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10-12 本当の目的

ご愛読、ありがとうございます。

今回は誘拐した犯人たちに追付きます。

 母と妹を誘拐されたレオンはヴァイヤールに乗り込んで捜索を開始した。


 〇ヴァイヤール王都から聖金字教国聖都へ続く街道 <レオン>

 レオンは鬱蒼と茂る森を見て居た。ノルンに乗って街道沿いを探索し続けているが何も見つからない。

「もう、警官が殺された辺りだ、いないな」

「隠れているならアンナの探索に掛かるはずです。恐らく道を変えたんじゃないかと思います」

 レオンのつぶやきにクロエが返す。


 既に追跡をしている百人の騎馬隊も通り越している。彼らも撒かれた可能性が高い。

「ここらに馬車が通れるような分かれ道はあるか?」

「そうですね。大きめの道は大概村や町に繋がってますから、探索出来ない数km以遠に目撃者のいない道となると・・・そういえばドワーフの国へ行く街道に繋がる道がこの近くにあるはずです」

 クロエは昔の仕事(泥棒)で近隣諸国の地図を頭の中に入れていた。


「もうじき暗くなるその前に調べよう。戻ればいいのか?」

「はい、7、8km戻れば分かれ道があります」

 それにしても・・・俺は驚いた。こんな目印も何も無い、道さえ森で見えにくい場所で、その精度で答えられる能力。恐らく空間認識能力がとんでもなく優れているのだろう。コトネの縁者で忍者の能力を持っていたから従者にしたが、とんでもない逸材を手に入れたのかも知れない。


 実際、言われた距離を戻ると分かれ道があった。

「もう通っている人もいないだろう。降りて確認する」

 夕暮れが迫る中、街道を歩く人の姿はない。夜は野生動物の世界だ。狼や熊に遭遇したくなければ夜に道を歩くことはしない。


「街道の方は馬の足跡だけしか確認できませんが、分かれ道の方には新しい馬車の跡があります」

 クロエは地面を見ながら説明する。馬の足跡は百人の騎兵だろう。この馬車の跡が犯人かどうかは解らない。しかし、騎兵が跡を消してしまう以上、この手掛かりを追うしかない。


「よし、この道に沿って探索する。ノルンに乗れ!」

 俺達がノルンに乗って飛び上がると従者通信が入る。

『レオン様、コトネです。もうノルンさんの姿が見えています』

 ゴロではノルンに追付けないからその場で旋回を指示する。

 遠くに見えてた影が大きくなる。ゴロに跨ったコトネがノルンの背中に到着した。


「遅くなりました」

 状況をクロエが伝達する。

「ちょっと、後ろ見ないでくださいね。着替えますから」

 去年までは俺の前で平気で素っ裸になってたくせに、恥じらいを持つようになったか。


 ごそごそと衣擦れの音がした後。

「もう大丈夫です」

 コトネはいつもの一気に脱げるメイド服に着替えていた。と言う事は下はスキンアーマー用の

 ブラとパンツだな。


「魔力を検知しました。多分マリア様のものです」

 まだかなり先なのだろう。アンナは指差す先は遠い。

 見つかったか。魔力が判ったと言う事は生きてる。しかし、周りは既に暗くなりつつある。

 あまり暗くなると人質救出が難しくなる。


「あ、魔力をロストしました!」

 アンナが叫ぶ

「まさか・・・」

 殺されたのか?感情が高ぶり制御できなくなりそうだ。

 俺の周りの気が音を立てて渦巻き始める。


「落ち着いて下さい!、魔力を遮断しただけかも!アンナ、霊力を探ってみて!」

 コトネが叫ぶ。

「強い霊力を感じます。二十くらい。マリア様達の霊力は見たことが無いので判別できません」

 アンナは悲壮に成りながら報告する。

「多分、魔力封じの魔道具です。焦らないでください」

 クロエが俺を落ち着かそうと静かな声で言った。

 俺の周りの気が静まった。くそ、もっと冷静にならないと相手に見つかってしまう。


「レオン様!向こう側から大勢の・・恐らく百名以上、レベル3~4の人間が来ます!」

「待ち伏せか?合流するつもりか?」

「突っ込みましょう!」

 コトネが突入を提案する。俺は許さない。敵の全容が解らないうちに行動を起こすのは危険だし、何より人質が危ない。


「待て、まだ敵の全容が見えてない。行き当たりばったりは駄目だ」

 敵は合流して停止した。いよいよ人質がどこにいるのか分からなくなった。

「取敢えず、近くに行って様子を見る」

 ノルンは黒鷲から黒フクロウに変身する。速度は落ちるが羽音がしなくなる。


「私達が行きます」

 クロエとコトネが前に出る。

「ちょっと待ってくれ。敵の様子がおかしい。お前達の意見を聞きたい」

 俺は敵の動きに疑問があった。それをみんなに聞いてみる。


「そうですね。マリア様の魔力を消したタイミングもおかしいですね。最初から消しておけばいいのに」

 これはクロエ。

「こちらが見つけたとたんに敵の増援がありました」

 これはアンナ。

「最初の賊は霊力が高くて、増援は魔力のみです」

 これはコトネ。

 ちなみにゴロは・・・だった。


 俺は敵の動きをまとめてみた。

「つまり、俺達が追いつくと魔力を遮断し、増援が都合よく出てくる。元々の賊は霊力使いで、増援は通常の兵と言う事か・・・」

 俺は考え込む。

「俺達は誘き寄せられたと言う事か。魔力で人質を見つけさせ、俺達を見つけたら魔力を遮断して人質の場所を探らせない。増援はよく分からないな」


「では私達が忍び込むことも?」

「うん、多分織り込み済みだと思う。忍び込むのは危険だから完全に暗くなったら、クロエ、ゴロに乗って離れて偵察してくれ。俺達は一旦援軍の来た方へ行って見る」

「そちらはゴルツ子爵領ですね。気を付けてください」

「やはり、あいつが噛んでいるのか」


 しかしゴルツ子爵にこんなことが出来るとは思えない。誰かが操っているのか。俺達の行動を予測できるとしたらオリンポスの生き残り、ゼウスを操っていたウラノスって奴か?

