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10-4 初めての行政

ご愛読、ありがとうございます。

今回はレオン達が政治を始める様子です。

 ヴァイヤールに行ったレオン達はルーカス兄と話し、三日後に再度訪れること約束して戻ることにした。


 コトネが全裸で俺に抱き着いた夜の次の日の朝。コトネが俺を起こしに来た。

「レオン様、おはようございます」

「ああ、おはよう」

 俺はベッドから抜け出して着替えを始める。昨日の騒ぎで洗濯がまだされていない。


 コトネが汚れ物を集め始めた。

「コトネ、洗濯はエドゥアルト城でお願いしろ。なるべく早く出発したい」

「分かりました。レオン様、昨夜は申し訳ありませんでした」

「気にするな。誰だってそう言う時はある」


 前にもあったな。そう言えばエリーゼも言い寄って来た時があったな。この世界は男の三倍女が居るから、女が積極的になるのも仕方がないのかも知れないな。

 フェリやエリーゼとの結婚話が現実化して来たから、コトネも焦っているのかも。


 俺はコトネの髪の毛をクシャクシャになるぐらいに撫でてやった。

「もう、さっき梳いたんですよ」

 コトネは頬を膨らませるが、まんざらでもなさそうだ。

 まあ、こんなことが出来るのもアンナが居ない時だけだ。アンナに気の抜けた姿を見せるのは主人として情けないからな。


 俺達は家を片付けるとエドゥアルトに向けて飛び立った。

「レオン様、建国からレオン様はどう動くおつもりですか?」

 ノルンの背中でコトネが聞いてくる。

 コトネは自分で動くために建国の道程を確認したいのだろう。良い事だ。


「俺達の目標は政治的には同盟が出来れば、俺が王として即位してアルカディア王国を建国する。これが第一段階。

 即位をすると各国から夫人候補が集まってくるはずだ。利益のある婦人を迎えて、大々的に戴冠式をするこれでが第二段階。建国を世界的に周知させて安定させる。


 経済の目標は帝国でやっていたアキラの店を拡大して製品を各国に売る。ヴァイヤールと帝国の間の街道を整備すれば、道程が十日は縮む。中間点に首都を作りハブとして経済の中心とする。獣人を中心とした移民を受け入れ、農業の生産性を向上させる。これも第二段階で実施するつもりだ。


 第二段階ぐらいで大災厄に襲われるだろう。そこで同盟国で大災厄の被害を限りなく抑え込む。


 今の所はこんなもんだ。後は大災厄後の様子を見ながらだな」


 俺は風呂敷を広げた。これらをやるには人材がもっと必要だ。


 エドゥアルト城に着くとジェリル、ノア、ハビ、クロエ、フュルストが出迎えてくれた。

「何も無かったか?」

「そ、そうだな。大きなことはなかったぞ。うん」

 ジェリルの返答がぎこちない。なにかあったのか?

