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10-2 帝国会議(2)

ご愛読、ありがとうございます。

今回は前回の続きです。

 三か国を平定したレオン達は帝国に報告に来ていた。連絡用に従者を残すと言うと視察にフェリを出すと皇帝が言い出した。


 帝城 皇帝執務室 <フェリ>(10-1の続きです)

「私が統治状態の視察に行くのですか?」

「レオン君は家族同然の従者をここに置いておくと言ってるんだぞ。我らもそれに答えねばならん。お前の視察の結果によって派遣する顧問を選出しよう。どうだ」

 どうしよう。偉そうなことを言っているが、私は一人で仕事をしたことが無い。しかも頼りにすべきルシーダは冬季休暇で里帰り中である。どうしよう・・・不安だ。


「私では経験不足ですよね。レオンも私が視察では不安ではないですか?」

 レオン!、断れ!断るのじゃあー!!私は心の中で吠えた。


「フェリシダス様なら適役ですね。私自身でご案内します」

 馬鹿者ぉー!!たわけぇー!!何を言うのじゃああ!!涙がチョチョ切れるわあ。

 もちろん面には出しておらぬぞ。念のため。


「左様か。それは有り難いな。しかしこれが夫婦での最初の仕事になるとは感慨深い」

 ボン!と頭が破裂するかと思った。いうに事欠いて夫婦って、この親父ぃ。


「陛下、お戯れをフェリ様も困っておいでです」

 レオンまでワシをからかうのか。後で見ておれ。


「いや、朕はこのままレオンが即位できる様なら、フェリを嫁がせても良いと思っておる。それとも他に第一夫人候補は居るのかな?」

 ホントに!ほんとにレオンと結婚できるの。それなら皇帝に成れなくても・・・。


「そうおっしゃっていただけて光栄です。もちろんフェリ様を頂けるなら第一夫人にいたします」

 おお、レオンがワシを受け入れると言っておる。身分の差があったから諦めていたのに。いかん、泣いてしまいそうだ。


「陛下、その役目、たしかに引き受けました」

 そう言うとようやく心の中で暴れていたもう一人の私が静かになった。


「ところで、ここに従者を置くのはどうしてですか?」

 宰相が聞くが従者をここに置いてどう使うのかと言う事だろう。

「週に一回とか日時を決めて、進行具合を従者通信で話し合うとか、緊急の連絡が有るときとかに使って頂ければよいかと思います」


「それなら我が国の承認が早くなるということか」

 普通にやれば一回の連絡に1~2カ月かかるのだから、承認にも年単位で時間が掛かる。普段ならそれで良いのだが、大災厄の迫る今は拙速に過ぎるのだ。

「分かった。この後またあちらに行くのかな」

「はい、ハーヴェル城と金字教会、明日はヴァイヤール王国に行くつもりです」


「ヴァイヤールには同じことを頼むつもりか?」

 陛下の顔が少し強張ったような。

「ヴァイヤールには同盟だけですね。政治形態が違うので、顧問の派遣は求めません」


「レオン殿、ヴァイヤールには行かない方が良いかも知れん。きっとエドゥアルト王国を返せと言って来るだろう」

 え、なぜ。宰相、何を言ってるの。


「ヴァイヤールにエドゥアルト王国の権利はないはず」

 思わず言っちゃった。


「フローラ様ですね」

「左様じゃ。ヴァイヤールの王女はエドゥアルト王国の王に嫁いでいた」

 そうか、王が亡くなって、跡継ぎが幼い時に王妃様が即位するってよくあるわね。


「しかし、跡継ぎを産んだわけでも、取り返すために兵を挙げた訳でも、侵略に正式に抗議した訳でもないですよね」

「それでもねじ込んで来るのが貴族と言う者じゃ」

「まあ、無理をいうなら引き上げるだけです]

 そうなのかな?漠然とした不安を感じる、行かない方が良いのではないのか?


「ヴァイヤールが大災厄の対策に協力しない時には、見捨てるだけです」

 レオンはこともなげにそう言った。親兄妹の居る国をそんなに簡単に見捨てるのだろうか?

「お前の家族が居る国を見捨てると言うのか?」

 陛下が私の疑問を聞いてくれた。


「そうですね。もう自分はアリストス学園に入学した時から、イエーガー家のお世話にはなっていません。自分の理想を貫けないならそれも仕方ないですね。でもイエーガー家を潰すことはヴァイヤール王家には出来ませんから心配いらないですよ」

 確か、父親が伯爵で軍の重鎮、嫡男が王太子の側近、次男がレベル7で王女、長女が爆轟の魔女を母親から継いで王子と結婚して公爵になって、軍に居るはず。こんなの王家以外は逆らえないよね。


 でもでも、たしかレオンがイエーガー家を飛び出すには、父親と戦って勝つ必要があったんじゃ?そうなったら勝てるの?相手は首狩りの異名を持つレベル7の次男より強いと噂される男だよ。レオンどうすんの?


