42:ビースティア到着
・・・この子たちもしかして異母兄弟だったりして。
「兄者も相変わらず趣味が悪い。立派な黒狼の特徴を受け継いでいるのに魔法で隠すから自己紹介すると皆こうも戸惑うのだ。」
「えぇ~だってこっちの方が人気じゃん?僕可愛がられるの好きだし?」
「はぁ~”僕”ね・・・まぁ、こういう人なんだ。悪く思わないでくれ。」
ふ~ん、キャラが濃いわねぇ。
なんでこう・・・もっとキャラが薄い子とかいないのかしら。
「そこの兄弟、ちょっとどいてくれない?俺はカエデ、隠密兼トラップハンター。よろしくねエカテリーナさん。」
キツネの獣人の子がそう言いなんか紙を差し出してきた。
「・・・?」
「”あの人”からのお返事です。初めて聞きましたよ?あんな嬉しそうな声。」
私だけに聞こえるようにつぶやいたキツネの獣人、カエデはあっち側の獣人なのね。
あいつも仕事が早い。
「ありがとうね。頼りにしてるわ。」
「仰せのままに。」
カエデが下がると違う子が私に近づいてきた。
「私はシャネク、治癒師を担当している。」
そう言い私の返事を待たないで下がった。
「エカテリーナさん悪く思わないでください。シャネクは恥ずかしがり屋なんです。蛇の獣人だから人と触れ合うのが苦手のようで。」
「仕方がないわ。信頼できるなら私はそれだけでいいわ。」
「っふ。あのお方と同じことを言うんですね。」
言ってたか?あいつが私の言ったことを自分が言ったように言ってる姿が目に浮かぶんだけど。
視線を感じると思って見回しているとリロイがじーっとこちらを見ていたので話を切り替えて出発した。
それから数日、野宿したり、魔物を狩ったり、料理したりしておしゃべりしたりしてやっとビースティアについた。
数年前来た時より門が綺麗になっている。
「だいぶ綺麗になったわね。」
「お母さんビースティアに来たことあるの?」
「昔ね。結婚する前と結婚してた時に何回か来たわよ。」
懐かしいな。
最後に来たのが離婚する2年前だったような気がする。
あの頃もあの人に「よくこんな長い間我慢できたものだ。私だったらやるべきことをやってすぐに離婚してたぞ。」と言ってたな。
それからしばらく入国の列に並んで数十分後入国ができた。
私が行くべき場所は決まっていたからそこでギルドに用事がある息子とカエデ以外のメンバーとで別行動になった。
「カエデ、あの人の所に案内して頂戴。」
「承知しました。」
カエデにしばらくついて行くと大きな門の前に止まった。
門番にカエデが手紙を入れると「旦那様のお客様ですか。確かにこれは旦那様が使う刻印ですね。はい、どうぞお入りください。」と言い私とカエデを迎え入れた。
「ここから移転を使うので手をお貸しください。」
そう言いカエデが手を差し出してきた、その手の上に私の手を軽くのせると風景が変わりいつの間にか屋敷の中に入っていた。
目の前にはライオンの頭がついてる大男。
いつ見ても顔には出さないけど内心叫びたいぐらいびっくりしてる。
「あんた相変わらずキメラみたいな顔してるわね・・・」
「何言ってるんだ。お前も人族みたいな顔しやがって・・・」
この頭がライオンの男、学生時代仲良くしてた友人の一人で今このビースティアの宰相をしているライレックだ。
昔から口が悪くて頑なに私を人族だと認めていない。彼は初対面の時に「こんないい匂いがする奴は初めてだ。本当に人族か?いや、違うだろ。」とか言っていた変態だ。
これが宰相なんて世も末だと思っていたけど案外人気が高い獣人になっている。
真っ赤なソファーに腰を下ろして出された紅茶を飲みながら久しぶりに会う友人と雑談をするのって楽しい。
「ところで、あのボンクラと離婚したってホントか?」
「まぁ、知ってるの?あんたそういうの興味なさそうじゃない。」
「お前のことだなんかやらかしてくれるかと期待してたんだが・・・次の跡取りを優秀に育てたな。」
「あの家に生まれた子供に罪はないのよ。私がそういうのをしっかり叩き込まないと元旦那と他の夫人みたいになっちゃうでしょ。」
甘めの紅茶を飲みながらライレックを見る。
器用に紅茶飲んでるわね・・・体が大きいからか紅茶のカップがおもちゃに見えてしまってちょっと面白い。
にしてもライオンのくせにこのアツアツの紅茶を真顔で飲めるなんて・・・猫舌じゃないのか。
「それで、お前は何日ぐらい滞在するんだ?」
「そうねぇ。分からないわ。気が済むまでかしら?」
「そうか。じゃあ俺の持ってる別宅使うか?」
「・・・怪しいわね。あんた、そんなに気前がいい獣人じゃないでしょ。」
「っち。ばれたか。まぁ、いい。実は息子がいるんだがそいつに魔法を教える代わりに別宅を貸そうと思ったんだが。・・・バレたなら仕方がない、給料も押し付けるぞ。」
・・・押し付けるって。ハイはyesかって聞かれてるのと同じじゃないか。
「いいわよ。昔のよしみで教えられることは教えるわ。それで?息子ってどの子?」
私がそういうとライレックは「入ってこい。」と一言言った。
ドアが開いて出てきたのは豹のような模様が腕と首に薄くついている青年。
「息子のライだ。」
お前の名前半分切ってつけた感じか・・・安易だな。
ライはサッと頭を下げ私の顔を見て帰って行った。
ほかの種族慣れしない獣人がこうも落ち着いているのも珍しいが。初対面で決闘を申し込まない、頭をさげる分礼儀正しい方に入ると思う。
「落ち着いてるわね。あんたとは大違いじゃない。」
未だに覚えてる、二、三言なんか変なこと言ってんなと思ってたらいきなり決闘を申し込んできたこのアホのことを。




