俺は、そこらへんにいくらでもいる天才科学者のひとり、かもしれない
その顛末は、こうだ――
俺の小学校はそこかしこにミニブラックホールがあった。最初にえんぴつなど筆記用具がいくつか消えた。次に上靴が片方消えた。そのうち教科書が消えた。暫くしてランドセルが丸ごと消えた。『不思議なこともあるものだ』と他人事のように思っていられたのは、そこまでだった。
体育祭の前日だ、クラス全員分の給食費が、消えた。
それは買いなおした新品のランドセルから出てきた。
何ら犯罪を犯していないにもかかわらずホームルームで断罪され、下手人として職員室に引っ立てられて、俺は冤罪被害者となり、復讐を誓い、悪魔の計画を考えついたのだ。
この惑星の重力を零にする装置の開発。
地球は回転していて人間は地上に住んでいる。
その遠心力を使って、残らず宇宙に放り出す。
人 類 、 滅 亡 。
あの屈辱から、そう。2年ほどたっただろうか──
目の前には、小さな缶コーヒーにしか見えない物体。
もう、できちゃった。
「で……その真犯人と思しき人物を、こんな夜更けに一人で来いと、屋根裏部屋へ呼び出したのね?」
「まぁ、そうなるな」
「どんな仕組みの機械なの?」
「量子力学とか、そういうの」
「へ~ぇ」
幼馴染の陽葵はポーカーフェイスを崩さない。
「もしも、本当にこれが重力を消し去る装置だったら。また、あの呪われた能力を使う時が来た。 ……そう判断するしかないわね」
「どういう意味だ?」
陽葵は鞄を開き、奇妙な魔法陣を取り出した。
「これに見覚えは?」
「いや、知らないな」
「星座早見盤。ここで一緒に見ようって誘ったのに、おふだが貼ってあって怖いからって入らなかった。だから降参するまでアレもコレも隠したのに、結局最後まで気付いてないフリをしたでしょ? だから発想を変えたの、コロンブスの卵よ」
「変えた、どう変えた?」
「消えても無視するなら、無視できないものが増えたらいいんじゃないかって!」
増えると、無視できないモノ。
陽葵は、なにを増やしたんだ?
クラス全員分の給食費──
「随分かわいらしい卵を持ち出してきたが、ゴルディアスの結び目の間違いだろ」
「ゴッル……ァスは、知らんけど」
「ついでに自供したな、なんでまたそんなことを」
「え? ……なんでって、わっかんないのかなぁ」
「想像したくない」
陽葵は「もらうね」と缶コーヒーを、ひとくち消した。
こ の 装 置 も う ダ メ ん な っ た 。
「星とか興味を持ったら、夏祭りに誘ってくれるかも~って?」
「そんなお前に脅威しか感じないけどな」
「……で?」
俺は缶コーヒーを、ひとくち消した。
「夏祭りでミニブラックホールが発生したら大事件だ」
「じゃ、財布の中身は少し消えてもいい。そうよね?」
「これ以上、被害者を増やさないために必要だからな」
陽葵が、また、ひとくち消した。
「……どうして、ここだったの?」
「全てのスタート地点、そんな気がしたからだろうな」