「クロエ、本当か?」

 一番素直でジェリルに忖度しないクロエに訪ねて見た。

 まあ、大きなことがあればクロエから連絡が入ったはずなんだ。


「そうですね。大きな事件はありませんでした。ジェリルさんが兵士に試合をしようと突っかかって行った以外は」

 クロエは澄ましてそう答えた。ジェリルが赤い顔をしてクロエを見た。

「ち、違うんだ。ほら、ビーストグローが使えないからさ。今の実力を知って置きたくて」

 一生懸命、唾を飛ばして、言い訳を並べるが許さない。


「お前は既にビーストグローが無くてもレベル7ぐらいの実力がある。一般兵に絡むな」

 ジェリルはシュンとして小さくなってる。一応、俺の部下になったので頭にゲンコツを落としておく。

「イテェ!」

 神狼族娘達も恐らくレベル6と戦えるぐらいにはなっているはず。だから国の防衛を任せているのだ。


「しかし、アンナちゃんとコトネちゃんがいないと結構不安です」

 ノアが俺に直訴する。

「お前達は既に一般兵から見れば一騎当千の将だ。自信を持ってくれ」

 ノアとハビはお互いを見つめ合うとフンスと気合を入れた。


「フュルスト、国民の様子はどうだ」

 フュルストは一歩前に出ると俺に向かって直立する。

「指示通り、兵に自治を任せていますが、短期間に変遷が大きく、まだ慣れないように思います」

「兵が自分達を守る存在と分かれば、安心してくれるだろう。頑張ってくれ」

「はい!これまでとは違うと言う事を言い聞かせます」


「レオン様、今までと違うとどういうことですか?」

 コトネが解らなかったらしく、俺に質問した。段々自分で考えようとしているようで嬉しい。

「今まで国民を支配してたのは、誰か解るか?」

「はい、最初は貴族でその後はオリンポスです」

「そいつらが国民のために何をしてくれたかと言う事だ。お前達の生まれた村はどうだった?」


「あいつらは税金はきっちり取って行くくせに、村は守ってくれなかった!」

 答えたのはクロエだった。悔しいのか、涙ぐんでいる。

 そうなのだ、生産性の低い獣人の村など、彼らには守る価値は無いのだ。

 しかしレオンは国民を守る。だから兵が国民の近くに居るのだ。

 それが国民に解るようになれば国への愛国心が生まれる。


「農業改革も進める。まあ、すぐにどうこうは出来ないが、この春からはアキラさんが用意してくれる肥料で、収穫は大幅に上がるはずだ」

 生産拠点はハーヴェル城に置く予定だ。余裕が出れば国中に拠点を作るつもりだ。


「先の事ばかりを考えて居ても仕方ない。先ずは治安を良くして、商人達にこの国を通って貰おう」

「はい、お任せください!」

 フュルストは自信有り気に返事をする。


 大災厄は国民の総力を結集しないと乗り切ることは難しいだろう。だから俺は国民に認めてもらうのに同盟を急いでる。


 俺達はエドゥアルトをざっと見た後、ハーヴェル城に向かった。



 ハーヴェル城 <フェリ>

 昨日、アキラからこの国の仕組みを聞いたが今日は、実際に村々を回って現実を確認する。しかし、レオンが支配するようになって数日しか経っておらず、結果を見ることは出来んだろうな。


「しかしフェリ様も物好きだよな。まだ指示の行き渡ってない村を見に行くなんて」

 ウェルバルが馬上でぼやく。

「やかましい、アキラが食料を配ったと言っておったであろうが。それを見るだけでも良いのじゃ」

「あ、姫様、村が見えてまいりました」

 アデライーデが林の向こうを指差すとその方向に畑と家が見える。


「見ろ、村が見えたぞ」

「はいはい、見えましたねえ」

 ウェルバルはやる気を見せない。一応いざと言う時には真っ先にワシを庇ってくれるんじゃが。


「なんでお前はそう惰弱なのだ。それだからワシに勝てんようになるのじゃ」

「あ、あれはフェリ様が負けるとかわいそうだから手加減してあげたんですーっ」

 ワシもレオンの手ほどきで強くなっておる。このあいだは初めてウェルバルから一本を取ったのだ。

「ははは、負け惜しみを言うな。みっともないぞ」


 アデライーデの顔色が悪い。やつは位はウェルバルより上だがウェルバルより弱い。ワシに抜かれて困っておる様じゃ。レオンの手腕を認めるが良い。


 ワシらが村に近付くと四人の兵隊が飛び出て来た。わしらの前を塞ぐと羽織っていた布をバッと脱ぎ捨ててスキンアーマー状態になる。

「あー、先触れを忘れてたあ」

 確かナルと言う獣人の少女が走っていって説明しているようだ。


 四人の兵は布を再び羽織ると道の両脇に分かれて敬礼をした。

「皇女殿下とは思わず、失礼をいたしました!」

 ワシは前へ進み出て馬上で兵たちに言った。

「良い、先触れを忘れたこちらに落ち度がある。すまんかった」


 兵によって村長宅に招かれた私達は、馬を降り中に入った。

 板張りの間に麦わらで織った座布団の上にワシが座り後ろにウェルバルとアデライーデが立つ。獣人のナルはワシの横に座った。


 さて、本番じゃな。こうやってのじゃ言葉が出て来ればワシも絶好調じゃな。

 村長がワシの前に座ったな。

 やはり、レオンの事から聞くか。

「村長よ忙しい所にすまんな。ちょっと話を聞きたい」

「はい、田舎のじじいで御座いますが、ワシが答えられる事なら何でも答えます」

 むむ、一人称がワシとはこ奴出来るな。


「ワシはリヒトガルド帝国第二皇女フェリシダスじゃ。早速じゃがレオンハルト=イエーガーについてどう思うか忌憚ない感想を聞かせてくれ」

「我々の食料を取り返してくれたと聞いております。有り難い事です。来年は何人生き残れるかと心配しておりましたです。はい」

 それはそれは嬉しそうに語る爺さんだ。

 聞いていた通りにオリンポスが取り上げた食料をすぐに国民に配ったのか。なかなか素早くて良い。


「それから来年は税を免除してくれるそうですし、余分に出来た分は買い上げて頂けるそうです。それにたくさん収穫できる手段を教えて頂けるそうです。もう夢みたいでもう・・・」


