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兄と妹は譲り合う  作者: 嘘を知らない猫
第1章 堺 美甘とお家騒動
4/4

堺 美甘と分からないこと

誠に誠に申し訳ない。

頑張ってストック用意します。

私は他人に面と向かって心からの褒め言葉を貰ったことがない。

あるのは堺さん悪意を込めた言葉の刃ばかり。私を見る眼は好機の視線はなく、淀んだ悪意または欲望に染まった眼ばかりだった。そういえば一度だけ私に対して悪意のないただ純粋な眼を向けてくれた人がいた気がする…。


「笹田さんはどうして付き人としてお越しになったのですか?柊さんの友達とはいえそこまで無理をなさらなくては良かったのでは?」

「僕は彗也に結構お世話になっているからね。彗也がどうしてもと頼んできたときには断ったりしないよ。それこそ堺さんはどうして?」

「私も沙耶ちゃんに頼み込まれたら断れない仲なので。ほとんど笹田さんと同じです。」


沙耶ちゃんと出会ったのは入学式のときだったかな。あのときはびっくりひたけれど今はしっかり親友やってるよね。


「それでどこか行きたい所とかある?沙耶から聞いてるとは思うけどずっと付いていかなくても良いらしいし、なんなら別行動で良いけど、女子一人にはしない方が良いし。」

「私も特にありません。私はあまり護身術等習っているわけではないので、一緒にいて欲しいところですが。」

「分かった。適当に一緒に回ろうか。」


そう言って笹田さんは歩き出す。私の身長は163ですから笹田さんは180?はあるでしょうか。並んで歩くと兄妹に見られそうです。兄はいますが喋ったことがありません。父も母も私のことは殆ど見てくれませんでしたし、兄に悪影響でも与えると思ったのでしょうか。良く分かりませんが虐待と言われても良い所存だったかもしれませんね…。


「…。堺さんってどうしていつも冷えた瞳をしてるの?何か昔にあった?」

「いえ。特にはありませんでした。強いて言えば家柄が良い方だったので厳しく育てられました。話すようなことでもないですが。あれ、あんなお店ここに在りましたかね?新しいお店でしょうか?行ってみませんか?」

「いいね。そうしよう。」


この人は無駄に鋭いのかもしれません。さすがに柊さんと沙耶ちゃんと堂々と話せる人は違いますね。柊さんはそんなにプレッシャーはないかもしれませんが。

外見は普通ですが、中は結構渋くてモダンな感じで私は結構好きです。

「中々良いお店だね。」


私の顔色を伺っておっしゃったのでしょうか。もしくは好みが似ているのか。後者であれば仲良く出来そうです。 


「はい。そうですね。」

「こちらの席にお座りください。今日のオススメはパンケーキです。」

「あ、じゃあそれとコーヒーをお願いします。堺さんはどうする?」

「じゃあ私もそれとミルクティーで。」

 

――――――――――――


「へー。そうなんだ。すごいね。」

「いえいえ。私もまだまだです。もっと頑張らなくてはなりません。」

「すごいねー」

「絶対思ってないですよね?」

「いやー。思ってるよー」

「思ってないです!」

「んふっふー。可愛いねー」

「…」


さっきからずっとこんな調子で鈴さんは私のことをからかってきます。正直鈴さんと話していると沙耶さんのような楽しさではなく落ち着いた気分になります。 


可愛い。という言葉にも好意が入っていない印象です。妹や娘に向けるソレのような感じです…。


父様が今の私を見たらなんて言うのでしょうか。甘ったれていると言われるのでしょうか…。  

 

「どうしたの?」


今はそんなことを考えるのは鈴さんに失礼に当たるでしょう。父様のことは一度忘れなくては。


「いえ。鈴さんはお兄さん見たいだなー。と思いまして。」

「そう?まあ一人っ子だし可愛い妹は欲しかったかなー。」


むむ。私のことを異性として見ていない人は初めてかもしれません。妹…。ですか。


「で、ミカンは好きな人とかいるの?」

「そうですね…。学年で一番好印象なのは鈴さんですかね?卑猥な目や下衆な目で見てきていませんし、何よりお兄さんみたいで安心します!」

「はっはっは。お兄さんになんでも任せなさい。」

「じゃあ一つ。」

「あなたは鐘森 鈴輝さんですね?」

「?。誰だそれは。」

「知らないふりをしているようですが無駄ですよ。周辺調査から何から何まで私独自に調べました。さすが鐘森といったところでしょうか。この学校にいるとヒントだけ与え見極める。ですが名前はなぜ殆ど変えなかったので?そこまでヒントを与えるようなことはしないと思いますが。」 

「それだけか?」

「…。私の調査ではそれだけです。

「不合格。君は鐘森には向いてない。」


鐘森の人間は特殊類い稀なる才能と人を惹き付ける魅力がある。普通の人間には理解できないオーラを纏っている。そこの時点で第一次審査。ということだ。上流階級の人間であれば誰でもわか…る?


「気付いたか?君は先に合格した四人に一歩及ばない。」

「そういうことでしたか。可笑しいと思いますよ。超上流階級である、柊さんと沙耶さんが気付かないわけないですよね。」

「君にはこれから2つの質問をする。それに対してまあまあな回答をすることができれば要望を叶えてやろう。準備は良いか?」

 

鐘森の考えとしては下であるものはとことん下の資本主義。しかし社員の誰にも不満はない。なぜか。鐘森に付いていけば必ず出世出来るからだ。どんなにグズのような人間であろうとも鐘森グループの会社に所属すれば立派な人間と成れる。


鐘森は人材利用、人材育成のレベルが他のところとは全く違う。また、給料も普通の会社の何倍とある。人材育成の際には社員全員が裏切らないよう釘が刺されるそうだ。


上記のことから分かることは目の前にいる笹田…。いや鐘森 鈴輝に自分の価値を証明しなくてはならない。


「お願いします。」

「第1問、目の前に古い包丁が転がっている。今日丁度一人暮らしを始める。錆びた包丁をどうする?」

「錆びているのであれば磨いで使います。もし柄の部分がボロボロであるならば変えます。」

「なぜ、包丁を拾った?まだ使っていたかもしれないのに。持ち主不明のものを勝手に使うな。この世には著作権がある。もし自社製品がパクリと複製と疑われたらどうする?疑われないかどうか確認するだろう?それと同じでしっかり確認しろ。」

「つ…。はい。」

「第2問、社長が倒れている、これから重要な取引先との取引がある。どうする?」


鐘森は鐘森の人間で成り立つ。鐘森の人間は昔の貴族のように保身に走る。そんなことはない。鐘森の人間は自分の子孫がもっと優秀になると信じているため、自身の命などどうでもよく、取引先を優先する。この場合の正解は…。


「秘書に社長を任せて私が取引先と話します。」

「まあ、及第点。自分が取引するのだという前向きな考えは評価に値する。鐘森の人間だけに頼るのは他者の人間のすること。鐘森グループでは一人一人が社長として頑張っている。」


私としての最大限の回答。これで駄目なら私の力では無理だ。


「まあ。さっきまで一緒に普通に喋ってたしな友達としての権限でギリギリギリギリ合格だ。百点満点の46点位だ。」

「有り難うございます。」


どちらが本当の彼なのだろう?堺 美甘の疑問は真実に呑み込まれうっすらと消えていった…。

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