「レオン、ヴァイヤールには私も連れて行きなさい。帝国の威信を持って解決します」

 ちょっと、私はそう言うキャラじゃないって。

「まあまあ、姫様。まだヴァイヤールがごねるとは決まっていません。無理をなさって人質に取られでもすれば大変です」

「その時は私は自害いたします。私の屍を乗り越えて進むのです」

 あわわ、止まらない。どうしよう。


「フェリ!いい加減になさい!お前がヴァイヤールに行くことは許可しない。解ったな」

「・・・はい」

 あーあ、陛下に怒られちゃったよ。ちょっと調子に乗り過ぎちゃったよ。

 でもレオンは冷静だよな。家族と戦うかもって言われてるのに。家族を信用してるのかな。


「ヴァイヤールの件はその場で臨機応変にやって頂くとして、ヴァイヤールと違う政治形態と申されましたな。どういう形態をとられるおつもりかな」

 宰相の問いにレオンは堂々と答える。こいつ、いつの間にか大きくなったものよ。

「まずは中央集権制でやるつもりです。つまり基本的には帝国と同じで貴族を作りません」


「まずはと言う事はその後も考えてあると言う事ですな」

「はい、大災厄をうまく乗り切れましたら、国民全員に初等教育を義務化して、国民総選挙での議会民主制を取りたいと思っております」


「はて、議会民主制とな。それはどのようなものかな」

 政治形態の話になると宰相が食いついた。私はあまり興味がない。

「国民が選んだ議員が法を作ります。議員には任期が決められていますから、役に立たなかったり、悪法を作った物は次に議員を選ぶ時に国民が駄目を出す訳です」


「なるほど、立法を司るのが議会と言う訳じゃな。では司法と行政はどうする」

「司法は専門の教育を受けた裁判官を育てます。行政は私が元気な内は私がやります」

「国民が自分のための政治を議員にやらせるのが民主主義と言う奴か。国民が愚かでは成り立たん制度じゃのう」


 え、国民が愚かだと駄目なの。訳わかんない。

「レオン、国民が愚かじゃ駄目ってどういうこと」

「例えば、議員にしてくれたら税金を無くします。って国民に約束した議員が選ばれるとどうなるか?」

「税金が無くなったら、何も出来ないわ。政府も軍も動かなくなるわ」

「そうだね。だから税金を無くすと自分達が守って貰えなくなるのを、国民が解ってないと駄目なんだ」


 そうか、それを初等学校で教えるのね。耳障りの良い約束ばかり言う奴を選んじゃいけないんだ。ちゃんとそれどうなるのかを考えないと駄目なんだ。

「レオン、面白いよ。その話。でもどうしてそんなことを知ってるの。レオンが考えたんじゃないでしょ」

「私の仲間には上の異世界から落ちて来た人が居ます。その人に教えて頂いたのです」


 異世界から落ちてきた人って、聞いたことがあるわ。魔人は少し下の異世界に居るから来たり返ったりできるけど、上の異世界から落ちてきた人は帰れないって・・・。


「上の異世界とはどんな世界なのだ?」

 今度は陛下が飛びついた。私も興味があるわ。

「ここいらに落ちる人は日本と言う国から落ちるそうです。凄く文明の進んだ世界ですが、魔力も霊力もありません。特に科学は凄まじいものがあるそうです。数百人を乗せた空飛ぶ機械が時速千kmで地球狭しと飛び回り。船は三十万tを一回に運ぶし、魔動車のような物が個人持ちで走り回り、高さ百mを超える巨大な建物が林立しているそうです」


「しかし、魔法が無いなら怖くはないだろう」

「日本と言う国は広さは西大陸の十分の一ぐらいですが、爆轟魔法以上の威力を持つ爆弾を空から降らせる戦闘爆撃機が数百機あるそうです。兵隊は剣や槍を持たず銃を持ちます。その銃は三百m離れた敵を殺せるそうです」

「そんな、では日本人が攻めてきたら帝国は勝てないではないか」

 そんな日本人が近くに居るの。怖いわ。


「心配は無用です。彼らは数人しかいませんし、兵器を作るには専門の知識を持った者が数百人必要だそうです。ましてや作る材料もないそうです。彼らは帰れませんからここで平和に暮らせることを考えています」

「ならいいが」

 陛下は少し安心したようです。


 話が飛び過ぎて良く解らなくなってきたわ。陛下、宰相、私が興味あることをそれぞれ聞くもんだから話が飛ぶのね。


「では後はフェリ様の報告を聞いて下さい。従者はアンナを置いていきます」

「ジークが泣くわね」

 弟のジークはコトネに惚れているので、こちらに残るのがアンナちゃんでがっかりするだろう。


「ちょっと待て、昼飯を食っていくが良い」

 陛下が呼び止めたので、お昼を食べてからハーヴェル城に向かうことになった。

 そこでもレオンの話を強請って騒がしかった。


 ノルンの上 <フェリ>

 ハーヴェル城に向かってノルンは飛び立った。この受肉精霊は先ほどまでは叔父さんの格好をしていたのに今は巨大な黒鷲に変身している。


 前にオリンポスから逃げる時に乗った時は、むき出しの背中に乗ったから怖かったが、今回は透明の壁が私達の周りにあるので、風も当たらないし、転げ落ちる心配もない。真冬でも何も寒くない。


 今回乗っているのはレオン、コトネ、私、アデライーデ、ウェルバルだ。

 アデライーデは女性の近衛兵で、今回は期限を切らない視察なので女性の近衛兵が必要になったと言う事だ。ウェルバルはレベル4の近衛兵で私専属だ。


 二人は初めてノルンの背中に乗るので、ビビッてノルンの背中に張られたロープにしがみ付いている。

 アデライーデに至っては何か小声で呪文を唱え続けている。


 後ろを振り返るとすごい速さで帝都が離れていく。レオンに後で聞いたら、前の時は私の為にゆっくり飛んでくれていたそうだ。


 高度が高くなるにつれて耳が痛くなる。

「レオン、耳が痛い。どうすれば良い?」

「鼻を詰まんで、口を閉じで息を口の中に吐き出してください。口の中の圧力が高くなって、耳から息が出れば治ります。あ、ゆっくりやって下さいね」

 高く上がると空気が薄くなり、鼓膜の中の空気の圧力は高いままなので、鼓膜が外に引っ張られて痛いそうだ。


 一時間もしないうちにハーヴェル城が見えて来た。高度下がるとまた耳が痛くなってきた。

 もう一度耳の空気を抜いた。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はフェリの視察日記の予定です。

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