表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/222

10-5 ヴァイヤール王国との対立

ご愛読、ありがとうございます。

レオンがイエーガー家を訪れます。

 アルカディア王国建国に向け、帝国とヴァイヤール王国に同盟を提案するレオン。帝国には功績があり、手ごたえを感じたが、レオンを未だにミソッカス扱いするヴァイヤール王国を交渉の席に着かせられるのか。


 フェリはあの後も積極的に視察行動を繰り返し、ゴロとアンナを通じて視察結果を毎日皇帝に報告している。元の三か国を忙しく飛び回るレオンやアキラに便乗して自らも三か国を回った。

 あれから三日後の午後、レオンはコトネを連れてヴァイヤールに飛び立った。

 ちなみにコトネはメイド姿だ。俺の従者であることを強調したいみたいだ。


 いつものように王都の外にノルンを降ろして、小型の箱馬車をノルンに引かせて父の屋敷に向かった。

 屋敷に到着するとなぜか馬車が数台泊まっていた。

 門番にどういうことか聞いてみた。

「はあ、ゴルツ子爵がルーカス様を尋ねてお見えになっています」

「ゴルツって誰だっけか」

 王国の貴族事情に疎い俺はその名前を聞いても判らなかった。何か嫌な予感がする。個人で来たにしては馬車の台数が多すぎる。


 コトネを連れて玄関を開けると今日はヨハンが居た。こいつは獣人差別者で母親を唆した男だ。警戒しながら話し掛ける。

「ルーカス兄上に会いたい。取り次いでくれ」

「はい、客間でお待ちください」

 ヨハンは余計なことを言わずに客間に案内された。


 客間には先客が居た。中年男と若い女性、それにその護衛が二人。

 常識として先客がいる客間へ案内されることはない。

「ヨハン、先客が見える様だ。別の部屋に案内せよ」

「いえ、こちらでお待ちください」

「先客に失礼だろうが!直接兄の部屋に行く」

 こいつ、何か企んでいるな。


 客間を出ると先客の中年男が追い掛けて来た。

「レオンハルト殿ですな。この度はエドゥアルト王国を取り返してくれて礼を言うぞ」

 こいつ何を言ってる。もしかしてあの若い女性がフローラ姫か?

「エドゥアルト王国は私が平定して私の国になりました。礼を言われる覚えはありません」

「まあまあ、若いと先走るものだ。こちらで話そうではないか」

 新たに出て来た女八人が俺の行く手を塞いで、俺を客間に戻そうとする。


「無礼な!下がりなさい」

 コトネが行く手を塞いだ女たちに抗議する。

「ククク、伯爵のお子とはいえ無役の三男坊、無礼とは思えませんなあ」

 中年男は下卑た笑いを俺に向ける。


「俺はリヒトガルド帝国特従四品、赤竜勲章保持者だ。無役ではない。ちなみにこの娘も特正六品、黄虎勲章保持者だ」

 あまり品位を振り回すつもりはないが、こいつは俺を下に見てマウントしたいみたいだ。

「帝国の品位などヴァイヤールに関係あるか!」

 どうしても自分の優位を崩したくない様だ。


「俺は外交交渉に来ている。外交に権利の無い者と話すつもりはない」

 まあ、この程度では引っ込んではくれないだろうな。

「エドゥアルト王国の権利をすべてフローラ姫に渡せ」

「オリンポスに攻められて、権利も義務も放棄した人間に渡すつもりはない」

 やはり俺がエドゥアルト王国を平定したことを知ってクレクレをする馬鹿者か。


「エドゥアルト王国の権利は王族が亡くなった以上、王妃であったフローラ姫に帰属する」

「そう思うなら攻めて来い。相手をしてやる」

 王の居なくなった国を王妃が引き継ぐという例はあるが。滅ぼされた国を王妃が無条件に引き継いだ歴史はない。それなら武力に依るしかない。


「おい、こいつはヴァイヤール王国への裏切り者だ!!捕えよ」

 八人の武装した女が俺に飛び掛って来た。しかし、メイド姿のコトネの後ろまで来れた者は居ない。

 八人の女が床に転がって苦しんでいるのを見て、中年男は身震いした。

 だいたい、俺に暴力で勝とうと言うのが間違いだ。

「この反逆者め、覚えておれ!グッ!!」


 逃げようとした中年男の首根っこを押さえて、コトネが俺を振り向く。

「レオン様、この男どうしますか?」

 どうしたら良い物か?


