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10-3 久しぶりの実家

ご愛読、ありがとうございます。

今回はレオンとコトネがレオンの獣人差別の激しい実家を訪れます。

 帝国と同盟を結ぶために帝城を訪れたレオン達。皇帝はフェリを視察に出して上手くいったらフェリを嫁に出すと言う。視察にハーヴェル城に来たフェリ、聖金字教会を経てヴァイヤールに向かうレオン。


 ハーヴェル城が大きく見えた時点で、城の前の広場には千名を超える兵が整列しているのが見えた。

「あれは何ですか?」

 フェリがレオンの方にを振り向いた。

「あなたを迎えるためにこの城に常駐している兵が挨拶に来ています」

 平然と答えるレオン。


 そうか従者通信で私の来訪を伝えたのか。フェリは従者通信に恐ろしさを覚えた。

「痛いのだ。フェリ殿、羽根をむしるのは堪忍してくれ」

「お、トリが喋った」

 フェリはノルンとウェルバルの言葉に驚いて、手元を見ると巨大な鳥の羽根が握られていた。

「あ、ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって・・・」


 羽根を元に戻そうとしたが戻る訳もなく、やがて崩れるように消えてしまった。

「消えちゃった」

「ノルンの体は魔素と霊素から出来てるから、体を離れると霧散しちゃうんだ」

 レオンが説明してくれたが、冷静さを失ってしまったことを悟られて恥ずかしがるフェリであった。


 城に着いてアキラとフィリップを紹介するとレオンは聖金字教会に飛ぶと言う。

「済まないな。教会の様子を確認したら、ヴァイヤールに行くから帰るのは明後日になると思う。そうしたら視察に付き合うから。」

 フェリはレオン達を見送った。



 聖金字教会本部

 出迎えてくれたヤヌウニとアルテミス達約三十名に挨拶をする。

「出迎え、ご苦労様。レオンハルト=イエーガーです」

 ついこの間までの敵地に降り立ったレオンは警戒しながら教会に入った。

 アンナが居ないので不意打ちに注意しないといけなかったのだ。


 建国の主旨とか要望等はヤヌウニがすでに伝えているので、今回は顔見世が主な仕事だ。

 今は何処も軍による統制を行っているが、ここは宗教家がやっている。そちらからは早く政治体制、自治体制を作れと突き上げを食らっているが暫くはこのままだ。あくまで大災厄を乗り切るのが第一義なのだ。


 ただ聖女、聖女候補生がオリンポスの戦いで殆ど死んでしまっているので、アキラに回復ポーションの増産を言っておいた。


 新しい領地の中では聖金字教会が一番安定していたので、早速ヴァイヤールに行くことにする。


 ヴァイヤール王国 <レオン>

 ヴァイヤール王国の王都の近くの人目のない草原に降りると、ハーヴェル城に在った小型の箱型馬車を出した。流石にあのぼろ馬車では、身分に合わなくなったからだ。


 馬車をノルンに引いて貰って、イエーガー伯爵家を俺とコトネが訪れた時には、もう日が暮れかけていた。幸い俺の顔を門番が覚えてくれており、抵抗なく門を潜ることが出来た。


