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9-6 エドゥアルト王国へ

ご愛読、ありがとうございます。

今回は急遽エドゥアルト王国に向かうレオン達とそれを迎え撃つオリンポスです。

 ヘラクレス達を倒してハーヴェル諸国連合を解放したレオン達は戦後処理に掛かろうとした。


 昼食後、すぐに会議が始まった。

「まず治安維持と国政の安定化を図ります。幸い国軍は協力的です。それとレオン様の戴冠式はいつ頃になるでしょうか」

「そうだな、帝国とヴァイヤール王国の協力が居るだろうから来年の末か再来年の初めごろになると思う」ハーヴェルの問いにアキラが答える。



「戴冠式ってなあに?」

 会議が行われる部屋の片隅でアンナがコトネに聞く。

「レオン様がこの国の王になることを内外に知らせる行事よ」


「お姉ちゃんがお妃様になるの?」

 レオンが王様になったらコトネと結婚する物だとアンナはワクワクしている。


「私は成れないよ。獣人で平民だから」

 コトネはアンナに心配を掛けないように明るくふるまう。


「レオン様は獣人を差別しない国を造ってくれるのじゃないの?」

「私はね、レオン様のそばで死ぬまで面倒を見たいのよ。着替えを用意したり、お茶を淹れたりしたいの。だから結婚はしなくても良いのよ」


「嘘よ!お姉ちゃんはうそを吐いてる」

「言ってたでしょう。帝国とかヴァイヤール王国の協力が居るって、だからお嫁さんにはフェリ様とかエリーゼ様のような王女様が選ばれるのよ」

「嫌よ、嫌、お姉ちゃんはレオン様が好きで好きで仕方ないのになんで我慢ししないといけないの?」

 アンナは涙を零している。日頃大人ぶって喋っているけどまだまだ子供なんだわ、でもアンナの言葉はコトネも少し嬉しかった。



 その時だった。レオンに従者通信が入ってくる。

『レオン殿、大変だ。エドゥアルト王国に出向していた教国軍の兵が引き揚げ始めた』

 通信は聖金字教国に行っているヤヌウニからのものだった。

『どうなると言うのですか?』

『上に居るのはヘスティア一人だ。まともな自治は望めない。急激な治安の悪化や下手をすると内戦が起きるかもしれん』


 レオンはアキラに相談する。

「こちらが安定してからと思っていたのだが仕方ない。レオン君、エドゥアルト王国に行ってヘスティアを排除して欲しい。その後フュルストという男を探してくれ。俺は今日一日はこちらから離れられん。何とかあちらを鎮静化させてくれ」


 なかなか無理難題を言う。エドゥアルト王国には二百名の教国兵が主に治安維持に赴いていた。それをレオン達数人でやれと言っているのだ。しかし、数時間で駆け付けられるのはレオン達しかいない。後は再編中だったエドゥアルト王国軍やフュルストと言う協力者の力次第だ。


