2:隣国近くの街
しばらく乗合馬車に揺らされていると御者が声をあげた。
「目の前に街が見えるぞー。」
隣国に一番近い町まで半日、そんな遠くないのね。
「お姉さんここの町で乗合馬車降りて違う乗合馬車に乗るんじゃが、一緒に来るかい?」
おじいさん...優しい。
「ええ、ぜひ。よろしくお願いします。」
街につき乗合馬車から降りた。
乗合場の看板に書いてある時間表を見た。
私とおじいさん達が乗る乗合馬車はあと...一時間か。
さっき、フードを深くかぶった10歳ぐらいの子供が私の目の前を通った。
臭うな...追いかけてみよう。
「あの...ちょっと散策してくるので、馬車が来る時間になったらここで待ち合わせしてもいいかしら?」
「あらそうなのかい?わかったわ。後で会いましょう?」
おばあさんが答えてくれた。
おじいさん達とは一回そこで別れ、さっきの子供を追いかけた。
子供は細い通りの中に入って行った。
私もその子について行った。
しばらくすると、スラム街のような場所に出た。
子供は私が後をついてることに気づいてないようだ。
しばらくすると子供がボロボロのドアを開けた。
...あぁ、臭いはここからか。
たまに魔力が多い子供におきる病気だ。
小さい頃の私もなったことある、体の中が焼けるように熱く、何千本の針に刺さるように痛い。
子供が入った家の中に私も入っていく。
「だ!誰だ!」
いきなり入ってきた私にびっくりしたようだ。
床に寝ているもう一人の子供をかばうように私の前に立った。
兄弟なのかな?
床に寝ている弟の方は苦しそうだ。
「その病気治したいのだけれど、どいてくれないかしら?」
「う、うそだ!治せるはずがない!この街の医者だって治せなかった!」
どうやら信じてないようだ。
まぁ、無理もないよね。この病気になってる人より魔力が多い人が治してくれないと治らない病気だから。
「そうね。じゃあ、はいこれ。」
「...は?」
私の持ってる荷物を兄の方に渡した。
「もし私が治せなかったらそれをもって質屋で売りなさい。そのお金で王都まで行って治してもらえばいいわ。」
そう言い、床で寝ている弟の体に手を置いて魔力を循環させた。
この病気はいくつか原因があるのだが、そのうちの一つは魔力の暴走だ。
魔力をコントロールできてないと体内でうまく循環できない。循環できない魔力は行き場を失い暴走をするのだ。
特に魔力が多い子供にとってこれは大事なことだ。
普通は親や育てる人が生まれたばかりの子供に魔力を流してその方法を覚えさせるんだけど。
...この子たちはいろいろあるみたい。
しばらく弟の方に魔力を流していると息遣いが穏やかになった。
そして、目を薄く開いた。
「痛く...ない?」
兄の方が弟の方に急いで寄ってきた。
「キース!大丈夫か!?」
「リロイ兄さん...ボク痛くない...。なんで?」
兄の方改めリロイは泣きながら私に感謝していた。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう。」
「お姉さんが治してくれたの?ありがと。」
弟の方改めキースもにっこりしながら感謝してくれた。
「いえいえ、どういたしまして。」
リロイが泣き止むまで待って、二人に聞いた。
「それで、これからどうするの?二人は。」
一瞬気まずそうな顔をしたリロイが下を向いて答えてくれた。
「いつも通り...ゴミ箱から食べ物漁ったり。売れそうなものを探して質屋で売る。」
ゴミ箱から漁る...ねぇ。
...なんだろうか、なんかこの二人ほっとけないんだよね。
「ねぇあなたたち、私の息子にならない?こんな年だし、もう子供を産むのはめんどくさくてね。どう?」
「え?で、でもお前俺らのこと全然知らねぇじゃねぇか!いきなりそんなこと言われても...」
「リロイ兄さんボク、いいと思うよ?ボクはお姉さんの子供になりたいなー。」
リロイに向かってキースがにっこりしながらそう言った。
キースがそういうとリロイも「まぁ、キースがそう言うなら...」と賛成していた。
キースのこと大好きなのね、ブラコンってやつだね。
「そう、なら決まりね。今日からあなた達は私の息子よ。ほら二人とも立って。」
「あ!でもキースの体調が...って!立ってる!」
なんかキース君すっごく元気ね。
私が治った時なんか立つのに三日もかかったのに。