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10-6 イエーガー家の異端児

ご愛読、ありがとうございます。

今回は前回の続きです。


 冬季休暇の初めにオリンポスの侵攻していた三か国を解放して平定したレオン、帝国とヴァイヤールに同盟の話し合いに乗るよう要請した。その結果,帝国はフェリを視察に派遣、ヴァイヤールはエドゥアルト王国を前王妃のフローラに返せと言う派閥と視察して納得できれば同盟を結ぶと言う派閥に分かれている。


「兄上はなぜエドゥアルト王国を返せと言わないのだ?」

「そんな予算がどこにある。あそこの王族、貴族は皆殺しにされてる。それをこちらから貴族達が行って農民をこき使い、税金を搾り取って、まともになるまで何年かかる。大災厄も近付いているのに。奴らは我が国に金を出さそうとしているんだぞ」


 兄上の言いたいこともわかる。大災厄を戦える国にするには金と時間が要るがその両方が無いのだ。今は国を新たに造るより、今の国の体制を整えるべきだと言う事だろう。

 俺はそこを国民が国に貢献したい国を造ることに主眼を置いている。そうすることで時間を稼ごうと考えている。まあ、もともとはアキラさんの提案で日本で起きたメイジイシンの焼き直しである


 父上はなにか静かに考えていたようだがボソッと声を出した。

「そろそろやるか・・・・?」

 それを聞きとがめた兄上が父の方を向く。

「はい、何をやるんですか?」

 俺はなぜかヤバい雰囲気を感じている。


「うん、レオンだが、ニコラウスより強いと言っている。そろそろ俺と戦っても良いんじゃないか?」

 父上、え、ええー。

「父上、俺は帝国に行った時点で、イエーガー家より独立したものと思っておりますし、いまさらヴァイヤールに戻って、伯爵家を再興しようとは思いません。戦う意味がありません」

「父上、レオンの強がりを信じたのですか?ニコより強いなんてある訳が無いじゃないですか」

 兄上も何言ってんだみたいに言ってくれる。


「レオンよ、お前が求める同盟もエドゥアルト王国のバカ騒ぎも、お前の強さを見せれば話が早いと思うがどうだ」

 父上は名案を思い付いたようににこやかに俺を見た。それに噛み付いたのが兄上だ。

「父上、父上の武勇はヴァイヤールの誇りであり、抑止力です。レオンは外に出た身、そんな勝って当たり前、負ければすべてを失うような勝負をさせるわけには参りません」

「なんだ、お前は俺が負けるとは思っているのか」

 父上は詰まら無さそうな顔をして兄上を睨む。


「ヴァイヤールとしてはニコラウス以外に父上が負けることは許せません。エドゥアルトを支配していたアポロンと言う男はニコラウスより強かったと推測しています。それにレオンは勝ったのです。しかもレオンはイエーガー家のミソッカスと西大陸の殆どで認識されているのです」

 兄上は俺の実力を認めてくれていた。ただ俺は限定された戦場で戦い続けたから、世間では認められていない。


「そんなに俺の評判が落ちることが心配なのか」

「王を守る為、二千の敵に一人で突っ込んで敵の将を打ち取った。敵が「首狩り」と恐れた所以です。イエーガー家には爆轟の魔女、レベル7もいますが、やはり父上の名前が周辺国への抑止力と考えます。

 王家はイエーガー家の名を利用して、ニコラウスとレナを王族と結びつけて、内外に次代の抑止力としてアピールしていますが、あと十年は父上に頑張って頂きたい」

 なるほどねえ。流石に王太子の懐刀と言われるだけあってコスパの良い防衛を考えるなあ。


「そう言う事で俺は遠慮させていただきますね」

 俺は空気を読める男なのですぐに断りを入れる。

「ふん、こんなに祭り上げられるとはな。ちょっと陛下に良い顔をし過ぎたな・・・・・・・」

 父上がぐちぐちと何か言ってる。


「しかしレオンよ。まさかお前が王になって独立するとは思いもよらなかったよ。レベル1で最強とか、魔力が無いくせに魔法が使えるとか、精霊を従者にしてるとかもうイエーガー家の異端児と言って良いな」

 兄上が呆れた顔で俺を見る。


「全部成り行きなんだけどな。まあ、仲間に言わせるとそれが選ばれた印だなんて言われるけど」

「まだ全部話したわけじゃないだろう。まだまだ秘密がありそうなんだよな」

「そうそう、忘れてるよ。最強の獣人少女もいるよ。コトネは魔法を使えばレベル7相当で、アンナは爆轟の魔女に余裕で勝てる」

 後ろに立つコトネの事も慎ましく宣伝して置く。本当は以上だけどな。

 コトネが真っ赤な顔をしている。ちょっと恥ずかしかったかな。


「それはあれか?貴族連中に言っておけと言う事か?報告では神狼族の恐ろしいのがエドゥアルト城に居るらしいな」

「ああ、ジェリルか。あれも魔法を使えばレベル7相当だ」

「はああ、エドゥアルトを狙ってる奴らにはそう言っておくよ。ヴァイヤールはエドゥアルトだけでも手を出せなかったのに三か国も手に入れるなんて、すごい戦力だな」

 兄上はため息を吐く。


「父上とニコ兄が行けば簡単に手に入ったさ」

「陛下が二人を国外に出す訳無いだろ。二人は防衛の要なんだ。お前も貴族連中をやっつけるのは構わんが王家に敵対するなよ。イエーガー家は忠義と武略の家と見られてるからな」

