11:侯爵家の次男の絶望
元第一夫人のエカテリーナ様は子供だった私達から見てとても厳しい人であった。
最初は嫌いで嫌いで仕方がなかったが、社交界に出たときに知った。
これは私達のためになるのだと。
他の貴族の子供に比べ我が侯爵家の子供は皆マナーが完璧だった。
言葉づかいも大人と見間違えるほどしっかりしていた。
茶会や夜会、パーティーなどに行けば私達は褒め称えられた。
私達を育てもしない夫人達はまるで自分達が私達を躾けたと言わんばかりの態度で自慢話をしていた。
生みの母親にあまり注意されない私達を第一夫人がよく注意したり、躾けていた。
彼女は他の母親達がやりたくないことを一人でやっていた。
でも私は、「彼女が私達のことが嫌いだからやっている」わけではないと知っている。
祭の日や祝日の日の夜、子供達が寝静まった後、彼女はいつもみんなの枕元にプレゼントを置いていた。そして、躾をして子供を泣かせた日は皆が寝静まった後、寝室に来て私たちに可哀そうなことをしたと言い謝っていた。
それでも子供だった私達は八つ当たりしたり、時には邪険にしていた。嫌味を言ったり彼女が嫌がるようなことを言ったりしていた。自分達が今までやったことを考えれば出ていくのも分かる。
彼女が出て行った日、屋敷の子供達は今までにないぐらい焦った。私も、そのうちの一人だ。
家の長男は落ち着いてるように見えた。長男は屋敷の子供達に自分達がどんなことをしてきたか考えるように言い、仕事に戻った。私はその日からお義母様を探し続けた。
そんなお義母様を五年間探し続けた結果、やっと居場所を突き止めた!
どうやら隣国の村にいるらしい。
早くお義母様に会いに行かなければ!!
早速お義母様がいると言われる場所に向かった。
「ここが、お義母様が住んでいる。家か...」
お義母様は庶民が住むような小さな家で住んでいた。
その家の前につくとお義母様が丈夫そうな椅子の上に座っていた。
農民が着るような服を着ているお義母様がそこにはいた。
なんて可哀そうなんだ、こんな小さな家で暮らし、あんな服を着るなんて!お義母様は屋敷に帰りたいに違いない!
何かを言う前に体が動いた。
思わず馬車から飛び出してお義母様の方に近づいた。
「お義母様!お義母様!会いたかったです!」
お義母様の顔を見てそういうとなぜか、よくわからないという顔をしていた。
まさか...
「見覚えのない顔なのですが。お名前を伺ってもよろしいかしら?」
お義母様の口から発せられたその言葉。
お義母様は私達のことを忘れてしまったのか?
私達はお義母様にとってそれぐらいの存在でしかなかったのか?
涙が溢れてくる。足に力も入らない...
私達がお義母様を邪険に扱った罰だ...私が悪いんだ...お義母様を裏切ったお父様が悪いんだ...
気づけば思っていることを口にしていた。
「お母さん!おやつの準備できたぞ!」
お義母様の後ろの方から声がした。
お義母様は後ろの方を振り返ってみた、その瞬間私は初めてお義母様の柔らかい笑顔を見た気がする。
「お母さん...?お義母様の...子供?」
侯爵家で見たことがないお義母様の顔だ...
お義母様はこの子供を心から愛している。
絶望的だ。
お義母様はもう、侯爵家に帰ってくれないのかもしれない。
なにか...作戦を考えなければ...でも、どうやって。
「また...今度伺います。失礼しました。」
そう言い、馬車に駆け込んだ。