 ヘラに惚れられていたんだから、きっと若いんだろうな。


「いかがしますか?」

 コトネも焦ってきているようだ。彼女らが誘拐されてすでに七時間ほどが経過している。リーナと仲の良いコトネにとっては、目の前に居るのに助けに行けないのはたまらなく悔しいだろう。

「クロエ、気配を消しながら、ゴロで敵に近付いて様子を探ってくれ」

「はい」



 〇敵の周辺 <クロエ>

 鬱蒼とした森の中に引かれた一本の路、その中に人質を乗せた幌馬車、三台あるのでどれに乗せられているのか分からない。もう暗闇が周囲を覆っているので、あちこちでライトの魔法が輝いている。

 私は路から三十m程離れて、森の中を縫うようにゴロに乗って移動する。


 東洋風の服装をしているのが最初からいた誘拐犯だろう。彼らは髪も黒く、顔の彫も浅い、本物の東洋人の様だ。私でもわかる霊力の大きさだ。

 兵の方は肌色が目立つと言うか、マイクロビキニのスキンアーマー仕様の女性兵だ。多くのものがボウガンを背負っている。突出した力を持つ者はいない様だ。ほとんどの兵隊が徒歩で騎兵は数人だ。


 どうも馬車の馬を交換しているようだ。四頭立ての馬を付け替えている。夜に移動するのだろうか。

 ゴルツ子爵領は近いと言え、徒歩だと一日以上の距離がある。この先に何かあったかな。頭の中の地図を必死に思い出す。


 そう言えば、昔この近くで仕事した時に崩れた石の砦跡があって、隠れ家に出来ないかを調べたことがあった。

 もう、三年ほど前の記憶だ。あやふやな所があるけど、百人くらいなら雨露を凌げる。


 どういうことなのかしら、百人とは言えあれくらいならレオン様の敵じゃないし、時間稼ぎ位にかならないわ。・・・時間稼ぎ、それが目的ならなぜ時間が経てば不利になるのは犯人側、何を待っていると言うの?

 考えていると敵の列が動き始めた徒歩でゆっくりと。


『敵が動き始めました。そちらに向かいます・・・』

『どうした、歯切れが悪いな』

『申し訳ありません。一つ思いついたものですから』

 私の報告の仕方がレオン様の疑問になったようだ。相変わらず鋭い人だ。


『この百人の兵ですが、時間稼ぎのような気がします』

 それから砦跡の説明をした。

『時間稼ぎだと、・・・そうかそう考えるとしっくりくる。クロエ、戻れ。敵は隙を見せないだろう』

『どういうことですか?』

 レオン様は敵の行動を解析したと言う事だろう。

『戻ったら説明する』



 〇敵の集団の進行方向の上空 <レオン>

「時間稼ぎする意味って何でしょうか?」

 クロエはノルンの背中に戻ると早速聞いて来た。敵が隙を見せない以上敵の行動原理を知る必要がある。クロエの質問はそれに沿っているのだろう。


「まあ、待て。今の所、人質を安全に助け出す方法が思いつかない。

 そこで今までの敵の動きから敵の目的を推測しよう。

 まず、最初の疑問、追跡する兵隊は撒いたのに俺達には追跡させたことだ。

 敵は追跡の兵隊と戦う事を嫌った。これは王国軍が人質を無視して攻撃するからだと思う」


「はい、王太子様も彼女達が人質にならないと言っていました」

 コトネが王城での話をする。

「そう言う事だ。王国にとって女性の価値は著しく低い。だから人質を救うより敵の殲滅を優先する。次の疑問はなぜ、俺達に人質の存在を確認させたのか」


「そうです、魔力が探知できると分かってるのに、隠そうとしていませんでした」

 アンナは母上の魔力を探知した。隠す手段があったのに隠していなかった。


「それは俺達に追跡させるためだ。敵はその時点で俺達が来ていることを知っていたのだろう。アンナのような探知の魔法を使えるのかも知れん。その後隠したのは正確な人質の位置を隠すためだ。人質の安全を考えれば、位置が解らないのに俺達が攻めてくることはないと考えたのだろう」


「では援軍はどうなのですか」

 魔力を隠した直後に現れた援軍の事だ。


「あれは、俺達に攻め込ませないようにする二重の手だ。人質の位置が解らない状態で逃げていれば俺達は位置を探ろうとする。位置が解れば当然救出する。だが周りにボウガンを持った兵が囲んでいれば人質の安全な救出は難しい。空に逃がそうとしても狙われる」

「ではあのボウガンは私達を狙う物では無くて、人質に・・・」

 一瞬、声が出なくなったようだ。


「で、その目的だが、恐らく父上を狙っている」

「フリードリヒ様をですか?」

 コトネの顔が青くなる。

「そうだ、人質が居れば殺せると思ってる」

「それで私達に手出しさせないように・・・」

 クロエは呆然とする。


「ですが私達を追跡させている意味は何ですか?」

「父上への連絡と人質の引き取りだろう」

「恐ろしい、今までの敵と違い過ぎます!」

 コトネが震えている。


 いよいよ、ウラノスって奴が牙をむいて来たか。

 父上は罠だと分かっていても来るだろう。そう言う人だ。

 父上を失えばヴァイヤール王国の守りは半減する。なにせ、帝国までその強さと忠節は鳴り響いていたのだから。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はレオンの父がやってきます。

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