな」

「アンナ、よく我慢したね。御褒美に何かお菓子を作ってあげるよ」

「本当、嬉しい」


「レオン様、あの貴族は誰なのですか?」

「ああ、あいつか。あれは入試の時に絡んできたうざい奴だ」

「それがどうしてレオン様を?」

「さあな、いくつか考えられるけど、暗殺までとなると動機が弱い気がする」


 ヨシムネ先生に鍛えられた武術は、暗殺者に十分に通用した。暗殺者が迫って来た時に少しも慌てない自分にも驚いた。まあ、先生やアヤメさんに比べれば遅いし、隙だらけだったもんなあ。

 兄や父に掛かれば一撃だろうけど、俺も少しは強くなったんだな。



 次の日俺が登校しようと寮を出るとエイトとエリーゼが勢いよく寄って来た。

「どうしたんです?慌てて」

「あんた!貴族派に襲われたんですって?」

「おまえ、暗殺されかけたって?」

 二人は昨日のことを言っているようだ。


「ああ、買い物してたら四人の暗殺者が襲って来たんですよ」

「どうして平気なのよ?」

「大立ち回りしたんだろ。聞かせろよ」

「グリューズバルト侯爵の次男の私怨でしょう。気にすることないと思いますけど」


「何言ってんのよ!あん・・・・」

「強かったのか?!!どうだったん・・ングッ」

 エリーゼが何か言おうとしたがエイトが被せてくる。

「ああもう、うるさい!!私が聞いてんだから、あんたは静かにしてなさい!」

 エリーゼに口を塞がれたエイトは、目を白黒させてうんうんと頷いている。


「貴族派はアンタを生贄にしようとしたんじゃないかって、噂が流れてるわ」

「まさか、そんなに強くなかったですよ。オークなんかよりは強かったけど」

「やっぱりあんたは強いのよ。あんたを襲った暗殺者って、皆身体強化レベルが3だったって聞いたわ」

「まさか、レベルは2は無いと思いますよ。二人はコトネがやったんですから」

「あの小さな猫獣人の女の子が?うそでしょ!」


「コトネは小さいけど身体強化レベルは5です」

 少し自慢げに話す俺。エイトがそうではないと言って来る。

「何言ってんだよ。女性の身体強化レベルは男の半分って言われてる。いやまだ子供だから三分の一位かも」

 じゃあ、コトネはレベル2くらいの力しかないのか?そんなことは無いよな。


「あんたも実はレベル1って事はないでしょう?」

「いや、レベル1です」

「うそおっしゃい!!レベル1が二人相手に勝てる訳無いじゃない」

「へへへ、実は俺は身体強化ではない力で戦っているんです」

「なによそれ!そんな力、聞いたことないわよ」

「それは気功って言って、こっちではオーラ、ムガールじゃあチャクラって言ってる力です」


「・・・オーラって強者から感じる威圧とかの事?」

「まあ、それもあるけど俺が使ってるのは内気功って技で、強くなったり硬くなったり出来るんです。ですから恐らくレベル3くらいの力はあると思うんですよ」

「僕にも出来るそれ、僕もレベル2しかないから」

 エイトが食いついて来た。

「今の俺では教えるのは難しい、外気功って技を覚えないと人に教えるのは無理だな」


「それはどういう技なんだ」

「例えば百歩神拳とかは、百歩離れた敵を気で殴れる技らしいけど、よくわからないよ」

「すげえ、魔法みたい」

「先生が言うには精神エネルギーって言うのを使うみたいなんだけど」


「へえーすごいのねって、違う!それどころじゃないのよ!

 貴族派は例の横領事件で大変なことになってるのよ。

 グリューズバルト侯爵は北部方面軍指令を解任されたし、恐らく侯爵も降ろされるわ」

 エリーゼは脱線する話を戻すべく横領事件の顛末を話し始めた。


 北部方面軍上層部は、兵隊達の給与、食費、設備費等々を横領、更には水増し請求等を繰り返し、裏金を作っていた。その裏金は現王を退位させ、王の叔父を新王として即位させる資金として溜められていたらしい。

 現王の叔父を筆頭として、グリューズバルト侯爵と貴族約50名が加担していた。

 それを一か月にわたる内偵で調べ上げたのが王太子とそのブレイン。

 更に今、その詳細を調べている途中と言う事だった。

 驚いたのは事件の発端を発見した者として俺の名前が挙がっていることである。


「俺がなんで?」

 あまりに驚いて、敬語を忘れた。

「多分、貴方の父上を伯爵にするんじゃないの」

「どういうことですか?」

「もともと、イエーガー男爵の活躍から言って位が低すぎたのよ。内戦の時には、一時期、陛下を一人で支えたのよ。貴族派の横槍で男爵になっちゃったけど、陛下は本当はもっと褒美を上げたかったのよ」