 すぐにコトネ、アンナ、ジェリル、クロエ、神狼族娘達を招集してノルンに飛び乗った。

 向こうの状況がブラウニーでは掴み切れないから作戦が立てられない。恐らくヘスティアだけだからジェリルに任せて、後は治安維持に回るつもりだ。


「なあ、レオン、お前が王様になったらアタイ達はどうなるんだ?」

 ジェリルがレオンの横に来て言った。ノルンの背中は空気の壁があって、その中に居れば、前の様にしがみ付いている必要は無くなった。


「そうだな。お前達は愛人にするわけにもいかんから親衛隊でも作るか」

「愛人でも良いけどな。親衛隊って何をするんだ?」

 すっと怖い事をはさんで来る。後ろでノア達が騒ぎ始めた。


「俺や王妃達の護衛だな」

「王妃達って何人貰うつもりだ?」

「最低三人の予定だ」

「そうか、収入が安定するならアタイも男を探すか。でもお前を見てるからレベルがあがっちまうなあ」


「そういやお前、剣が折れたんだろ。どうしたんだ」

「ああ、なんかヘパイストスとか言うおっさんがこれを持たせてくれた」

 背中の大剣を指差した。流石に職人だけあって使える人間には優しいらしい。


「アーレス用に作ったんだってさ」

 そういやアーレスと仲が良かったみたいだったな。

 コニンさんに面倒見て貰うかな。


「男用だと柄が太くないか?」

「ああ、両手で使う分には問題ない」

「ヘスティアはノアに任せるか」

 今のノアならヘスティアに負けることはないだろう。レオンはそう思う。


「それもいいかな」

 ジェリルはもうヘスティアをライバルとは見ていないし、ヘラクレスとの戦いで満足してる自分が居た。


 斜め後ろに居たアンナがジェリルの代わりに横に来た。

「レオン様、お姉ちゃんと結婚しないの?」

 相変わらずアンナは直球だ。


「コトネはまだ成人してないから、結婚するなら成人してからになるな」

「成人までまだ二年もあるんだけど、それまでお姉ちゃんはどうするの?」

 コトネは年が明ければ十三になる。成人は十五歳なのでまだ二年あるのだ。


「まだ構想中になるけど、アンナと共に新しい俺の国の象徴になって貰おうと思っている」

「象徴って?」

 アンナは意味が解っていない様だ。首を傾げて考える仕草は非常に可愛い。


「そうだ、俺の国は獣人や精霊、幻獣などの知性あるものが自由に暮らせる国にしたい。そのためにはそれを象徴するものが要る」

「私達は何をするの?」


「そうだな、お前達の可愛い容姿を生かした広報活動とかかな」

「可愛い、私が可愛い・・・」

 アンナが舞い上がってるのを押しのけてコトネが話し掛けて来た。


「広報活動って何するんですか?」

「マサユキさんがみんなの前で歌って踊ってとか言ってたな。なんかアイドルとかなんとか」

「私達がですか?」

 コトネの焦りがすごい。


「うん、マサユキさんが任せとけって言ってたから任せてる」

「そんな、みんなの前で歌って踊るとか出来ません」

 コトネは泣きそうな顔をしている。


「そんなこと言うなよ。獣人の評判を上げるためなんだからさ。俺も見たいなあ」

「レオン様、私が歌って踊ってるところが見たいの」

 押しのけられていたアンナがコトネの頭を押さえて話し掛けて来た。


「こら!アンナ何すんのよ」

 文句を言うコトネを無視してアンナに答えてやる。

「ああ、見たいぞ。可愛いんだろうな」

「うん、アンナ頑張る」

 フリフリの服を着て歌い踊るアンナとコトネ見ごたえあるぞ。心の中で叫ぶレオンであった。


「ホントにホントに私が歌ってるところを見たいんですか?」

「だから見たいと言ってるじゃん」

 コトネが顔を赤くして蹲った。アンナが上から顔を覗こうとしてまとわりついている。


 そろそろエドゥアルト王国の王城が見えて来た。

 そんな時に従者通信が入って来た。

『レオン殿、そちらの王城のブラウニーからの通信が途絶えた。何か起きてるかも知れない注意してくれ』

『了解』


 レオンは振り返って全員に連絡をする。

「王城の連絡が途絶えたそうだ。皆、気を付けてくれ。取り敢えず広い所に降りて、ビーストグローで変身だ」

「了解」×7(アンナは変身しません)


「アンナ、王城に強そうな奴は居るか?」

 アンナは集中する。まだ一km以上離れているので集中が必要だ。

「ヘスティアと魔法使い、多分デメテルとか言う奴、それにヘラクレス以上に強力なホムンクルスが二人いる」


 ゴクッ、ジェリルの唾を飲み込む音がした。自分がギリギリ勝ったヘラクレス以上と言われて、緊張したのだろう。


 レオンは引き返すべきではないかと思い悩んでいる。今度のホムンクルスは完成体だろう。それが二体も居る。


「レオン様、戦うべきです。この機を逃すとこの国の民は来年春まで生き残れません」

 コトネがレオンの弱気を感じたのか戦闘を選ぶ。


「俺はこの国の民よりお前達の命が大事だ」

 レオンの本音が露呈する。


「馬鹿野郎!!お前は王になるんだろ。王が国民を見捨てちゃ駄目だ。アタイ達はお前の兵隊なんだよ。お前はアタイ達に「死んで来い」って言えば良いんだよ」


「そうですよ。私達の様に獣人の娘に生まれたら、それこそ夢も希望も無いんです。あなたは獣人が差別されない国を造ってくれるんでしょ。そのためになら命だって懸けられます」