「レオンハルト=イエーガー!」

 突然名前を呼ばれ振り向くと恐らくフローラ姫が立っていた。

「何でしょうか?」

 俺は出来るだけ冷静に言葉を返した。王族に乱暴な扱いは出来ないからな。


「私をエドゥアルト王国の女王にして下さい。このまま未亡人として、朽ち果てるのは嫌なのです」

 彼女はこともなげに言う。まあ言う事も解るが俺は大災厄と向き合わねばならず、そして俺の悲願である獣人が差別を受けない国を造らなければならない。


「残念ですが、平和な時代ならともかく、大災厄への対処や国民を守ることを考えると、あなたに国のかじ取りを任せるわけには行かないのです」


「そんなことは貴族どもに任せます。私は私に合った権力と名誉と金があれば良いのです」

 羽根扇で口元を隠しているが恐らくは笑っているのだろう。要するにこの人を神輿に担ぐ貴族がいるのか。恐らくこのコトネに捕まっている中年男のゴルツ子爵一人ではなさそうだ。


 その時玄関の扉が開いた。現れたのは父の従士長のカールだ。

 カールは後ろに続いていると思われる人間をとどめて玄関ホールの惨状を確認した。

「これはどういうことですか?レオンハルト様」


 カールは俺を睨む。こいつはレベル1の俺に負けたことを根に持っている。

「こいつが俺にこの転がっている奴らをけしかけたので従者のコトネがやっつけたのだ。ちなみにこいつはゴルツ子爵、彼女はフローラ姫殿下だ」

 俺はコトネに摑まっている男と俺の後ろに居る女を顎で指した。


「カールどうした!」

 後ろから顔を出したのはルーカス兄だ

「状況が判りません。出ないでください!」

 カールはルーカス兄をこの修羅場に近付けたくない様子だが、兄が来ない事には解決しそうもない。


「おう、レオン来てくれたんだな」

 カールを押しのけてホールに入ってくるルーカス兄。カールは嫌そうな顔をする。

「兄上、この人たちを何とかしてください」

 兄上はコトネに捕まる男とフローラ姫を見て言った。

「ゴルツ子爵とフローラ殿下・・・今日、説明したようにあなた方にはエドゥアルト王国に対する権利はありません。お引き取り下さい」


 兄上に続いてはいって来たのは父上だった。

「レオン・・・お前が来ると修羅場になる。お前、何かに祟られてるのか」

 そんなこと言って笑っている。


「覚えておれ、この恨み忘れんからな」

 コトネから解放されたゴルツ子爵は、床に寝そべる女たちを蹴とばして「帰るぞ!」と叫んでいるがなかなか起きない。

「コトネ、手伝って差し上げろ」

 コトネが片手に二人ずつ、計四人をひょいと持ち上げて、ゴルツ子爵の馬車に放り込んだ。二往復で床は綺麗になった。ゴルツ子爵がコトネを見て青い顔をしていたのが印象的だった。


「レオンハルト殿、私の事を忘れないようにしてください」

 フローラ姫は二人の護衛を引き連れて帰って行った。


 うん、ヨハンが居ない。館の主人が帰って来たのに執事長が出迎えないなんて?さてはゴルツ子爵達がひと騒動起こすことを知っていて招き入れたのか?