「そうなんですか?」

「もともと平民だったから陛下が伯爵にって言った時に貴族派が準男爵にしろって言って、シュバルツバッハ辺境伯がとりなして結局男爵になったけど、何かあれば昇爵させるって約束してたって聞いたわ。

 だからあんたの手柄でも何でもいいのよ。イエーガー家の手柄であれば」


「それで俺が恨まれて、暗殺者を送られたんですか」

「ま、そういう事でしょうね。だから、あんたは今、貴族派の目下の敵じゃないのかしら」

「思いっきり巻き込まれてる」

 俺は顔を両手で覆った。なんで俺が?もしかしてルーカス兄さん辺りが仕組んだのか。

「じゃあ、僕も近寄らない方が良いのかな?」

 肩を落とした俺にエイトがさらに塩を塗り込む。


「お前なあ!」

 俺はエイトに向かって怒る。

「冗談だよ。俺も中等部を一年で卒業して目立たないと将来が危ないんだ。それに辺境伯様は王室派だからおまえから離れる訳ないだろう。ハハハ」

 エイトは笑う。おのれ、気楽にしやがって。


 それから何も起きずに数週間が立ち、俺達は中間テストを終え、明日から試験休みに入ろうとしていた。

「試験休み、どうするんだ」

 エイトが俺に聞いてくる。試験休みは一週間、一般生徒は開放感から近場の旅行などをする。

「勉強に決まってるだろ。遊ぶのは高等部に入ってからでもできる」


 俺達は、中等部が普通三年掛かるところを一年で卒業しようとしている。それには期末テストで10位以内に入って進級テストを受けなければならない。それをクリアすると二年生の二学期に編入できる。

 同じように二学期の期末テストと進級試験を受けて、三年生の三学期に編入して期末の卒業試験を受けて卒業というのが狙いである。高等部は飛び級が無いのでゆっくりできると考えている。

 このような飛び級は年間数人居て、俺の兄姉も経験者だ。


 これは優秀な人材を早く登用するための物である。

 本来なら初等部十二歳から十五歳、中等部十五歳から十八歳、高等部十八歳から二十一歳かまで掛かるが

 最短、初等部十二歳から十三歳、中等部十三歳から十四歳、高等部十四歳から十七歳と四年の短縮が可能だ。

 俺達三人は十四歳で中等部入学なので、うまく行けば十八歳で高等部を卒業できる。


 俺達が話しながら俺の寮の前まで来ると背の高い士官が寮の前に居た。

「マティアス中尉ではありませんか?」

 王都に来るときに魔獣にやられたエリーゼの護衛に変わってくれた人で、エイトの兄である。

「え、兄上?」

 俺達三人は立ち止まり、中尉に声を掛ける。


「ああ、ちょうど良かった。エリーゼ様、お久しぶりであります。マティアス=シュナイダー中尉であります」

「ああ、マティアス中尉殿、お久しぶりです。お元気なようでよろしかったです。何の御用ですか?」

「はい、歓談中の所、失礼しました。実はレオンハルト殿に御用がありまして・・」

 少し、歯切れが悪く話した後、俺の方を向く。


「私に御用とは一体どのような?」

 俺は警戒をしつつ質問を返した。

「済みません。エリーゼ様、レオンハルト殿をお借りしても宜しいですか?」

 ここで話そうとしない中尉に気分を害したエリーゼは皮肉をぶつける。


「王族に聞かれたくない話なのですか?」

「い、いえ、そのようなことはないのですが・・」

 中尉はあきらめたように話し始める。

「実は辺境伯様がレオンハルト殿の昨今の活躍を聞かれ、ぜひ会いたいと望んでおりまして」

「それは、寄り親として当然ですね。なぜ私に隠そうと?」

「王女様を見て、先に王太子様に断らなくて良かったのかと心配になりまして」

「兄上はレオンを拘束している訳ではありません。ご自由にどうぞ」

「ありがとうございます」


 何だこれ、俺はミソッカスのはずなのに、なんで貴族派やら王室派の人達が俺に関わりたがるの。

 俺、とんでもないことに巻き込まれてない?

レオンは辺境伯に会いに行くことに。しかし途中でとんでもないことに巻き込まれる。

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