「レオン様は私が不幸だと思ってるでしょう。私のような獣人の女の子はそれこそ星の数ほどいるんです。どうか私達の生む子が安心して育てられる国を造って下さい。お願いします」


 ジェリル、ノア、クロエから言われたレオンは自分の甘さを痛感した。自分の野望に共感して手伝ってくれる人たちがいる。ならば少人数を倒せば国が手に入るチャンスと捉えて邁進するのがレオンの道であろう。


「良し、王城の前の広場に降りてビーストグローだ。ノルン頼む」

 王城の前の広場に降り立った。


 アンナはゴロに乗って上空に上がる。


「ビーストグロー!!」×7

 各人の前に魔法陣を用意して魔力を込める。

 腕を回してファイティングポーズを取る。

「変身!!」

 魔法陣が体と重なる。

 コトネは白、クロエは漆黒、神狼族娘は白銀の体毛に包まれる。変身が終了する。


 レオンはノルンを下げて城の広場で相手を待つことにした。

 暫くすると城の大きな扉から四人の男女が現れた。


 金髪イケメンの若い男、長剣、革鎧で武装する。これがアポロンだな。

 黒髪、キリっとした顔の少女、ショートソード、革鎧で武装。アテナか。

 ヘスティアとデメテルは以前あった時と同じだ。


「君がレオンハルト=イエーガーか?アポロンだ。今日は来てもらって感謝する。俺の希望としては君との一騎打ちを希望する」

 アポロンはレオンに向けて挨拶した。


「俺だけで良いのか?それなら好都合だ。無駄に人が死ぬのは見たくない」

 レオンが返事をするとヘスティアが割り込んだ。


「ちょっと待ちな!私はジェリルとやりたい。この野郎、毛むくじゃらになりやがって、強化してるのか?」


 ジェリルはため息を吐いた。

「おまえなあ、もうずいぶんと差が付いてることに気付かないのか?まあ、そっちのお兄さんとレオンが許してくれるのなら強化を解いて相手をしてやってもいいぞ」

「何だとコノヤロー!!馬鹿にしやがって許さねえ!」


 ヘスティアがジェリルに向かって駆け出した。


「ヘスティア!!邪魔をするな!!」

 アポロンが叫んで右手を横に振った。


 ヘスティアの体が上下に分れた。不可視の刃だ。しかもヘスティアのスキンアーマーを破るほどの・・。

 ヘスティアは一言も発することなくこと切れた。


「済まないなレオンハルト君。どうも部下のしつけが悪かったようだ。

 デメテルはやりたいとか言わないよな?」


「当たり前だよ。あんたに会わなきゃ、こんなところに戻る気は無かったさ。ましてやあんな化け物なんかと私は普通の魔法使いなんだよ」

 デメテルは上空でホバリングするアンナを睨んだ。

 どうもオリンポス本部から逃げた先でアポロンに会った様だ。


「邪魔はいなくなった。さあ、やろう。本当は君の父上とやりたかったんだけどね」


「俺が勝ったらエドゥアルト王国から手を引くんだな」


「もちろんだよ」


「もう一つ、俺が負けたら、この娘達を逃がしてやってくれ」


「ああ、とむらい合戦でも仕掛けて来ない限り、手は出さんよ」


「お前達、そう言う事だ。俺が負けたら逃げてくれ。あのアテナって奴もアポロンと同じぐらいの霊力を感じるからな」


 二人はヘスティアの死体を避けて、二十m位の距離を開けて対峙した。

面白かったですか?何かで評価して頂けると参考になります。

この小説は水曜、土曜の0時にアップする予定で書いています。

次回はレオンとアポロンの対決が始まります。

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