31:お父さんとお母さん
「討伐の依頼なら、魔物の種類や数にもよるのでA級からS級をお勧めします。領主様を訪問するときの護衛はB級かA級がお勧めです。」
正直、リカルド様に会うのに護衛はいらないと思う。元旦那が連れてきた護衛だけで充分だ。
「エカテリーナは、入っていないのか?」
何を言っているんだこのアホは?私は冒険者じゃないぞ。私は日雇い秘書兼護衛だ。
私が心の中で悪態をついていると誰かがドアをノックした。飲み物かな?
「失礼します。お母さんとお父さんが頼んだ紅茶です。」
リロイがトレーにのせた飲み物をコーヒーテーブルに置き部屋から出ると思いきや私の横に座ってきた。
正直、謎だ。いいのか?お前、治癒師の仕事放棄してここに来ていいのか?内心そう思っていたが今は猫をかぶっているので出来ない。
気のせいか微笑んでいるリロイの笑顔が黒い、さすがキースのお兄ちゃん。兄弟そっくりね。
ここにいる人、リュウとリロイ以外は「こいつ、なんでここにいるんだ?」というような顔をしている。しかも、お父さんって。もしかして、リロイも一役買ってるのか?
ここは、リロイの母として聞くべきか?そう思いながらリロイをじーっと見ていると私を見て微笑んでいた。いや、そういう意味じゃない。
「お、お父さんって・・・どういうことだ・・・どういうことなんだ!?エカテリーナは私の妻で・・・私の妻で・・・」
目が血が知っている元旦那は相変わらず気持ち悪かった。その秘書もなぜか悔しそうな顔をしている。元旦那はリュウとリロイを睨んでいるがビックリするほど怖くなかった。
「侯爵様、リストから選んでください。」
元旦那の顔はできたら長い間見たくない。こんな時間見てたら運気が下がりそうだ。
「私のお勧めはこのパーティーですね。このパーティーでしたらA級とS級の冒険者がいるので、護衛にも討伐にも向いております。」
「で、ではエカテリーナも共に!」
ワタシ、カンケイナイ。
「侯爵様。お母さんは冒険者でもないのですよ?侯爵様も知っているはずですよね?冒険者以外は雇うことができないということを。」
「な、なら特別依頼をする!金ならいくらでも払う!」
特別依頼か・・・確かに依頼はできるな。あれ?でも、待てよ?私定年退職したから受けれないのでは?
「ホントに残念ですわ。私、つい最近定年退職したばかりなのですよ。もう年だから、どんな依頼も受けられないですわ。残念ですわねぇ?」
早めに定年退職しておいてよかった。もし今も仕事してたら絶対に特別依頼受けることになる。
私の安心した表情がイラついたのか元旦那はいきなり騒ぎ出した。
「そ、そんな!私は・・・私はエカテリーナと会うためにここまで来たのに!理不尽だ!なぜ他人にのお前たちがエカテリーナと隣にいるんだ!私がそこにいるはずなんだ!そこは私の場所だ!どけ!エカテリーナを私に返せ!」
「侯爵様!落ち着いてください!」
こうなれば秘書も止めに入るようだ。リロイとリュウは私を守るように前に立ち元旦那と秘書と向かい合うように立っていた。
「エカテリーナは・・・私の妻で・・・許さない!エカテリーナは私と侯爵家に帰るんだ!そこがエカテリーナのいるべき場所なんだ!エカテリーナ帰ろう。お願いだ。私と侯爵家に帰ってきてくれ!侯爵家はエカテリーナがいないと駄目なんだ・・・今度こそは・・・今度こそは全部治す。エカテリーナの好みの男になるように頑張らるからお願いだ・・・」
じりじりこちらに詰め寄りながら呟いている元旦那の顔は涙で塗れていたがビックリするほど何とも思わなかった。
昔だったら「侯爵家のために」って戻るけど、今はもう家も元旦那も私のモノでもないし私と関係がない。私って結構冷たい人かもね。数十年結婚してた元旦那の泣き顔も縋る姿を見てもなんとも思わないし気持ち悪いとも思えてくる。でも、まぁしょうがないわよね?今更、同情する気持ちもないし侯爵家がどうなっても私は構わない。私が生まれた家だけど小さい頃から父は「侯爵というのが重荷になるなら誰かに譲りなさい。最悪捨ててしまえ。」と言っていた。でも母は「何が何でも侯爵家に泥を塗らないこと」と言い侯爵家を大事にしていた。