 玄関を入るとヨハンもゲルダもいなかったので近くに居たメイドを呼んだ。

「三男のレオンハルトだ。ルーカス兄上は御在宅か?」

 ヨハンは執事、ゲルダはメイド長、ルーカスはイエーガー家の長男で王太子のブレインの一人だ。

「ルーカス様はおいでになりますが、アポはありますか?」

「帝国からやって来たばかりなのでアポはない。お目にかかりたいとお伝えしてくれ」

 お供のコトネをジッと見て居る。獣人が珍しいのだろう。


 あ、そうか。ここは獣人差別をしているのだった。

 コトネを見ると視線を送るメイドを見返している。彼女も大概な人たちと会ってきたから、こんな小娘の視線でビビるはずもない。一年前とは違うのだ。


 メイドはため息を吐くと奥に歩いて行った。

「少々お待ちください」ぐらい言えんのか。まったく、この家は未だにミソッカス扱いかよ。

 そのうちダダダっと走ってくる音が聞こえる。


「なんだ帰ってくるなら先に知らせろよ。・・でも冬期休暇にしては早いな」

 一年ぶりのルーカス兄上だ。

「はい、今日参ったのは公務です」

「公務?帝国に職を得たのか?」

 胸の勲章をじっと見る。


「落ち着いて話したいのですが、よろしいでしょうか」

「あ、ああ、すまん。こちらに来てくれ」

 俺は玄関ホールでは話し合えないと応接室に移動させた。


 椅子に座ると兄上は早速聞いて来た。

「どう言う用だ?」

「はい、陛下か、王太子殿下のアポを取りたいのです」

「へ!?」


 メイドが紅茶を持って来て、俺と兄上の前に置いた。

「彼女の分もお願いします」

 メイドに吐き捨てるように言う。

「用意しろ!」

 メイドは兄上に言われて戻って行った。


「全く奴らと来たら、・・・」

 兄上は呆れるように言った。


「理由を聞かせて貰えるか?」

「はい、私はハーヴェル諸国連合、エドゥアルト王国、聖金字教国を統合してアルカディア王国を建国します」

「は?」

 俺はここ数カ月の事を兄上に説明した。


「にわかには信じられん。それで陛下に会いたいという理由は?」

「まず、建国を認めてもらいたいこと。そのうえで大災厄を見据えた同盟を結びたいのです」

「ばかな!お前が建国したことが信じられん」

「それは解ります。しかし、帝国はもう第一夫人候補として第二皇女をハーヴェル城に出してきています」

「そんな・・・・」

 兄上はかなり動揺している。ヴァイヤール王国は国外の情報収集をあまりしていない様だ。父上ならそんなことはないと信じたいが。


 そこでふと思い当たる。そうかヴァイヤール王国の密偵達の知らせが届くのは早くて二日後、まあ三日は掛かるか。自分のつもりで考えていたよ。兄上たちにはノルンはいないのだ。


