1話の裏
表の少し前から始める予定がかなり前からになってしまった想定外の部分。
次の続裏からが元の予定。
どうしてこうなった?
リアルパート過去編です。
俺の名前は四郎。
上から二人目なのになぜ四郎なのか、両親は口をつぐむ。
聞いた時に肩を震わせていた記憶が有るが、今思うと笑いを堪えていた気がするので恐くて逆に聞けなくなった。
俗に言う天下り企業に就職し、数年後に勤務中に事故にあい左腕の肩から下を失った。
給与体系が公務員と同じだった為、生活に・・・生きていくには困らなかった。
詳しくは書かないが。
だが、片腕を失う、と言う事は想像以上のハンデだ。
今まで着ていた服さえ着れない。靴下もだ。
今ではなんとか着れるようになったが、着替えで最低30分は掛かる。
趣味のゲームは片手ではできない物ばかり。
スマホのゲーム位しかやれなくなった。
コンビニに行って買い物するのにもカゴを持ち、物を取る時に床に置いてを繰り返し、財布からカードを出すのも一苦労。
レジ袋?弁当どう入れる?そもそも袋2つ片手で持ったら弁当斜めに・・・
軽い感じに書いたが、ドロドロした物は書きたいとは思わない。
本当に苦労したんだ・・・
ある時に元勤務先から電話があった。
片手で出来る仕事があるんだがやってみないか?と。
正直、暇しか無い生活だったので短時間でも変化が欲しく、話を聞いてみる事にした。
待ち合わせは、病院だった。
と言っても、かなり大きな何かを研究している・・・そう、研究施設のような感じ。
外で電話をくれた元上司と合流し、会議室の様な場所に案内された。
そこで話を聞いたのだが・・・
なぜかプロゲーマーになった・・・
正しくは、新しいVRでのゲームで脳からの信号を、以前に四肢を持っていたが失った状態の信号が同じか違うか、同じ場合、その信号を使っての義肢開発の被検体だ。
だがゲームは基本毎日、義肢のテスト等は週に一回も無いとすれば、ゲームで収入を得る、と言えるだろう。
だからプロゲーマーだ。職業欄に「実験体」と書く気は無い。
そして数本のゲームを渡されて、敷地のすぐ隣のちょっと小綺麗な一軒家に案内された。
通信回線等は病院内から接続され、院内のサーバーで経由時にデータを取られてゲームサーバーと繋がる。
その為、ラグ等が少しでも減るようにとヘッドセット型の安物ではなく、シートタイプの見たことの無い専用の装置が設置されていた。
おまけで病人が院内で着る服で胸にIDカードが入れられる物を渡された。
指定の範囲だけではあるがいつでも自由に院内に出入りしていいとの事。
24hで食堂、売店、自販機等がIDカードで自動清算、給料から自動天引きと言う、着替えてコンビニと言う大変な作業が軽減された。
そして引っ越し等を終えてVRゲームのサービス初日・・・
あれ・・・俺しか居ない?
世間では通信回線のパンクで阿鼻叫喚になっているとニュースで見たが、うちは回線が特別なのか多少カクツクがゲームはできた。
が、MMO等相手が居ないと面白くも無いのでVRアクションゲームで実験を・・・いやデータ取りを始める事となった。
それから数年、回線の緩和等でプレイできるゲームも増え、又脳の信号のデータも腕を失って数年ではほぼ元の信号を維持しているとの結論が出た。
一瞬失業が頭に浮かんだが、幸い特殊なゲームでのデータが長期間欲しい、との事でそのゲームに絞って契約は続く事になった。
そのゲーム、脳の信号ではなく思考でどう動かす、と言う操作方法が今までと違うらしくキャラを動かせるか不安だったが、無い腕を動かしているイメージのお陰ですんなりと動かせた。
そしてクライアントからの要望もあり、人に無い部分を動かせるキャラでそういった部分を動かすデータがなるべく欲しいとの事で猫獣人となった。
なぜ、そんなデータが欲しいか一応聞いてみたが・・・
かなりぼかされたが、義手にギミックって欲しいと思わない?とだけ。
・・・いやそれ軍用じゃね・・・これ以上聞くのはヤバいな・・・
逆になぜ猫か聞かれた。話を反らされたとも言うが、それに乗るのが自分のためだよな。
昔、家で猫を飼っていたから、耳とか尻尾の動きなら他の動物よりデータがある。
まぁ猫好きなんですけどね、と笑って締めた。
ゲームをやり始めて自然と攻略系のギルドに誘われた。
とにかくデータ集めで体を動かす必要がある為に生産系は諦めた。
なのでひたすら戦って戦って暇な時に耳や尻尾を動かす練習・・・
又戦って戦って耳と尻尾動かしてモフられて・・・っておい!
「ごめんなさい、どうしても我慢できずについっ!」
「とりあえず頭撫でながら謝るのはやめないか?」
普通ならハラスメントで通報しても良かったのだが、クライアントの担当者と話した時に、面白い反応のデータが出てるから極力無抵抗でモフられてっ!と・・・
立場的に首を縦にしか振れないのを何ハラと言うんでしたっけ・・・
その後、ほぼ毎日現れるその子は、ギルメンにわりと好評だった。
「いやほらこう言うギルドって女っ気がいや待ってマスター首絞めないでって背中に槍っ!?」ギルマス他数名女性ギルド所属。
「猫撫でている女の子って癒されない?俺もついでに撫でるけど」ヤス、お前もケモナーかっ!
