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プロローグ

神秘的な光に包まれた神殿の最深部。

奥の台座から舞い上がるように作られた水晶の彫刻の中に一人の美しい女性が眠っている。

祭壇の横には剣が刺さり、壁に灯された白い炎が刃に反射して揺らめいている。

祭壇には青年が一人、静かに横たわっていた。

白銀の髪に白い肌、そして冷たい美貌。

漆黒の衣装に身を包んだ彼は息の音もなく心臓の音もない。



人間はよく不老不死に憧れるが、長生きすることと永遠に死なないのは訳が違う。

不老不死になった者は周りの者たちを送っていく、あるいは世界が滅んでも死ねずに何もない空間をさ迷い続ける。

それを知らないからこそ、人間はいつの時代も不老不死を求めて躍起になる。

死ねないことがどんなに不幸か…


しかし、彼はそれを身を持って知っている。



100年のあいだ静寂が支配していた神殿に、今日は一筋の光が降り注いだ。

硝子の割れるような音とともに、純白の破片が飛び散る。

そして羽根のように舞い落ちる光の中、青年が目を開けた。

血のように真っ赤な眼はまるで悲しい夢から覚めた後のよう。

100年の眠りから覚めた彼は細く、深い息を吐く。

「…封印が…解けている…?」

確か、魔力を奪われた自分は封印されていたはず。

祭壇から降り、彼は周囲を見回した。

「…っ!?」

途端に、彼は驚きと悲しみのあまり目を見開く。

そして水晶の前に膝をつき、彼は震える手をのばした。

「ルナ…」

水晶の中に眠っているのは彼の恋人だった。


彼は水晶に触れ、溢れ出た涙が頬を伝う。


何度も何度も、彼女の名を呼んだ。



自分を救うために、自ら封印を肩代わりした彼女の名を。




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