 まあ、これはこの家の事だ。放って置こう。


「レオン、執務室に入れ。話はそれからにしよう」

 俺が父上に話し掛けようとするとそう言われた。


 執務室の椅子に座ったのは俺、父上、兄上の三人、コトネは俺の後ろに立った。

「すまん、最初に謝って置く。お前がエドゥアルト王国を平定した知らせが昨日の夕方、王室に入った。もちろん先に聞いていた陛下と王太子殿下は情報の確認をしただけであったが、一部の人間はイエーガー家の三男坊がエドゥアルト王国を()()()()()と誤解した。もうそこからは権利の奪い合いが始まって収拾がつかなくなっている。お前は既にイエーガー家から独立していると何度言っても聞きはしない」

 兄上は済まなさそうに頭を下げた。


「エドゥアルト王国はヴァイヤール王国の属国でも何でもないですよね。ただ王女が嫁いでいただけで深い同盟関係にあった訳でもないでしょう。それをなぜ自分のものを取り返して貰ったみたいなことになるんでしょうか?」

 俺は帝国でそんなことが起きるかもと聞いていたので慌てはしないが。


「それは俺も驚いた。今日、司令部から帰ったらお前を紹介しろとか、娘を嫁にとか言われ続けて仕事にならんかったわ。ルーカス、お前先に聞いていたんだろ、情報統制して置けよ」

 父も呆れてぼやいている。

「申し訳ありません。まさかここまで欲深いとは思いませんでした」

 そりゃそうだよね。何の手柄も無いのに褒美を寄こせって言ってるんだから。


 エドゥアルト王国は王族も貴族も全部殺されちゃったから。貴族たちから見れば取り放題に見えるんだろうね。


「そのオリンポスって組織は強かったのか?」

「はい、俺が戦ったアポロンと言うホムンクルスはほぼ一人でエドゥアルト王国を侵略しました。強さはニコラウス兄上より強いと思います」

 父上に言われて答えたけど、奴の強さは別格だった。


「ニコラウスより強いって、それじゃあお前もニコラウスより強いってことにならないか?」

「はい、多分そうなると思います」

 兄上に聞かれて困ったけどそう答えるしかないわな。


「確かにニコラウスでは一人で数千人相手に勝てるとは思えん」

 そうなのだ。スキンアーマーを持たないニコラウス兄上は強いが怖い存在ではない。

 恐らくコトネでも勝てるだろう。


「それは良いんですけど。俺の要望は考えて貰えそうですかね?俺も時間がないんで、結果が出ないなら他の事をしたいんですけど」

「すまん、まだ同盟の話は出来てないんだ。お前を連れて来いってうるさくって話がすすまないんだ」

 顔を青くして謝る兄上。俺も兄上を虐めたい訳じゃないんだけどな。


「俺を連れて来いってどういう意味ですか?」

「エドゥアルト王国の権利を放棄させようとしている。もちろんただではないが。金や名誉で懐柔しようとしている」

「ふうむ、俺に用があるならエドゥアルト王国に攻めて来いって言って貰えますか。お相手しますんで」


「待て、短気を起こすな。こんなところばかり父上に似やがって」

「うん、ルーカスなんだ?俺に文句があるなら聞くが?」

 あ、父上が怒った。

「ああ、もう父上少し我慢してください。あとで聞きますんで。レオン、それで陛下と王太子殿下の要望を聞いてやってくれ。お前の王国の詳細が解らんことにはお前の要望を考えることが出来んと言う事で視察団を送りたい」


「視察団ですか。構いませんよ。帝国からも来ていますし・・・えーとエリーゼ様じゃないですよね」

「彼女は来年には帝国に行く段取りになっていたので入学まではひまだ。と言う事で彼女とエイトリッヒ、それから護衛となるかな」

 ええ、なんかフェリ様と一悶着ありそうだなあ。しかし、断る理由にはならなそうなのだ。

「分かりました」

 そう言うしかないじゃないか。


「お前、正月来るだろう。その時に連れて行ってくれ」

 マウントを取ったつもりなのかニヤニヤとしながら俺に話すルーカス兄上だった。


 結局ヴァイヤールは王太子が俺と同盟を、その他がエドゥアルト王国を安く手に入れようとしてる二派に分かれてるらしい。俺は政争の中に入るつもりはないから、お兄ちゃん頑張ってね。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回は今回の続きのお話の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
戦争とバカの根は駆逐不可能だな(呆)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