「被害クロさんだけだし」いやそうだけれども・・・
「だからボス戦中にモフられててもヘイトがこっちに来なければ問題無し」いやまってそれ集中して気づいてなかったけど?うわ本当だボス戦の動画確認したら猫獣人の速度に追い付くだけの為に召喚獣のスキルで速度上げて俺モフられてたっ!
そして数ヵ月。
クライアントからまた無茶な要求が来た。
「あ、今度の運営公認のオフ会に強制参加で」
「いやなんでです!?データ関係ないですよね?」
まず、開催場所がこの病院の会合用のホール。
そして少しは名の知れたプレイヤーが来るとなると少しは参加が増えるかもしれない。
「いやでもそれ俺関係ないですよね?」
「え?うちそのソフトのスポンサーだし要望飲んでもらっているから少しは協力しないと」
「めっちゃ関係あった・・・でも俺、こんな身体ですよ?」
「だから対外的にアピールできる面もある。それにそう言った人があと数人来ることになっている」
実験体は他にも居たと言う事か・・・
そしてオフ会当日。
事前に会場入りしたのは俺と同じ境遇の人。
車イスの人も居れば、外見では判らない人も居る。
顔合わせ・・・いや早く到着して待たせているのが面倒になったのかもな。
結局20人程でオフ会は始まった。
ゲーム的に顔バレは社会的に危険だものな・・・
公式オフでもこの程度だよな。
集まれる近隣の人が多いから顔見知り率考えたら普通パスする。
言い忘れていたが、このゲームのプレイヤーは色々な意味で問題があると思われている。
俺に言わせれば、日常生活にその趣味を持ち込まなければただのロールプレイだ。
でもできればキャラ名とかもぼかしておきたいところ。
「では、軽く自己紹介等を。こちらからマイク回しますので・・・あ、パスとかもありで次の人に回しちゃって下さい」
助かった。
順番が来たらすぐ隣に渡してしまおう、と次の人をチラリと見たら・・・
すごい美人の金髪碧眼の外人さんだった・・・
赤いシャツに茶色のベストとロングスカートのセットで纏めている。
髪も綺麗なロングだし・・・
「そないみつめんで?」
急いで目をそらしたがどこの人だ?ってクスクス笑われてる・・・からかわれたか・・・
「ではお願いします」
最初の人・・・も少し背は小さいが黒髪ロングを後ろでまとめた・・・うん、美少女だな。
白いシャツにジーンズと言うラフな格好で・・・
「クロちゃんどこですかっ!」
おい・・・
「今日はクロちゃんをモフりに来ました」
すこし離れた所から、あ、俺もと声が・・・
「クロじゃねえクロニティだっ!お前ユキでそこのっ、お前ギルドのヤスだろっ!」
「ね、猫じゃないとか話が違うっ!」
「話した覚え無いって!」
「あ、無事発見できました。次の方どぞ」
急に冷静モードに切り替わり、マイクを隣に渡して正面を横切って俺の方に近づいてくる。
ありえないリアルファーストコンタクトだった・・・
余談だが、パスする意味が無くなったので適当に喋って美人さんに渡した。
外見とか全く変えてプレイしているので名前は秘密、と言うのをどこかの方言で・・・ギャップがヤバイ萌える・・・
あれ、でもなにか・・・
もしかして・・・
「シルバー、さん?」
小声に出てしまったが対する彼女の反応は、ウインクと人差し指を立てて唇の前、だった。
ユキは実際モフる訳では無く、それでもやたら世話を焼いてくれる。
だがあーんはやりすぎだ・・・勘弁してくれ・・・
色々話す中で、彼女は仕事のストレスを猫カフェに入り浸って発散していたが、去年猫アレルギーを発症。
精神的に持たなくなり仕事を退職。今は昼のバイトで凌いでいるらしい。
このゲームでVRでのアニマルセラピーモドキをやってみる事にした。
だがモブ猫は短時間で逃げてしまう・・・
そこで俺を発見した、と・・・
病みを治す気、無いだろ・・・
アレルギーじゃ無い方の闇な。
「それがどうやって結婚までたどりついたか記憶に無いんですよ」
「そう言ったデータは収集して無いんですが・・・良く言うじゃないですか、事実は小説より奇なりって」
「そこまで俺の事実は酷くはないかと・・・」
病院のスタッフさんも困り顔だが、一応結婚する事になったので報告した。
寮?に入っていて社内?の施設を使わせてもらっているが、ある意味部外者が入ってくるのは可能か、最悪契約終了で追い出されるのか。
「ま、雇用条件はそのままで、奥さんの回線も繋がるように手配・・・IDもあった方が良さそうですが・・・奥さんは自分の服でお願いしますね」
「助かります。それでお願いします」
「あ、奥さんのデータも貰いますがこれは報酬出ませんよ」
く、やはり黒に近い灰色な仕事場だった。
そしてゲーム内での結婚式からリアルの結婚式へと。
片腕の俺が美少女の・・・いや20越えてたから美女・・・ではないなやっぱり美少女の嫁を貰えるとは思っていなかった。
これこそ本当に事実は小説より・・・
「あ、お願いを一つだけ聞いてくれないかな?」
ゲーム内の衣装に似せたウェディングドレスを着たユキ・・・美雪が上目使いに・・・
奇なり!
結局ゲーム内で隠していたリアル情報はこちらでほぼ出されている事実。
名前のくだりから始めたらこの部分が丸々増えたとか。
事実は小説より奇なりだよほんとに。
あれ?小説は小説より奇なりか正しくは?