1:離婚しました。プロローグ
私、エカテリーナは一週間前に政略結婚で結婚した元旦那と離婚しました。凄くすっきりしてます。
まぁ、未来はこうなるってわかってたから悲しくも何ともないけど。
なんでわかるかって?これは私が前世で呼んだ小説の中の話だから。
前世の私は小さい頃から本をずっと読んでいた。
死ぬ前も好きな作家さんのサイン会に行った帰り電車を待っていたら誰かが後ろから押してきたのだ。
死に際に見た顔は見覚えのある顔だった。
小さい頃、頭を打って前世の記憶が戻ったのだ。気づいたころにはもう遅く元旦那との婚約が決まっていた。そのころから私は婚約破棄になるように作戦を練っていた。試してみた結果、全部失敗に終わった。
現実逃避として勉強、マナーやダンスを頑張り、剣術も魔術も頑張った。いつの間にか結婚式も終わり、元旦那が第二夫人、第三夫人、第四夫人を屋敷に迎えた。正直、嫉妬もクソもなかった。元旦那はそれを「可愛らしくない」と言っていたがそれにかまう暇はない。
その時の私は、魔石の鑑定が趣味でそれに凝っていた。私の時間は夫人問題よりも大事だ。
第二夫人の子供が生まれ、第三夫人、第四夫人の子も生まれた。その子たちが多少大きくなり、元旦那にマナーの先生をつけるように言った。先生はつけたものの子供たちは先生の言うことを聞かないとなぜか私のせいにされたので私がマナーの先生になった。
子供達は嫌な思いをしたかもしれないがこれもこの家のため。この家の名を泥で汚さないために厳しく接してきた。
恨まれてもいい、そう思いながら子供たちに厳しく接してきた。それが功なしたのか、子供たちのマナーは完璧だ。私のことは相当嫌っているようだけど。
まぁ、話を戻すけど。
元旦那には恋愛結婚で結婚した第二夫人、第三夫人、第四夫人がいてそちらの夫人達と二人ずつ子供がいる。
私との間に子供はいるかって?いないに決まってるでしょ?正直、好きでもない人と結婚して子供まで作ったら離婚したくても離婚しにくくなるからね...
結婚してた間も別館で暮らしてたし顔を見るのは数か月に一回ぐらいだった。
結婚してた間、私はその第二夫人、第三夫人、第四夫人の子供たちにマナーを教えてた。
生まれた子たちに罪はないからね。皆この侯爵家の子供。侯爵家の名を背負って生まれてきた可哀そうな子供達。
しかも、第二夫人に関しては...庶民出身で礼儀という礼儀がまるでなってない。
彼女も練習すれば貴族らしい振る舞いをできるようになると思うけど元旦那が私以外の夫人達を甘やかすので、子供たちの方が夫人達より礼儀正しい。
子供達がある程度大きくなって私もなんだかんだめんどくさくなったので、家名も権力も財産も元旦那に譲った。
私はちょっとのお金を屋敷から出るときに一緒に持ってきた。庶民の感覚で生活すれば当分困らないであろう金額だ。
正直、私には必要がないものだった。私にとって家名も権力も財産、全部重たすぎてただの足枷にしか見えなかった。でも、彼には必要だろう。子供が六人と奥さんが三人もいるし。
最後の情けってやつよ。
私が離婚して屋敷を出るときに泣きついて一緒に来るといったメイド達や執事達や騎士達も何人かいたが、できたらこの家の新しい使用人達や騎士達の良い見本になってほしいので私からお願いして屋敷にとどまってもらった。
このメイド達と執事達は私が小さい頃から一緒に育ってきた人たちや私に指導されて育ってきた子たちもいる。
騎士達もそのような人が多い。
皆に会えなくなるのはちょっと悲しいけど、あの家から離れられると思うと嬉しい。複雑だ。
乗合馬車に揺られながら私は過去のことを少し考えていた。
「おねえちゃん!どこにいくの?」
隣に座っている子供がきいてきた。
祖父母と来たのかな?その子の隣に座っていたおじいさんとおばあさんが申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「そうね...隣国で先生になろうと思うのだけれど、お嬢ちゃんどこがいいと思う?」
私にできる仕事と言えば先生ぐらいだ。
知恵はあるが体力は狩人や冒険者になるほどない。騎士だったら何とかできそうだけど、いろいろと危険だ。
隣に座っている子供の祖父が私に話しかけてきた。
「ほほう!お姉さん先生になるのかい?」
お姉さんっていう年ではないが...まぁそういうことにしておこう。
「えぇ、王都で学校を卒業して兄がいない間しばらく家業を継いだけど、兄が帰ってきたのでねぇ。追い出されてしまって。」
...嘘だけど。
「そうかい、そうかい。まぁ、ひどい家族だな...いきなり追い出すなんて。」
架空のお兄様ごめんなさいね。でも、あなた凄く役に立ってるよ。
「そうなのよ。だから、仕事を探しに隣国までいきたいのよ。」
「うーん。お姉さん田舎町で先生になることに興味はあるかい?」
なにそれ!凄く響きがいい!
「面白そうね。どこですか?ぜひやってみたいわ。」
憧れの田舎ぐらし。
前世は山の近くの実家から上京して死ぬまでまだ一回も帰ってなかったな...
「おおー!興味持ってくれたか!よし!ワシも今から嫁と孫とそこに行くんじゃ。一緒に行こうお姉さん。」
ということで乗合馬車で運命の出会いを果たしました。