「そうか、なかなか善行をしているようだな。アデライーデ、そうは思わぬか?」

「はあ、それは素晴らしい事と思いますが・・・」

 ワシはハイテンションで後ろに控えるアデライーデに聞いたのだが、いかにも歯切れが悪い。なぜじゃ、レオンはこんなに素晴らしい仕事をしておるのに。


「フェリ様、あんた色眼鏡で見すぎ。まだ食料配っただけだろう。あいつとの結婚が出て来てから、舞い上がってるから」

 ウェルバルがとんでもないことを言って来る。ワシが冷静さを欠いておると言いたいのか?


「ウェルバル、ワシが燥いでおるとでも言いたいのか?」

「だって、そうでしょう。まだやってもいないことを評価してどうすんですか?レオンとの同盟には帝国の未来も掛かってると言うのに」

 ウェルバルは腕を組んで言い放った。こいつの無礼は昔からだが、歯に衣を着せぬ言い方でわしを諫めてくれる。だからいつも傍に置いておるのじゃが、こいつがこう言うからはそうなのじゃろう。ワシは少し暴走して居ったようじゃ。


「済まぬ、ちょっと調子に乗って居ったようじゃ。村長、その話は誰から聞いたのじゃ?」

「はい、レオンハルト様からのお達しは、女兵士が居たでしょう。彼女らから聞きました」

 そう言えばあの女兵士はどうして?ここに常駐しておるのか?


「村長よ、あの兵士たちはなぜこの村に居るのじゃ?この村の出身なのか?」

「いえ、近くの村の出身ではあるそうですが、この村出身ではありません。彼女達は食料を運んで来て、お達しを伝えるのと、この村の守りを担当してくれています」

 フーム、・・・そうか!アキラが言っておった連絡網や防御機構に関係して居りそうじゃな。後は彼女達に聞いてみるか。


 女兵士の代表を呼んできて貰った。

「ユーゴ伍長であります」

 二十歳そこそこで赤毛のごつい体をした女だ。

「ご苦労、帝国の皇女フェリシダスじゃ。まあ、座ってくれ」

 村長が居た場所に座らせた。


 伍長が座ると早速質問をした。

「お主たちは何の為にここに居る?」

「はい、村の治安を守る為です。それと中央からの連絡を繋げる仕事をしています」

 なかなかはっきりと話せる奴じゃ。


「中央からの連絡とはどうするのじゃ。他の村も同じなのか」

「はあ、二日に一度ハーヴェル城に行って連絡を受けます。それを村に伝えます。他の村も同じだと思いますが、一日で往復出来ない所は近い村が連絡所になって、そこに行って連絡を受けます。連絡は詳しく書いた紙を貰えますので、伝え間違いはないと思います。

 こちらからの連絡はその時にします」

 うむ、帝国では各市が連絡所の役割をやっておるがそこに行くのに数日かかる村が多い、結構迅速な連絡手段と言えよう。


「あ、そうじゃ。お前達は近くの村の出身じゃと聞く、なぜじゃ」

 ユーゴ伍長はちょっと言いづらそうじゃが。

「それは土地勘が必要なのとその村出身だとひいきが起きるそうでして・・・それと結婚のためです」


 よくよく聞いてみると女兵士は、兵士になって十年ぐらい務めた後、溜めた金を持参金にして嫁ぐそうだ。逆に言えば、持参金が無いとなかなか結婚も出来ないそうだ。駐屯先で結婚相手を探すと言う事か。違う村に行くのは血を濃くしない配慮もあるのだそうだ。


 ワシ達は村を見学した後ハーヴェル城に戻った。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はヴァイヤールでの話し合いが始まります。レオンは無事同盟を結べるのか?乞うご期待。

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