「済みません。あわてて取り乱しました。三日後にまた来ます。その頃には知らせも入るでしょう」

 コトネを残していっても仕方ないので、連れて帰ろう。

「そ、そうか。でもこの家に泊まって行けばどうだ?、それに明日か明後日には父上も帰ってくるぞ」

 その時メイドが来て、コトネの前にガチャンと音を立てて紅茶を置いた。


「このようなメイドの居る家に、コトネを置いておくわけには行きません。コトネはこれでも帝国では品位を持ち、皇帝陛下に勲章を貰った英雄なんです」

「すまん、三日後までに教育して置く」


 ルーカスはレオンの話の中に獣人が多く居たことで、もし、レオンが国王になるならこの家の獣人差別を一掃しないと大変なことになりそうだと言う事は解った。


「レオン、その帝国まで数時間で行けると言う鳥を見せてくれないか?」

 俺は話の中でノルンと従者通信の事を明かした。そうじゃないと信じて貰えないからね。

「はい、では外に出てください」


 外に出て、俺の馬車に案内した。

 暗闇の中、窓の明かりでそこだけ明るい。

「で、どこにいるのだ」

「この馬がそうです」

 俺はノルンを軛から離す。


「ただの馬ではないのか?」

「ノルン、黒鷲に変身だ。あまり大きくなるなよ。ここは街中だからな」

 俺がそう言うとノルンは馬から鳥に変身する。

 ノルンは三m程の大きさの黒鷲に変身した。

「良し馬に戻ってくれ」

 俺は人に見られないようにすぐに元に戻す。

 どうだ凄いだろう。ちょっと驚いた顔の兄上を見て気分が上る。


「ふむ、お前凄いな」

 兄上が感心してくれるなんて凄く嬉しい。


「レオン様!」

 コトネの声が聞えた瞬間、脇腹に衝撃が。

「ウォッ!」

「お兄ちゃん!リーナに会わずに帰るつもりだったでしょう」

 妹のリーナだった。彼女はコトネとアンナの間の歳で、来年初等部に入学するはずだ。


「リーナどこに行ったの・・レオン?」

 姉のレナまで現れた。

「姉さん、結婚したんじゃなかった。まだここに居たの?」

「そうなんだけど、大災厄が終わってからにしようって事になったのよ」

「そうなんだ。生き残れるか分かんないもんね。じゃあ、ニコ兄もそうなの?」

「兄さんは結婚したよ。公爵になったよ。兄さんは赤ちゃんが出来ても戦えるでしょう」

 そう言う事か。姉さんが妊娠したら戦えなくなるからか。世知辛いねえ。


「そういや、リーナは魔法に目覚めたのか?」

「まだだよ。コトネさんは?」

「私はビーストグローと言う魔法に覚醒しました」

 姉さんとリーナとコトネは魔法の話で盛り上がっている。


「母さんとは会わないのか?」

 兄さんが痛い所を突く。

「いや、コトネを拒否されたらどうしようと思うと会えないよ」

「そうか、コトネちゃんはどうするつもりだ」

「成人したら嫁にするつもりだ」

 アルカディア王国では獣人に完全平等な人権を渡すつもりだ。これは兄さんには話した。


「今、嫁候補は第二皇女とコトネちゃんだけか?」

「そうだけど。ヴァイヤールと同盟を結べたらエリーゼ様も候補にするよ」

「結べなかったら怖いな」

「ハハハ、そうだな」


 兄さんは上を、星空を眺めた。

「まさか、お前が王となるとはな・・」

「まだ即位はしてないよ。帝国と同盟が結べたら即位するつもりだけどな」

「皇帝陛下はお前に期待しているようだな」

「うん、今帝国は軍事力が落ちてるからね」

 帝国は文官の軍備縮小のせいで最盛期の四分の一にまで落ち込んでいるのだ。


「バルドゥール王国では帝国分解の危機まで行ったのだったな」

「属国を守れないと分かったら、属国が離れて行くからね。そうなると帝国の財源は半減する」

「危ない所をお前が救ったわけか」

「一番強いレベル6を倒したのはコトネだけどね。あいつはもうレベル7位の力がある」

 兄さんはびっくりして俺の顔を睨む。


「お前達は一体どうなってるんだ」

「俺の力と言うのは、どうも努力すれば努力するだけ報われる力だと思う」

「そうか、おまえ勉強も一番だったもんな」

 兄さんは納得したようだ。ヨシムネ先生が俺に目を掛けてくれたのは、この力があったからだと思う。


「それで父さんとの対決はどうするつもりだ」

「もう、外で生きる道を見つけたからなあ。今更ヴァイヤールに戻れとは言わないだろう」

「まあ、そうだとは思うが父さんだからなあ」

「やめてよ。俺だって父さんは怖いんだからね」

 俺は父さんが変なことを思い付かないように願うのだった。


 俺達は三日後の再会を約して王都外に出た。人気のない草原に家を建てて、その日はそこで眠ることにした。


 収納庫に入れてあった豆のスープを温めて、硬いパンで遅い夕食を取った。


 残り火で湯を沸かして体を拭く。

 素っ裸になったコトネが近付いて来る。


「レオン様」

 潤んだ瞳で俺に寄り掛かるコトネ。


 二つの膨らみは強力にコトネの存在を主張する。


 俺も思春期の真っ只中の男の子だ。しかも憎く思っていない彼女に抱き着かれて興奮しない訳が無い。


 しかし、俺の自制心も努力をすれば、それは報われる。


 両手を伸ばして彼女を引き剥がした。


「コトネ、俺はお前が好きだ。お前が成人したら結婚しよう。それまでは我慢してくれ」


「レオン様・・・」


 コトネはレオンと二人になると一つになりたい衝動が止められなくなる。成人前に妊娠すると母子共に危険な可能性が高くなる。それは解っている。

 我慢できずにレオンに迫って申し訳ないとは思うが、本能が命じるのだ。

 コトネはかろうじて我慢して、パジャマに着替えると女性用の寝室に入るのだった。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はフェリの視察日記の予定です。

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