28:過保護な息子達
家に入ると目を真っ赤にしたキースを見たリロイが問いただすと、キースが見たことを全部話した。そしたらキースも顔が真っ青になっていた。
「お、お母さんが死んだら...俺ら生きていけねぇよ...」
何を言っているんだリロイ、君は将来二人の可愛い子供と可愛らしい奥さんができるんだよ。
「リロイ、キース座って聞きなさい。」
まさか、10代の息子達と生と死について話す日が来るとは思わなかった。
こういうのって普通、親から話されるものなのか、それとも自然に知って行くものなのか。因みに私は父がこの話をしてくれた。私のこの世界の両親、特に父は私に影響を与えてくれた人だった。
父は生と死は対であり、共にあると考えている人だった。命というのはお腹の中にいるころから始まりいずれは生まれ、運が良ければ大きくなるまで育ち、そして最後は死ぬ。死というのは生命の輪の中の一部と考えている人だった。私は小さい頃からその話を聞かされ、命とはそういうものだと思っていた。命は生まれるだからいずれ死ぬ、そう考えていた。
同い年の子供と出会った時に父のその考えは少し変わっていると気づいた。
皆、口々に言っていた「死ぬのが怖い、死にたくない」と。私はその感情が分からなかった。
学園に入り、課外授業で森に入った時にモンスターに襲われ死にそうなクラスメイトを見ても「痛そう」という感想しか出てこなかった。これを口に出せば皆に奇妙な目で見られると分かっていたので、周りの状況を見て何人かの生徒と同じように襲われた子に治癒魔法をかけた。
結果その子は助かったけど、それ以来彼を学園で見たことはなかった。
「リロイ、キース、お母さんはね。死というものはこの世に生を受けた時から当たり前のようについてくるものだと思っているのよ?人は生まれる、だから死ぬ。永遠に生きる人というのは少ないわ。」
「で、でも!僕はママに死んでほしくない...」
「そうだよ。だって、お母さんが未来視した時、俺まだそんなに年取ってなかったんだろ?て言うことは...そんな。」
キースとリロイは相変わらず辛そうな顔をしている。死ぬのは二人じゃないのにね。不思議ね。
今の息子達はいずれ来るであろう私の死を受け入れられていない。それはしょうがない。死に対する考えは人それぞれだ。私が死ぬことに対して嫌がっていなくてもこの二人は嫌がっている。
二人に考える時間をあげた方がいいのかもしれない。
私は椅子から立ち上がり、二人の頭をそっと撫でると二人は子供のように泣きじゃくった。
「二人ともまだ子供ね。これじゃあお母さんはまだ安心してあの世へ行けないわ。」
そう言い残し私はお風呂に入り寝室に入った。
リロイとキースはまだ座って話をしているようだし、私はもう寝るとしよう。
子供達は考える時間が必要そうね。
次の日の朝、腕の痺れと妙な熱気で目覚めた。
右を見るとキース、左を見るとリロイが私の腕を枕として使い寝ていた。
これが私が感じた腕の痺れと妙な熱気ね。
「リロイ、キース起きなさい。お母さん腕が痺れてるわ。」
「ん?ママおはよぉ。」
「んーあと...と少し。」
キースは舌が回らないのか少し怪しい発音であいさつ、リロイはまだ起きないようだ。
「二人、お母さん今日授業があるから。ほら、起きなさい。」
「うーん。わかったぁ。」
「あー...うん。起きる。起きる。」
眠そうに目をこすりながらキースはベッドから起き上がった。
リロイに関しては「起きる。起きる。」と呟き続けながらまた寝ようとしていた。
「リロイ兄さん!起きて!ママが困ってるよ!ほら!今日これママにつけるんでしょ!?」
ん?ママにこれ付ける?なにを?
「あぁーそうだった。」
そういうとリロイは起きて髪をかき上げ何かを取りに行った。
「お母さんに何をつけるの?」
キースに聞くと「お楽しみー!」といい意地悪っ子のようにニヤニヤしていた。
帰ってきたリロイは手に腕輪のようなものを持ってきた。三つあったので多分私達全員の分か。
「これは?」
「ママの切った髪覚えてる?」
「うん...まさか...」
「それを使って作った魔道具だよ?ママがいつ、どこにいるのか。魔力量と体力の状態、健康状態がわかる腕輪なんだ!」
...凄く嬉しそうな顔をして言ってるけど、これは息子からもらった腕輪じゃなかったらストーカー案件よね。
「お母さんはこれをずっとつけてくれ。これで俺たちはお母さんの安全確認ができて、安心できるから。」
リロイもなぜか凄く使ってほしそう。...仕方がない、使おう。
腕輪をはめると一瞬光り取ってみようとしたらとれなくなった。
「あっ、ママに言うの忘れたけど。これ、一生取れないようになってるからね!」
もっと早く言ってくれ。本当に。私はこれを一生付けるのか。
リロイとキースも腕輪をつけるとそれが一瞬光り、私と同じように取れなくなっていた。
こいつら、一生私の健康状態とか見て暮らすのか...なんかこう、プライベートがないってこういうことなんだな、と実感してる。