「分かってるって」


 その時、ドアがノックされた。

 メイドが顔を出し、夕食の準備が出来たと報告した。

「お客の分はあるか?」

 父上が確認したが無いとのことだった。


「すまんな」

「まあ、あの執事なら俺達の分を用意することはないだろうな」

 未だに他の貴族のスパイをやってるみたいだからな。普通、息子が帰って来てるんだから食事が要るかぐらい確認するだろ。


「わかるのか?」

「あいつ、俺達をゴルツ子爵の居る客間に通そうとした」

「何度か注意したのだが・・・忠誠心の無い奴で・・・」

 まあ、俺には関係のない話だ。


「じゃあ、俺達は帰るよ。また正月に来るから」

「そうかすまんな。そうだ、母さん達に会って行かないか?」

 母さんと聞いてコトネがビクッとなる。そうかトラウマだよな。

「長くなりそうだから正月に挨拶をするよ」

 俺は父の屋敷を出た。


 さすがにこの時間じゃあ門は閉まってた。

 人目のない場所を選んで、ノルンに外壁を越えて貰った。


 いつもの草原に家を出して夕飯の用意を始める。今日はコトネが一人で用意すると言ってる。

 彼女は夕食の時も静かで、俺が話し掛けても「はい」とか、「いえ」とかしか言わない。

 何かを考えているようなので、自分から話すまで放って置くことにした。


「レオン様、ちょっとよろしいですか?」

 そう言ってコトネが話し掛けて来たのは、夕食の後片付けや体を拭いて寝間着に着替えてからだった。

 今日は裸で迫ってくることは無かった。獣人は恋愛感情が激しいと言われるが納得してしまう部分がある。


「なんだ?」

「御父上の事なんですけど。レオン様はもう、御父上と互角に戦えるようになられたのではないですか?」

「まあ、そんなところかな」

 俺の戦闘能力は既に父親と並んでいるように思っていた。


「ではなぜ試合をお断りになられたのですか?」

 それを考えていたのか。それが判らなかったのだろう。

「俺にあまりメリットが無いからだ」


「え、御父上が言っていたように貴族に対しては大きな力を持つと思うのですが?」

「まあ、俺が勝っても負けても奴らには関係ないさ。勝負の内容に文句を言うだけだ。それに兄上の話も有っただろ。俺は父上に勝っちゃいけないんだよ」

 わざわざ貴族たちを喜ばすことは無いんだ。


「でも、レオン様はお強いのに見くびられるのは嫌です」

「そうか、コトネはゴルツ子爵やフローラ姫が俺の武威を侮ったように感じた訳だな」

 コトネは主人である俺が強いことに誇りを持っているのだろう。可愛い奴だ。


「コトネはなぜ帝国が、俺を認めるような動きをしているか判るか」

「それは、レオン様が強いから」


「まあ、そうだな。父上がなぜ西大陸で伝説の男として認められているか判るか」

「国王陛下に少数で味方し、一人で二千の兵に守られた将軍の首を取ったからです」


「その通りだ。そして俺はバルドゥール王国を救うため、七千の兵が守る本陣を奇襲して敵の将軍を倒した」

「あ、帝国はレオン様を御父上と重ねてるのですか」

 コトネは俺が父上と同じような武勲を上げていることに気付く。


「帝国としては大ぴっらに出来る戦勝ではないから、俺達の活躍はあまり知られていないがな」

「ではその戦いの内容を流布させればレオン様の株が上がるのでは」

「いや、それは帝国に取って悪手だ。でも俺をバックアップさせることは出来ると思う」


「ああ、もう、レオン様がイエーガー家にどうしたいのかが判りません」

「俺はな、一人の男としてイエーガー家に認めてもらいたいのさ。それには帝国とヴァイヤールとアルカディア王国に同盟させて大災厄を乗り切ることだと思っている」

「ちょっと話のスケールが大きすぎる気がします」


 そうだろう。家族に認めて貰うと言う動機に対して話が大きすぎるが、いつの間にかそうなってしまったものは仕方が無い。

 俺の話に乗って来たアキラさんや妖精女王、俺の従者たちの意見を聞いていたらこんなに大きくなっちまったんだ。


 それをコトネに言うと。

「ああ、聞くんじゃなかった。レオン様はもっと計画通りに物事を進めていたと思ったのに。結構行き当たりばったりだったんですね」


「コトネも言ってただろう。チャンスを逃してほしくないって」

「それは・・言いましたけど・・・私がそうさせたんですか?そんな責任負えませんよ」

「ええ、責任取ってくれないの?」

「私は十二歳で孤児の猫獣人ですよ。そんな責任負えません」

 呆れ気味に俺に怒るコトネ。


 待ってましたとばかりにニヤッと笑う俺。

「じゃあ、責任を負える立場になれば良い」

「そんなのなれるはず無いじゃないですか」


「お前は俺と結婚して夫人となって国政に関与しろ。すまんが夫人はお前ひとりと言う訳にもいかんが許してほしい」

「ええ、そんなフェリ様やエリーゼ様がいらっしゃるのに、私なんて無理です」

「お前は一生俺のそばに居てくれるって、約束したよな」

「約束しましたけど、それはメイドや護衛としてで・・・」

 どうも歯切れが悪い。


「嫌なのか?」

「嫌では無いのですが、そのような重責を担えるのか、全く自信がありません」

「ふうむ、立場がいるのか。獣王あたりに養女にして貰うかな」

「な、何言ってるんですか!そんなの無理に決まってるじゃないですか」

 むう、俺が嫁にすると言ってるのに何で断るんだ。


「もう、いい。喜ぶと思ったのに・・」

 俺は不貞腐れて眠ることにした。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は年末のレオン達の様子の予定です。

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