17:キースVSアーサー
「ママー。僕、授業終わったよー。」
ドアの向こう側からキースの声がした。
「ちょっと外で待っててちょうだい...っていつの間に入ってきたの?」
言い終わる前にキースが窓を開けてそこから入ってきて私の隣に座った。
いつも通り私にベタベタしている。
私に抱き着くキースを見てアーサーがなんか言い出した。
「距離感...近いんですね。」
「僕、ママのことが大好きだからね。毎日ママと寝てるんだよ。」
何を言っているんだ君は。マザコンって思われちゃう可能性大の発言だよ。
「キース?あなたの知らない人の前で話す話ではないでしょ?」
「えへへー。わかった。」
ニコニコしながら微動だにしない。相変わらずくっついている。
「お義母様はどうすれば帰ってきてくれるのですか?」
困った顔をしたアーサーが尋ねてきた。
まだ諦めないか。
「...そうですね。私が戻りたいと思うぐらいの価値があるものがないと戻りません。」
アーサーは黙った。
しばらく黙った後また口を開きだした。
「お義母様は私達が嫌いなのですか?」
なぜか今度は泣きそうになっている。
演技だろうか?こいつさっきから時々胡散臭いからな。
「”私達”とは侯爵家のことですか?それとも侯爵家の子供達のことですか?」
「お義母様...あなたならわかっているはずです。子供達です。父上と夫人達を私達の中に入れないでください。確かに私達はお義母様に対する態度が悪かった。でも、お義母様は常に私達のことを思って行動してくれていたのではないですか!本当に、嫌い...なのですか?」
なんか、面倒臭い。
こういう人いたな前世で。一緒に居ると疲れるタイプだ。
「子供達は嫌いではないですよ。ただ、可哀そうな子供達だと思ってました。あんな環境で私に厳しく躾けらるうえに、あんな父親と夫人達に囲まれる子供達が。」
「...あのー」
キースが突然アーサーに声をかけた。
「さっきから聞いてたんだけどさ。ママはもう君たちとは他人だよ?財産も権力も家名も全部、君たちに譲ったんだよ?あと、自分が今までママに何したか覚えてるの?覚えてたらこんな厚顔無恥なことできないよね?」
黒いオーラの様なものが出てる気がする...
気のせいかな...
普段怒らない人が怒ると怖いってこういうことなんだね。
「ママは僕達と一緒に居て、すっごく幸せなんだよ?見てて分かるでしょ?それの邪魔しようとしてるの分からない?」
キースが自慢するように私の腕に自分の腕を絡めて頭を肩にのせた。
アーサーがそれを見てなんか悲しそうな顔をしていた。可哀そうだな。
侯爵家にいる間...子供達に優しくしてあげられなかった私も悪かったと思う。
でも、優しくして子供達が懐いてしまったら私はもう侯爵家から逃げられない。子供達には血が繋がった母親と父親がいるし、使用人達もいる。私が居なくても困らないはず。
「お義母様...末っ子のスタンを覚えていますか?」
あの泣き虫の子供か...あの子が言うことを一番聞いていたな。と言っても息子達と同じような感じで懐いてるというワケではなく仕方なく聞いてる、という感じだけど。
「お義母様が居なくなってから部屋に籠りっきりで、食事も二日に一回しかしません。私が一日に一回無理矢理ポーションを飲ませに行くんですけど、それも嫌々で...。部屋に入って様子を伺っても『お義母様はいつ帰ってくるの?』しかいいません。スタンの母親の第二夫人を連れて行っても『ボクのお義母様じゃない』と言って追い出し、あまり第二夫人も会いに行きたがりません。このままだとスタンは...。」
栄養失調で死ぬぞ。
なんだろうか...小さい頃から見てるからやっぱり情というのはある。
可哀そうって思ってしまった。
「ちょっと待っててください。」
その場に言い残しあるものを取りに行った。
「はい、これ。私からのプレゼントです。スタン様に飲ませてください。」
私が箱ごと持ってきたのは小瓶に入った栄養のポーションだ。
これを一瓶飲めば一日何も食べなくていいし、お腹もいっぱいになる。名前の通りのポーションで一日に必要な分の栄養が入っているポーションだ。私が家で経営してる小さめの治癒院でも売ってるんだけど、旅人や商人、遠出する人にお勧めする商品のうちの一つでもあり、よく売れている。
「あと、これもスタン様に渡してくださいませ。」
スタン宛の小さめの手紙を書いてアーサーに渡した。
「お義母様...ありがとうございます。」
アーサーが私の手を握って嬉しそうに微笑んでいた。
しばらくアーサーが私のてを握っていたがキースがイライラしているのに気づいて、彼が侯爵家に帰るように促した。
「侯爵家に着くまで時間が掛かるので、今帰った方がいいですわよ。」
「っあぁ。そうですね。申し訳ありません。久々にお義母様に会ったのでつい時間を忘れてしまいました。...では後日また伺います。代金は、」
「プレゼントなので代金はいりません。」
アーサーが私から離れるとキースがまた私にベタベタしてきた。




